「北海道ほっかいどうまでファミリーキャンプに行いくのが夢ゆめ」半はん世紀せいき経たった今いまもレジャービークルとして活躍かつやくする1972年ねん製せいのホンダ・ライフステップバン

2022.12.11 10:00

荷物にもつをたくさん積つむことができて、車両しゃりょう感覚かんかくが掴つかみやすく、小回こまわりがきいて維持いじ費ひも安やすい。こういったニーズを満みたしてくれる軽けいバンは、今いまや納車のうしゃ待まちが出でるほど人気にんきで、街まち中ちゅうでも見みかけない日ひはない。

一昔ひとむかし前まえまでは農業のうぎょうや配送はいそう業ぎょうなど“働はたらくクルマ”としてのイメージが強つよかったが、最近さいきんは車中しゃちゅう泊はくができるなど使つかい勝手がってのよさから“趣味しゅみのクルマ”として購入こうにゅうする人ひとも増ふえてきている。

岐阜ぎふ県けんの朝倉あさくら運動公園うんどうこうえん駐車ちゅうしゃ場じょうで開催かいさいされた『ジャストマイテイストミーティング』に参加さんかしていた直子なおこさんも、その汎用はんよう性せいの高たかさから軽けいバンの購入こうにゅうを決きめたひとりだ。

ジャストマイテイストミーティングは「生産せいさん年ねん式しき1985年ねんまでの国産こくさん車しゃ及および空冷くうれいエンジン搭載とうさいのVW」で「鉄てつバンパー装着そうちゃく車しゃ」というのがエントリー条件じょうけんということもあって、直子なおこさんが乗のる軽けいバンは、半はん世紀せいきも前まえに作つくられたホンダ・ライフステップバン(VA)。

4年ねんという短期間たんきかんしか販売はんばいされなかった軽けい商用しょうよう車しゃで、ボディサイズが超ちょうコンパクトにも関かかわらず荷に室しつが広ひろいとあって、当時とうじはビジネスやレジャーに最適さいてきと人気にんきを博はくしていたモデルだ。その中なかでも直子なおこさんの愛車あいしゃはデビューイヤーである1972年ねんに製造せいぞうされた個体こたいだという。

「京都きょうとは道みちが狭せまいからこれくらいのサイズだと運転うんてんもしやすいし、なによりこのミニマム感かんがええんです。ぎゅうぎゅうの密みつになるファミリーカー言いうんかな(笑)かっこわらい？なんか取とってーって言いっても片手かたてで届とどくし、主人しゅじんも大おおきい方ほうじゃないから狭せまくはない。ほんで、なによりお財布さいふに優やさしい♡」

このライフステップバンは軽自動車けいじどうしゃのなかでも自家用じかよう貨物かもつの登録とうろくなので自動車じどうしゃ税ぜいは年間ねんかん6000円えん。さらに自動車じどうしゃ重量じゅうりょう税ぜいが免除めんじょされる対象たいしょうの年とし式しきなんだとか。燃費ねんぴも使つかい方かたや季き節ぶしによって変かわるが12km/ℓ～20km/ℓと良よく走はしってくれるという。

旧きゅう車くるまは維持いじ費ひがかかるというイメージがあったため、家族かぞくで乗のるにはどうなのか？という心配しんぱいもあったそうだが、驚おどろくほど家計かけいに優やさしかったと話はなしてくれた。

「保育園ほいくえんの送おくり迎むかえもこれでしているし、普通ふつうにスーパーに買かい物ものや家族かぞくでお出でかけにも行いきます。“ばんたろー”という名前なまえを付つけて、みんなでばんたろーばんたろーって呼よんでいるんです(笑)かっこわらい。ファミリーカーというか、クルマも家族かぞくの一員いちいんなんですよね」

家族かぞくが寄より添そって楽たのしく暮くらす。

月並つきなみな言葉ことばかもしれないが、中井なかい家かを表現ひょうげんするにはこの言葉ことばがしっくりくる。エアコンやクーラーがないため夏なつは乗のれないものの、秋あきになると復活ふっかつするというばんたろーは、一家いっかの憩いこいの場ばとなっているのだ。

子供こどもたちはばんたろーに乗のるとどこかへ遊あそびに連つれて行いってくれると思おもっているそうで、鍵かぎを持もつとワクワクしてじっとしていられないという感かんじになるそうだ。

「今日きょうもこのイベントに行いくために、朝あさの5時じ45分ふんに『ばんたろーで行いくで～』と上うえの子こに声こえをかけて起おこしたんです。そしたら下したの子こが、ばんたろーという言葉ことばに反応はんのうしてムクリと起おき上あがったんですよ。それを見みて、そんなに好すきなんやなぁって改あらためて思おもいました(笑)かっこわらい。

ばんたろー以外いがいにエブリイにも乗のっているんですけど、ばんたろーとエブリイとどっちで行いく？って聞きいたら、ばんたろーで行いく～って言いいますしね(笑)かっこわらい。下したの子こがもう少すこし大おおきくなったら、4人にんでキャンプに行いこうって言いうてるんです。ただ、4人にん乗のるとさすがに重おもそうやったけど(笑)かっこわらい」

この日ひはイベント参加さんかのため京都きょうとから岐阜ぎふまで高速こうそくで移動いどうしたそうだが、平坦へいたんな道みちに見みえてもクルマが前まえに進すすまず、シフトダウンしながら走はしってきたのだそうだ。さながらクルマにしか分わからない坂さかがあるということなのだろう。

そんなばんたろーは子供こどもたちを乗のせて走はしる機会きかいも多おおいため、出先でさきで故障こしょうするといったことがないように、ラジエター、オルタネーター、キャブレター、燃料ねんりょうポンプ、ホース類るいやフィルター、点火てんか系けい一式いっしき、オイル漏もれ箇所かしょ、ブレーキ廻まわり一式いっしきなどを新品しんぴんに交換こうかんするなど、点検てんけんや対策たいさくも万全ばんぜん。

古ふるいクルマということや、重じゅうステを運転うんてんするのが初はじめてで些いささか不安ふあんもあったそうだが、メンテナンスの甲斐かいもあってその心配しんぱいは払拭ふっしょくされているという。

旧きゅう車くるまというと、部品ぶひん供給きょうきゅうなどに頭あたまを悩なやませるというイメージもあるが、専門せんもん店てんやリプロパーツもあるほか、ホンダN360に精通せいつうしている仲間なかまにも恵めぐまれたということから維持いじするにあたって困難こんなんだと感かんじたことはないという。普段ふだん使つかいできる旧きゅう車くるまが欲ほしいと思おもっていたそうだが、まさにライフステップバンがそれだったと満足まんぞくそうに微笑ほほえんでいた。

整備せいびをしている旦那だんなさまいわく、外装がいそうも含ふくめて細こまかい部分ぶぶんで気きになるところは多々たたあるそうだが、重要じゅうような部分ぶぶん以外いがいはムキになって深追ふかおいしないのがポイントだという。

「全部ぜんぶ完璧かんぺきにするとなると当分とうぶん乗のれなくなってしまうし、ピカピカに仕上しあげたらそれはそれで保管ほかんなどに神経しんけいを使つかうようになるし。気兼きがねなく家族かぞくで扱あつかえなくなるのが嫌いやなんで、簡易かんい補修ほしゅうくらいは別べつとして、本格ほんかく的てきなレストアはしないようにしようと考かんがえています。キリがないし、修理しゅうりばかりだとイヤになってしまうので、何事なにごとも程ほどよさが大事だいじかなと」

直子なおこさんはオリジナルのデザインが好すきで、素もとの状態じょうたいであることにこだわってクルマを探さがしたものの、いざ探さがしてみると改造かいぞうされている個体こたいが多おおく、巡めぐり会あうのに5年ねん以上いじょうもかかってしまったという。
それ故ゆえに、ほぼノーマルで残のこっていたことへの敬意けいいも込こめて、この車体しゃたいに加工かこうはしないというポリシーを守まもっているそうだ。

いっぽうで、縦たて溝みぞパターンが特徴とくちょう的てきなヨコハマタイヤのY45を履はかせてN360のホイールキャップを装着そうちゃくしたり、汎用はんよう品ひんを加工かこうして空冷くうれいVW用ようっぽく仕上しあげたルーフキャリアを装着そうちゃくしたりと、雰囲気ふんいきを壊こわさないように意識いしきしつつカスタムも楽たのしんでいる。

ところで、前述ぜんじゅつでほぼノーマルと述のべたが、どこが大おおきく違ちがうかというとボディカラーの色味いろみである。一見いっけん純正じゅんせい色しょくのようだが、白しろのトーンがまったく違ちがうのだそうだ。ではなぜばんたろーに決きめたのか？その大おおきな理由りゆうは、車体しゃたい番号ばんごうが1000番ばん以内いないと最初さいしょ期きモデルだったからなのだとか。

「角かくが取とれた真四角ましかくのフォルムや、シンプルで細ほそいハンドル、あとは丸まるいライトも大好だいすきなんです。ちょっとフロントを見みてもらってもいいですか？丸まるいライトが目めでウインカーが眉毛まゆげで、困こまっているような顔かおに見みえませんか？この表情ひょうじょうがとっても親したしみがあって好すきなんです。

今いまのクルマにはない、古ふるいクルマならではの醍醐味だいごみというか、所有しょゆうすることで満足まんぞく感かんみたいなものが産うまれます。それもあって、ノーマルであることに妥協だきょうしたくなかったんです。リアガラスにステップバンクラブ“LOVESTEP”の当時とうじ物ぶつステッカーが貼はってあるんですけど、私わたしの手元てもとに来きた限かぎりは、当時とうじの面影おもかげが残のこしてある場所ばしょはそのまま大切たいせつにしていきたいと思おもっています」

「今後こんごの目標もくひょうは、バンパーやグリルの色いろを純正じゅんせい色しょくに戻もどしたり、リヤゲートのエンブレムを貼はり付つけたり、社外しゃがい品ひんに交換こうかんされたマフラーを純正じゅんせいマフラーに交換こうかんしたりとオリジナルに戻もどしていくっていうのもあるんですけど……、1番ばんの夢ゆめは、家族かぞくで北海道ほっかいどうにキャンプに行いくことなんです。どうかな～?いけるかな～?」と、息子むすこさん達たちを見みながら頬ほおを緩ゆるめた。

なんでも、ご夫婦ふうふにとって北海道ほっかいどうは思おもい出での地ちで、2人ふたりでツーリングをしながらキャンプをした場所ばしょなのだとか。そこに今度こんどは家族かぞくそろって行いきたいというわけだ。それをじっと聞きいていた子供こどもたちの目めが輝かがやいたのは言いうまでもない。

低ひくいフロアと高たかいルーフを生いかした積載せきさい量りょうと、乗用車じょうようしゃなみの乗のりやすさを両立りょうりつしたライフステップバンは、日本にっぽんの元祖がんそRV車しゃといってもいいのかもしれない。登場とうじょうから半はん世紀せいき経たった今いまでもレジャービークルとしての役割やくわりを果はたし、家族かぞくの笑顔えがおと一緒いっしょに走はしり続つづけているのだから。