2Dシューティングゲーム『Aces of the Luftwaffe – Squadron』に見みる、国内外こくないがいプレイヤーのニーズ

古今ここん東西とうざい遊あそばれているゲームジャンルの一ひとつに、2Dシューティングは間違まちがいなく指折ゆびおりの人気にんきを誇ほこりますが、実じつは蓋ぶたを開あけてみると国内外こくないがいでは事情じじょうが異ことなっている様子ようすが窺うかがえます。

 

→一番いちばん最初さいしょのFPSタイトルを知しってますか？【ゲームジャンル研究けんきゅう部ぶ 第だい2回かい】

 

『Aces of the Luftwaffe – Squadron』公式こうしきサイトはこちら

https://www.wkb.jp/wp/aces

 

ヨーロッパ産さんの2Dシューティング『Aces of the Luftwaffe – Squadron』

ドイツ発はつのシューティングゲーム『Aces of the Luftwaffe – Squadron（エース・オブ・ルフトバッフェ – スクアドロン）』は、王道おうどうシューティングのシステムを取とり入いれた作品さくひんです。

 

動画どうが：https://www.youtube.com/watch?v=5_fmN9lFlOg
※メーカー・HandyGamesより公開こうかいされているトレーラー。

 

実際じっさいの機体きたいを元もとにした2Dシューター

本ほん作品さくひんは、名前なまえの由来ゆらいがかつてのドイツ空軍くうぐんとなっていることからもわかるように、実際じっさいの戦闘せんとう機きをモチーフにした機体きたいを操作そうさできる硬派こうはな2Dシューティングとなっています*1。

ゲームの舞台ぶたいはアメリカで、日本にっぽんの2Dシューティングに多おおいファンタジックなキャラクターや舞台ぶたい設定せってい、シナリオとは異ことなります。

 

現実げんじつの街まちの空そらをベースにしたドッグファイトを、2Dによって写実しゃじつ的てきに描えがこうという意識いしきが強つよく、敵てきの戦闘せんとう機きにも無骨ぶこつなデザインのものが目立めだちます。

 

独特どくとくの操作性そうさせいわるやパワフルな自じ機きが特徴とくちょう

本ほん作さくでは、自じ機きの操作性そうさせいわるやステータスに、「定番ていばん」のあり方かたについて差異さいが見受みうけられます。

 

操作そうさはスティックアイコンをタップして操作そうさするのではなく、指ゆびが置おいたところに自じ機きがやってくるというシステムを採用さいようしています。

従来じゅうらいのゲームでは定番ていばんだったスティック操作そうさを排除はいじょすることで、ユニークさを開拓かいたくしていこうという気概きがいが見みて取とれる部分ぶぶんでしょう。

 

また、プレイヤーが実際じっさいに操作そうさする自じ機きが、非常ひじょうにタフなステータスを有ゆうしている点てんも特徴とくちょうです。

一般いっぱん的てきな和製わせいシューティングゲームの場合ばあい、自じ機きの体力たいりょくは1に限定げんていされています。

一いち回かいでもダメージを受うけるとリセットされるか、残ざん機きを使つかい切きればゲームオーバーとなり、初はじめからやり直なおす必要ひつようが出でてしまいます。

一方いっぽう、本ほん作さくの機体きたいは何なん度どかダメージを受うけなければ破壊はかいされることはなく、初心者しょしんしゃにも優やさしい設計せっけいになっています。

但ただしその分ぶん、緊張きんちょう感かんが失うしなわれているということもできるでしょう。

 

日本にっぽん製せい2Dシューティングとの決定的けっていてきな違ちがい

そんな『Aces of the Luftwaffe 』は、日本にっぽん製せいの2Dシューティングに慣なれた人ひとたちにとって、いささか違和感いわかんを覚おぼえるようです。

 

ワンミスが命取いのちとりの和製わせいシューティング

日本にっぽんのシューティングゲームとこの作品さくひんとの決定的けっていてきな違ちがいは、やはり一ひとつのミスも許ゆるされない環境かんきょうがあるかないかというところにあるでしょう。

 

大人気だいにんきシューティングの「東方とうほうProject」シリーズにも見みられるように、多おおく和製わせいシューティングゲームのキモは、プレイヤーの弾幕だんまく回避かいひスキルを試ためしているところにあります。

2Dシューティングにおける攻撃こうげきの概念がいねんには限界げんかいがあり、どれだけ長ながく生いきていられるかが、ゲームにおけるスキル発揮はっきの見みせ場ばとなっています。

激はげしい銃弾じゅうだんの雨あめあられの中なかを鮮あざやかに避さけながら、的確てきかくに攻撃こうげきを加くわえていくという技術ぎじゅつです。

 

一方いっぽう、『Aces of the Luftwaffe』の場合ばあいは、事情じじょうが少すこし異ことなります。

自じ機きの体力たいりょくがそれなりにある以上いじょう、多少たしょうのミスはその後ごの活躍かつやくでいくらでも挽回ばんかいすることができるため、回避かいひスキルはそこまで求もとめられないのです。

 

「華麗かれいさ」を重視じゅうしする日本にっぽんのシューティングゲーム

前述ぜんじゅつした点てんを考かんがえると、日本にっぽんのシューティングゲームはいかなる恐おそろしい攻撃こうげきもするりとかわす「華麗かれいさ」を重視じゅうししていると言いえるでしょう。

 

まるでイライラ棒ぼうのように、開発かいはつ者しゃが用意よういした攻撃こうげきの穴あなを試行しこう錯誤さくごしながら見出みいだしていき、それでいて効率こうりつ的てきに敵てき機きに攻撃こうげきを加くわえるという考かんがえ方かたです。

繊細せんさいな指ゆび遣づかいの美うつくしさを、日本にっぽんのシューティングでは求もとめられているのです。

 

国内外こくないがいで異ことなるシューティングゲームのニーズ

国内外こくないがいで異ことなる2Dシューティングのゲームシステムですが、それぞれの設計せっけいにはどのような意匠いしょうが込こめられているのでしょうか。

 

欧米おうべいシューティングは無骨ぶこつな爽快そうかい感かん

華麗かれいさを重視じゅうししている日本にっぽんのシューティングゲームとは対照たいしょう的てきに、『Aces of the Luftwaffe』のようなゲームは、射撃しゃげきそのものの楽たのしさを追求ついきゅうしていると言いえそうです。

 

自じ機きが高たかい体力たいりょくを持もち、少々しょうしょうの攻撃こうげきでは撃墜げきついされないという頑強がんきょうさを備そなえているのは、その分ぶん長ながい間あいだ敵てき機きを撃墜げきついできるチャンスを有ゆうしていることになります。

つまり、回避かいひの楽たのしさ・美うつくしさよりも、シューティングに重おもきを置おいた設定せっていということです。

 

ここに、欧米おうべいプレイヤーと日本にっぽんのプレイヤーにおけるニーズの違ちがいを見みることもできるでしょう。

欧米おうべいではとにかくシューティングから爽快そうかい感かんを得えたいのに対たいし、日本にっぽんでは針はりの穴あなを通とおすような道中どうちゅうが険けわしく、クリアの喜よろこびの大おおきい作品さくひんを好このんでいるのです。

 

これは決けっしてどちらが優すぐれているといった優劣ゆうれつの話はなしではなく、国くにや地域ちいき、あるいは個人こじんの趣味しゅみによって、2Dシューティングに求もとめられるニーズが異ことなるという話はなしです。

 

日本にっぽん製せいシューティングは映像えいぞうの美うつくしさ

もう一ひとつ和製わせいシューティングゲームが追おい求もとめているプレイングのあり方かたを見出みいだすとすれば、それはグラフィックの美うつくしさが挙あげられるでしょう。

 

『Aces of the Luftwaffe』では確たしかにおびただしい数かずの敵てき機きが、猛烈もうれつな銃弾じゅうだんの嵐あらしを自じ機きに向むかって放はなってきます。

しかし、これはあくまで自じ機きを撃墜げきついしようとして放はなっているだけの砲撃ほうげきであって、それらが画面がめんの向むこうにいるプレイヤーを喜よろこばせようという気概きがいを有ゆうしているかは怪あやしいところです。

 

一方いっぽう、和製わせいシューティングがたどり着つこうとしているのは、弾幕だんまくによって自じ機きを撃墜げきついせんとするだけでなく、ビジュアルの美うつくしさの追求ついきゅうです。

色いろとりどりの光線こうせんが上うえから下したへ流ながれていく様子ようすや、ボスキャラから放はなたれる放射状ほうしゃじょうのレーザーなど、恐おそろしくも美うつくしい姿すがたであると見惚みほれてしまう姿すがたでさえあります。

一いち回かいでも被弾ひだんすれば撃墜げきついされてしまう緊張きんちょう感かんが、そのような美うつくしい光景こうけいから繰くり出だされるというバランス感覚かんかくにこそ、日本にっぽん製せいシューティングゲームの魅力みりょくがあるのでしょう。

 

それはもはやシューティングゲームというよりも、シューティングゲームというフレームワークを拝借はいしゃくした、ビジュアルアートであるということもできるかもしれません。

 

欧米おうべいのシューティングゲームと日本にっぽんのシューティングゲームにおいては、このような差さが存在そんざいしていることに注目ちゅうもくすると、各かく作品さくひんの見みえ方かたも変かわってくるのではないでしょうか。

 

おわりに

 

『Aces of the Luftwaffe』も「東方とうほうProject」シリーズも、同おなじシューティングゲームではありますが、プレイヤーのニーズに着目ちゃくもくしてみると、ここまで作風さくふうは変かわってくるものです。

 

自身じしんの作つくりたいゲームがどのようなプレイヤーに向むけて作つくられるのかというところを考かんがえてみると、クリエイティブの幅はばも広ひろがり、アイデアを具体ぐたい化かさせやすくなっていくのではないでしょうか。

 

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→人気にんきシューティングの『たわし』から学まなぶ、「本物ほんもの」のゲームの作つくり方かた

 

*1 ゲームキャスト「欧米おうべい人じんが言いうところの日本にっぽん的てきシューティングだが日本人にっぽんじんには違和感いわかんしかない欧米おうべい縦たてシュー『Aces of the Luftwaffe – Squadron』レビュー」

http://www.gamecast-blog.com/archives/65960887.html

 

ライター名めい：Satoru Yoshimura

プロフィール：ライター。20年ねん以上いじょうの付つき合あいがあるビデオゲームとアメリカ音楽おんがくをテーマとした活動かつどうが中心ちゅうしん。「日本にっぽんのゲーム音楽おんがくがヒップホップに与あたえた影響えいきょう」などブログで公開こうかい中ちゅう。

 

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