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トヨタ 燃料電池自動車MIRAI 開発責任者に聞く(1/4) | クルマ情報サイトーGAZOO.com

トヨタ 燃料ねんりょう電池でんち自動車じどうしゃMIRAI 開発かいはつ責任せきにんしゃく(1/4)

クルマのつぎの100ねんのために

​​​<プロフィール>田中たなか義和よしかず(たなか よしかず)
1961ねんまれ。京都きょうと大学だいがく工学部こうがくぶどう大学院だいがくいん修了しゅうりょうし、1987ねんトヨタ自動車とよたじどうしゃ入社にゅうしゃ。オート マチックトランスミッションのハード開発かいはつ制御せいぎょ開発かいはつ担当たんとう初代しょだいvitzの新型しんがた4AT開発かいはつ、FRよう多段ただんA/Tの開発かいはつ担当たんとう。2006ねん3がつ製品せいひん企画きかく部門ぶもん異動いどう。プラグインハイブリッドしゃ開発かいはつ担当たんとうする。2007ねんよりプリウスPHVの開発かいはつ責任せきにんしゃとしてプロジェクトの製品せいひん企画きかく担当たんとう。2012ねん1がつより燃料ねんりょう電池でんちしゃ(FCV)開発かいはつ責任せきにんしゃとして製品せいひん企画きかく業務ぎょうむ担当たんとう。​
MIRAI​。ボディカラーはツートーン ピュアブルーメタリック。

FCV(燃料ねんりょう電池でんち自動車じどうしゃ)とは、こうあつ水素すいそタンクに充填じゅうてんした水素すいそ燃料ねんりょう電池でんちなか空気くうきちゅう酸素さんそ化学かがく反応はんのうさせて発電はつでんし、その電気でんき使つかってモーターをまわしてはしるクルマである。水素すいそ環境かんきょうにやさしく、太陽光たいようこう風力ふうりょく、バイオ燃料ねんりょう天然てんねんガスなどからつくることができ、燃料ねんりょう電池でんちでの発電はつでんはガソリンエンジンにくらべてエネルギー効率こうりつたかく(2ばい以上いじょう)、CO2を一切いっさい排出はいしゅつしない。つまり走行そうこうみずしかさないため、FCVは究極きゅうきょくのエコカーとして、随分ずいぶんまえから次世代じせだい環境かんきょうしゃ本命ほんめいとして注目ちゅうもくされてきた。

電気でんきでモーターをまわしてはしるというてんではEV(電気でんき自動車じどうしゃ)とおなじであるが、EVは外部がいぶ電源でんげんからバッテリーに充電じゅうでんした電気でんきはしり、長時間ちょうじかん充電じゅうでん必要ひつようとなる。さらに容量ようりょうにも限界げんかいがあるのででんかけ不安ふあんがあり、長距離ちょうきょり走行そうこうには不向ふむきである。一方いっぽう、FCVは車内しゃないみずか発電はつでんした電気でんきはしる。燃料ねんりょうとなる水素すいそ充填じゅうてん時間じかんはMIRAIの場合ばあいやく3ふん。モード走行そうこうならまんタンで650kmの走行そうこう可能かのうなので、ガソリンしゃとほぼおなじような使つか勝手がって利用りようできる。

このようにFCVは究極きゅうきょくのエコカーとばれるに相応ふさわしい未来みらいのクルマではある。しかし、その普及ふきゅうにあたっては小型こがたこう出力しゅつりょく燃料ねんりょう電池でんち開発かいはつ車両しゃりょう搭載とうさい必要ひつよう安全あんぜんせい確保かくほ量産りょうさんけての生産せいさん技術ぎじゅつ構築こうちくなど技術ぎじゅつてき課題かだいのほか、高額こうがく車両しゃりょう本体ほんたい価格かかく、さらには、ガソリンスタンドにわる専用せんよう水素すいそステーションを必要ひつようとし、クルマが普及ふきゅうしないとインフラ整備せいびすすまないという、“ニワトリとたまご”の課題かだいかかえてきた。

こうしたジレンマをやぶるべく、世界せかい先駆さきがけてトヨタが発表はっぴょうした一般いっぱん販売はんばいするFCVがMIRAI(ミライ)である。おりしも来年らいねん2015ねんは“水素すいそエネルギー社会しゃかい元年がんねん”とわれており、世界せかい各国かっこく水素すいそステーションの整備せいびはじまる。そのあたらしい時代じだい幕開まくあけをこのクルマがたからかにげる。そんな次世代じせだい環境かんきょうしゃMIRAIの開発かいはつ責任せきにんしゃつとめた田中たなか義和よしかずたずねた。

つねにフルスイング。全力ぜんりょく疾走しっそう開発かいはつ

だい13かい国際電気こくさいでんき自動車じどうしゃシンポジウムで走行そうこうする燃料ねんりょう電池でんち搭載とうさいのFCEV。
大阪おおさか御堂筋みどうすじでEV30だいがパレードをおこない、トヨタからも3だい参加さんか
トヨタはつ量産りょうさんがた燃料ねんりょう電池でんち
燃料ねんりょう電池でんち水素すいそ酸素さんそ化学かがく反応はんのう利用りようして電気でんきをつくる発電はつでん装置そうち
電解でんかいしつまく一対いっつい電極でんきょく、2まいのセパレーターの3つのパーツをつ「セル」とばれるもので構成こうせいされる。
ひとつのセルの電圧でんあつは1V以下いかちいさいため、すうひゃくものセルを直列ちょくれつ接続せつぞくすることで電圧でんあつたかめている。
このセルをかさねてひとつにまとめたものを「燃料ねんりょう電池でんちスタック」、または「FCスタック」とび、一般いっぱんてきに「燃料ねんりょう電池でんち」という場合ばあいにはこの燃料ねんりょう電池でんちスタックのことをす。

このクルマの企画きかくをスタートしたのは2012ねん1がつです。上司じょうしから「FCVをやってみないか?」とわれ、そのとき一瞬いっしゅん「えっ、FCVですか…」とおどろきました。ちょうど2011ねん東京とうきょうモーターショーでトヨタはセダンタイプのFCVコンセプトモデルを出品しゅっぴんしていて、当然とうぜんわたしもその展示てんじしゃていましたが、まさか自分じぶんがその開発かいはつ担当たんとうすることになるとは、ゆめにもおもっていませんでした。まったくあたらしいクルマなだけに、かなり困難こんなん開発かいはつになることは容易ようい想像そうぞうできました。しかし、こんなチャンスはまたとありません。また、困難こんなんおおきいほうえる単純たんじゅんせいかくなので、「やります。やらせてください」とすぐにげました。そこからはFCVをいちから勉強べんきょうし、無我夢中むがむちゅう開発かいはつ没頭ぼっとうしました。文字通もじどお全力ぜんりょく疾走しっそうつねにフルスイングの開発かいはつこころがけ、いささか暴走ぼうそう気味ぎみなくらい(笑)、がむしゃらにはしってきました。

トヨタは1992ねん燃料ねんりょう電池でんち開発かいはつをスタートしています。1996ねんには水素すいそ燃料ねんりょうとするFCEVを発表はっぴょうし、試作しさくしゃだいばん御堂筋みどうすじをパレードしています。FCVの開発かいはつには20ねん以上いじょう歴史れきしがあり、コア技術ぎじゅつであるFCスタック​、だかあつ水素すいそタンクをすべてないせいし、開発かいはつ生産せいさん技術ぎじゅつ両方りょうほうをトヨタのつよみとなりうる技術ぎじゅつ成長せいちょうさせてきました。つまり、MIRAIはそのあいだつちかってきた技術ぎじゅつ結集けっしゅうし、まんもたして市場いちば投入とうにゅうするクルマです。

それゆえに「駅伝えきでんでいえば20ねん以上いじょうにもわたながいバトンリレーの最終さいしゅう走者そうしゃ野球やきゅうでいえば試合しあいめくくるストッパーの役割やくわりになうわけですから、そのプレッシャーは相当そうとうだったでしょう?」という質問しつもんをよくけます。冷静れいせいかんがえれば、まさにおっしゃるとおりなのですが、そんなプレッシャーをかんじる余裕よゆうもないくらい、ずっと全力ぜんりょく疾走しっそうでした。アドレナリンがまくっているような状態じょうたい開発かいはつ没頭ぼっとうしてきました(笑)

ですから、社内しゃないをはじめ関係かんけいしゃみなさんには色々いろいろ場面ばめん無理むりなことばかりおねがいし、大変たいへん迷惑めいわくをおかけしたかとおもいます。​このりて、おびとおれいもうげたいとおもいます。​