「国家の意思」を感じる捜査
ユーチューバーとなって5カ月で国会議員となったガーシー氏は、その8ヵ月後には除名されて国会議員の身分を失い、その直後の3月16日、警視庁が暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)などで逮捕状を取ったことで、容疑者となった。
帰国し、国会で不登院を陳謝しなければ、国会議員の身分と不逮捕特権を失って、容疑者となることは明白だった。だからガーシー氏はギリギリまで悩んだ。「帰国せず」を選んだのは、刑事告訴されている常習的脅迫、威力業務妨害、名誉毀損などの容疑に関する捜査が、想定以上の強権を発動するものになるのではないか、と思われたからだ。
俺の逮捕を狙った捜査じゃないか──。
それをガーシー氏は危惧した。その場合、不逮捕特権を使って事情聴取に応じた後、居住しているアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに戻ろうとしても認められない。それどころか「逃亡の恐れあり」ということで、参議院に逮捕許諾請求を出される恐れがあり、ガーシー氏は弱小政党「NHK党」に所属するだけに許諾は免れない。
つまりガーシー氏は、逮捕・起訴され、二度と出国が適わなくことを恐れた。それは杞憂なのか。
検察OB弁護士がこんな見解を示す。
「国会議員に対する捜査だから警視庁の捜査現場だけでなく、警察庁、検察庁、官邸などの思惑が絡み調整もしている。『登院しない国会議員』であるガーシーに対して、当選後の早い段階で刑事告訴を受けて捜査に入り、事情聴取を要請の上、1月には家宅捜索に入った。このスピード感は、単なるSNSを使っての脅迫罪の摘発以上の意欲を感じる」
刑事告訴したのは俳優の綾野剛、ドワンゴ創業者の川上量生、ジュエリーデザイナーの福谷公男の3氏だった。その他、暴露系ユーチューバーとして名を売ったガーシー氏の“口撃”を受けた著名人は数多く、警視庁は積極的に被害状況の確認を行っていた。そのなかには、SNS界に影響力を行使する楽天の三木谷浩史社長やその友人で「官邸の主」のひとりでもある木原誠二内閣官房副長官も含まれていた。
ガーシー氏は、検察OB弁護士同様、テンポ良く続く捜査の裏に「国家の意思」を感じた。ガーシー氏は今、こんな感想を漏らす。
「警察が事件を煽る、作るといったことを平然とし、粛々と俺に対する包囲網を敷いて逮捕の準備をしていました。俺は身の安全のため、帰国しないという選択肢を取らざるを得なかったんです」
この続きは、プレミアム会員限定となります。
現代ビジネスプレミアムにログイン
現代ビジネスプレミアム
倶楽部については、
近日中のサービス
終了を
予定しています。
詳しくは、
こちらの記事をご
参照ください。
すでに会員の方はこちら