高速こうそくなSSDが普及ふきゅうしているのになぜクラウドのSSDの速度そくどは変かわらないのか？

SSDのスループットはここ6年ねんで爆発ばくはつ的てきに高速こうそく化かしているのですが、なぜか、クラウドストレージのSSDインスタンスの速度そくどはまったく変化へんかしていません。その理由りゆうを、データベースアーキテクトのヴィクトル・リーズ氏しが推測すいそくしています。

Database Architects: SSDs Have Become Ridiculously Fast, Except in the Cloud
http://databasearchitects.blogspot.com/2024/02/ssds-have-become-ridiculously-fast.html

SSDは内部ないぶに独立どくりつしたフラッシュチップが複数ふくすう内蔵ないぞうされており、それぞれに並列へいれつアクセスする仕組しくみなので、SSDコントローラーが正常せいじょうに動作どうさしている限かぎり、スループットはホストへのインターフェイス速度そくどに依存いぞんします。

リーズ氏しによると、過去かこ6年間ねんかんでSATAからPCIe 3.0へ、さらにPCIe 4.0、PCIe 5.0と急速きゅうそくに移行いこうが進すすみ、SSDのスループットは爆発ばくはつ的てきに高速こうそく化かしたとのこと。また、コストあたりの容量ようりょうも増加ぞうかしています。

SSDの中なかでもデータセンター向むけのトップ製品せいひんだと、最大さいだいで毎秒まいびょう13GBのスループットとランダム読よみ取とりで270万まんIOPS以上いじょうの性能せいのうを誇ほこります。最新さいしんのサーバーはPCIeレーンが約やく100個こあり、最大さいだい帯域たいいき幅はばで数すう十じゅう個このSSDを搭載とうさいすることが可能かのう。実際じっさいにリーズ氏しの研究けんきゅう室しつにはキオクシアのCM7-Rを8台だい搭載とうさいしたシングルソケットZen4サーバーがあり、毎秒まいびょう100GBのI/O帯域たいいき幅はばを実現じつげんしているそうです。

クラウドストレージにSSDを採用さいようした事例じれいとして初期しょきのものは、2017年ねん初頭しょとうに提供ていきょうが始はじまったAmazon EC2のi3インスタンスがあります。サービス開始かいし当時とうじ、NVMe SSDはまだ高価こうかで、1台だいのサーバーにNVMe SSDを8台だい搭載とうさいしたi3インスタンスは「非常ひじょうに注目ちゅうもくに値あたいするものだった」とリーズ氏しは表現ひょうげんしています。

性能せいのうは書かき込こみが毎秒まいびょう1GB、読よみ取とりが毎秒まいびょう2GBで、まさに最先端さいせんたん。2019年ねんに提供ていきょうが始はじまったi3enインスタンスでは、コストあたりのストレージ容量ようりょうが2倍ばいに増加ぞうかしました。

その後ごも複数ふくすうのSSD採用さいようインスタンスが現あらわれたのですが、不思議ふしぎなことにi3インスタンス登場とうじょうから7年ねん経過けいかしても、速度そくどは変化へんかしませんでした。

なぜ進化しんかしなかったかについて、答こたえを知しることはできないため、リーズ氏しはいくつか推測すいそくを立たてています。

1：
SSDは書かき込こみ回数かいすうの総数そうすうが決きまっているため、頻繁ひんぱんなデバイス障害しょうがいの発生はっせいを避さけるために、意図いと的てきに書かき込こみ速度そくどを制限せいげんしている。ただし、読よみ取とり速度そくどまで制限せいげんされる理由りゆうが不明ふめい。

2：
毎秒まいびょう数すう十じゅうGBという速度そくどのI/O帯域たいいき幅はばを活用かつようできるストレージシステムがほとんどないため、「より高速こうそくなストレージ」の需要じゅようがない。高速こうそくストレージデバイスが普及ふきゅうしていない限かぎりは既存きそんのシステムを最適さいてき化かする動機どうきもない。

3：
Amazon EC2で高速こうそく・安価あんかなNVMeインスタンスのストレージの提供ていきょうが始はじまると、いわゆる「イノベーションのジレンマ」によって、他たのストレージサービス、特とくにAmazon EBSのコスト構造こうぞうが破壊はかいされてしまう。小規模しょうきぼなベンダーが競争きょうそう力りょくを得えるために第一歩だいいっぽを踏ふみ出だすことを期待きたいする人ひともいるかも。

リーズ氏しは、推測すいそくした内容ないようについていずれも納得なっとくしていないとのことで、「毎秒まいびょう10GBの速度そくどが出でるクラウドインスタンスが登場とうじょうして、この投稿とうこうが時代遅じだいおくれになることを願ねがっています」と締しめくくっています。