空気くうきの抜ぬけもパンクもない！「エアレスタイヤ」が予感よかんさせるタイヤの未来みらい

2019.12.01 10:00

空気くうきがいらずパンクもしない、そんな夢ゆめのようなタイヤの開発かいはつが進すすめられています。空気くうきがいらないことから「エアレスタイヤ」と呼よばれるこのタイヤは、次世代じせだいのタイヤとして注目ちゅうもくされているもの。では、どんな構造こうぞうや特徴とくちょうを持もっているのでしょうか？

エアレスタイヤを開発かいはつしている株式会社かぶしきがいしゃブリヂストン先進せんしん技術ぎじゅつタイヤ開発かいはつ部長ぶちょうの金子かねこ智さとしさんにお話はなしを聞ききました。

空気圧くうきあつの代かわりにクルマの重量じゅうりょうを支ささえるのは特殊とくしゅな斜ななめ構造こうぞうをした樹脂じゅし

まずは、ブリヂストンのエアレスタイヤである「エアフリーコンセプト」の構造こうぞうを説明せつめいしていただきました。

「一いち番外ばんがい側がわのトレッドゴムは、通常つうじょうのタイヤと大おおきな違ちがいはありません。しかし、その内側うちがわは空気くうきではなく、樹脂じゅしとなっています。『斜ななめの曲まがり梁はり形状けいじょう』という形かたちをした樹脂じゅしで、それが走行そうこう中ちゅうにたわんだり戻もどったりすることで、走行そうこう中ちゅうの車両しゃりょうを支ささえるのです」（金子かねこさん）

: 自転車じてんしゃ向むけ（左ひだり）と超ちょう小型車こがたしゃ向むけ（右みぎ）のエアレスタイヤ

: ばね状じょうのスポークが変形へんけいすることで路面ろめんの衝撃しょうげきを吸収きゅうしゅうする

「樹脂じゅしには、熱ねつ可塑かそ性せい（ねつかそせい）樹脂じゅしという、加熱かねつすると軟化なんかして成形せいけいできる素材そざいが使つかわれています。ものすごく耐久たいきゅう性せいのあるプラスチックを想像そうぞうしていただければわかりやすいかと思おもいます。耐久たいきゅう性せいのほかにも、一般いっぱん的てきな樹脂じゅしでは脆もろくなりやすい日光にっこうでの劣化れっかにも耐たい性せいがあります」（金子かねこさん）

エアレスタイヤはパンクしないだけでなく、空気くうきが入はいっていないことから空気圧くうきあつチェックの必要ひつようもなくなります。空気圧くうきあつ低下ていかによる、乗のり心地ごこちや操縦そうじゅう安定あんてい性せいの変化へんかもありません。また、樹脂じゅしの素材そざいそのものが環境かんきょうに配慮はいりょしたものになっているので、リサイクルが容易よういになるメリットもあるそうです。

「エアレスタイヤを使つかってクルマを低てい燃費ねんぴにする開発かいはつもしています。Safety（安全あんぜん）、Convenience（便利べんり）、Environment（環境かんきょう）が、エアレスタイヤ開発かいはつの3本ほん柱ばしらです」（金子かねこさん）

この3本ほん柱ばしらは、現代げんだいの自動車じどうしゃ業界ぎょうかいに求もとめられている課題かだいとも合致がっちします。

「例たとえば、最近さいきん定着ていちゃくしてきたカーシェアリングでは、パンクによってお客様きゃくさまの利用りようが滞とどこおる状態じょうたいは避さけたいものですが、店舗てんぽ型がたのレンタカーのように頻繁ひんぱんなメンテナンスはできません。また、オペレーターのいない無人むじん運転うんてんのクルマが走はしる未来みらいも見みえてきました。その場合ばあい、パンクで止とまることは絶対ぜったいに避さけなければなりません。将来しょうらい的てきにエアレスタイヤは、さまざまな場面ばめんで貢献こうけんできる可能かのう性せいを持もっています」（金子かねこさん）

全まったく新あたらしい技術ぎじゅつが必要ひつようなエアレスタイヤの開発かいはつは試行錯誤しこうさくごの連続れんぞく！

タイヤとは呼よびますが、「エアフリーコンセプト」は一番いちばん外側そとがわのトレッドゴム以外いがいはこれまでのタイヤとはまったく違ちがう、新あたらしい技術ぎじゅつを盛もり込こんで作つくられています。ブリヂストンでは「パンクしないタイヤを作つくりたい」というアプローチから、2008年ねんより開発かいはつがスタートしました。当初とうしょは試行錯誤しこうさくごの連続れんぞくだったそうですが、まず2020年ねんに向むけて、自転車じてんしゃ用ようエアレスタイヤの実用じつよう化かを目指めざしていると言いいます。

: 2013年ねんに東京とうきょうモーターショーで披露ひろうされた第だい二に世代せだいの「エアフリーコンセプト」タイヤ。現在げんざいのものより複雑ふくざつな構造こうぞうになっている

「まったく新あたらしい技術ぎじゅつや考かんがえでタイヤを開発かいはつしなければならないため、耐久たいきゅう性せいと乗のり心地ごこちの両立りょうりつが難むずかしかったですね。試行しこう錯誤さくごしながら、エアレスタイヤの研究けんきゅう・開発かいはつをおこなってきました。自動車じどうしゃ用ようのタイヤも初期しょきの頃ころの複雑ふくざつな構造こうぞうに比くらべれば実用じつよう向むきになってきていますが、まずは自転車じてんしゃでの実用じつよう化かに向むけて取とり組くんでいます」（金子かねこさん）

まずは自転車じてんしゃからということですが、クルマへの装着そうちゃくにむけては、タイヤそのものの開発かいはつのほかに、クリアしなければならない法規ほうき上じょうの問題もんだいもあるとのことです。

「自動車じどうしゃのタイヤは、安全あんぜん性せいや法律ほうりつ・規格きかくに対たいする信頼しんらい性せい評価ひょうかにかなりの時間じかんを要ようします。タイヤの開発かいはつだけでなく、走行そうこう実験じっけんでの信頼しんらい性せいの証明しょうめいも必要ひつようですし、規格きかくや表記ひょうきに関かんする法律ほうりつもクリアしなければいけません。まったく新あたらしいタイヤですので、多おおくの議論ぎろんが必要ひつようになると考かんがえています」（金子かねこさん）

今後こんご、エアレスタイヤが流通りゅうつうしたとしても、すべてのタイヤが置おき換かわることにはならないだろうと金子かねこさんは予想よそうをしていますが、「カーシェアリングや自動じどう運転うんてんの業界ぎょうかいでは、大おおきな影響えいきょう力りょくがあるのでは？」とのこと。未来みらいのタイヤの出現しゅつげんは、もうすぐそこまで来きています。