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実践する研究者として、日々考えていること。斎藤幸平氏最新刊『マルクス解体』インタビュー〈後編〉(斎藤 幸平) | 群像 | 講談社(1/3)

実践じっせんする研究けんきゅうしゃとして、日々ひびかんがえていること。斎藤さいとう幸平こうへい最新さいしんかん『マルクス解体かいたい』インタビュー〈後編こうへん

いま国内外こくないがいもっと注目ちゅうもくされる研究けんきゅうしゃのひとり、斎藤さいとう幸平こうへいさい新刊しんかん『マルクス解体かいたい――プロメテウスのゆめとそのさき刊行かんこうされました。英国えいこく刊行かんこうした話題わだいしょ日本語にほんごばんであり、斎藤さいとうのこれまでの研究けんきゅう集大成しゅうたいせいである本書ほんしょのエッセンスとねらいとは。同書どうしょをめぐるロング・インタビューを3かいけておとどけします。前編ぜんぺん中編ちゅうへんつづ最終さいしゅうかいは、ほん執筆しっぴつへのかんがかた、メディアでの活動かつどう、そしてこれからの展望てんぼうについて(インタビュー・構成こうせい斎藤さいとう哲也てつや群像ぐんぞう」2023ねん12がつごうより再編さいへん転載てんさいします)。
斎藤幸平『マルクス解体』斎藤さいとう幸平こうへい『マルクス解体かいたい

 あらたな環境かんきょう社会しゃかい主義しゅぎ

ーーじん文学ぶんがくではたりまえのことかもしれませんが、『マルクス解体かいたいむと、あらためて文献ぶんけん正確せいかくくことの重要じゅうようせい気付きづかされます。それをおこたったせいで、マルクスといえば生産せいさんりょく主義しゅぎ国家こっか主義しゅぎという物語ものがたり流布るふしてしまったわけですよね。

斎藤さいとう幸平こうへい以下いか斎藤さいとう わたし物語ものがたりはつくります(笑)。もちろん精緻せいち資料しりょうんだうえでのことですが。これはわたし師匠ししょう平子ひらこともちょう先生せんせい影響えいきょうですね。すこしマニアックなはなしをすると、平子ひらこ先生せんせいとともにつよ影響えいきょうけた大谷おおやただしかい先生せんせいはそういう物語ものがたりまったくしないんです。実直じっちょくで、ストーリーをきらう。

ーーこのほん学術がくじゅつしょながらストーリーせいがありますね。最初さいしょに、マルクスのエコロジーがわすれられた理由りゆう追求ついきゅうするところからはいって、そのきっかけとなったルカーチを媒介ばいかいにして一元論いちげんろん批判ひはんかじる。このつなぎかた絶妙ぜつみょうです。さらに一元論いちげんろんてきなエコモダニズムに同調どうちょうするかたちで、左派さは加速かそく主義しゅぎやユートピア主義しゅぎといったプロメテウス主義しゅぎてくるわけですよね。それらを理論りろんてき水準すいじゅんでしっかり批判ひはんして、最後さいごだつ成長せいちょうコミュニズムでめる。つくづくうつくしいながれだとおもってみました。こういう構成こうせいはかなり意識いしきしてかれたんでしょうか。

斎藤さいとう ケンブリッジ大学けんぶりっじだいがく出版しゅっぱん企画きかくしょした段階だんかいでは、まだ「だつ成長せいちょうコミュニズム」というかんがかたわたしなかになかったんです。当初とうしょは、マルクスとエンゲルスの関係かんけいやルカーチのなおしや一元論いちげんろん批判ひはん中心ちゅうしんでした。「だつ成長せいちょうコミュニズム」というキーワードがてきたのは、2019ねんあきくらいです。

だから最初さいしょから、完成かんせいがたえていたわけではないんですね。ただだいで、一元論いちげんろんやそれと親和しんわせいたか左派さはのプロメテウス主義しゅぎ批判ひはんしているので、かれらとはことなる環境かんきょう社会しゃかい主義しゅぎ展開てんかいしたいという問題もんだい意識いしきは、自分じぶんのなかの宿題しゅくだいとしてありました。

じつはだい洪水こうずいまえに』英語えいごばんは、Karl Marx’s Ecosocialismというタイトルなんですよ。このタイトルは出版しゅっぱんしゃがつけたものなんですが、英語えいごばん読者どくしゃから、タイトルにエコソーシャリズムといてあるのに、エコソーシャリズムのはなしはいってないじゃないかというコメントをもらったんですね。

たしかにあまりいてないんです。そもそも出版しゅっぱんしゃるためにつけたタイトルで、そのもとになっているドイツ語どいつごばんはそういうタイトルではありません。ただ、マルクスのエコソーシャリズムを展開てんかいしたいという気持きもちはあったので、今回こんかいだいさん応答おうとうできたのはよかったです。

しかもそれを従来じゅうらいのエコソーシャリズムとちがうものとしてせた。歴史れきしてきに、だつ成長せいちょうとコミュニズムはずっとなかわるいんですよ。その分断ぶんだんえなければいけないということを、マルクスたいしてしめせたのはおおきな意味いみがあったとおもいます。

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