7月1日に山開きが行われる富士山で26日、4人が心肺停止の状態で見つかり、その後死亡が確認された。今夏から入山料の徴収や事前予約制が導入される富士山だが、閉山期の登山にはどんな危険があるのか。関係各所に話を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
報道によると、26日、富士山8合目でプロクライマーの男性が登山中に意識を失い病院に搬送、その後死亡が確認された。また、静岡側の山頂の火口付近では登山者とみられる3人が遺体となって発見されており、警察は3人は別々の時期に入山した可能性もあるとして、身元の特定や死因を調べている。
今年の富士山の山開きは山梨側が7月1日、静岡側が7月10日で、今回の事故は閉山期間中に発生したものとみられている。
安全な富士登山を推進し、富士山の適正な利用を推進するために環境省と山梨・静岡両県で組織される「富士山における適正利用推進協議会」では、富士登山オフィシャルサイト上で「夏山以外の富士山~守るべき3つのルール~」と題したガイドラインを掲載。閉山期は気象条件が大きく異なり、山小屋などの施設すべてが閉鎖されていて救急体制が整っていないことから、万全な準備をしない登山者の登山を禁止している。一方で、「充分な技術・経験・知識としっかりとした装備・計画を持った者の登山は妨げるものではない」として、登山計画書の作成・提出、携帯トイレの持参などを呼びかけている。
富士山の開山期間はどのような背景や根拠をもとに設定されたものなのだろうか。環境省の担当者はENCOUNTの取材に、「昔から慣例的に設けられているもので、歴史的・文化的な背景や由来については分かりかねます。閉山期間は登山道にゲートや立て看板を設置し、通行止めである旨を掲示しています。ただ、登山は自己責任の部分もあり、登山自体の禁止はしていません」と回答。
山梨側・吉田ルートの登山道を管理する山梨県県土整備部道路管理課の担当者は、閉山期中の通行止め区間の扱いについて「道路法では、通行止めを破った場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されますが、これはあくまで道路上の通行に関する規定で、登山そのものを禁止しているわけではありません。山では登山道を外れての通行も可能であり、実際に運用されているかといえば難しい部分もあります」と実情を語る。
富士山では今夏から、4ルートのうち最も登山者が集中する山梨側の吉田ルートで、登山道使用料として1人あたり1回2000円を事前決済で徴収。以前から任意で実施している1000円の富士山保全協力金と加え、最大3000円の負担金が発生する。実質的な入山料の徴収や事前予約制の導入を巡っては、一部の関係者から「金を払いたくない登山者が閉山期に流れるのではないか、という懸念もあるにはある」と指摘する声も上がっている。