ペナルティループ

デビュー作さくに続つづきオリジナル脚本きゃくほんで臨のぞんだ荒木あらき伸二しんじ監督かんとくは、この第だい2作さくで「これ以上いじょうのループものは出でてこないよね」というものを作つくるつもりだったという。確たしかにサスペンス系けいのループものでは、主人公しゅじんこうが殺ころされて意識いしきがなくなるとその日ひの朝あさに戻もどっていたり、大切たいせつな人ひとが殺ころされてしまうのを回避かいひするために何なん度ども戻もどってやり直なおすなど、被害ひがい者しゃ側がわの視点してんで描えがかれる筋すじが多おおい。一方いっぽう本ほん作さくでは、恋人こいびとを殺ころされた主人公しゅじんこう・岩森いわもり（若葉わかば竜也たつや）が復讐ふくしゅうのため犯人はんにんの溝口みぞぐち（伊勢谷いせや友とも介かい）を殺ころす行為こういが繰くり返かえされる、つまり（仇かたき討うちとはいえ）加害かがい者しゃ側がわの視点してんでループするという点てんが斬新ざんしんだろうか。

ただし、意図いと的てきなのか、あるいは予算よさんや尺しゃくの事情じじょうなのかはわからないが、観客かんきゃくの理解りかいや感情かんじょう移入いにゅうを助たすける説明せつめいになりうるストーリー上じょうの要素ようそをかなり省略しょうりゃくしているので、そうした要素ようそを想像そうぞうで補完ほかんしながら鑑賞かんしょうしないと楽たのしめないだろう。恋人こいびと・唯ただ（山下やましたリオ）との出会であいは描えがかれるが、犯人はんにんを殺ころして復讐ふくしゅうしたいと思おもい詰つめるほど深ふかい仲なかになる過程かていは描えがかれない。ループが起おこる“仕組しくみ”は途中とちゅうで説明せつめいされるが、どんな理由りゆうでどういった経緯けいいでその仕組しくみが作つくられたのかは語かたられない。ループ内ないで殺ころされる側がわの溝口みぞぐちの意識いしきや記憶きおくをめぐる状況じょうきょうも次第しだいに明あかされ、そこから少すこしばかりユーモラスな転調てんちょうもあるのだが、そうした状況じょうきょうを実現じつげんさせる“仕組しくみの裏側うらがわ”を想像そうぞうすると、倫理りんり的てきなまずさを思おもってしまう。

ネタバレを避さけるため具体ぐたい的てきなことは書かかないが、最後さいごまで観みてこういう話はなしだったと知しらされたところで、独創どくそう的てきというよりは独善どくぜん的てきだったかなという感想かんそう。CMやMVでキャリアを築きずいた監督かんとくらしく、たとえば水みず耕こう栽培さいばい工場こうじょうの広大こうだいな屋内おくないで若葉わかば竜也たつやがただ一いち人にん働はたらいているシーンなど印象いんしょう的てきなビジュアルもあっただけに、面白おもしろいと思おもう人ひとにだけ分わかればいいとでも言いいたげな間口まぐちの狭せまさがもったいない。次つぎはほかの脚本きゃくほん家かのシナリオを演出えんしゅつするか、共同きょうどう脚本きゃくほんで撮とればもっと視野しやが広ひろがり客観きゃっかん性せいが増ますのではと期待きたいする。