企画展「田辺聖子と文学賞-受賞と選考と-」が6月4日、大阪府立中央図書館(東大阪市荒本北1、TEL 06-6745-0170)1階展示コーナーで始まった。
芥川賞受賞作「感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)」初版本や芥川賞発表誌
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田辺聖子さんが「感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)」で1964(昭和39)年に第50回芥川龍之介賞を受賞して60年を迎える今年の企画展。パネルでは、田辺さんが15歳の時に雑誌「少女の友」に投稿した作文が川端康成に選ばれ入選した時の喜びや、芥川賞を受賞した日の夜の出来事など、田辺さんの文学賞受賞にまつわるエピソードを自伝的作品の引用文とともに紹介する。「感傷旅行」が書かれた当時の時代背景や装丁デザインなど、作品そのものを紹介するパネルも並ぶ。
田辺さんは芥川賞受賞から20年以上、文学賞を受賞することはなかったが、1987(昭和62)年2月に刊行した評伝小説「花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女」で第26回女流文学賞を受賞。芥川賞受賞以来23年ぶりの受賞となった。その後、数々の文学賞を受賞する。1987年5月には、女性作家として初めて直木三十五賞の選考委員の就任が発表された。
大阪樟蔭女子大学田辺聖子文学館学芸員の住友元美さんは「芥川賞受賞者で直木賞選考委員になったのは2人だけで、当時は非常に話題を集めた」と解説する。多くの小説やエッセイの連載を抱えていた田辺さんは、直木賞選考委員のほかにも山本周五郎賞、小説すばる新人賞、サントリーミステリー大賞の選考委員も務め、選考委員としても多忙を極めた。
選考委員に関する展示では、田辺さんが選考委員を務めた主な文学賞の受賞者と受賞作品、選評掲載誌のリストや、「田辺聖子文学館ジュニア文学賞」の紹介パネルを展示。展示ケースでは、受賞作品に対する田辺さんの選評を掲載した雑誌、受賞者や一緒に選考委員を務めた作家が語るエピソードなど、選考委員としての田辺さんについて書かれた対談記事やエッセイなどを展示する。
住友さんは「選評やエピソードを読むと田辺さんの人柄が分かるし、文学に対する向き合い方が分かる。選評が掲載されている雑誌も図書館にあるので、この作家がこう評している作品はどんな作品か、など、この展示が読書の入り口なれば」と話す。会場には、同図書館が所蔵する関連図書も集めて展示する。
6月29日には、大阪樟蔭女子大学田辺聖子文学館(菱屋西4)の展示を住友さんの解説で見学するツアーを開催。参加無料、先着40人。申し込みは大阪府行政オンラインシステムと大阪府立中央図書館2階カウンターで6月8日9時から受け付ける。
開館時間は9時~19時(土曜・日曜・祝日は17時まで)。月曜、第2木曜休館。6月23日まで。