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【試乗記】ホンダWR-V Z+(FF/CVT) | クルマ情報サイトーGAZOO.com

試乗しじょう】ホンダWR-V Z+(FF/CVT)

  • ホンダWR-V Z+(FF/CVT)

    ホンダWR-V Z+(FF/CVT)

便利べんり」の本質ほんしつ

ホンダのSUVラインナップにあらたなエントリーモデル「WR-V」が仲間入なかまいり。その最大さいだい特徴とくちょうはインド生産せいさんとさまざまなりによって実現じつげんした200まんえん前半ぜんはんからという販売はんばい価格かかくだ。たして日本にっぽんのカスタマーを満足まんぞくさせることができるのだろうか。

存在そんざいおおきすぎる「N-BOX」

このところ実家じっかまわりの所用しょようえて、おりにつけまいの東京とうきょう九州きゅうしゅうとを往復おうふくしている。さきはコミュニティーバスにも見放みはなされたド田舎いなかということもあり、いた空港くうこうからはレンタカーをりての移動いどうがマストだ。おおきなゴミしなどがあるときは車種しゃしゅ指定していするが、普段ふだん軽自動車けいじどうしゃ〜Bセグメントあたりのクルマがランダムにはいされるわりに料金りょうきん一番いちばんやすいというプランをこのんで使つかっている。

このレンタカーガチャでたり物件ぶっけんといえば「ヤリス」「フィット」「ノート」のハイブリッドあたりになるわけだが、先日せんじつてて感心かんしんさせられたのが先代せんだい「N-BOX」だった。

現行げんこうがたったさいには、その熟成じゅくせいぶりに感心かんしんさせられつつも、リピーター予備よびぐん一気いっきせるほどの差異さいではない一方いっぽうで、もし代々だいだいすんでおさめきゃくがくたびれてきてえを検討けんとうするさいには絶対ぜったいふたた財布さいふひらかせる、そういう出来できのクルマだとおもっていた。

大衆たいしゅうわくない特別とくべつ目指めざす。それはちょうコストコンシャスなコモディティーマーケットでの立派りっぱたたかかただ。ファミレスでいえばロイヤルホスト、ビジホでいえばドーミーイン……と、おもかぶれいはいくらでもある。スマホでいうなら日本にっぽんはキャリアのかたよった施策しさくのおかげでそのシェアがやたらとたかいが、他国たこくからしてみれば「iPhone」とはそういう存在そんざいだ。

そんなアタマで旧型きゅうがたN-BOXにると、これのどこに不満ふまんいだけばいいのよというくらいに満足まんぞくたかい。とくけいトラが先導せんどうするのどかなバイパスのながれにまかせると、しろナンバーを理由りゆうもETCをける意味いみ見失みうしなう。東京とうきょう常識じょうしき地方ちほう非常識ひじょうしき。そういうことをかんがえさせられる。

と、そこでおもうのは、いま、これこそがホンダの国内こくない市場いちばくびめているのではないかということだ。日本にっぽん日常にちじょうとN-BOXのフィットかんとがあまりにビタビタにすぎて、ユーザーは生活せいかつ環境かんきょう変化へんかでもこらないかぎりはそれこそ「フィット」にえるにはなれない。プラスαあるふぁ付加ふか価値かちをもった存在そんざいが「フリード」や「ヴェゼル」ではあるものの、そこは価格かかくてきにN-BOXとの乖離かいり(かいり)がおおきすぎる。たしてN-BOXで大量たいりょうのホンダひょうを、いかにしろナンバーの登録とうろくしゃへと誘引ゆういんしつつながいおいへとむすびつけられるのか。WR-Vにせられたうらおおきなミッションはそれだろう。

メイド・イン・ジャパンからメイド・バイ・ホンダへ

WR-Vのパワー&ドライブトレインは1種類しゅるいのみ。くるまかくてきには全高ぜんこうのぞけばほぼおなじという同門どうもんのヴェゼルとたしてどうすみけようというのかとおもっていたら、直近ちょっきんのマイナーチェンジでヴェゼルはガソリンのFFモデルをとし、4WDのみの設定せっていとなった。FFのみのWR-Vに額面がくめんてきなエントリーの役割やくわりゆずったかたちだ。これでりょうモデルのスタートプライスは55まんえんとなる。

WR-Vの価格かかくは209まん8800えんから。そのスタートプライスに該当がいとうする「X」でも機能きのう装備そうびめん上位じょういグレードに見劣みおとりはなく、ADASもぜんグレードで標準ひょうじゅん装備そうびとなる。銘柄めいがら代表だいひょうかくといえば「ヤリス クロス」だろうが、価格かかく装備そうび吟味ぎんみすると、(ご)すところにあるといえそうだ。

そんなWR-Vのすぐれたコスパの理由りゆうがインド生産せいさんであることをご承知しょうちほうおおいだろう。為替かわせふくめてもはや中国ちゅうごくやタイでの生産せいさんでは劇的げきてきなコスト圧縮あっしゅくのぞめないなか、まだインドならばその余地よちはある。そんな側面そくめんもあれば工場こうじょう稼働かどう活性かっせいという側面そくめんもあるだろう。マルチスズキがはばかせつつも世界せかいのメーカーが参入さんにゅうするこれからの激戦げきせんすこしでもコストてき優位ゆういつために生産せいさん規模きぼたかめたい。国内こくないでは月販げっぱん3000だい計画けいかくするWR-Vは、インドの稼働かどうりつげる援護えんご射撃しゃげきとしても適切てきせつだ。

ホンダはすでに「オデッセイ」や「アコード」も輸入ゆにゅうしているが、このシフトの背景はいけいには海外かいがい生産せいさん積極せっきょくてきという社風しゃふうくわえて、二輪にりんでの成功せいこうれい影響えいきょうしているのだとおもう。いま日本にっぽん市場いちば販売はんばいされるホンダのバイクはしょう排気はいきりょうしゃ中心ちゅうしん舶来はくらい相当そうとうすすんでいる。一時期いちじき、「スーパーカブ」の生産せいさん中国ちゅうごく移管いかんしたさいには品質ひんしつてき問題もんだいみみにしたが、品質ひんしつ管理かんりとどき、現場げんば成長せいちょうした現在げんざいはクオリティーめんでの不評ふひょうみみにしなくなった。

よんりんでも「USアコード」や「フィットアリア」などの前例ぜんれいしめすとおり、ホンダはかねて輸入ゆにゅう販売はんばいには積極せっきょくてきだったが、ここにきてメイド・イン・ジャパンからメイド・バイ・ホンダへのシフトを本格ほんかくてき検討けんとうしているのだろうか。いいかえればそれは、ざやのちいさいコンパクトカーやスケールのちいさい日本にっぽん専売せんばいモデルの国内こくない生産せいさん供給きょうきゅうが、いよいよ収益しゅうえきてきにもむずかしいところにきているということでもある。国内こくない雇用こよう死守ししゅするというトヨタでもこのカテゴリーで利益りえきをひねりすための苦労くろう相当そうとうなものだろう。現在げんざい、ホンダは日産にっさん多面ためんてき業務ぎょうむ提携ていけい検討けんとうしている最中さいちゅうだが、項目こうもくのなかには当然とうぜんこれらにまつわる課題かだい共有きょうゆうされているはずだ。

よくえる、すぐに使つかえる

とあらばWR-V、になるのはそのクオリティーだ。かりにN-BOXからえるとして、満足まんぞくできる質感しつかんそなわっているのか。個人こじんてきにはイエスでもノーでもない、五分五分ごぶごぶかなという印象いんしょうだった。外装がいそう塗装とそうやチリわせ、内装ないそう大物おおもの樹脂じゅしのテクスチャーなどは、かつて経験けいけんしたインドもののどれよりも明確めいかく上質じょうしつだ。とく塗装とそうたいこうさい重視じゅうしだろう本国ほんごく仕様しようたいして、日本にっぽんけはひとむきしてるんじゃないかというくらいにゆずはだにならない。ダッシュボードのテカテカかんもしっかりおさえられており、スイッチるいのタッチも日本にっぽん生産せいさんのそれとわらないとみていいだろう。

が、同級どうきゅうのヴェゼルやフィットと比較ひかくしてていくと、やはり端々はしばしにはアラがある。はめみものの隙間すきまかんやセンターコンソールのけ、ドアトリムの殺風景さっぷうけいぶりなど、安普請やすぶしんかんじるところもなくはない。でも、クルマがこれから普及ふきゅうするくにみんのワクワクかんからしてみれば、そんな価値かちはさしたる問題もんだいではないのもたしかだ。

では日本にっぽん立場たちばからしてみれば、WR-Vのなに一番いちばん価値かちがあるのか。いざってみると特筆とくひつすべき事項じこうがあった。それは近年きんねんまれにるといってもいい、視界しかい車両しゃりょう把握はあく明快めいかいさだ。いわゆるクラムシェルスタイルのボンネットはヴェゼルもおなじだが、WR-Vは明確めいかくにスクエアな形状けいじょうとなっており、左右さゆうはしぜんはしもバキッと見切みきれる。のとおりウエストラインもド水平すいへい周縁しゅうえん認識にんしきせいたかいうえ、ホンダの長年ながねんのこだわりとしてピラー形状けいじょうなども吟味ぎんみされているから、視界しかいのクリアさは同級どうきゅうのライバルにくらべてもあきらかにいちまい上手じょうずだ。スペックをて1790mmの全幅ぜんぷくはどうなのよとおもってはいたが、これほどクルマがうちにいるならばまったく不満ふまんはない。さすがに後方こうほうばかりはそうはいかないが、ここはリアモニターやソナーなどで補完ほかんすることになるだろうか。

このクルマでZ世代せだい捕獲ほかくねらっているというホンダてきにはふるくさくておずかしいというはなしかもしれないが、視界しかいくわえてむしろ歓迎かんげいしたくなるのは、エアコンに物理ぶつりボタンがのこっていたり、シフトレバーやサイドブレーキが手引てびきだったり、ハザードスイッチがセンターに陣取じんどっていたりというインターフェイスの旧態きゅうたいさだ。はしがるまるの操作そうさロジックが昭和しょうわそのまんまというのはいまやむしろ肯定こうていてきとらえられる。ただしACCは30km/h前後ぜんごでカットオフされる旧態きゅうたいてきなロジックだ。

なん文句もんくもありません

クルマというアイテムはケータイなどとおなじく、商品しょうひんであると同時どうじにインフラでもあるからして、消費しょうひしゃ脱落だつらく無視むしすることはNGという倫理りんり責任せきにんかんをもってかかわるべきものだとおもう。近年きんねんはITてき感覚かんかくでそれをガン無視むしするような銘柄めいがらがその乱雑らんざつぶりを優位ゆうい吹聴ふいちょうする傾向けいこうもあるが、かねにもならない安全あんぜん運転うんてん普及ふきゅう本部ほんぶはん世紀せいき以上いじょうまえから運営うんえいするほど交通こうつう事故じこ敏感びんかんなホンダが、そこのところをほごにするわけがない。

そのはしりについてはたして、なにつたえればいいだろうとおもうほどっかかるものがなかった。基本きほんてきにヴェゼルもおなじものをむ1.5リッター4気筒きとう感触かんしょくはカサカサとドライなかんがあったが、それはせい遮音しゃおん要素ようそによる印象いんしょうもあるだろう。かのではむしろ上質じょうしつさの一因いちいんかんがえられているというCVTの感触かんしょくも、いま々のモデルぐんいちじるしいはなく、エンジンの無駄むだぼえにともなうラバーバンドフィールなどもおさえられている。コーナリングは粗相そそうはないけど彗眼(けいがん)するほどの要素ようそもない。操舵そうだにも制動せいどうにも唐突とうとつ要素ようそはなく、想定そうていできる範囲はんいくせなくおさまっている。

もう、日々ひび普通ふつうるクルマとしてなに文句もんくもない。なんなら前述ぜんじゅつした静的せいてき質感しつかんについてもリアルなカスタマーにおいてはどうでもいいことだろう。クルマきがとなえる官能かんのうだの実感じっかんだのという呪文じゅもんいて、なんならガチの運転うんてんしやすさを評価ひょうかしてタクシーや教習きょうしゅうしゃけても全然ぜんぜんOKなクルマだともおもう。そこでわすもののようなひとことをくわえるなら、こうせき居住きょじゅうせいは「ロッキー/ライズ」はもとより、「CX-3」もヤリス クロスも相手あいてにしないほど広々ひろびろとしている。なんなら、かのではショーファードリブンとしても使つかわれるというから、それも、さもありなんだろうか。

前述ぜんじゅつのとおり、ホンダはこれをZ世代せだいにあてがいたい思惑おもわくだというが、WR-Vはむしろ年配ねんぱいのドライバーによろこばれるクルマではないだろうか。りしやすく視界しかいけていて、あるべき場所ばしょにあるべきものがあり、ひともゆったり荷物にもつもしっかりめる。N-BOXにりないものをさがすのは本当ほんとうむずかしいが、クルマえらびにまよえるシニアには、試乗しじょうしてもらえばつたわるものがあるのではないかとおもう。

ぶん渡辺わたなべ敏史としふみ写真しゃしん山本やまもとけいわれ編集へんしゅう藤沢ふじさわ まさる

テストしゃのデータ

ホンダWR-V Z+

ボディーサイズ:全長ぜんちょう×全幅ぜんぷく×全高ぜんこう=4325×1790×1650mm
ホイールベース:2650mm
くるまじゅう:1230kg
駆動くどう方式ほうしき:FF
エンジン:1.5リッターじき4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高さいこう出力しゅつりょく:118PS(87kW)/6600rpm
最大さいだいトルク:142N・m(14.5kgf・m)/4300rpm
タイヤ:(まえ)215/55R17 94V/()215/55R17 94V(ブリヂストン・トランザT005A)
燃費ねんぴ:16.2km/リッター(WLTCモード)
価格かかく:248まん9300えん/テストしゃ=282まん8100えん
オプション装備そうび:ボディーカラー<イルミナスレッドメタリック>(3まん8500えん) ※以下いか販売はんばいてんオプション フロアカーペットマット(4まん0700えん)/ドライブレコーダー<フロントよう>(3まん7400えん)/9インチHonda CONNECTナビ(20まん2400えん)/ETC2.0車載しゃさい<ナビ連動れんどうタイプ・アンテナ分離ぶんりがた>(1まん9800えん

テストしゃとししき:2024ねんがた
テスト開始かいし走行そうこう距離きょり:1270km
テスト形態けいたい:ロードインプレッション
走行そうこう状態じょうたい市街地しがいち(2)/高速こうそく道路どうろ(6)/山岳さんがく(2)
テスト距離きょり:262.8km
使用しよう燃料ねんりょう:25.2リッター(レギュラーガソリン)
参考さんこう燃費ねんぴ:10.4km/リッター(車載しゃさい燃費ねんぴけい計測けいそく)/10.6km/リッター(車載しゃさい燃費ねんぴけい計測けいそく

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