30年ねん前まえ惚ほれて購入こうにゅうしたカプチーノ今いまでも唯ただ一いち無二むにの存在そんざい

2023.10.11 07:00

愛車あいしゃの見みた目めに一目惚ひとめぼれして購入こうにゅうしたというエピソードはよく耳みみにする。しかし一瞬いっしゅんでハマってしまう理由りゆうは必かならずしも見みた目めだけではない。
「直感ちょっかんですね。試乗しじょうした瞬間しゅんかんにビビッとお尻しりにきて、乗のっていて楽たのしいって思おもったんです」
そう嬉うれしそうに話はなす東京とうきょう都と在住ざいじゅうのsuperheroさん(51才さい)は、スズキ・カプチーノ(EA11R)に試乗しじょうした際さいにそのドライブフィーリングに惚ほれ込こみ、新車しんしゃ購入こうにゅうしてから現在げんざいまで30年間ねんかん大切たいせつに乗のり続つづけているという。

「クルマ好すきはDNAに組くみ込こまれていました(笑)かっこわらい」というsuperheroさんが免許めんきょ取得しゅとく後ごに初はじめて買かった愛車あいしゃは、当時とうじ人気にんきだったスポーツカーのフェアレディZ(Z31)の3.0 300ZX 2by2 Tバールーフで、大学だいがく時代じだいの3年間ねんかんを共ともに過すごしたという。
「就職しゅうしょくして親おやから独立どくりつした自分じぶんへのプレゼントとして、自分じぶんが好すきなスポーツカーかオープンカーを買かおうと思おもったんです。候補こうほを絞しぼっていった中なかで残のこったのが、カプチーノ、ビート、FC3C型がたRX-7ファイナルバージョン、NA型がたロードスター、そしてJZA80型がたスープラのエアロトップでした。それらをさんざん試乗しじょうしまくった中なかで自分じぶんに1番ばんピンときたのが、カプチーノだったんです」
その衝撃しょうげきの出会であいというのが冒頭ぼうとうで触ふれた「直感ちょっかんでお尻しりにビビッときた」というものだ。

「どうしてカプチーノにこんなにもハマったのか、まったくわからなかったんです。でも、ある方ほうとお話はなしをさせていただいたときに持論じろんを伺うかがって、その言葉ことばをこのクルマに置おき換かえて考かんがえたときに、すべて当あてはまっていたので驚おどろきました」
なんと、その相手あいてというのはトヨタで86やスープラなどのスポーツモデルの開発かいはつ統括とうかつを担当たんとうしていた多田ただ哲哉てつやさん。
「多田たださんいわく、クルマが曲まがる時ときに軸じくとなる“回転かいてん軸じく"が、できるだけクルマの中心ちゅうしんに近ちかくて運転うんてん席せきのヒップポイントの延長線えんちょうせん上じょうにあるのが理想りそう的てきな設計せっけいで、曲まがる時ときにクルマとドライバーの一体いったい感かんが高たかくなるから、そこが大事だいじなのだと。カプチーノはエンジンがフロントストラットよりも後方こうほうに搭載とうさいされた『フロントミッドシップ』のFR車しゃで、前輪ぜんりんタイヤと後こう輪わタイヤの重量じゅうりょう比ひは51対たい49とほぼド真まん中なかにあるんです。しかもこれ以上いじょうないくらい着座ちゃくざ位置いちが低ひくくて低てい重心じゅうしんな設計せっけいです。だから操作そうさしていて本当ほんとうに違和感いわかんがないんですよね」

superheroさんの熱あつい解説かいせつは、まだまだ続つづく。
「なぜそう言いったのかは僕ぼくもよくわからないんだけど、多田たださんは『リヤタイヤは扉とびらを開あけて、触ふれる位置いちにあるのが正ただしいんだよ』とも仰おっしゃっていて、それもカプチーノと一緒いっしょだなと。『後こう輪わ駆動くどうのタイヤの上うえに体からだが乗のっかっていると、ガっと加速かそくしていく瞬間しゅんかんのモーションにすごく敏感びんかんになれるんだよね』という言葉ことばも、まさにその通とおりだと思おもいました」

また、マクラーレンの開発かいはつ責任せきにん者しゃからもまったくおなじ趣旨しゅしのコメントを聞きく機会きかいがあり驚おどろいたという。
「僕ぼくはクルマの試乗しじょう記きやイベントの情報じょうほう発信はっしんなどクルマ関連かんれんのインフルエンサーもしているのですが、マクラーレン720Sを運転うんてんする機会きかいに恵めぐまれたことがあって、その際さいにフィーリングがカプチーノとまったく一緒いっしょだと感かんじたんです」
720Sといえば全長ぜんちょうは約やく4.5m、幅はばは2mオーバーで720psを発揮はっきするエンジンをミッドシップに搭載とうさいした超ちょう高級こうきゅうスーパーカーだ。そんな大おおきくてハイパワーなクルマとカプチーノに共通きょうつう点てんを感かんじたというのも、回転かいてん軸じくや前後ぜんご重量じゅうりょう配分はいぶん、低てい重心じゅうしん化かといった設計せっけい思想しそうが同おなじだと考かんがえれば納得なっとくだ。

そして、数すう多おおくのスポーツカーを体験たいけんしてきたsuperheroさんがカプチーノを愛あいして止やまないポイントはほかにもたくさんある。
「めちゃくちゃ気きに入いっているのが、手首てくびのスナップだけで素早すばやく入はいるシフトフィールです。ショートストロークで小気味こきみ良よく動うごかせるんですよ。それと、やっぱり車くるま高だかの低ひくいクルマという点てんです。クルマのよれからくる揺ゆれが極端きょくたんに少すくなくて、重心じゅうしんを下さげるメリットはすごくでかいんだなと感かんじますね」

また、彼かれはカプチーノのデザインについても「パーフェクトです」と大だい絶賛ぜっさんだ。
「気きに入いったクルマって100点てん~120点てん満点まんてんだと思おもって買かっても、長ながく乗のるうちに粗あらが見みえてくるって言いうじゃないですか。『ああ、やっぱりね…』って。このクルマも当然とうぜんいろいろと思おもうところはあるんですが、それを全部ぜんぶ飲のみ込こんで納得なっとくできたのは、このカプチーノだけだったんです」
もちろん、サスペンションのストローク量りょうが少すくなくて乗のり心地ごこちが悪わるいことやピーキーな特性とくせい、安全あんぜん装備そうびがないことなど、強しいて挙あげれば“残念ざんねんな点てん"はあるものの、その短所たんしょに目めを瞑つぶることができるくらい圧倒的あっとうてきに長所ちょうしょの比重ひじゅうが高たかかったというわけだ。

ちなみにカプチーノが愛車あいしゃ候補こうほに挙あがったのはオープンカーというのも理由りゆうのひとつで、Tバールーフやタルガトップなど3つのオープン状態じょうたいを楽たのしめるのも良よいところだが、現在げんざいはほとんどオープンで走はしることはないのだという。
「買かってすぐの頃ころは若わかかったしオープンにして走はしるのも楽たのしかったです。でも4、5年ねんを超こえた時点じてんからは、屋根やねを開あけて走はしることは滅多めったになくなりましたね。というのも、構造こうぞう上じょうオープンにするのがちょっと面倒めんどうで時間じかんがかかるんです。それに屋根やねを開あけるとボディがよれて結構けっこうリアが粘ねばる感かんじのフィーリングになるんですよね」

「1992年ねんに新車しんしゃ購入こうにゅうして以降いこう、外装がいそうで唯一ゆいいつ変かえたのがマフラーです。ある時ときにマフラーの出口でぐち部分ぶぶんが錆さびてポロンともげてしまったのでスズキのディーラーで見みてもらったら新品しんぴんは8万まん円えんすると言いわれて、もっと安やすく手てに入はいってステンレス製せいになるということでFUJITSUBO製せいマフラーに交換こうかんしました」
内装ないそうについてもステアリングとシフトノブを大好だいすきなMOMO製せいに交換こうかんしている以外いがいは、壊こわれたところの修理しゅうりや消耗しょうもう品ひんの交換こうかんくらいでオリジナルの状態じょうたいを保たもっているという。

「結婚けっこんしてファミリーカーが必要ひつようになったとき、どうしてもカプチーノを手放てばなしたくなくてセダンのベンツを増車ぞうしゃしたんです。ただ、そうなると駐車ちゅうしゃ場じょうをもう1台だい借かりる必要ひつようがあって、駐車ちゅうしゃ場代ばだい4万まん円えんを25年間ねんかん払はらい続つづけていました(笑)かっこわらい。買かった当初とうしょからボディーカバーをかけて保護ほごしてきて、5年ねんほど前まえにやっとカーポートを増設ぞうせつして屋根やね付つき保管ほかんできるようになりました」
こまめに洗車せんしゃやワックスがけなども行おこなうことで美うつくしい状態じょうたいを保たもち、走行そうこう距離きょりは8万まん3000kmと大事だいじに乗のっていたことが窺うかがえる。

そんなsuperheroさんに、カプチーノとの今後こんごについても伺うかがった。
「やっぱり細こまかい部分ぶぶんのレストアですね。実じつは昨年さくねんの10月がつくらいにクラッチやギア周まわりのオーバーホールを行おこなったんです。見みえないところですけど、全部ぜんぶキレイにしてもらいました。これからもお金かねや手間てまがかかっても長ながく大事だいじに乗のっていきたいと思おもっています。なにせ、私わたしにとって30年ねんも毎週まいしゅうのように洗車せんしゃしてメンテや修理しゅうりをしながら一緒いっしょに過すごしてきたカプチーノは息子むすこのようなものです。これまで過すごした時間じかんは何なに物ぶつにも代かえがたいですね」

前述ぜんじゅつしたように、クルマのインフルエンサーとしても活動かつどうするsuperheroさんは、これまでメルセデスベンツやBMW、ラウンドローバーやジャガー、レクサスなどたくさんのスポーツカーに試乗しじょうしてきたという。にも関かかわらず、彼かれにとって20才さいの時ときに購入こうにゅうしたカプチーノほどピッタリくるクルマは存在そんざいしないというから、きっとカプチーノに出会であったのは運命うんめいだったのだろう。
そんな愛車あいしゃと出会であえたsuperheroさんはとても幸しあわせだなと思おもう。