一般の支持者までが抑圧の標的に
AfD(ドイツのための選択肢)に対する様々な抑圧は、すでに10年間、常に行われてきた。しかし今、政府がそこに積極的に手を突っ込んだことにより、抑圧は佳境に入っている。
AfDの政治家は悪魔化され、支持者までが“ドイツの民主主義に対する潜在的な危険”として攻撃され、社会生活上で不利益を被るケースが頻発。AfDがドイツで公式に認められている政党であることを思えば、常軌を逸した事態だ。
攻撃が激化している理由は、6月のEUの欧州議会選挙、9月の3つの州議会選挙、そして、来年の総選挙だ。現在、ドイツは社民党、緑の党、自民党の3党連立政権だが、肝心の社民党は暴落に次ぐ暴落で、3月30日のInsaの調査によれば支持率15%。ところがAfDは20%で、旧東独のいくつかの州では30%を超えて第1党。AfDの進軍をどうにかして止めようと、現政権は必死だ。
直近の事件で私がショックを受けたのは、AfDの支持者が信用金庫の自分の口座から、党の会費と寄付金の合計430ユーロを振り込もうとしたら、銀行から「受取人が極右であるので、振込は受け付けられない」という内容の手紙が来て振り込めなかったこと。随分前にAfDの共同党首の一人クルパラ氏が、「銀行口座を閉められた」と言っているのを聞いたが、今では標的は支持者にまで広がりつつあるらしい。
また、慢性疾患を持つAfDの支持者が、かかりつけのクリニックでいつも通り薬の処方箋を出してもらおうとしたら、「あなたの思想には同意できないので、違う医者を探してくれ」と断られたという話にも驚愕。
数ヵ月前には、有名な乳業グループ「ミュラー」社の、とっくの昔に引退した経営者テオ・ミュラー氏(84歳)が、AfDのもう一人の共同党首アリス・ヴァイデル氏と親交があると言ったことに緑の党の政治家などが大騒ぎをして、同社の製品の不買運動が起こった。ちなみにヴァイデル氏は、ある時、突然、子供が誰とも遊んでもらえなくなり、住居をスイスに移したという。
それどころか、AfDの政治家に対する襲撃まで起こる。ところが、血だらけになったブレーメンの地方議員の写真に、緑の党の政治家オツデミア氏(現・農相)は、「たとえAfDの議員に対してであっても暴力は良くない」とツイート。自業自得と言っているに等しいこのツイートに頷くドイツ人がいるかと思っただけで、私は背筋が寒くなった。
昨年10月には、クルパラ氏が野外集会の際、支持者にもみくちゃにされた途端、腕に痛みを感じ、その直後に倒れて病院に運ばれるという事件も起こった。診療の結果、腕に注射針のような跡があったというが、メディアは一切動じず、あたかもAfDがデマを飛ばしていると言わんばかりの意地悪な報道ぶりだった。
先月3月23日には、ドイツ南部のハイルブロン市で、AfDのイベントが計画される予定だったが、その前日の夜中、ホールのドアの鍵が壊され、会場に激しい刺すような匂いの液体が撒き散らされたという。しかし、このニュースは、ごく小さな地元紙で報道されたのみで、私が知ったのも10日以上経ってからだった。
AfDのイベント会場で、事前に窓ガラスが破られたり、壁がスプレーで汚されたり、当日、訪れる人々が威嚇されたりというケースは、これまでもしばしば起こっていたが、主要メディアでは一切報道されない。しかも、これらは犯罪なのに警察が積極的に動かないため、当然のことながら、誰もAfDには会場を提供しなくなる。
こういうことを耳にするたびに、私はメディアの「報道しない自由」に呆れ返り、同時に、AfDの政治家の根気と勇気に頭が下がる。
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