これが本当に「福祉国家の実現」なのか
2021年12月、ドイツでは社民党・緑の党・自民党の3党連立で現政権が成立したが、それ以来、すでにメルケル時代に始まっていた政治の左傾化がさらに急速に進行中だ。社会主義化が進むとどうなるかということは、近い過去に東ドイツが証明してくれている。簡単に言えば、自由がなくなり、産業が衰退するのだが、それが今のドイツで進んでいるわけだ。
実は、昨年のドイツの税収は、連邦と州を合わせて史上最高だった。しかし、エネルギー政策や難民政策の失敗、無意味な気候政策へのバラマキなどで、底なしにお金が掛かり、政府は完全な金欠。現在、次期予算も組めないでいる。
そもそも、この2年半の間に実施された政策で、国家と国民の利益に資するものはほとんど見当たらない。与党の一角にいる自民党が提案する産業興進案は、緑の党の産業破壊政策に潰されてしまう。結局、与党3党がすんなり決めたのは、大麻の一部解禁や、未成年でさえ簡単に性別を変えられる「自己決定法」の制定など、国民の支持を全く得られていない政策ばかりだった。
しかも、政府はどんなに金欠でも、特定な場所へのバラマキだけはやめる気がない。今、そこにウクライナへの膨大な支援まで加わったため、勤労者からさらに多くのお金を搾り取ろうとしている。ドイツの納税者の負担はすでに世界一だ。
実は、23年から支給のはじまった「Bürgergeld=市民金」もバラマキの一つ。暮らしに困っている人が申請して受給する。外国人でも滞在許可があれば貰える。これを熱心に進めたのが社民党のハイル労働相で、氏によれば「福祉国家の実現」。しかし、本当にそうなのか?
市民金は、生活保護と失業手当をひとまとめにしたもので、これまでの社会保障制度「ハーツIV」と基本的には同じだが、違うのは、受給者にすこぶる親切であること。ハーツIVでは、働ける人は働くことが条件だったし、援助を受けられるのは、自分の財産をほぼ使い切ってからだった。
ところが、新しい市民金ではこの条件が緩く、基本的に、働ける人でも、働きたくなければ受けられるし、初年は、4万ユーロ(現行レートで約670万円)までなら自分の財産(貯蓄や不動産)があっても申請が可能だ(2年目からは1万5000ユーロ=約252万円までになる)。
なお、斡旋された職を拒絶し続けたケースに対する制裁も緩和され、ハーツIVでは受給額3割カットだったのが、市民金では1割カットのみ。市民金の期限は1年だが、2年目も失業していれば再申請で継続される。
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