気付いたら芸能生活15年目に入っていた。負けず嫌いで、一つひとつの壁を乗り越え、今では「一生、この仕事をしたい」と言い切れる。俳優・石井杏奈。26歳になった彼女は、初のスタイルブック『AN』(宝島社)が今月22日に発売されることを「感慨深い」と言い、ENCOUNTに自身の現在、過去、未来を語った。(取材・文=柳田通斉)
記者は10年前の春、15歳だった石井をインタビューしている。俳優として輝き始め、数々のCMにも出演。ガールズグループ・E-girlsの年少メンバーとしても注目された頃だった。時を経て大人の女性になった石井は、これまでを振り返って言った。
「あっという間でした。山あり谷ありでしたが、どんどん前に進んでいたら、いろいろと乗り越えていました」
ダンスが好きだった小学5年の時、所属事務所・LDHにスカウトされてEXPG(LDHが運営するスクール)でレッスンを受け、そのスキルを磨き始めた。中学生になると、周囲に勧められてドラマ、映画、CMのオーディションを受けるようになった。だが、当初は落選の連続だったという。
「会場に行くと周りは高校生ばかりでした。圧倒されて『スタイルが良くてきれいな人ばかりだし、かなわないよ』と言ったら、母が『オーディションは受かったらラッキーぐらいでいいよ』と言ってくれたのを覚えています」
そんなある日、「また、落ちたかな」と思って就寝しようとした時、母親の携帯電話が鳴った。マネジャーから「有名飲料水のCM出演決定」の知らせだった。
「信じられませんでしたし、家族みんなで大興奮でした。そして、現場でお芝居をさせていただき、心から『楽しい』と思えました」
CMで見せた透明感のある表情と演技が話題になり、続々と出演依頼が届くようになった。同じタイミングでE-girls入りが決定。中学3年にして多忙な日々が始まった。
「俳優の仕事と重なってファーストツアーに出られなかったり、テレビ収録を欠席したこともありました。ただ、私が集中できる環境を周りの方々が作ってくださったお陰で乗り切れていました。一人ではできなかったことでしたが、自分の体力に限界がないことも実感しました(笑)。あの状況を10代で経験できたことは大きかったです」
E-girlsが2020年末に解散した後は俳優業に専念。数々のドラマ、映画、舞台に出演している。
「最初の頃は泣きの芝居に苦労しました。涙を流すことばかり考えていたからだと思いますが、『伝えることに一生懸命になった方がいいよ』とアドバイスされてからは、構えずにできるようになりました。ただ、私の場合は自分が役に入るというより、自分の中に役が入っていく感じです。時に『何だ。この感覚は』とも思ったりしますが、お芝居は奥が深いですし、何にも染まりたくはない思いもあります。役によって、容姿、髪形、髪色、体形も含めて全部変えていきたいですし、『あの役と同じ人がこの役をやっているの』と言われたいです。カメレオン俳優ですね。そのためには、自分を主張し過ぎないことが大事だと思っています」
一方で、俳優としてのステップアップを目指し、NHK連続テレビ小説や大河ドラマのオーディションなどを受けている。同世代の俳優が出演していれば、作品をチェックして刺激を受けている。
「自分でも負けず嫌いだと思います。ただ、私が負けたくない女優さんは素晴らしい方ばかりなので、本人に『とてもすてきだったよ』って連絡します。ライバルだけど応援していますから」
俳優としては「個」の主張を抑えてはいるが、初のスタイルブックについて「感慨深いです」と表現した。
「20代のうちに自分の人生をつづったものを作りたいとは思っていたので、実現できてうれしいです。ビジュアルカットだけでなく、私服、私物、愛犬などの撮影もしました。読者の方々が『これは取り入れたい』『こういうマインドで生きてみたい』と思ってもらいたいので、『人生が豊かになる材料』を詰め込みました。『こんなコーディネートもあるよ』『私の好きな服はこれですけど、好きなアイテムがあったらおそろいにしましょう』という感じです」