人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。
100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか?人口減少が「10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか?についての明らかにした書だ。
※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。
将来の人口減少を加速させる要因
東海・北陸各県から人口を引き寄せ、人口増加が続いている名古屋市だが、唯一、人口流出となっているのが東京圏だ。
創生本部の人口移動分析概要によれば、2017年は2936人の転出超過となった。同調査による名古屋市への全国各地からの転入超過数は4874人だから、この数値と比較すれば、約6割の規模が東京圏へと吸い寄せられていることになる。
総務省の「住民基本台帳人口移動報告(2018年結果)」が性別、年齢階級別に転出入の状況を調べているが、日本人男性で最も転入超過数が大きくなっている年齢層は20~24歳の3036人で、25~29歳332人、15~19歳280人と続いている。日本人女性は20~24歳2743人、25~29歳516人、15~19歳415人の順で、男女とも大学進学や就職を機に名古屋市に引っ越してくる人が多いことが分かる。
これらの数字には進学で一旦は名古屋市から離れたものの、地元に帰って就職する人も相当数含まれるものと見られる。
一方、名古屋市の「名古屋市の世帯数と人口」(2018年)がこうした年齢階級別に転出先を加えた数字を追っている。名古屋市から唯一の転出超過となっている東京圏へ、どういう人が移り住んでいるかを見てみよう(名古屋市の資料では東京圏ではなく北関東3県を含む「関東」という区分になっているが、大きな差はないものと見られる)。
関東に対しては、すべての年齢階級で転出超過となっているが、最も大きい数字となっているのが20代の1147人で、30代の1082人が続く。20代をさらに詳細に区分すると25~29歳が970人で、20~24歳の177人を大きく上回る。社会人になってから東京圏などへ移り住む人が多いことを浮き彫りにする結果だ。
さらに対関東を男女別にしてみると、男性の場合20~24歳が唯一、転入超過(147人)となっている。女性については25~29歳が464人、30~39歳で559人と出産期にある年齢での流出が目立つ。この年齢層の流出は出生数を押し下げ、将来の人口減少を加速させる要因となるだけに看過できない。