古代ギリシャの原子論から、コペルニクスの地動説、ガリレオの望遠鏡、ニュートン力学、ファラデーの力線、アインシュタインの相対性理論まで、この世界のしくみを解き明かす大発見はどのように生まれてきたのか?
親子の対話形式でわかりやすく科学の歴史を描き出した新刊『父が子に語る科学の話』。本連載では、26万部を超えるベストセラー『独学大全』の著者・読書猿さんによる解説をお届けする。
*本記事は、ヨセフ・アガシ著/立花希一訳『父が子に語る科学の話 親子の対話から生まれた感動の科学入門』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
なぜ科学には「冷たい」イメージがあるのか?
「科学」と聞いて、思い浮かぶイメージは何だろうか? 白衣を纏い、無機質な実験室で黙々と研究に励む科学者の姿? 黒板を埋め尽くす数式や難解な専門用語? あるいは世界を変えるような画期的な発明の数々?
今日、科学を「役立たず」だと謗る人は多くない。「理解できない」と拒絶するのもはばかられる。科学はとても役に立っている。日常生活の隅々までいきわたり、我々の生活を支えている。
けれども「科学はみんなに愛されている」とは、とても言えない。理科嫌いの子どもたちが増えている。それも歳を重ねるごとに、理科好きな子が減り、嫌いな子が増えるという。この延長線上に、科学嫌いの大人がたくさん生まれている。
今でも、科学的根拠に乏しく多くの研究で否定されている主張を、信じ広めようとする行動や活動は枚挙に暇がない。これらは個人的信念にとどまらず、政策決定に悪影響を及ぼすことすらあり、環境を悪化させたり、人命を奪ったりする事態につながることだってある。
そうした科学不信は、過激な反科学運動に打ち興じる人たちばかりのものではない。多くの人が、便利で欠くべからざる存在意義を認めながらも、科学にうっすらとした忌避感、「縁遠さ」や「冷たい」イメージを抱いている。一体なぜ、私たちは科学を「難しい」「自分とは関係ない」と感じるようになってしまったのだろうか?