2002年ねんに16歳さいでデビューし、瞬またたく間まにブレイクしたグラドルがいた。山本やまもと早織さおり（やまもと・さおり）。バストの間あいだにあるホクロをチャームポイントとし、スタイルの良よさと愛あいらしい笑顔えがおで世よの男性だんせいたちを魅了みりょうした。だが、惜おしまれながら11年ねんに芸能げいのう界かいを引退いんたい。表おもて舞台ぶたいから姿すがたを消けした彼女かのじょは、どのような活動かつどうをしているのか。38歳さいになった山本やまもとさんの「今いま」を取材しゅざいした。（取材しゅざい・文ぶん＝白川しらかわちひろ）

　都内とないのカフェで対面たいめんした山本やまもとさんは、大人おとなの女性じょせいになっていた。抜群ばつぐんのスタイルは健在けんざいだが、グラドル時代じだいよりほっそりした印象いんしょうだ。

「最近さいきん、ミスコンに出場しゅつじょうしたので少すこし体たいを絞しぼったんですよ。グランプリにはなれなかったけど、トップ5に選えらばれました」

　表おもて舞台ぶたいから消きえて13年ねんがたつが、「美よし」への追求ついきゅうは継続けいぞくしているようだ。では、グラドル時代じだいはどんな思おもいで活動かつどうしていたのか。

「デビュー当時とうじは高校生こうこうせいで、バスケ部ぶにも入はいっていたので本当ほんとうに目めまぐるしい日々ひびでした。毎日まいにちのようにキャリーバッグをもって高校こうこうへ通かよい、1か月げつで13回かい飛行機ひこうきに乗のって全国ぜんこくを移動いどうし、撮影さつえいしたこともありました。その時ときは自分じぶんがどこにいて、何なんの雑誌ざっしの撮影さつえいなのかも、分わからなくなっていました。家いえに着つくのは夜よる11時じから0時じくらいで、毎日まいにち、クタクタでした」

　グラドルとして確固かっこたる地位ちいを築きずいていた。だが、10年ねん目めの11年ねんに芸能げいのう界かい引退いんたいに追おい込こまれてしまった。

「今いまでこそ、彼氏かれしがいることを公言こうげんしているタレントさんも多おおいですが、私わたしたちの時代じだいは恋愛れんあい禁止きんしでした。当時とうじの事務所じむしょは恋愛れんあいに厳きびしく、社長しゃちょうから『彼氏かれしはいるのか』と聞きかれると、『いないです』と答こたえていました。だけど、当時とうじは内緒ないしょでお付つき合あいしているサッカー選手せんしゅの彼氏かれしがいました。そして、デート中ちゅうを週刊しゅうかん誌しに撮とられてしまって……。社長しゃちょうはもう怒いかり心頭しんとうで、夜中よなかまで事務所じむしょに監禁かんきんされて、『契約けいやく違反いはんだから2000万まん円えん払はらって芸能げいのう界かいを辞やめるか、彼氏かれしと別わかれて今後こんご3年間ねんかん仕事しごとをするか選えらべ』と迫せまられたんです。それを断ことわると、『家いえを売うってでも金かねを用意よういしろ』『裏うら社会しゃかいを使つかっておまえの家いえを燃もやすぞ』と脅おどされて、目めの前まえが真まっ暗くらになりました」

　その後ご、社長しゃちょうからの嫌いやがらせはヒートアップ。毎晩まいばん、長文ちょうぶんの「キミを失うしないたくない」といったメールが送おくられ、実家じっかに押おしかけられたこともあったという。山本やまもとさんは体調たいちょうを崩くずし、「不安ふあん障害しょうがい」と診断しんだんされ、芸能げいのう界かいを引退いんたい。12年ねん12月には、社長しゃちょうから損害そんがい賠償ばいしょうを求もとめて提訴ていそされるに至いたった。

「その時とき、いろんな方ほうが『力ちからになるよ』と言いってくれて会あって話はなしてみたんですが、なぜか、全員ぜんいんが『事務所じむしょに戻もどるように』と説得せっとくしてきたんです。みんな、社長しゃちょうとつながっていたのかもしれませんし、周まわりが全員ぜんいん敵てきに見みえたので、非公開ひこうかいのSNSで愚痴ぐちっていたんです。そうしたら、社長しゃちょうがそれら全すべてプリントアウトして裁判所さいばんしょに提出ていしゅつしたんです。『体調たいちょう悪わるいのにこの日ひは飲のみに行いってる』『山本やまもとは仮病けびょうを使つかっている』と主張しゅちょうされ、2000万まん円えんの違約いやく金きんを請求せいきゅうされたんです。この時ときは『もう、体からだを売うってでもお金かねを作つくるしかない』と思おもうまで追おい詰つめられました。そんな時とき、たまたま知しり合あった社長しゃちょうさんに『これから借金しゃっきんまみれになるかもしれないし、体からだを売うるわ』と言いったら、『お前まえにそんな技術ぎじゅつあるの』と返かえされました。そして、『お金かねを稼かせぎたいなら』と銀座ぎんざのクラブを紹介しょうかいされました」

　山本やまもとさんはグラドル以外いがいの仕事しごとをしたことはなかったが、ホステス業ぎょうには向むいていたようだ。

「25歳さいまで外そとで働はたらいたことがなかったので、常識じょうしきがなかったんですよね。先輩せんぱいホステスさんから、『ドレスを着きてストッキングを履はいて来きて』と言いわれたので、家いえにあったパジャマのワンピースにトレンカとサンダルを履はいて行いったら、お店みせの方ほうに『それじゃ、ダメだ』と怒おこられちゃいました。だけど、お客きゃくさまからはそんな初々ういういしさがウケたのか、たくさんシャンパンを入いれていただきました。そして、入いれ店てん3か月げつでNo.1になりました。実じつはグラビア時代じだい、お給料きゅうりょうを月つき10万まん円えん以上いじょうもらったことがなかったんです。だから、やればやっただけ稼かせげることはうれしかったです。最高さいこう月収げっしゅうは100万まん円えんくらいで、トータルで3年ねんほどホステスとして働はたらきました」

　だが、稼かせぎの大半たいはんは弁護士べんごし費用ひようで消きえたという。結果けっか的てきに裁判さいばんは1審しん、2審しんともに勝訴しょうそ。相手あいて側がわが33万まん円えんを支払しはらうことになり、山本やまもとが会社かいしゃの銀行ぎんこう口座こうざを差さし押おさえたところ、残高ざんだかは8万まん円えんだったという。そんな苦難くなんを乗のり越こえてきた山本やまもとさんは今いま、何なにをしているのだろうか。

「ホステスをしながらフラワーアレンジメント教室きょうしつの先生せんせいをしていた時とき、生徒せいとさんから恋愛れんあい相談そうだんをされることが多おおかったんです。グラドル時代じだい、どうしたら男性だんせいに喜よろこばれるかを常つねに考かんがえていたので、合ごうコンでのモテテクなども教おしえていたら、『先生せんせい、これ仕事しごとにしなよ』と言いわれました。自分じぶんでは『こんなのが仕事しごとになるのかな』と思おもったのですが、そのタイミングで占うらない師しさんに『結婚けっこん相談そうだん所しょをやったら面白おもしろいんじゃないですか』と言いわれたことで、2016年ねんに結婚けっこん相談そうだん所しょを立たち上あげました」

　文字通もじどおりの一念いちねん発起ほっきだが、事業じぎょうはすぐに軌道きどうに乗のったのだろうか。

「それが全まったくでした。会社かいしゃさえ設立せつりつすれば、お客きゃくさまは勝手かってに来きてくれると思おもったのが大だい間違まちがいでした。待まっていてもお客きゃくさまは1人ひとりも来こなくて、ホステスの仕事しごとも辞やめてしまったので、収入しゅうにゅうはゼロになりました。国くにから500万まん円えんを借かりていたのですが、無知むちだったので100万まん円えんかけてホームページを作つくったり、都内とないに事務所じむしょを借かりたりしていたら、あっという間まに500万まん円えんがなくなりました。『このままじゃ、まずい』と思おもって、自分じぶんで一いちからブログを立たち上あげて集客しゅうきゃくを頑張がんばったら、グラドル時代じだいを知しっているお客きゃくさまが来きてくださいました。『美人びじんと付つき合あう方法ほうほう』というコンサルチケットをネットで販売はんばいしたところ、トータルで120枚まい以上いじょう売うれたこともありました。ですが、営業えいぎょうというものを知しらなかった私わたしは、そこからお客きゃくさまを結婚けっこん相談そうだん所しょに勧誘かんゆうすることはできず、会員かいいんさまはゼロでした。その後ご、選択せんたく理論りろん心理しんり学がくを学まなんで目めの前まえのお客きゃくさまの悩なやみを全力ぜんりょくで解決かいけつしていったところ、お客きゃくさまが少すこしずつ増ふえていきました」

　経営けいえい者しゃとしての才覚さいかくを発揮はっきした山本やまもとさんは、エステ事業じぎょうや女性じょせい起業きぎょう家かへの起業きぎょうサポート、セミナー講師こうしも手掛てがけるようになった。実業じつぎょう家かとしてサクセスの道みちを歩あゆむ中なか、経営けいえいする会社かいしゃの総そう年商ねんしょうを聞きくと、少すこし考かんがえて返答へんとうした。

「6000万まん円えんくらいですね。女性じょせいの起業きぎょうサポートの会社かいしゃの売上うりあげが一番いちばん大おおきいです。これからはさらに女性じょせいの社長しゃちょうを増ふやしたいので、私わたしの持もってる知識ちしきを全すべて教おしえて、起業きぎょうしたい女性じょせいをたくさん育そだてていきたいです」

　グラドルからホステスを経へて実業じつぎょう家かに転身てんしんした38歳さい。さまざまな経験けいけんを生いかし、関かかわった女性じょせいたちを幸しあわせにするつもりだ。

□山本やまもと早織さおり（やまもと・さおり）1985年ねん11月16日にち、東京とうきょう・葛飾かつしか区く生うまれ。16歳さいでスカウトされ、芸能げいのう界かいデビュー。数々かずかずのグラビア誌面しめんを飾かざるも、2011年ねんに所属しょぞく事務所じむしょ社長しゃちょうからの脅迫きょうはくが原因げんいんで体調たいちょうを崩くずし、芸能げいのう界かいを引退いんたい。現在げんざいは結婚けっこん相談そうだん所しょのなどを経営けいえいしている他ほか、恋愛れんあいコラムニスト、セミナー講師こうしとしても活動かつどう。YouTube、TikTokでは「モテるための恋愛れんあいテクニック」を配信はいしん中ちゅう。資格しかくはJPSA日本にっぽんプロスピーカー協会きょうかいベーシックプロスピーカー。165センチ。血液けつえき型がたA。