『クルマは最高さいこうのトモダチ』ピックアップを取とる理由りゆうに迫せまる！…山田やまだ弘樹ひろき連載れんさいコラム

2021.10.17 11:00

これまで何なん度ども走はしっている筑波つくばコース2000ですが、赤あかパンを走はしらせたのは本当ほんとうにこれが初はじめて。RE-71RSのグリップ感かんはSタイヤほど攻撃こうげき性せいがないのにとっても安定あんていしていて、ちょっとクセになりそうなくらい楽たのしかった。やっぱり広ひろいコースはいいなー！後うしろにいるレビンは、先輩せんぱい自動車じどうしゃライターの大谷おおや達也たつやさん。

というわけで（どういうわけで!?）、今年ことし3回かい目めとなる筑波つくばサーキットに行いってきました。今回こんかいは自動車じどうしゃライターである大谷おおや達也たつやさんのコーチングで、久ひさしぶりのコース2000です。

その詳細しょうさいはGQ JAPANの「CARS」コーナーでレポートされるようなので、よかったらチェックしてみて下ください。あのお洒落しゃれwebであるGQに、ハチロクが登場とうじょうするの!?
……事件じけんです（笑）。

さてボクがこのコラムに書かくのは、ポテンザ「RE71-RS」の続報ぞくほうです。
実みを言いうとわが赤あかパン、これまで筑波つくばコース2000を、一いち度ども走はしらせたことがありません。というか、GAZOO動画どうがの撮影さつえいで袖ケ浦そでがうらフォレストレースウェイを走はしらせた以外いがい、大おおきなコースで走はしったことは一いち度どもないんです。
これでも一応いちおう、箱入はこいり娘むすめでして。

コース1000に比くらべ平均へいきん荷重かじゅうが大おおきいコース2000で、大丈夫だいじょうぶかなぁ…。パワーの割わりに足あし周まわり柔やわらかすぎて、ドタバタしないかしら？
まぁ経験けいけん上じょう、平気へいきなことはわかっているんです。もっと足あし周まわりが柔やわらかい市販しはん車しゃで、何なん度どもここを走はしっていますから。
でも自分じぶんのクルマとなると、ちょこっと心配しんぱいになるんだから、オーナー心こころ理ことわって面白おもしろいですね。

うー、カッコいい！こんなに素晴すばらしい走はしりとスナップを撮とってくれたのは、イケメンでバイクの達人たつじんでもある安井やすい宏ひろし充たかしカメラマン。なんか写真しゃしんがすてき良よすぎて、赤あかパンに惚ほれ直なおしちゃいましたよ。今回こんかいはGQにもハチロクの記事きじを書かいたので、そちらもお楽たのしみに！

そして肝心かんじんなRE-71RSはというと。
これがばっちりでした！
いつものごとく時間じかんがなくて、タイヤのピックアップは、フロント2本ほんを取とったきり。つまり、リアはピックアップだらけのまんまでコース2000を1本ほん（20分間ふんかん）走はしったのですが、タイヤのフィーリングがすこぶる良よかったのです。

一いち度ど熱ねつが入はいってしまったからでしょう、あの新品しんぴんおろしたてのときのような、圧倒的あっとうてきな感かんじはなかったのですが、それでも相変あいかわらずRE-71RSはグリップが高たかかった。そして滑すべり出だしも穏やでした。
さらに言いうとケース剛性ごうせいが高たかすぎないから、赤あかパンのスプリングレート（フロント7kgｰmm／リア5.5kgｰmm）でもタイヤが反発はんぱつせず、しなやかに追従ついしょうしてくれます。
スプリングレートをどんどん上あげてクルマを速はやくして行いきたいなら、Sタイヤのような剛性ごうせい感かんが必要ひつようかもしれないけれど、マイカーを普段ふだん使つかいする派はにとってこの剛性ごうせいバランスは嬉うれしいですね。
「ストリート最強さいきょうのスポーツラジアル」とは、こういうことなんだな。

さらに発見はっけんだったのは、今回こんかい走はしらせてピックアップが、ほとんど着つかなかったことでした。

これを自分じぶんなりに分析ぶんせきすると、まず前述ぜんじゅつした通とおり、タイヤは既すでに一いち度ど熱ねつが入はいって硬かたくなった状態じょうたいだったから、ゴムが付着ふちゃくしにくくなったのだと思おもいます。
そしてもうひとつは、コース2000の特性とくせいでしょう。コーナーではコース1000よりも負荷ふかが大おおきくかかるから、大おおきなピックアップは走はしっているうちに取とれてしまうのだと思おもいます。

その証拠しょうこにガレージに帰かえってタイヤをクリーニングしてみると、一番いちばん荷重かじゅうが大おおきくかかっているショルダーブロックの面構つらがまえが、とてもきれいでした。
そして中央ちゅうおうリブからイン側がわショルダーにかけて、うっすらとゴムが積層せきそうしていた。タイヤかすが着つくというよりは、ゴムがバターのように塗ぬり重かさねられた感かんじです。

そしてこれを、薄暗うすぐらくなったガレージの外そとで、ひとり蚊かに刺さされながら、スクレーパーでコツコツ取とり除のぞくワケです。
大体だいたい4本ほんで、1時じ間あいだ半はんくらいかなぁ？作業さぎょうしているとコシミズモータースポーツの鶴見つるみさんがやって来きて、「休日きゅうじつに来きて、ずーっとタイヤかす取とってる人ひともいるよ」なんて言いってました。みんな次じの走行そうこうに向むけて、きちんと準備じゅんびをしているんですね。

ところでタイヤかすを取とり除のぞく作業さぎょうって、まるで禅ぜん修行しゅぎょうのようです（笑）。
タイヤの表面ひょうめんをじーっと見みつめていると、その減へり方かたやサーフェスの違ちがいが、なんとなくわかって来きます。少すこし立たち止どまっては、今日きょうの走はしりをイメージしたり。追おい込こみすぎて、トレッドまで切きりそうになったり（汗あせ。
自分じぶんをリセットするにもいい時間じかんだなぁ…と思おもいました。

使つかい込こんで行いくとまた違ちがう顔かおを見みせてくれたPOTENZA RE-71RS。コース2000を走はしらせると細こまかいピックアップは取とれて、今度こんどはうっすらとゴムの層そうが着ついた。これを電動でんどうスクレーパーでコツコツ取とって、次回じかいのためにきれいにしてから家いえに帰かえりました（笑）。

そしてふと、思おもったわけです。
実際じっさいプロのメカニックさんたちから、なんでピックアップを取とるのか話はなしを聞きいてみたいな！　って。
もちろんそれは、ユーズドタイヤを再ふたたび使つかうためです。余計よけいなゴミを取とり去さって、タイヤをきれいにしておくためだとわかっているのですが、もっと他ほかにも理由りゆうがあるんじゃないかしら？と思おもったんです。
せっかくピックアップが着つくような本格ほんかくタイヤを使つかっているんだから、プロから聞きいてみよう！（笑）。

というわけでスーパーGT 第だい5戦せんSUGOラウンドに行いったとき、ちょうど予選よせんが終おわってタイヤをケアしていたBMW Teamスタディのスタッフから直接ちょくせつ聞きいてみました。
いわくタイヤのピックアップを取とり去さる理由りゆうは、とってもシンプルなものでした。

「今こんスーパーGTは、約やく90分ふんという短みじかい時間じかんでマシンのセットを決きめなくてはいけません。だからこれを効率こうりつ的てきに行おこなうためにも、タイヤをきれいにするんです」

「たとえば公式こうしき練習れんしゅう走行そうこうをガソリンを50リッターでスタートしたら、ピットインした後のちは同おなじところまでこれを補充ほじゅうします。そうしないと次つぎにセッティングを変かえたとき、条件じょうけんが変かわってしまいますよね？」

条件じょうけんを揃そろえないと、セットの変更へんこうで走はしりがどう変かわったのかが、純粋じゅんすいにはわからない。例たとえばアンダーステアが出でたとき、車くるま高だかとダンパーと内圧ないあつと……一変いっぺんにやってしまうと、どれが原因げんいんなのかわからなくなるのと同おなじこと？

「そうですね。タイヤもそれと同おなじで、毎回まいかい表面ひょうめんをきれいにして、走はしり出だしの条件じょうけんを揃そろえるんですよ。もちろんゴムの量りょうは足たせないけれど、どれだけ減へったかはきちんと測はかっておきます」

なるほどー！ピックアップを取とるのはタイムを落おとさないためだとばかり思おもっていたけれど、セッティングを進すすめて行いくときにも必要ひつようなんですね。

「でも（GTの場合ばあいはゴムが極端きょくたんに柔やわらかいので）全すべてのかすを取とりのぞけるわけではありません。極端きょくたんに言いうと、“コンタクトパッチ”の部分ぶぶんだけきれいにしてあげればいいんです」

ほぉ！いわゆる“はがき一いち枚まい分ぶん”と言いわれる路面ろめんとの接地せっち面めんを、確保かくほして上あげればいいわけですな。もしかしてボクがサボってイン側がわブロックのタイヤかす取とらなかったの、見みてました？

スーパーGT 第だい5戦せんSUGOラウンドのピット裏うらで話はなしを聞きかせてくれたチームスタディのふたり。左ひだりはメカニックの森もり健太けんたくんで、右みぎはディレクターの岡沢おかざわ優ゆうさん。健太けんたくんが手てにしているのはタイヤの残ざん量りょうを測はかるゲージ。タイヤに開ひらいた小ちいさな穴あな（デプス）に差さし込こんで、なんと/100mmまで計測けいそく可能かのうだそうです！

というわけで、今回こんかいは「ピックアップの取とり方かた」についてお話はなししてみました。かなりマニアックな内容ないようでしたが、虎とらの子このハイグリップタイヤを上手じょうずに使つかって、ベストなセッティングを出だすためにも、役立やくだててもらえれば嬉うれしいです。

GQ JAPAN 初代しょだい“ハチロク”の魅力みりょくとはなにか？
Vol.1 モータージャーナリスト・大谷おおや達也たつや編へん
 Vol.2 モータージャーナリスト・山田やまだ弘樹ひろき編へん

（テキスト：山田やまだ弘樹ひろき、写真しゃしん提供ていきょう：安井やすい宏ひろし充たかし）

自動車じどうしゃ雑誌ざっしの編集へんしゅうに携たずさわり、2007年ねんよりフリーランスに転身てんしん。LOTUS CUPや、スーパー耐久たいきゅうにもスポット参戦さんせんするなど、走はしれるモータージャーナリスト。自称じしょう「プロのクルマ好すき」として、普段ふだんの原稿げんこうで書かけない本音ほんねを綴つづるコラム。