アンダーカレント
劇場公開日:2023年10月6日
解説
「愛がなんだ」「街の上で」の今泉力哉監督が真木よう子と初タッグを組み、フランスを中心に海外でも人気を誇る豊田徹也の長編コミック「アンダーカレント」を実写映画化したヒューマンドラマ。
かなえは家業の銭湯を継ぎ、夫・悟とともに幸せな日々を送っていた。ところがある日、悟が突然失踪してしまう。かなえは途方に暮れながらも、一時休業していた銭湯の営業をどうにか再開させる。数日後、堀と名乗る謎の男が銭湯組合の紹介を通じて現れ、ある手違いから住み込みで働くことに。かなえは友人に紹介された胡散臭い探偵・山崎とともに悟の行方を捜しながら、堀との奇妙な共同生活の中で穏やかな日常を取り戻していくが……。
謎の男・堀を井浦新、探偵・山崎をリリー・フランキー、失踪した夫・悟を永山瑛太が演じる。「愛がなんだ」の澤井香織が今泉監督とともに脚本を手がけた。
2023年製作/143分/G/日本
配給:KADOKAWA
劇場公開日:2023年10月6日
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2023年10月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
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銭湯を営むかなえは2か月ほど前に夫に失踪され、臨時の手伝いとして堀という男性を雇い入れた。友人のつてで探偵に夫の捜索を依頼したかなえだが、彼女自身心の奥深くに、暗い記憶を秘めていた。
月毎に章立てて、季節で言うと夏から晩秋までの間のかなえと周辺の人々の様子を淡々としたタッチで描く。かなえの心の闇、堀の正体、失踪した夫の真意は中盤を過ぎるまで伏せられており、ちょっとしたミステリーのような風味もある。
特に堀は、真実が明かされる前はよく見るとさなえの兄と彼女を殺した犯人、どちらとも取れるように描かれていて、感情の見えない彼の挙動にはかすかな緊張感が漂っていた。
今回原作漫画は未読だったが、あえて未読のまま鑑賞し、その後原作を読んでみた。(原作を先に読むことも多いが、相違点の確認作業のようになって映画を楽しめないことが多い気がして。以下、原作のネタバレも含みます)
身近な誰かについて、全てを理解している、と臆面もなく自負する人はむしろ少ないだろう。だが私たちは普段、この人は概ねこういう人だ、という見込みのラベルを周囲の人間に対し貼って生きている。
そして日常を重ねる中で、そのラベルが見込みに過ぎないことを忘れがちだ。しかし実は、それは自分と相手の関係性の中という偏った視点から見えた相手のごく一部かもしれないし、あるいは相手がこちらに対し故意に見せている偽りを信じ込んでいるだけなのかもしれない。
この作品の主要な登場人物は3人とも、秘密を抱えていることをほのめかす描かれ方をされている。その秘密を想像しながら、そういえば自分は普段周囲の人たちに対して、こんなふうに彼らが見せない内面への想像力を働かせることが少ないなと気づく。
また、かなえの夫である悟の生き方と、探偵が拾い集めた彼の周囲からの評判を見ていると、人間の表層の姿、側から見た印象がいかにあやふやなものか考えさせられる。彼のように全くの嘘で固める人間はさすがに少ないだろうが、誰しも自分以外の人間に対しては多少なりとも自分を繕って見せる場面があるはずだ。むしろそれが自然な姿だと思う。
この作品は、人間の表面の姿と内面が違うことを否定的には描かない。人間の心は複雑で、時に自分自身のことさえ捉えきれないことがある。ましてや自分以外の人間を理解することは、本来途方もなく困難なことだ。
身近な存在であっても、相手のすべてを知ることは難しい。そう自覚する謙虚さと、大切な相手であればこそ、その分からない部分の存在にさりげなく目を凝らし、受け止める気持ちを持つこと。人と向き合うというのは、そういうことなのだと思わされた。
終盤、食卓で他愛のない会話から堀が号泣し、自分はさなえの兄であると打ち明けた直後、二人が距離を置いて散歩する光景に切り替わった。
幼いかなえが口をつぐんだのは犯人の恫喝によるものであって、彼女に罪はないから、かなえが堀に謝罪する必要はないと個人的には思う。彼女が、身の上を打ち明けた堀に彼の妹との最後の記憶を語ったかは分からないが、ラストカットで散歩する2人の間にはおだやかな空気が流れていた。彼らは互いに信頼しあえる関係になったと信じたい。
最後に2人はこうなりました、という明確な説明のないオチで、これはこれで決して嫌いではないが、原作ではどう描かれているか(あわよくば何らかの解釈の助けになる描写がないか)気になって、観賞後に原作を読んだ。
なんと原作では、堀はバスに乗りませんでした、というところで終わっていて、堀の告白も散歩のラストもない。映画以上の(見る側への)委ね具合に驚いた。
漫画ならこういう終わり方は個人的にわりと好きだ。でも確かに、この通りの終わり方で映像化されたら、映画としてのカタルシスには欠けるだろう。実際、映画でずっと無表情だった堀が泣いたところで、私はちょっともらい泣きしてしまった。なんとも上手いアレンジをしたものだ。原作を先に読んだ人はまた違う感想になるのかもしれないが。
それ以外は、尺の都合で省かれたエピソードはあるものの、台詞の細かい部分までかなり原作に忠実だ。原作の方がコメディタッチのやり取りが多いため、相対的に映画の方が重ためな雰囲気になっているが、映像化されて重要な部分が削られてしまっている、という印象はなかった。
それにしても、リリー・フランキーはああいう役が本当に似合う。しかも原作の探偵と雰囲気がもうそっくり。順番は逆だが当て書きしたかのようなフィット感。ぱっと見いい加減そうで、ドライな雰囲気を漂わせながら、彼独特のあの手この手でかなえを慰め、最後までかなえに付き合う優しさに癒された。
永山瑛太は、「怪物」での演技といい、何を考えているかわかりづらい、善人とも悪人ともつかない空気感を出すのが上手い。井浦新や江口のり子、康すおんも、適材適所のキャスティングだった。
2023年10月27日
PCから投稿
人が一日の体の疲れや汗や汚れを洗い落とす銭湯という場所。ここで働く主人公の女性は、かつて蒸発した夫への「なぜ?」という思いを抱えたまま生きている。また、臨時で雇った従業員の男もここで働きたいのか理由を明かさぬまま、ただ寡黙に仕事に打ち込む。お互いに深くは語らないし、聞かない。だからこそ二人はどこか居心地がよく、互いにとって程良い温度の「お湯」のような存在になり得ていくのかもしれない。本作は彼らの関係性を軸に、常連客たちや同級生や私立探偵らが入り乱れ、飄々とした人間ドラマを奏でる。不在や記憶をめぐるミステリーも顔を覗かせるが、「なぜ?」を深追いしないところが本作の特徴か。主演の二人はセリフの少ない場面に言葉未満の「想い」がそこはかとなく漂う様子をナチュラルに作り出す。決して急がず焦らず醸成されゆくその空気が心地良い。不思議な透明感に吸い寄せられつつ、思いがけない感情へ誘われていく一作である。
2024年7月6日
iPhoneアプリから投稿
原作未読であるが、実写においてその世界観に違和感を感じる点も多い。下町感が強いおじちゃん・おばちゃん。その肉体と軽装備で男の住み込みを認める真木よう子に首を傾げる。終盤の瑛太の論は取り上げるに足りるとも思えず、ラストまで入りこめなかったところ。
2024年6月19日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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最近派手な映画やドラマばかり観て少しお疲れというか、飽きたからあまり体温の上がらない映画をチョイス。ミステリー要素もあり、登場人物たちへの感情移入もあり、お兄さんの告白シーンは普通に泣きました。飽きずに淡々とみられました。井浦新さんが俺的にはツボでした。良い人過ぎ。あと、あの誘拐された女の子が無事で本当に良かった。子供連れ去りの件は本当にしんどかった。無事だと分かり心底ホッとした。それだけ映画に乗せられているという事で役者さん達の凄みを体感した。ってかほんと連れ去りとかする奴ら許せん。取っ捕まえて拷問して殺してやりたい。土に埋めてアソコに木を植えてやりたい。あれ?何の映画観たんだっけか?笑 脳がマッドマックスになってる。フュリオサ!