80年代の市場とは違う
東京株式市場で日経平均株価が3万9098円で取引を終え、「バブル超え」した2月22日以降、前回のバブル時代を振り返り、今回の株高と比較するメディア報道が相次いでいる。
「失われた30年」からの脱却を予知させるだけに概ね歓迎ムードだが、株高の恩恵が経済全体に波及していないと警告する報道も少なくない。確かに実質GDP(国内総生産)はマイナスで個人消費など内需は振るわず、「歪な相場で実力としては3万円あたりが妥当」と、悲観的な評論家もいる。
しかし相場を巡る環境が大きく変わったのは確かである。80年代の証券市場は、粉飾決算がまかり通り、インサイダー取引が横行、相場を作り上げるのが野村證券を始めとする旧4大証券という“鉄火場”だった。
今は、当時と比較にならない。ガバナンス改革が進み、違法・不正を取り締まる金融商品取引法は整備され、ネットで手数料ゼロの取引が可能になり、上場企業の情報発信は充実、努力すれば素人でもディープな企業情報を入手できるようになった。加えて新NISAのように国家が投資に国民を誘う制度を充実させている。
国民の投資への関心と期待は高い。それを裏付けるのが、3月1日に上梓される『わが投資術 市場は誰に微笑むか』だろう。
発行元の講談社は初版1万5000部を用意していたものの、2月初旬、アマゾンで予約受付を開始し始めた時から「あの清原が本を書いた」として話題となり、2月中旬以降、本の売れ筋ランキング1位が続いて重版となり、8万部という異例の刷り部数でのスタートとなった。
東京大学を卒業して81(昭和56)年、野村證券に入社した清原氏は、89年末にピークをつけたバブル時代も、その後のつるべ落としの急落も経験した。ファンド(タワーK1ファンド)開設以降、最大の危機はリーマンショックで、かなりパフォーマンスを落とした。その後反転するものの、一直線というわけではなく浮沈もあり、思わぬ失敗も多かった。だが、そうした経験を糧にファンド資産を積み重ね、昨夏、ファンドを閉じるときには個人金融資産800億円超を築いた。