ハンガー・ゲーム0

初はじめは一人ひとりの命いのちを奪うばうことさえ罪つみに感かんじていた。
欺あざむき、誰だれも信しんじられなくなり、
スノー大統領だいとうりょうが完成かんせいしていく。
自みずからも残虐ざんぎゃくされることになるとも知しらずに。

ハンガーゲームのスノー大統領だいとうりょう誕生たんじょう秘話ひわ。

前半ぜんはんは見応みごたえあって面白おもしろかった！
没落ぼつらく貴族きぞくで崖がけっぷちスノーがハンガーゲームの育成いくせい担当たんとうとして12地区ちくのルーシーにあたることで、今いままで見下みくだしてた人間にんげんとも心しんを通かよわせる。
自分じぶんの立場たちばやプライドよりも彼女かのじょを生いかしたいという愛あいが芽生めばえ、不正ふせいがバレて駐屯ちゅうとん地ちに派遣はけんされることになっても彼女かのじょを探さがすため、12地区ちくを希望きぼうする。

ここまではめっちゃよかった！
が、後半こうはんよ。
突然とつぜんの闇やみ堕おち。もっと丁寧ていねいに描えがけよ！
無駄むだなシーンめっちゃ多おおかったのに！
なんで急きゅうに友達ともだちを裏切うらぎる？今いままでそんな感かんじちゃうなったのに突然とつぜんの出世しゅっせ欲よくや反逆はんぎゃく者しゃへの厳きびしさなんなん？
それやったら、おとん殺ころされた恨うらみとか、プライドの高たかさとかもっと出だしてくれよ。
しかも裏切うらぎったこと後悔こうかいしてるし。なんやねんコイツ。
最後さいごはルーシーにも見限みかぎられてダッサイし。
友達ともだちを裏切うらぎったことで冷徹れいてつになって、愛あいより出世しゅっせをとって待まち合あわせに行いかないとかにしてほしかったなぁ。

にしても、ルーシー役やくのレイチェルゼグラーの歌うたは圧巻あっかん！
それだけで見みる価値かちあり😍✨✨

。

　“歌うた”を唯一ゆいいつの武器ぶきにする少女しょうじょという設定せっていにワクワクしながら集中しゅうちゅうして見みてたのに、それだけじゃ生いき残のこれないので、逃にげることとか、殺鼠剤さっそざいとか、ドローンをぶつけるとか、教育きょういく係がかりの違法いほうな作戦さくせんで活路かつろを見みいだす。少女しょうじょを守まもるという点てんでは三さん章しょうのうち第だい二に章しょうまでで俺おれの集中しゅうちゅう力りょくは途切とぎれてしまった。

　名家めいかではあっても今いまは貧困ひんこんに喘あえいでいたスノー家か。いかにして権力けんりょくを掴つかむのかというスリリングな展開てんかいもあり、ゲームについて異論いろんを唱となえる庶民しょみん感覚かんかくも抱いだくようになる経緯けいいから一転いってん、愛あいの生活せいかつ、逃避行とうひこう、そして裏切うらぎり。結局けっきょく、ルーシー・グレイに人生じんせいを変かえられ、ダークサイドに墜おちていく姿すがたが面白おもしろい。

　何なんだかんだ言いって第だい三さん章しょうは眠ねむくなった。しかし、レイチェル・ゼグラーの美うつくしく高揚こうよう感かんのある歌声うたごえに何なん度ども助たすけられた。グリッサンド的てきな高音こうおんの節ふしは脊髄せきずいを蹴けられたかのような痺しびれる感覚かんかくになるのよ。歌うただけ聴きいていたい・・・『ONE PIECE FILM RED』のように・・・

全米ぜんべいではいずれも大だいヒット。が、日本にっぽんでは『バトル・ロワイヤル』のパクりと言いわれ、結局けっきょく人気にんきの出でぬまま…。
個人こじん的てきには結構けっこう好すきだった『ハンガー・ゲーム』シリーズ。
8年ねんぶりとなる最新さいしん作さくは、プリクエル。
しかもあのスノー大統領だいとうりょうの若わかき日ひを描えがくのだから驚おどろき…！

後のちにパネムの独裁どくさい者しゃとなるコリオレーナス・スノー。愛称あいしょうは“コリオ”。
名家めいかの生うまれだが、今いまは貧困ひんこん地区ちく並なみに没落ぼつらく。
家いえや家族かぞくの為ために、アカデミーの成績せいせき最優秀さいゆうしゅう者しゃに贈おくられる賞金しょうきんを欲ほっしていたのだが…。
第だい10回かいハンガー・ゲームの新あらたな試こころみとして、成績せいせき優秀ゆうしゅう上位じょうい者しゃが、各かく地区ちくのプレイヤーの“教育きょういく係がかり”に任命にんめいされる事ことに。優勝ゆうしょう者しゃに賞金しょうきんが贈おくられる。
が、コリオが担当たんとうするのは、最もっとも弱よわいとされる“第だい12地区ちく”。歌うたう事ことだけが取とり柄えの問題児もんだいじの少女しょうじょだった…。

コリオは元もとプレイヤーで、そこから如何いかにしてパネムの大統領だいとうりょうにまで上のぼり詰つめたか？…という設定せっていかと思おもったが、さすがにそうではなく。没落ぼつらくしても名家めいかの生うまれ。
貧困ひんこんでどん底ぞこの境遇きょうぐうから這はい上あがろうとする様ようは、前ぜんシリーズを彷彿ほうふつ。
前ぜんシリーズではウディ・ハレルソンがそのポジションだった“教育きょういく係がかり”。今回こんかいはプレイヤー視点してんではなく、主催しゅさい側がわ視点してんなのも新風しんぷう。

スノー大統領だいとうりょうが若わかい頃ころ、こんなにイケメンだった事ことが驚おどろき…！(ドナルド・サザーランドも渋しぶくてダンディーだが)
ブロンドヘアで、初はつ登場とうじょうシーンから均整きんせいの取とれた肉体美にくたいびを披露ひろう。
決けっして高慢こうまんで傲慢ごうまんな性格せいかくではなく、寧むしろ真面目まじめな好こう青年せいねん。
偉大いだいな将軍しょうぐんだった父ちちとその死し、過去かこの悲劇ひげき、まだ若わかくして家いえや家族かぞくの為ために背負せおっているもの…“陰かげ”が覆おおい被かぶさり、野心やしんも。
新星しんせいトム・ブライスが、人気にんきの大作たいさく映画えいがシリーズの主演しゅえんというプレッシャーと期待きたいに充分じゅうぶん応こたえた。
第だい12地区ちくからのプレイヤー、ルーシー・グレイ。
TVの生なま中継ちゅうけいでいきなり“問題もんだい”を起おこし、幸先さいさき不安ふあん…。が、歌声うたごえは見みる者もの聞きく者ものの心しんを振ふるわす。
『ウエスト・サイド・ストーリー』で素晴すばらしい歌声うたごえを披露ひろうしたレイチェル・ゼグラーはそれが決きめ手てになって抜擢ばってきされたと言いえよう。
本ほん作さくでも見事みごとな歌声うたごえや問題児もんだいじ故ゆえの存在そんざい感かんを放はなつが、歌うたは必要ひつようだったのかな…？

コリオはあの手てこの手てを使つかってルーシー・グレイを優勝ゆうしょうさせようとする。
いつしか二人ふたりの間あいだに…このロマンス要素ようそも前ぜんシリーズを踏襲とうしゅう。
殉職じゅんしょくした偉大いだいな将軍しょうぐんの息子むすこと問題児もんだいじ。嫌いやでも注目ちゅうもくや関心かんしんを集あつめる。
ゲームメーカーのゴール博士はかせ(怪かい演えんじのヴィオラ・デイヴィス)やハンガー・ゲーム考案こうあん者しゃのハイボトム(クセ者しゃのピーター・ディンクレイジ)は期待きたいや目めを光ひからす。
そんな中なか、いよいよ第だい10回かいハンガー・ゲームが始はじまった…。

開幕かいまく前まえからプレイヤーを動物どうぶつ園えんの檻おりに入いれたり。
トラブル続出ぞくしゅつで、ゲーム開始かいし前まえから死亡しぼう者しゃが出でたり。
コリオの友人ゆうじんセジャナスはハンガー・ゲームの危険きけん性せいを訴うったえる。
今いまも昔むかしも生死せいしを懸かけたサバイバル。若者わかものたちが殺ころし合あい、富裕ふゆう層そうがそれを“娯楽ごらく”として楽たのしむ。その非情ひじょうさ、異常いじょうさは変かわらず。
中盤ちゅうばんの見みせ場ばとなるが、前ぜんシリーズと比くらべるとスケール感かんやスリルに乏とぼしい。
64年ねん前まえの設定せっていだから、昭和しょうわ時代じだいのようなアナログ感かん…？ あの大量たいりょうのヘビは勘弁かんべんだけど。
コリオの“手助てだすけ”もあって、ルーシー・グレイは優勝ゆうしょうを果はたす。
絶対ぜったい優勝ゆうしょうナシと思おもわれていたコンビの優勝ゆうしょうだが、何なんだかあっさり。
2時じ間あいだ半はん強きょうの尺しゃくで、まだ1時じ間近まぢかく残のこっている。
今回こんかいはゲームがメインではない。その後ごが要よう。
コリオの心境しんきょうの変化へんか…。

ゲームでの不正ふせいがバレ、コリオは貧困ひんこん地区ちくの治安ちあん維持いじ部隊ぶたいに飛とばされる事ことに。
自みずから第だい12地区ちくを希望きぼうする。理由りゆうは言いうまでもない。
ルーシー・グレイと再会さいかい。愛あいを育はぐくむ。
名誉めいよは傷付きずつけいたが、手てに入いれた幸しあわせ。しかしそれは、ほんの束つかの間まだった…。
パネムへの反乱はんらん計画けいかく。しかもそれに、友人ゆうじんセジャナスが関与かんよ。
いい。友情ゆうじょうに亀裂きれつ。
密告みっこく。セジャナスは処刑しょけい。激はげしい自責じせき。
反乱はんらん計画けいかくの一いち件けんでコリオは殺人さつじんを犯おかしてしまう。ルーシー・グレイと遠とおい地ちへ逃にげる事ことを思おもい付つく。
が、道中どうちゅう二に人にんの間あいだに…。殺人さつじんの証拠しょうこの銃じゅうも巡めぐって…。
信頼しんらいし、愛あいした相手あいてに裏切うらぎられた。殺ころされかけた。
ルーシー・グレイは本当ほんとうにコリオを裏切うらぎったのか…？ コリオの被害ひがい妄想もうそうか…？
悲かなしみ。怒いかり。憎にくしみ。
木々きぎの間あいだにルーシー・グレイと思おもわれる人影ひとかげが横切よこぎり、コリオは咄嗟とっさに銃じゅうを…。

コリオは何故なぜ独裁どくさい者しゃになったか…？
ラストの声こえのみだが大統領だいとうりょうとなったスノーの台詞せりふ。
「人ひとを最もっとも夢中むちゅうにさせるものが、人ひとを壊こわす」
それが愛あいであり、それに裏切うらぎられた。
そのきっかけとも言いえる悲かなしいエピソードだが、安直あんちょくとまでは言いわないが、ルーシー・グレイとの関係かんけいで何なんとなく予想よそうは付つき、ちと深ふかみに欠かけ、ありきたりにも感かんじた。
前ぜんシリーズでスノーが何故なぜカットニスに固執こしつしたか…？
“マネシカケス”や“カットニス”というワード、この第だい12地区ちくでの出来事できごとは嫌いやでも思おもい出だし、重かさなる。ここら辺へんはニヤリとさせるリンク。
本ほん作さくも悪わるくはなかったけど、でもやはり前ぜんシリーズのカットニスのキャラ、演えんじたジェニファー・ローレンスの魅力みりょくは秀逸しゅういつなものだった。

恩赦おんしゃが与あたえられ、キャピトルに戻もどったコリオ。
だが彼かれは、もうかつての彼かれではなかった。
どちらかと言いうとハンガー・ゲームに否定ひてい的てきだったコリオ。が、再ふたたびゴール博士はかせにハンガー・ゲームの必要ひつよう性せいを問とわれ、説とく。
自身じしんにとって邪魔じゃまなある人物じんぶつを秘密裏ひみつりに殺害さつがい。
ラストシーン。勝利しょうりの女神めがみ像ぞうを見みつめるコリオ。
鳥とりの歌声うたごえを失うしない、歩あゆんで行いくは、蛇へびの道みち。
独裁どくさい者しゃへの座ざへまだ一いち歩ほ踏ふみ出だしたばかりで、ルーシー・グレイの生死せいしもあり、まだ語かたれる“ゲーム”はありそうだ。