【ホンダ ZR-V 新型しんがた試乗しじょう】「超ちょう優等生ゆうとうせい！」世よの中なかSUVに支配しはいされるわけだ…中村なかむら孝仁たかひと

写真しゃしんで見みるホンダ『ZR-V』はとてもコンパクトに見みえる。しかし実際じっさいには3サイズ全長ぜんちょう4570×全幅ぜんはば1840×全高ぜんこう1620mmと意外いがいなほど大おおきい。考かんがえてみればベースとなるモデルが『シビック』だというから、このサイズになる必然ひつぜん性せいもある。なんとなく『ヴェゼル』に近ちかい印象いんしょうを抱だいていたから、実際じっさいに目まの当あたりにするとだいぶ大おおきく感かんじられた。

外観がいかんの印象いんしょうは正直しょうじき「ホンダらしくない」もの。悪わるいというわけじゃなくて従来じゅうらいのホンダデザインとは異ことなるということだ。特とくにそれを感かんじたのがフロントグリルである。まあ似にてる論議ろんぎはあまりしたくないところだが、見みているとどうしてもトヨタの『RAV4』とか『ヤリスクロス』に見みえてしまう。それが個人こじん的てきに「ホンダらしくない」に繋つながった。

今回こんかい借かり出だしたのは「e：HEV Z AWD」というZR-Vの中なかでは最上級さいじょうきゅうグレードのモデル。e：HEV、つまりハイブリッドシステムはこれもシビックと同おなじものが採用さいようされているという。

◆まさに超ちょう優等生ゆうとうせいの走はしり
例れいによって青山あおやまのホンダ本社ほんしゃからクルマを借かり出だして国道こくどう246号ごうの雑踏ざっとうに走はしり出だしてみた。インパネの印象いんしょうなどはほぼシビックの生いき写うつし。ハニカムデザインのインパネはシビックで見みた時ときから新鮮しんせんでアイデアものだと思おもった。

それにしても走はしりは見事みごとなほどスムーズである。ホンダは長年ながねんCVTを自製じせいしているが、かつてのCVTと違ちがって今こんホンダが用もちいているCVTはステップATとほぼ同等どうとうの走はしりをしてくれる。というかむしろこちらの方ほうがスムーズである。

2リットルエンジンと2モーター内臓ないぞうCVTを持もつパワートレーンも基本きほんシビックと同おなじもので、シビックに乗のった時ときもそのスムーズな発進はっしんからアクセルの踏ふみ込こみに応おうじて自在じざいの加速かそく性能せいのうを見みせてくれるあたり、正直しょうじき文句もんくのつけようがない。まさに超ちょう優等生ゆうとうせいの走はしりを見みせつけられるのである。

◆世よの中なかSUVに支配しはいされるわけだ
こうなってくると見晴みはらしがよいSUVの強つよみが俄然がぜん生いきてくる。

都会とかいのジャングルを走はしる限かぎりは断然だんぜんこちらの方ほうが良よい。シビックは都会とかいの雑踏ざっとうを離はなれて、ワインディングなどに持もち込こんだ時ときその真価しんかを発揮はっきしてくれるが、やはり普段ふだん使づかいとなると、乗降じょうこう性せいも良よく気軽きがるに荷物にもつも積つめるZR-Vが使つかい勝手がってが良よい。これに乗のるまではシビックが万能ばんのう選手せんしゅだと思おもっていたが、今度こんどはこいつが万能ばんのう選手せんしゅだ。世よの中なかSUVに支配しはいされるわけだとつくづく思おもう。

乗のっていて気きに入いったのはセンターコンソールの作つくりである。全体ぜんたいをソフトな本ほん革かわ風ふうの素材そざいで覆おおい、シェイプも全体ぜんたい的てきにソフトなラウンドシェイプとされ、上うえから見みると後方こうほうに行いくにしたがってくびれのある絞しぼり込こんだデザインとされているところ。見みた目めにも美うつくしいし、何なにより触ざわり心地ごこちがとても良よい。

◆超ちょう優等生ゆうとうせいの“泣なき”の部分ぶぶんは…
とまあ、本当ほんとうに良よいことづくめだから、超ちょう優等生ゆうとうせいであるわけだが、全まったくネガな部分ぶぶんがないわけではない。最さいたるものは何故なぜホンダがこのデザインに拘かかわるのかわからないのが、トランスミッションの変速へんそく機構きこうである。パーキングのP、ドライブのD、それにニュートラルのNはいずれも押おしボタン式しき。ところがリバースのRだけはスライドスイッチで、まずいことにRに入いれるには手前てまえに引ひいて入いれる。近年きんねん多おおくのメーカーがこのスライドスイッチをトランスミッションに採用さいようしているが、引ひいて操作そうさするときはDに入はいり、押おして操作そうさするときにRに入はいる。このため、今回こんかいも何なん度どか間違まちがいそうになった。

もう一ひとつはナビのディスプレイがドライバーに近ちかく、真正面ましょうめんを向むいていること。真正面ましょうめんを向むいていること自体じたいはパッセンジャーも読よみやすくしようという意図いとがあると思おもうが、ナビのディスプレイが近ちかいのは正直しょうじき高齢こうれい者しゃ向むきではない。これは遠近えんきん両用りょうようメガネをかけている場合ばあい、視線しせんの移動いどうだけだと画像がぞうがゆがんで見み難がたくなるためだ。大だい企業きぎょうは基本きほん60歳さい定年ていねん。こうしたクルマの内装ないそうデザインなどは若わかい人々ひとびとがやっているのだと思おもうけれど、そのクルマに乗のるユーザーの中なかには60歳さいを過すぎた高齢こうれい者しゃも多おおいはず。だからそんな視点してんが欠落けつらくしていると高齢こうれい者しゃには使つかいづらいクルマになってしまう。

◆最上級さいじょうきゅう4WDモデルでも412万まん円えん
まあ、数少かずすくない問題もんだい点てんはあるものの、基本きほんこのクルマが超ちょう優等生ゆうとうせいであることに変かわりはない。何なによりCセグメントの最上級さいじょうきゅう4WDモデルでも411万まん9500円えんとリーズナブルな価格かかくである。この価格かかくは12スピーカー搭載とうさいのBOSEプレミアムサウンドシステムも含ふくまれる。

■5つ星ほし評価ひょうか
パッケージング：★★★★★
インテリア/居住きょじゅう性せい：★★★★★
パワーソース：★★★★★
フットワーク：★★★★★
おすすめ度ど：★★★★★

中村なかむら孝仁たかひと（なかむらたかひと）AJAJ会員かいいん
1952年ねん生うまれ、4歳さいにしてモーターマガジンの誌面しめんを飾かざるクルマ好すき。その後ごスーパーカーショップのバイトに始はじまり、ノバエンジニアリングの丁稚でっちメカを経験けいけんし、さらにドイツでクルマ修行しゅぎょう。1977年ねんにジャーナリズム業界ぎょうかいに入はいり、以来いらい45年間ねんかん、フリージャーナリストとして活動かつどうを続つづけている。また、現在げんざいは企業きぎょうやシニア向むけ運転うんてん講習こうしゅうの会社かいしゃ、ショーファデプト代表だいひょう取締役とりしまりやくも務つとめる。