『クルマはトモダチ』一番いちばん小ちいさなセヴンは、一番いちばんマニアック！…山田やまだ弘樹ひろき連載れんさいコラム

2023.03.03 11:00

みなさんゴキゲンよう！

前回ぜんかいはスーパーセヴンのお話はなしでしたが、超ちょうマニアックなクルマにもかかわらず沢山たくさんのコメントを頂いただけて、ちょっと驚おどろきました。
そしてワタクシ、とっても嬉うれしかったです。
ありがとう！

そして今回こんかいも、セヴンです。
いやほんと、もう少すこしだけ、書かかせてください。
なんせ前回ぜんかいは、発売はつばいが終了しゅうりょうしちゃったセヴンのお話はなしばかりでしたから。今回こんかいはちゃんと、新車しんしゃで買かえるセヴン。
「SEVEN 170シリーズ」のお話はなしです。

黄色きいろいナンバーを着つけた、ナロートレッドの「Seven170」。実じつはその名前なまえに、“スーパー”が付ついてないの知しってました？ R仕様しようはご覧らんの通とおり、カーボン製せいのエアロスクリーンしかつかない軽量けいりょうレーシングトリム。ソフトトップすらも、オプション！

さてさてこのセヴン170。ご存ぞんじの方ほうも多おおいですが、軽自動車けいじどうしゃのエンジンを搭載とうさいしています。そのコンセプトは、“Back to the Lotus SEVEN！”って感かんじだな。
スズキ製せいの直列ちょくれつ3気筒きとうターボを搭載とうさいすることで、敢あえて小こぶりに仕立したてたその全長ぜんちょうは、なんとたったの3100mm！全幅ぜんぷくは、1470mm!! 全ぜん高こうは1090mm!!!

ちなみにこれは、ロータス・セヴンシリーズ1（全長ぜんちょう3124×全幅ぜんはば1346×全高ぜんこう1118mm：ワールドカーガイド調しらべ）と同おなじくらいのサイズ感かんです。さらに言いうと170シリーズは、軽自動車けいじどうしゃの規格きかくにきちんと収おさまってます。

さらにその車くるま重じゅうは、軽量けいりょうトリムの170Rだと440kg。
これもロータス・セヴンに当あてはめると、シリーズ2時代じだいの車くるま重おもに相当そうとうします。しかも85PS/6500rpmという出力しゅつりょくも、ターボと自然しぜん吸気きゅうきの違ちがいはあれど、シリーズ3に積つまれたフォード製せいの1.6直列ちょくれつ4気筒きとうOHV（84PS/6500rpm）とほぼ同おなじなんですよね。

Seven170はその可愛かわいらしいスペックとボディサイズから、ゆるキャラぶりばかりクローズアップされますが、実じつはロータス時代じだいのコンセプトを現代げんだいのクオリティで甦よみがえらせた、超ちょうマニアックなセヴンだったわけです。

コクピットも超ちょうスパルタン。エアコンはさすがになくても理解りかいできるけど、軽量けいりょう化かのためにヒーター（オプション）すら着つけてないのは、どうかと思おもうよジャスティン！冬ふゆの撮影さつえい、凍こごえたよ!!

その始はじまりは先代せんだい「SEVEN 130/160」で、スズキの軽自動車けいじどうしゃと軽けいスポーツカーを愛あいするケータハム・ジャパンのブランドマネージャー、ジャスティンさんがこれを企画きかくしました。

日本にっぽんでプロトタイプをコツコツ作つくって、最終さいしゅう的てきにはなんとスズキの供給きょうきゅうを取とり付つけた。そして2014年ねんから、ケータハム社しゃのカタログモデルとなりました。
そのセールスは、日本にっぽん国内こくないだけで200台だい以上いじょうを販売はんばい。さらにはイギリスやヨーロッパでも、ケーターハム社しゃの生産せいさんキャパを軽かるくオーバーするほどの人気にんき者しゃに。

……ってそもそもの生産せいさんキャパもそんなに多おおくはないはずですが、要ようするに本場ほんばのエンスーたちにも認みとめられたわけです。

しかし先代せんだいジムニーがその発売はつばいを終了しゅうりょうすると、エンジンやトランスミッションの供給きょうきゅうも終おわって、SEVEN160もその生産せいさんが一端いっぱしお休やすみに。
そして4代目だいめの現行げんこうジムニーがデビューしたことで、再ふたたびセヴン170シリーズとして復活ふっかつを果はたしたわけであります。

しかしスズキも、ジムニーデリバリーするだけでも大変たいへんなのに、よく部品ぶひんを出だしてくれましたよね。ジャスティン、良よかったね。

乗のり込こむときは、躊躇ちゅうちょせずシートを踏ふんで座すわる。フォーミュラカーみたいでしょ？「ヘタに気きを遣やってボディパネルに体重たいじゅうを掛かけたりすると、むしろ凹へこむぞ」って先輩せんぱいに教おしえられたの思おもい出だすなぁ。

そんなセヴン170ですが、私わたしはこれが多彩たさいな可能かのう性せいを持もったスポーツカーだと思おもっています。
私わたしが試乗しじょうしたのはレーシングトリムの170“R”ですが、フロントスクリーンさえ着つければ意外いがいなほどにノンビリと、気持きもち良よく走はしらせることができます。

駆動くどう方式ほうしきはFFだし車しゃ重じゅうは2倍ばいだけど、それはダイハツ・コペンにも通つうじる、小ちいさなクルマを動うごかす楽たのしさです。

かたや、カスタムの可能かのう性せいも高たかい。エンジンパワーは既すでにケータハム製せいCPUで85PS/6500rpmまで上あがっているから、個人こじん的てきには十分じゅうぶん。それでも日本にっぽん製せいパワーユニットだから、望のぞめばチューニングの可能かのう性せいはまだまだある。

パワーユニットに手てを着つけなくても、たとえばレシオが低ひくい2速そくのギア比ひを見直みなおしたりしたら、さらに面白おもしろくなりそう。そして何なにより、オーバーホールやメンテナンスがしやすい。

そしてまじめに走はしらせると、170Rはかなり独特どくとくな世界せかい観かんを持もっています。

スズキ・ジムニーにも搭載とうさいされる「R06A」型がた直列ちょくれつ3気筒きとうターボ。その小ちいさなヘッドカバーには、“CATERHAM”の文字もじが。その出力しゅつりょくも、専用せんようCUPで85PSまでチューニング済ずみ。でもスターターボタンを押おすと、“プルン！”と可愛かわいくエンジンが掛かかる。マフラーもテールパイプが細ほそく手て可愛かわいらしい。

パワーは前述ぜんじゅつの通とおり85PSしかないですが（それでも先代せんだいから5PSアップしています）、パワー・ウェイト・レシオは約やく5.18と優秀ゆうしゅうだから、まったく遅おそくない。
というか高速こうそく道路どうろを80km/hで走はしるだけでも、ヘルメットなしだと容赦ようしゃなく風ふうに顔面がんめんをブン殴なぐられます。いくら軽量けいりょう化かとはいえ、広報こうほう車しゃにはフロントスクリーン着つけようよ、ジャスティン！

エンジンは7000rpm手間てまでレッドゾーンだけど、上うえまで引ひっ張ぱるよりトルクが落おちたらシフトした方ほうが速はやい。ここらへんは、ターボカーですね。
軽量けいりょうなFRだから回かい頭あたま性せい抜群ばつぐんのコーナリングマシンだと思おもうかもしれないですが、着座ちゃくざ位置いちはリアタイヤ近ちかくだから、普通ふつうに走はしると意外いがいと旋回せんかい中心ちゅうしんからドライバーが遠とおい感かんじ。ハンドルだけでも曲まがれるけれど、クルマ全体ぜんたいで曲まげないと本領ほんりょう発揮はっきできません。

にも関かかわらず、ブレーキを離はなすと65扁平へんぺいのエイボンタイヤが“ポーン”とノーズを浮うかせてしまうから、フロント荷重かじゅうを保たもつのが難むずかしい。ブレーキもよく利きくから、それにはコーナーの奥おくまでブレーキングポイントをずらさないといけない。

いやいやそんなの怖こわいから、我慢がまんなどせずアクセルオフでコーナーに進入しんにゅう。そこからタイミングよく、しかし優やさしくブレーキをかけてあげると、クルマ全体ぜんたいでスイーッと曲まがります。

いまどきの軽自動車けいじどうしゃはもちろん、私わたしのAE86よりも細ほそい、155/65R14サイズの「エイボンZT7」。この細ほそくてエアボリュームのあるスポーツタイヤが、きちんと走はしらせるとなると、車くるま重じゅうの軽かるさと相あいまってなかなか手強てごわい。そして、面白おもしろい。

そしてこの一連いちれんの操作そうさがリズムになると、小ちいさなステアリングの舵かじ角かくがさらに減へって、抜群ばつぐんに楽たのしい運転うんてんができるのです。

かつて私わたしはサーキットでSeven160を走はしらせたのですが、これも素敵すてきな経験けいけんでした。ブレーキングで突つっ込こんでもタイヤが潰つぶれきってしまうだけで、タイムはでない。
むしろブレーキング途中とちゅうから旋回せんかい姿勢しせいに入はいって、4輪りんの抵抗ていこうで減速げんそくしながら曲まがった方ほうが速はやいんです。まるでラリーみたい。それって、バイアスタイヤ時代じだいの走はしりですよ。

ノンビリ走はしらせても、マジで走はしらせても、じつに味あじわい深ぶかいSeven170S/R。こんなセヴンが日本にっぽん発はつのアイデアだなんて、ちょっと嬉うれしい。だから再ふたたびセヴンなのでありました。

GENROQ誌しの特集とくしゅう撮影さつえいでアルピーヌA110と。660ccのエンジンと440kgのボディ（シャシー？）の組くみ合あわせは、最新さいしんの排出はいしゅつガス規制きせい「Euro6」をクリア。アルピーヌは次世代じせだいで電動でんどう化かするけれど、Seven170なら生いき残のこれたりしないかな。

（テキスト：山田やまだ弘樹ひろき）

自動車じどうしゃ雑誌ざっしの編集へんしゅうに携たずさわり、2007年ねんよりフリーランスに転身てんしん。LOTUS CUPや、スーパー耐久たいきゅうにもスポット参戦さんせんするなど、走はしれるモータージャーナリスト。自称じしょう「プロのクルマ好すき」として、普段ふだんの原稿げんこうで書かけない本音ほんねを綴つづるコラム。