トヨタ　燃料ねんりょう電池でんち自動車じどうしゃMIRAI　開発かいはつ責任せきにん者しゃに聞きく（3／4）

​デザインもさることながら、走はしりの作つくり込こみも開発かいはつの初期しょき段階だんかいから優先ゆうせん順位じゅんいを高たかくして、相当そうとうこだわりました。MIRAIではウェイトのある燃料ねんりょう電池でんちをフロントのシートの下した、水素すいそタンクをリアシート下かと後うしろに配置はいちすることによって重心じゅうしんバランスを下さげ、同時どうじに通常つうじょうの前輪ぜんりん駆動くどう車しゃと比くらべて前後ぜんごの重量じゅうりょうバランスが後うしろよりになっています。ですから操縦そうじゅう安定あんてい性せい、ハンドリング性能せいのうが極きわめて高たかい。コーナーを曲まがるとき、前輪ぜんりん駆動くどう車しゃはちょっと外側そとがわに膨ふくれやすいという特徴とくちょうがありますが、前輪ぜんりん駆動くどうなのにこのクルマにはそれがありません。実際じっさいに乗のってみると、この低てい重心じゅうしんと前後ぜんごの重量じゅうりょうバランスの良よさはすぐにお分わかりいただけます。

またガソリンエンジンの場合ばあいは振動しんどうがあるので硬かたいマウントでがっちり固定こていすると振動しんどうがボディに伝つたわってしまいます。ですからゴムなどを利用りようした緩ゆるめのマウントで固定こていしています。FCVではそうした振動しんどうの心配しんぱいはないので、モーターやインバーターなどを硬かたいマウントでしっかり固定こていしています。その結果けっか、ねじれ剛性ごうせいが極きわめて高たかくなっています。特とくに、車両しゃりょうの中央ちゅうおう付近ふきんに配置はいちされた燃料ねんりょう電池でんちの部分ぶぶんは衝撃しょうげきなどからの保護ほごの目的もくてきで軽かるくて強つよいカーボンファイバー強化きょうか樹脂じゅしをスタックフレームに採用さいようしているのでガチガチです。さらに、スポット溶接ようせつの増ぞうし打うちや構造こうぞう用よう接着せっちゃく剤ざいの採用さいよう、ブレースの設定せっていなどにより徹底的てっていてきにボディ剛性ごうせいを強化きょうかしました。

それは乗のっていただければコーナリング時じに実感じっかんできます。ボディのねじれ、たわみが抑おさえられ、バネ、アブソーバーがしっかり働はたらく。走はしり出だしから路面ろめんの細こまかな凹凸おうとつによる振動しんどうを吸収きゅうしゅうし、まるで氷こおりの上うえを滑すべるような異い次元じげんの乗のり心地ごこちを実現じつげんしました。

モーターの出力しゅつりょくは馬力ばりきにして150馬力ばりきそこそこですが、トルクが太ふといので応答おうとう性能せいのうがとてもいい。コーナーの出口でぐちでの立たち上あがりがすごく早はやい。ワインディングコースもキレイに気持きもちよくトレースして走はしります。しかもとても静しずかに。高こう遮音しゃおん性せいガラスの採用さいようなど静粛せいしゅく性せいにも徹底的てっていてきにこだわりました。​​この未み体験たいけんの走はしりにはきっと感動かんどうしていただけるはずです。

​デザイン、走はしりのほかにも、即そく暖だん性せいに優すぐれ、消費しょうひ電力でんりょくも大幅おおはばに抑おさえるステアリングヒーターやシートヒーターの採用さいようをはじめとする快適かいてき装備そうびや最新さいしんの安全あんぜん装備そうびも惜おしげもなく投入とうにゅう、さらには広ひろくて使つかいやすい荷に室しつ、FCV専用せんようのナビサービスの開発かいはつまで、考かんがえられる限かぎりのあらゆる手てを尽つくし、細部さいぶに至いたるまで徹底的てっていてきにこだわり抜ぬいて、クルマとしての魅力みりょくを磨みがき上あげたつもりです。

MIRAIの開発かいはつにあたってはFC技術ぎじゅつ部ぶをはじめ、生産せいさん技術ぎじゅつや調達ちょうたつ、設計せっけいなど色々いろいろな部署ぶしょが本当ほんとうに良よくがんばってくれました。時ときには衝突しょうとつもし、膝ひざを突つき合あわせて納得なっとくがいくまで議論ぎろんを重かさね、知恵ちえを出だし、汗あせを流ながして、一緒いっしょに苦労くろうしながら作つくり上あげてきました。その分ぶんだけ、いいクルマに仕上しあがったと自負じふしています。迷惑めいわくな話はなしかもしれませんが、本当ほんとうにいいものを作つくり上あげるには、どうしてもそういうプロセスが必要ひつようなんだと勝手かってに思おもっています。

2015年ねんに市販しはん車しゃを発売はつばいすることはトヨタとして社会しゃかいに約束やくそくしたことでした。しかし、だからといって右みぎから左ひだりに何なんでも企画きかくが通とおるということはありません。むしろ逆ぎゃくで、だからこそ、しっかりした企画きかくでないと会社かいしゃとしてOKは出ださない。開発かいはつ提案ていあんが正式せいしきに承認しょうにんされたのは2013年ねんの2月がつ。開発かいはつスタートから実じつに2年ねん以上いじょうの月日つきひが過すぎていました。

さらに車くるま名めいの決定けっていに関かんしていえば、2013年ねんの6月がつ頃ごろにいったん別べつの車くるま名めいで決きまりかけていました。しかし、「本当ほんとうにこれでいいのか？」と再度さいど、見直みなおしをおこない、最終さいしゅう的てきにMIRAIという車くるま名めいに決きまったのは年末ねんまつでした。それくらい会社かいしゃとしてもこだわって開発かいはつしたクルマなのです。そしてこの「MIRAI」という車くるま名めいは全ぜん世界せかい共通きょうつうの車くるま名めいなっています。