違たがえ国こく日記にっき

　両親りょうしんを亡なくした傷心しょうしんと、母親ははおやとは異ことなるちょっと変かわった大人おとなの女性じょせいとの同居どうきょ生活せいかつに戸惑とまどう思春期ししゅんきの少女しょうじょ。新垣あらかき結衣ゆい演えんじる人付ひとづき合あいが苦手にがてな小説しょうせつ家かの槙まき生せいと、早瀬はやせ憩いこい演えんじる天真爛漫てんしんらんまんな少女しょうじょ・朝あさのコントラストが互たがいの心しんを動うごかしていき、次第しだいに心しんを開ひらき交まじり合あっていく様さまが心地ここちよい作品さくひんです。

　脚本きゃくほんと編集へんしゅうも手掛てがけた瀬田せだなつき監督かんとくは、本ほん作さくでも映画えいが制作せいさくの喜よろこびに溢あふれたようなシーンを生うみ出だしています。中なかでも夏帆なつほが演えんじる槙まき生せいの友人ゆうじん・奈々ななを交まじえた3人にんのシーンでは、早瀬はやせの初々ういういしい演技えんぎを生いかしたような余白よはくのある演出えんしゅつが印象いんしょう的てき。まるで役者やくしゃのリアクションに委ゆだねたような“かけがえのない時間じかん”から自主じしゅ製作せいさく映画えいがを思おもい起おこさせる自由じゆうさを感かんじることができます。

ヤマシタトモコによる同名どうめい漫画まんがは未読みどくながら、映画えいが「違たがえ国こく日記にっき」鑑賞かんしょう後ごにネット記事きじの原作げんさく者しゃインタビューで作品さくひんに込こめた意図いとや印象いんしょう的てきな数すうコマに触ふれ、漫画まんがで描えがかれた人物じんぶつ像ぞうや空気くうき感かんを尊重そんちょうし適切てきせつに実写じっしゃ化かできているように感かんじた。槙まき生せい役やく・新垣あらかき結衣ゆいと朝ちょう役やく・早瀬はやせ憩いこいのキャスティングもはまっているし、原作げんさく連載れんさい時期じきが2017年ねん～23年ねんと近ちかく時代じだい背景はいけいをほぼそのまま生いかせたのも無理むりのない脚色きゃくしょくにつながったはず。

瀬田せだなつき監督かんとくが2020年ねんに発表はっぴょうした「ジオラマボーイ・パノラマガール」も漫画まんが原作げんさくだが、岡崎おかざき京子きょうこが1988年ねんに描えがいたバブル期きの高校生こうこうせい男女だんじょの恋愛れんあい模様もようを、令れい和わの東京とうきょうに舞台ぶたいを置おき換かえて実写じっしゃ化かするというかなり無理むり筋すじの企画きかくだったせいか、ストーリーもキャスティングもうまくかみ合あっていない感かんじを受うけた。2作さくの比較ひかくで言いえば、「違たがえ国こく日記にっき」のほうが断然だんぜん好このみだ。

「違たがえ国こく」という造語ぞうごで強調きょうちょうされているように、人ひとはみな違ちがう存在そんざいで、考かんがえ方かたも感かんじ方かたも違ちがうのだから、安易あんいに気持きもちが分わかるとか共感きょうかんできるといった馴なれ合あいはしないが、違ちがいを認みとめたうえで寄より添そったり支ささえ合あったりすることはできる。そうしたメッセージは昨今さっこんの多様たよう性せい尊重そんちょうの流ながれにも沿そう。

マンションで一人ひとり暮くらす小説しょうせつ家かの槙まき生せいが両親りょうしんを失しつくした朝あさを引ひき取とることになり、ぎくしゃくした同居どうきょが始はじまる。そんな2人ふたりの関係かんけいが、槙まき生せいの友人ゆうじん・醍醐だいご（夏帆なつほ）や朝あさの親友しんゆうえみり（小宮山こみやま莉渚）といった触媒しょくばいのような存在そんざいとのかかわりにより次第しだいに変化へんかしていく流ながれも好このましい。コミック全ぜん11巻かん分ぶんの物語ものがたりを本編ほんぺん140分ふん弱じゃくに収おさめたので、映画えいがでの脇わきキャラたちの描えがき込こみがやや物足ものたりないとはいえ、限かぎられた時間じかんの中なかでうまく整理せいりできたように思おもう。

早瀬はやせ憩いこいについては、出演しゅつえん歴れきを見みたら鑑賞かんしょう済ずみのドラマに結構けっこう出でていたのに認識にんしきしていなかったことに気きづいたが、撮影さつえい当時とうじ15歳さい、今年ことし6月がつで17歳さいになったばかりだそう。無垢むくな幼おさなさを残のこしているようで、老成ろうせいしてみえる瞬間しゅんかんもあって、不思議ふしぎな魅力みりょくがある。これからの演者えんじゃとしての成長せいちょうと活躍かつやくに大おおいに期待きたいしたい。