手描てがきからデジタルへと映画えいがの背景はいけい技術ぎじゅつはどのように進化しんかしてきたのか、そしてAI時代じだいにどうなっていくのか？

テキストを入力にゅうりょくするだけで高こう品質ひんしつな画像がぞうや動画どうがを出力しゅつりょくできる生成せいせいAIの登場とうじょうにより、AIが中国ちゅうごくでイラストレーターの仕事しごとを奪うばい始はじめているというレポートや、生成せいせいAIはゲーム開発かいはつのあり方かたを大おおきく変かえつつあるとする報道ほうどうなど、高度こうどな仕事しごとのレベルで生成せいせいAIが活用かつようされるケースも多数たすう確認かくにんされています。映像えいぞう制作せいさくにおいては、実写じっしゃ映像えいぞうと背景はいけい画がを合成ごうせいする「マット」という技術ぎじゅつを用もちいたマットペイントから3DCG背景はいけいの合成ごうせいと進化しんかしてきましたが、AIが業界ぎょうかいを変かえる新あらたなステップになる可能かのう性せいが高たかまっています。映画えいがの背景はいけい技術ぎじゅつに関かんする進化しんかの歴史れきしと、AIがそれをどのように変革へんかくしうるかについて、オンラインメディアのVoxがムービーで解説かいせつしています。

The evolution of the movie backdrop - YouTube

マットペイントとは、手描てがきの絵えを光学こうがく合成ごうせいすることにより、実写じっしゃと背景はいけいを組くみ合あわせる技術ぎじゅつです。ムービーでは1939年ねんに公開こうかいされた「オズの魔法使まほうつかい」を例れいに挙あげ、現実げんじつに存在そんざいする演者えんじゃたちを、実際じっさいのセットではなく、背景はいけいイラストと組くみ合あわせている様子ようすを示しめしています。

ムービーでは、映画えいがやゲームのマットペインターを10年ねん以上いじょう務つとめ、3Dアセット管理かんりツール「Cargo」などで知しられるKitBash3Dの共同きょうどう設立せつりつ者しゃでもあるマックス・バーマン氏しが、映画えいがの背景はいけい美術びじゅつに関かんする変遷へんせんを解説かいせつしています。

バーマン氏しによると、初期しょきの手描てがきスタイルからデジタルへの移行いこうは何なに段階だんかいかのステップを踏ふんでおり、最初さいしょに大おおきな影響えいきょうを与あたえたのが、「Adobe Photoshop」の存在そんざいであるそうです。

Photoshopはレイヤーを管理かんりすることができるという点てんが画期的かっきてきで、背景はいけいを1枚まい描えがく場合ばあいでも、合成ごうせいする実写じっしゃの手前てまえになる部分ぶぶんと奥おくに配置はいちされる部分ぶぶんとを立体りったい的てきに構成こうせいすることができるようになりました。自由じゆうなカラー、便利べんりなブラシを活用かつようした上うえで、背景はいけいと前景ぜんけいを別々べつべつに編集へんしゅうできるため、手描てがき背景はいけいに革新かくしん的てきな変化へんかをもたらしています。

次つぎに流行りゅうこうしたのが、複数ふくすうの写真しゃしんを組くみ合あわせて加工かこうし、1枚まいのイラストを作成さくせいする「フォトバッシング」という技法ぎほう。背景はいけいを手描てがきで仕上しあげるのではなく、実際じっさいの写真しゃしんを組くみ合あわせて作つくることから、より簡単かんたんにリアルな背景はいけいを作成さくせいすることができます。

背景はいけいを描えがくことなく写真しゃしんを組くみ合あわせて加工かこうする「フォトバッシング」をマットペインターはどう受うけ止とめていたのか、Voxがバーマン氏しに尋たずねたところ、バーマン氏しは「一部いちぶのマットペインターは、フォトバッシングを疑問ぎもん視ししたと思おもいます。テクノロジーが変化へんかする時代じだいは、それが一般いっぱん的てきになるまでの間あいだ、新あたらしいテクノロジーが不正ふせい行為こういとみなされます」と回答かいとうしています。

その次つぎの背景はいけい技術ぎじゅつに関かんするステップは、2Dレイヤーを3D空間くうかんに配置はいちする技法ぎほうで、ムービーではこれを「2.5D」と呼称こしょうしています。

バーマン氏しも携たずさわった「アイアンマン3」では、3D空間くうかんに雲くもと空そら、海岸かいがん線せんを描えがくことで、立体りったい的てきな背景はいけいを作つくり出だしています。

3D空間くうかんに背景はいけいを描えがくことで、そこに実写じっしゃを合成ごうせいしたとき、「アイアンマンが雲くもを引ひき離はなす勢いきおいで飛とび、海岸かいがん線せんから遠とおざかる」という立体りったい的てきな動どうを演出えんしゅつすることができます。

「アイアンマン3」の公開こうかいは2013年ねんで、この頃ころには高こうクオリティの3Dが浸透しんとうしていましたが、一部いちぶの背景はいけいには2.5Dが利用りようされています。バーマン氏しによると、3Dの背景はいけいモデルを使つかって動うごきをシミュレーションするよりも、3D空間くうかんに手描てがきするほうがはるかに安価あんかかつ簡単かんたんであったため、単純たんじゅんなシーンや短みじかいカット、あるいは3Dで作つくるのが大変たいへんすぎる広範囲こうはんいの遠景えんけいなどは、マットペインターによる手描てがき背景はいけいを立体りったい的てきに配置はいちする2.5Dの合成ごうせいを用もちいる方ほうが優すぐれていたそうです。

しかしその後ご3D技術ぎじゅつが発展はってんし、3D空間くうかんに手描てがきするのと同おなじくらい、あるいはそれよりも簡単かんたんかつ短みじかい時間じかんで、同おなじ背景はいけいを作成さくせいすることができるようになりました。KitBash3Dが提供ていきょうしているような3Dアセットはドラッグ&ドロップするだけで基本きほんの背景はいけいやアイテムを用意よういできるため、以前いぜんは作成さくせいが面倒めんどうだった大量たいりょうのビル群ぐんなども、写真しゃしんを切きり貼はりするフォトバッシングよりも簡単かんたんに仕上しあげることができます。

バーマン氏しは背景はいけい技術ぎじゅつの変化へんかについて、「2Dから3Dへの移行いこうに伴ともない、レンダリングとコンピューティングもこれまで以上いじょうに安価あんかで使つかいやすくなりました。そのため、マットペインターをはじめとする2Dアーティストの必要ひつよう性せいはますます薄うすまっています」と語かたりました。そこで次つぎのステップになる可能かのう性せいがあるのが「生成せいせいAI」です。

生成せいせいAIは思おもったものをそのまま描えがくということは難むずかしく、大抵たいていの場合ばあいは大量たいりょうのプロンプトや何なん千せん枚まいという出力しゅつりょくなどの試行錯誤しこうさくごに、細こまかい手直てなおしを入いれるという反復はんぷく的てきなプロセスが必要ひつようです。それでも手描てがきするより圧倒的あっとうてきに素早すばやく手軽てがるに高こうクオリティの画像がぞうを出力しゅつりょくできますが、作品さくひんとして生成せいせいAIを利用りようするのはあくまで個人こじんのクリエイターにとどまっており、ハリウッドでは生成せいせいAIを制作せいさくに利用りようしている例れいはありません。その理由りゆうとしてバーマン氏しは「まだクオリティが完全かんぜんではないこと」「トレーニングデータの所有しょゆう者しゃが不透明ふとうめいで、制作せいさくした画像がぞうの所有しょゆう者しゃが不明ふめいであるという合法ごうほう性せいの問題もんだい」を挙あげています。しかし、これまでの技術ぎじゅつ革新かくしんと同おなじように、生成せいせいAIも最終さいしゅう的てきには新あたらしいテクノロジーとして確立かくりつし、次つぎの映画えいが技術ぎじゅつのステップになるとバーマン氏しは述のべています。