『クルマはトモダチ』ロータス・エミーラは「GTカー」…山田やまだ弘樹ひろき連載れんさいコラム

2023.08.07 07:00

みなさんみなさんゴキゲンよう！

GENROQ誌しの取材しゅざいで、ロータス最後さいごの内燃ないねん機関きかんモデルとなる「エミーラ」に試乗しじょうしました。グレードは「V6 ファーストエディション」。エキシージやエヴォーラに搭載とうさいされて実績じっせきのある、トヨタ製せい3.5V6＋スーパーチャージャーを搭載とうさいしたモデルです。
その出力しゅつりょくは405PS/420Nm、トランスミッションは6速そくMTでした。

かなり大おおきくなったけれど、事物じぶつを目めの前まえにすると素直すなおに美うつくしいと思おもえます。走はしりに目めくじらを立たてず、優雅ゆうがかつスマートに走はしりたいならとっても気持きもち良よいGTカー。サイドシルが太ふとくて、割わりと乗のり降おりもしやすいです。

ちなみにエミーラには、AMG製せいの直列ちょくれつ4気筒きとうターボ（356PS）に8速そくDCTを組くみ合あわせたバージョンも存在そんざいします。これは今年ことしのグッドウッドでお披露目ひろめされたようですが、日本にっぽんにはまだデリバリーされていません。

ちなみにワタクシこのV6モデルが日本にっぽんに初はつ上陸じょうりくしたとき、袖ヶ浦そでがうらフォレストレースウェイで走はしらせているんですよね。ただその個体こたいは、プロトタイプでした。内容ないようはwebCGに詳くわしいですが、そのときはまだノーマルの足あし周まわりでラグジュアリーな印象いんしょうが強つよかった。

対たいして今回こんかいのエミーラ V6は完全かんぜんな市販しはんモデルで、エンジンマッピングも完かん調ちょう。そしてその足あし周まわりには、「スポーツシャシー」がインストールされていました。

足あし周まわりは、きちんとダブルウィッシュボーンになっているわけですよ。タイヤからの入力にゅうりょくをアッパーアームとロワアームで支ささえられるから、操舵そうだ感かんがスッキリしている。ただ今回こんかいはタイヤがロード仕様しようだったせいか、ビルシュタインダンパーを組くんだスポーツシャシーでもちょっとだけ、フロントの収おさまりが悪わるかったです。なじめば変かわるのかな？パイロットスポーツCUP2も試ためしてみたいところ。

ということでさっそくエミーラを走はしらせた印象いんしょうですが、私わたしはこれをかなり質しつのよい「GTカー」だと感かんじました。

ロータスといってイメージされるのは、やっぱり「ライトウェイトスポーツカー」ですよね。誰だれもが軽かるさを生いかした、俊敏しゅんびんな動うごきと鋭するどいハンドリングレスポンスを期待きたいすると思おもいます。

もちろんエミーラにも、こうしたテイストは継承けいしょうされます。フロントにエンジンを搭載とうさいしないミッドシップのハンドリングは軽かろやかで、ステアリングを切きれば狙ねらった方向ほうこうにスッと向むきを変かえる。

しかし走はしらせるとその軽かろやかさと同時どうじに、しっとりどっしりとした乗のり心地ごこちがあるんです。
そして思おもいました。エミーラはエヴォーラでなしえなかった、プレミアムスポーツカーとしての道みちを歩あゆみ出だしたんだなぁ……って。

前まえから見みるとフェラーリ的てきで、うしろから見みるとポルシェ的てき（笑）。現代げんだいのトレンドを取とり入いれながら効率こうりつ化かを図はかるとどうしてもそのデザインは似通にかよってしまうのですが、ちょっと笑わらえます。でも、カッコいいんだよなぁ！ほんと、うまいデザイン。

こうしたテイストの最もっとも大おおきな要因よういんとなるのは、ボディのサイズアップでしょうね。ちなみにそのスリーサイズは、全長ぜんちょう4413×全幅ぜんはば1895×全高ぜんこう1226mm。これってエヴォーラの末期まっきモデル「GT410」と比くらべると、全長ぜんちょうで23mm、全幅ぜんはば45mm（！）も大おおきいんです。

ただ全ぜん高こうはスポーツシャシーのせいもあってか、14mmも低ひくくなっているんですよね。ちなみにホイールベースは、2575mmで一緒いっしょ。つまり全長ぜんちょうはちょこっと長ながく、そしてかなりワイドなボディに変身へんしんしたといえます。

となると気きになるのはウェイトですが、6MTモデルでもV6 ファーストエディションは、1458kgになってしまいました。
これって現代げんだいの安全あんぜん基準きじゅんを満みたしたミドル級きゅうスポーツカーとしては標準ひょうじゅん的てきか、それより少すこし下かくらいの重量じゅうりょうですが、エヴォーラGT410（1375kg）と比くらべると83kgほど重おもくなっています。だから身みのこなしは、やっぱりエヴォーラの方ほうが軽かろやか。

このV6はスーパーチャージャーなので、アクセルレスポンスがかなりリニア。420Nmの太ふといトルクを、つま先さきの操作そうさでリニアに扱あつかえます。ただ騒音そうおん規制きせいの影響えいきょうか、あの高こう回転かいてんで発狂はっきょうするサウンドが大人おとなしくなった。また排気はいきが絞しぼられた影響えいきょうか、はたまた車くるま重じゅうか、トップエンドでの炸裂さくれつするパワー感かんが抑おさえられた印象いんしょう。

ただロータスも、その重おもさをかなりうまく生いかしてはいるんですよ。そのGTカー的てきな乗のり味あじは、歴代れきだいロータスのなかでも、最もっとも完成かんせい度どが高たかいと言いえます。
むしろGTカーなのに、ステアリングの切きり始はじめにはライトウェイトスポーツカーのようなヒラリ感かんが味あじわえる、と言いえます。

ロータスの歴史れきしでGTカーというと、初代しょだいエスプリを思おもい出だします。そしてエンジニアリングで言いうと、縦たて置おきエンジン＋縦たて置おきトランスミッションをミッドシップしたエスプリの方ほうが、横よこ置おきFFユニットをそのまま使つかったエミーラよりも、断然だんぜん志こころざしが高たかかった。

でも志こころざしが高たかいクルマって、そこにお金かねが掛かかる分ぶんだけ、製品せいひんとしてのクオリティを上あげるのが大変たいへんなんですよね。そしてクルマそのものの質感しつかんは、エミーラの方ほうが断然だんぜん上うえ。
立たて付つけや遮音しゃおん性せい、乗のり心地ごこちや居住きょじゅう性せい、エアコンはもちろん先進せんしん安全あんぜん技術ぎじゅつにコストが掛かけられているから、GTカーとしての完成かんせい度どが高たかいんです。
きっとロジャー・ムーアやリチャード・ギアも、「エミーラがいい」って言いうと思おもいます。って、わかるかな？

ボディサイズ拡大かくだいのおかげで室内しつないはとても広ひろくなりました。身長しんちょう171cmで純じゅん日本人にっぽんじん体型たいけいの私わたしにはもう一いち回まわり小ちいさくていいけれど、タイト過すぎるという印象いんしょうはなくなりましたね。インテリアは黒くろ基調きちょうでスパルタンですが、ライムイエローのステッチがセンスよくカジュアルさも出だしている。スタートボタンにはスイッチカバーが付ついて、「ただのラグジュアリーカーじゃないぞ」という雰囲気ふんいきもきちんと出だせてます。

一方いっぽうで、「そんなの、オレのロータスじゃない！」と心しんの中なかで叫さけぶファンも多おおくいると思おもいます。わかるぞ、その気持きもち！
でも最近さいきんでいうとアルピーヌA110が成功せいこうしたのも、そこに快適かいてき性せいを提案ていあんできたから。アルミバスタブシャシーむきだしのエリーゼはかっこいいけど、実際じっさいにはね（汗あせ、ということです。

またロータスにしてみれば、エミーラのようなプレミアムスポーツカーで利益りえき率りつを上あげたいところでしょう。そういう意味いみでいうとこのエミーラと、電動でんどうSUV「エレトレ」が成功せいこうしたら、みんなが望のぞむライトウェイトロータスを作つくる余裕よゆうが生うまれるわけです。

泣なかせるのは、ロータスが6速そくMTを捨すててないことですよ。純正じゅんせいノブは重おもさもほどよく、慣性かんせいでスコッとシフト操作そうさができます。ヒール＆トゥも、気持きもち良よく決きまる。6ATもあるし、2.0ターボだと8速そくDCTが選えらべるけど、エミーラのマイルドな走はしりには、敢あえて6MTの古典こてん的てきなスパルタンさが合あうと思おもいます。

話はなしを戻もどせばエミーラは、エヴォーラが当初とうしょ目指めざして挫折ざせつした、プレミアム・スポーツカー路線ろせんを歩あゆみ出だしたのだと私わたしは思おもいました。
そしてガソリン時代じだい最後さいごのロータスというだけに、その終焉しゅうえんが近ちかづけば様々さまざまなエヴォリューションモデルが生うまれるでしょう。
もちろん私わたしもそれには期待きたいします。ただ一方いっぽうでエミーラには、むしろエヴォーラのように途中とちゅうでGTコンセプトを投なげ出だすようなことはして欲ほしくないと思おもっています。

エミーラは、快適かいてきでかっこよいGTカーでいいんですよ。
ただその代かわりにちゃんと、エリーゼの後継こうけいモデルは登場とうじょうさせてね！というわけです。

と言いいながら、エリーゼの後継こうけいとなるEVスポーツカーはアルピーヌとの共同きょうどうプロジェクトが、双方そうほう円満えんまんとはいえ解消かいしょうしちゃったし……。
一体いったい、どうなっちゃうんでしょうねぇ？

12.3インチのモニターには走行そうこうGやパワー＆トルク、ブースト圧あつ、そしてダウンフォース!?（きちんとした測定そくていではなく、イメージレベルでしょう）が表示ひょうじされます。でもまじめに走はしっていたらじっくり見みてられないんだから、お遊あそびですね。ロータスだったらロギング機能きのう付つけて、GPSでもいいからデータロガーにして欲ほしい！

山田やまだ弘樹ひろき

自動車じどうしゃ雑誌ざっしの編集へんしゅうに携たずさわり、2007年ねんよりフリーランスに転身てんしん。LOTUS CUPや、スーパー耐久たいきゅうにもスポット参戦さんせんするなど、走はしれるモータージャーナリスト。自称じしょう「プロのクルマ好すき」として、普段ふだんの原稿げんこうで書かけない本音ほんねを綴つづるコラム。