【マツダ CX-60 新型しんがた試乗しじょう】“硬かたさ”はどうだ？ 600km走はしって実感じっかんした新しんプラットフォームの恩恵おんけい…西村にしむら直人なおと

2022年ねん夏なつに参加さんかしたマツダ『CX-60』メディア試乗しじょう会かい（箱根はこね周辺しゅうへん）に続つづき、改あらためて600kmほど試乗しじょうした。

試乗しじょうグレードは「XD-HYBRID Premium Modern」（547万まん2500円えん）。駆動くどう方式ほうしきはAWD。直列ちょくれつ6気筒きとう3.3リットルディーゼルターボ（254ps／550Nm）に48V駆動くどうの電動でんどうモーター（16.3ps／153Nm）をもつマイルドハイブリッドシステムを組くみ合あわせた。トランスミッションは2クラッチ方式ほうしきを採用さいようした内うち製せい8速そくATだ。

エンジン、トランスミッション、そしてFRベースのプラットフォームと新規しんき開発かいはつ尽つくしのCX-60。マツダが社運しゃうんをかけたことから国内外こくないがいから注目ちゅうもくされる。そして実車じっしゃが披露ひろうされると、高たかい質感しつかんと存在そんざい感かんあふれる内外ないがいデザインが高たかく評価ひょうかされた。

しかし、いざオーナーの手てに渡わたりはじめると走行そうこう性せい能面のうめんで評価ひょうかが分わかれた。「走はしりはいいが、乗のり心地ごこちが硬かたい……」というコメントが目めに付つくようになる。

◆“硬かたさ”は“渋しぶさ”？ 走行そうこう性能せいのうの評価ひょうかを分わけた乗のり心地ごこち
550Nm（56.1kgf・m）の大だいトルクによる圧倒的あっとうてきな加速かそく性能せいのうと高たかい静粛せいしゅく性せい、そしてコンパクトクラスSUV『CX-3』を軽々かるがると上回うわまわる実じつ走行そうこうでの燃費ねんぴ数値すうちには素直すなおに驚おどろく。今回こんかい、筆者ひっしゃが走破そうはした約やく600kmのうち400km程度ていどは高速こうそく道路どうろだったが、ACC機能きのう（アダプティブ・クルーズ・コントロール）と車線しゃせん中央ちゅうおう維持いじ機能きのう（マツダではCTSと呼よぶ）の運転うんてん支援しえん技術ぎじゅつ（SAEレベル2相当そうとう）を使つかい法定ほうてい速度そくどで淡々たんたんと走はしらせると25～27km/リットル台だいだった（車載しゃさいの燃費ねんぴ数値すうち計けいによる区間くかん燃費ねんぴ）。

前述ぜんじゅつの通とおり、走行そうこう性能せいのうの評価ひょうかを分わけたのは乗のり心地ごこちだ。足あしまわりの硬かたさを感かんじる場面ばめんがあるからだ。凹凸おうとつの少すくない路面ろめんであれば車体しゃたいはビシッと安定あんていし、不快ふかいな振動しんどうをほとんど身体しんたいに伝つたえない。これは発売はつばい前まえのプロトタイプを試乗しじょうしたときから変かわっていない美点びてんだ。

それが路面ろめん状況じょうきょうが悪わるくなると一転いってんする。凹凸おうとつに応おうじて身体しんたいが上下じょうげ（鉛直えんちょく方向ほうこう）に細こまかく揺ゆさぶられる。筆者ひっしゃはさらに、特定とくてい条件下じょうけんかでフワフワと振幅しんぷくが収おさまらなくなる状況じょうきょうも幾度いくどとなく確認かくにんした。振幅しんぷくは小ちいさいが、一度いちど上下じょうげに動うごきはじめると数すう秒間びょうかんはその状態じょうたいが続つづく、そんなイメージだ。

もちろんスプリングとダンパーでいなしているので大だい部分ぶぶんの不快ふかい成分せいぶんは取とり除のぞかれている。しかし、特定とくてい形状けいじょうの凹凸おうとつ路面ろめんを特定とくていの速度そくど域いきで通過つうかすると、減衰げんすいしきれずダイレクトな動うごきを身体しんたいに伝つたえてしまうのだ。高速こうそく道路どうろで多用たようする80～100km/hあたりの速度そくど域いきで発生はっせいするから余計よけいに気きになる。

じつは、車両しゃりょうクラスやサスペンション形式けいしきが異ことなる『マツダ3』や『CX-30』登場とうじょう時じにも同おなじ傾向けいこうが見みられたが、年次ねんじ改良かいりょうで大おおきく改善かいぜんし今いまではほとんど気きにならない。となると、“硬かたさ”は“渋しぶさ”であり、マツダの目指めざす理想りそう形がたに近ちかづくための登竜門とうりゅうもんなのか……。

◆『CX-5』より小ちいさなSUVを運転うんてんしているような感覚かんかく
こうした経緯けいいを踏ふまえCX-60での事象じしょうを開発かいはつ陣じんにズバリ伺うかがってみた。

「特定とくてい条件じょうけんでの症状しょうじょうは我々われわれも把握はあくしています。CX-60ではリヤサスペンションにおけるアーム締結ていけつ部分ぶぶんの一部いちぶにピロボール（硬質こうしつ樹脂じゅしで圧着あっちゃく）を用もちいていますが、それは原因げんいんではないと考かんがえています」。こう話はなすのはCX-60の開発かいはつ担当たんとう者しゃの一人ひとりだ。

では、硬かたさや浮遊ふゆう感かんがはどこからくるのか？　別べつの開発かいはつ担当たんとう者しゃは、「特定とくてい領域りょういきにおけるダンパーのピストンスピードが車体しゃたいにマッチしていないため、あるきっかけからそれが増幅ぞうふくしてしまうのではないか……」との推論すいろんをたてている。氏しは続つづけて「タイヤ銘柄めいがらを変更へんこうし、いわゆる縦たてバネを柔軟じゅうなんにする方法ほうほうもありますが、それは根本こんぽん的てきな解決かいけつ策さくではありません」と持論じろんを解説かいせつする。

2022年ねん12月がつ現在げんざい、CX-60の開発かいはつチームは早速さっそく、特定とくてい領域りょういきにおける乗のり心地ごこちの改善かいぜん策さくを練ねっているという。高こう剛性ごうせい20インチホイールの特性とくせい変更へんこうやシート内部ないぶ構造こうぞうの見直みなおしまで視野しやにいれているというから、この先さきの展開てんかいに期待きたいしたい。

ただ、CX-60の名誉めいよのために記しるせば、筆者ひっしゃが長距離ちょうきょり試乗しじょうで乗のり心地ごこちの硬かたさを感かんじた時間じかんがごくわずか。600km走はしらせた合計ごうけい時間じかんのなかで示しめせば数すう十じゅう秒びょうの世界せかいだ。

そうしたマイナス面めんよりも、新しん開発かいはつプラットフォームによる正確せいかくなライントレース性せいや、最小さいしょう回転かいてん半径はんけい5.4mという取とり回まわしの良よさから、幾度いくどとなく運転うんてんのしやすさを実感じっかんできた。この恩恵おんけいのほうが何なん十じゅう倍ばいも大おおきい。

カーブでは1940kg（試乗しじょう車しゃの車両しゃりょう重量じゅうりょう）を感かんじさせない一体いったい感かんあふれる走はしりにも感銘かんめいを受うけた。それはベストセラーである『CX-5』よりも小ちいさなSUVを運転うんてんしているかのような感覚かんかくだ。また、今回こんかいのように長距離ちょうきょりで長時間ちょうじかんとなる運転うんてん操作そうさでは、視界しかいの広ひろさと、少すくない死角しかくにも助たすけられた。

◆マツダ独自どくじの哲学てつがくが盛もり込こまれたHMIの進化しんか
独自どくじの哲学てつがくで構成こうせいされた車内しゃないHMI（ヒューマン・マシン・インターフェース）はCX-60でさらに昇華しょうかした。たとえばACCを起動きどうさせると機能きのう説明せつめいが中心ちゅうしんとなるディスプレイ表示ひょうじに画面がめん全体ぜんたいがモード変更へんこうされるから、システムが何なにを検知けんちし、ドライバーは何なにを注視ちゅうしすべきか、この線引せんひきが直感ちょっかん的てきにわかりやすい。

物理ぶつりスイッチも機能きのう的てきだ。ブラインドタッチすべきとマツダが考かんがえるスイッチ類るいは配置はいちをとことん考かんがえ、形状けいじょうにも工夫くふうを凝こらした。なにより素晴すばらしいのは、見みる者ものをハッとさせるモダンな空間くうかんを保たもったまま、人間にんげん工学こうがく上じょう、負担ふたんなく操作そうさできる環境かんきょうを作つくり上あげたことだ。

加くわえて、「自動じどうドライビングポジションガイド」による理想りそう的てきな運転うんてん姿勢しせいへの提案ていあん（筆者ひっしゃには、座ざ面めんが前下まえさがりで背せもたれが立たち過すぎに感かんじたが……）や、「ドライバー異常いじょう時じ対応たいおうシステム（DEA／Driver Emergency Assist）」（いずれDEA2.0へ機能きのう強化きょうかも可能かのう）など、事故死じこし者しゃゼロ社会しゃかいを見据みすえた安全あんぜん思想しそうにもマツダの良心りょうしんを感かんじる。

◆PHEVに素もとのディーゼル＆ガソリンも、味付あじつけが楽たのしみだ
この先さき、販売はんばいがスタートするパワートレーンの味付あじつけも楽たのしみだ。直列ちょくれつ2.5リットル4気筒きとうガソリンに175ps／270Nmの走行そうこう用ようモーター＆17.8kWhの二に次じバッテリーを組くみ合あわせたPHEVモデル、マイルドハイブリッドシステムをもたない素もとの6気筒きとう3.3リットルディーゼルモデル、素もとの2.5リットルガソリンとバリエーションは多岐たきにわたる。

PHEVのプロトタイプを試乗しじょうした限かぎりでいえば、ディーゼルハイブリッドにはない電動でんどう駆動くどうモーターの力強ちからづよさが印象いんしょう的てき。個人こじん的てきには、299万まん2000円えんのベーシックモデルである素もとの2.5リットル（後こう輪わ駆動くどう）にも惹ひかれるものがある。

■5つ星ほし評価ひょうか
パッケージング：★★★
インテリア/居住きょじゅう性せい：★★★★
パワーソース：★★★★★
フットワーク：★★★
オススメ度ど：★★★★

西村にしむら直人なおと｜交通こうつうコメンテーター
クルマとバイク、ふたつの社会しゃかいの架かけ橋はしとなることを目指めざす。専門せんもん分野ぶんやはパーソナルモビリティだが、広ひろい視野しやをもつためにWRカーやF1、さらには2輪りん界かいのF1と言いわれるMotoGPマシンでのサーキット走行そうこうをこなしつつ、4＆2輪りんの草くさレースにも精力せいりょく的てきに参戦さんせん中ちゅう。また、大型おおがたトラックやバス、トレーラーの公道こうどう試乗しじょうも積極せっきょく的てきに行おこなうほか、ハイブリッド路線ろせんバスやハイブリッド電車でんしゃなど、物流ぶつりゅうや環境かんきょうに関かんする取材しゅざいを多数たすう担当たんとう。国土こくど交通こうつう省しょう「スマートウェイ検討けんとう委員いいん会かい」、警察庁けいさつちょう「UTMS懇談こんだん会かい」に出席しゅっせきしたほか、東京とうきょう都と交通こうつう局きょくのバスモニター役やくも務つとめた。大型おおがた第だい二に種しゅ免許めんきょ/けん引いん免許めんきょ/大型おおがた二に輪りん免許めんきょ、2級きゅう小型こがた船舶せんぱく免許めんきょ所有しょゆう。日本にっぽん自動車じどうしゃジャーナリスト協会きょうかい（A.J.A.J）理事りじ。2015-2016日本にっぽんカー・オブ・ザ・イヤー選考せんこう委員いいん。（財）ざいだんほうじん全日本ぜんにほん交通こうつう安全あんぜん協会きょうかい・東京とうきょう二に輪りん車しゃ安全あんぜん運転うんてん推進すいしん委員いいん会かい指導しどう員いん。日本にっぽんイラストレーション協会きょうかい（JILLA）監事かんじ。