5分ふんでわかる『罪つみと罰ばち』！ラスコーリニコフはなぜ人ひとを殺ころした？【あらすじと解説かいせつ】

小説しょうせつ『罪つみと罰ばち』のあらすじの内容ないようを、要約ようやくして解説かいせつ！

本ほん作さくはロシアの作家さっかドストエフスキーの代表だいひょう作さくで、さまざまな文豪ぶんごうに影響えいきょうをあたえた名作めいさくです。岩波書店いわなみしょてんや新潮社しんちょうしゃなどから出版しゅっぱんされており、江川えがわ卓たくの訳わけが読よみやすいとの評判ひょうばんがあります。

漫画まんがや映画えいがにもなっており、日本にっぽんでは「wowow」で『罪つみと罰ばち』を原案げんあんにドラマ化かされました。高良こうら健吾けんご、水川みずかわあさみといった豪華ごうかキャストでも話題わだいに。また、三浦みうら春はる馬ば主演しゅえんで舞台ぶたい化かもされました。

ここでは、本ほん作さくのあらすじを簡単かんたんにご紹介しょうかいします。

罪つみと罰ばっ〈上うえ〉 (岩波いわなみ文庫ぶんこ)

著者ちょしゃ

ドストエフスキー

出版しゅっぱん日び

1999-11-16

舞台ぶたいは、ロシアのペテルブルグ。主人公しゅじんこうのラスコーリニコフは、学費がくひを払はらえず大学だいがくを中退ちゅうたいし、狭せまい屋根裏やねうら部屋へやに下宿げしゅくしています。

彼かれは「1つの罪悪ざいあくは100の善行ぜんこうによって償つぐなわれる」という思想しそうを持もっています。その思想しそうに基もとづき、街まちで有名ゆうめいな金貸かねかしの老婆ろうばアリョーナ・イワーノブナを殺ころして、彼女かのじょの財産ざいさんを孤児こじ院いんに寄付きふしようという計画けいかくを立たてていました。

計画けいかく通どおり老婆ろうばを殺ころしますが、そこで思おもわぬ事態じたいが彼かれを襲おそいます。

作者さくしゃ、フョードル・ドストエフスキーとは？

白痴はくち 1 (光文社こうぶんしゃ古典こてん新訳しんやく文庫ぶんこ)

著者ちょしゃ

ドストエフスキー

出版しゅっぱん日び

2015-11-11

『罪つみと罰ばち』の作者さくしゃであるドストエフスキーは、『カラマーゾフの兄弟きょうだい』『白痴はくち』などで知しられるロシアの文豪ぶんごうです。多作たさくで知しられていますが、『罪つみと罰ばち』『悪霊あくりょう』『白痴はくち』『未成年みせいねん』『カラマーゾフの兄弟きょうだい』の5つは「5大だい長編ちょうへん」と呼よばれ、「人間にんげんの罪つみとはなにか」「神かみはいるのか」といった深遠しんえんなテーマを扱あつかっています。

ドストエフスキーは一体いったいどんな人物じんぶつだったのでしょうか。

彼かれは短編たんぺん小説しょうせつ『貧まずしき人々ひとびと』でデビュー。この作品さくひんを読よんだ詩人しじんのネクラーソフが、感激かんげきのあまり夜中よなかに彼かれの家いえを訪おとずれたという逸話いつわが残のこっているほどです。

その後ごも精力せいりょく的てきに創作そうさくをしていましが、社会しゃかい主義しゅぎ系けいのサークルに入はいった罪つみで逮捕たいほされ、死刑しけいを宣告せんこくされます。しかし死刑しけい執行しっこうの数すう分ふん前まえに恩赦おんしゃがい渡いわたされ、シベリアでの労働ろうどうに変更へんこうされました。

この経験けいけんは彼かれの人生じんせいに大おおきな影響えいきょうを与あたえ、『白痴はくち』では死刑しけい執行しっこう直前ちょくぜんの死刑しけい囚しゅうの気持きもちが描えがかれています。彼かれはシベリアで過すごす間あいだに聖書せいしょに触ふれ、釈放しゃくほうされたあとはキリスト教きりすときょう的てきな人道じんどう主義しゅぎをテーマにした作品さくひんを書かくようになりました。

その一方いっぽうでギャンブル依存いぞん症しょうだったことも知しられており、ほとんどの作品さくひんはギャンブルによる借金しゃっきんを返かえすために書かかれていました。

「もっとも影響えいきょうを受うけた本ほんは？」という質問しつもんに「通帳つうちょう」と答こたえた逸話いつわが残のこっています。自みずからのギャンブル経験けいけんを題材だいざいにした『賭博とばく者しゃ』という作品さくひんも書かいています。

登場とうじょう人物じんぶつを紹介しょうかい！

本ほん作さくの魅力みりょくは、登場とうじょう人物じんぶつにあります。個性こせい的てきな彼かれらが、複雑ふくざつな物語ものがたりを織おりなすのが見みどころです。ここでは、主おもな登場とうじょう人物じんぶつをご紹介しょうかいします。

• ラスコーリニコフ
  本ほん作さくの主人公しゅじんこう。頭脳ずのう明晰めいせきな美び青年せいねんですが、大学だいがくは中退ちゅうたいして貧まずしい生活せいかつをしています。
  「1つの罪つみは100の善行ぜんこうによって償つぐなわれる」という理論りろんのもと、金貸かねかしの老婆ろうばを殺害さつがい。その現場げんばに老婆ろうばの妹いもうとまで殺ころしてしまい、罪つみの意識いしきにおそわれます。
  人ひとを殺害さつがいしたことを除のぞけば善良ぜんりょうな青年せいねんで、貧まずしい家庭かていにほどこしをしたり、過去かこには火事かじのなかから子こどもを救出きゅうしゅつしたこともあります。彼かれがどんな末路まつろをたどるのかが、最大さいだいの見みどころです。
  ちなみに「ラスコーリニコフ」という名前なまえは「分裂ぶんれつする」といった意味いみのロシア語ごで、実際じっさいにはまずいない名前なまえです。なぜ主人公しゅじんこうがこんな名前なまえになっているのかも、本ほん作さくの謎なぞの1つですね。
  
   
• ソーネチカ（ソーニャ）
  主人公しゅじんこうが酒場さかばで出会であった、マルメラードフの娘むすめ。家計かけいを助たすけるために体からだを売うる美少女びしょうじょです。
  普段ふだんはおどおどしていますが、罪つみを犯おかした人間にんげんには厳きびしい一いち面めんもあり、ラスコーリニコフに罪つみを償つぐなうことを促うながします。彼女かのじょは物語ものがたり上じょう、重要じゅうようで、終盤しゅうばんまで登場とうじょうする人物じんぶつです。
  ソーネチカが体からだを売うることになった経緯けいいは、かなり細こまかく描えがかれています。本筋ほんすじとは関係かんけいないですが、彼女かのじょの過去かこを知しる上じょうで大切たいせつな部分ぶぶんなので、読よんでおくことをおすすめします。
  
   
• ポルフィーリィ
  ラスコーリニコフが起おこした殺人さつじん事件じけんの犯人はんにんを追おう予審よしん判事はんじ。
  『罪つみと罰ばち』の舞台ぶたいは指紋しもんや防犯ぼうはんカメラ等とうがまだなかった時代じだいですが、ポルフィーリィは心理しんり的てき証拠しょうこだけでラスコーリニコフが犯人はんにんであることに気きづき、追おい詰つめます。
  
   
• ルージン
  主人公しゅじんこうの妹いもうとである、ドゥーニャの婚約こんやく者しゃ。
  弁護士べんごしをしており財産ざいさんがあるので、ドゥーニャは家計かけいを助たすけるためにも彼かれと結婚けっこんしようとします。しかしルージンは彼女かのじょを支配しはいしようとしていただけでした。それが明あきらかになったので、2人ふたりは破局はきょくし、彼かれとラスコーリニコフは争あらそいます。
  脇役わきやく的てきな人物じんぶつですが、登場とうじょうしている時間じかんも長ながく、重要じゅうような役割やくわりを演えんじます。
  
   
• ニコライ
  主人公しゅじんこうが老婆ろうばを殺害さつがいしたとき、同おなじアパートにいたペンキ職人しょくにんです。当初とうしょは無関係むかんけいでしたが、ひょんなことから老婆ろうば殺害さつがいの容疑ようぎ者しゃになり、事件じけんは思おもわぬ方向ほうこうにこじれていきます。
  他ほかにもさまざまな登場とうじょう人物じんぶつがいます。ドストエフスキー作品さくひんの登場とうじょう人物じんぶつは誰だれもが生いき生いきしており、彼かれらの活躍かつやくから目めが離はなせません。

『罪つみと罰ばち』とキリスト教きりすときょうの関係かんけいを考察こうさつ！

ドストエフスキーは聖書せいしょに影響えいきょうを受うけたので、作品さくひんにもキリスト教きりすときょう的てきなモチーフを使つかっています。本ほん作さくとキリスト教きょうは、一体いったいどんな関係かんけいがあるのでしょうか。

本ほん作さくとキリスト教きょうの関係かんけいを考かんがえるとき、真まっ先さきに思おもい浮うかぶのはラスコーリニコフの名前なまえです。彼かれの本名ほんみょうは「ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ」で、ロシア語ごにすると頭文字かしらもじが「PPP」になります。

このようなイニシャルの人ひとはロシアには存在そんざいしないので、明あきらかに作為さくい的てきな名前なまえです。「PPP」を上下じょうげ反転はんてんすると「666」になり、「悪魔あくま、反はんキリスト」を指さす数字すうじです。ドストエフスキーは彼かれの名前なまえに罪つみを隠かくしていたと考かんがえられます。

彼かれは殺人さつじん者しゃとして罪つみを背負せおいますが、ソーニャの存在そんざいによって愛あいを知しり、更生こうせいに向むかっていきます。これはキリストの復活ふっかつになぞらているのではないでしょうか。ちなみにソーニャの本名ほんみょうは「ソフィア」ですが、これは「知恵ちえ」という意味いみです。

このように、本ほん作さくはところどころにキリスト教きりすときょうのモチーフが使つかわれています。もし余裕よゆうがあるなら、聖書せいしょも一緒いっしょに読よんでおくとより理解りかいが深ふかまるでしょう。

『罪つみと罰ばち』から得えられる教訓きょうくんをネタバレ考察こうさつ！伝つたえたいこととは？

本ほん作さくはその題名だいめいの通とおり、主人公しゅじんこうラスコーリニコフの罪つみとそれに対たいする罰ばちを描えがいた作品さくひんです。自分じぶんの信念しんねんを持もって老婆ろうばを殺ころした彼かれですが、結局けっきょくは罪悪ざいあく感かんに苦くるしめられます。

自分じぶんの弱よわさに打うちのめされる彼かれは、親友しんゆうや家族かぞく、娼婦しょうふのソーニャとの関かかわりのなかで人間にんげんらしい心しんを取とり戻もどし、復活ふっかつしていきます。罪つみを自覚じかくして、成長せいちょうするのです。

本ほん作さくは「罪つみを犯おかした人間にんげんでも更生こうせいできる」というテーマをあつかっています。「殺人さつじん」というもっとも重おもい罪つみを犯おかした人間にんげんでさえ復活ふっかつできることを描えがくことで、読者どくしゃに希望きぼうを与あたえたかったのではないでしょうか。

漫画まんがもおすすめ！小説しょうせつが苦手にがてな方ほうにも

難解なんかいな作風さくふうで知しられるドストエフスキー作品さくひん。本ほん作さくも細こまかい部分ぶぶんの描写びょうしゃが多おおく、小説しょうせつが苦手にがてな方ほうには敷居しきいが高たかいかもしれません。

そんな方ほうのために、読よみやすい漫画まんが版ばんをご紹介しょうかいします。

罪つみと罰ばっ 1 (アクションコミックス)

著者ちょしゃ

落合おちあい 尚之なおゆき

出版しゅっぱん日び

2007-07-03

アクションコミックスから出版しゅっぱんされている落合おちあい尚之なおゆき作さくの漫画まんが版ばん『罪つみと罰ばち』は、現代げんだい社会しゃかいを舞台ぶたいにして不良ふりょう少女しょうじょの反はん社会しゃかい的てきな行動こうどうをテーマにした作品さくひんです。

ロシア文学ぶんがくを読よむ際さいは、当時とうじの生活せいかつ習慣しゅうかんを知しらないために内容ないようを理解りかいできなかったり、登場とうじょう人物じんぶつの名前なまえを覚おぼえきれなかったりと、話はなしについていけなくなってしまうことがあるでしょう。この漫画まんが作品さくひんは21世紀せいきの日本にっぽんを舞台ぶたいにしているので、話はなしを理解りかいしやすくなっています。

『罪つみと罰ばち』の漫画まんが作品さくひんに関かんしては、手塚てづか治虫おさむの作品さくひんも知しられています。角川かどかわ文庫ぶんこから出版しゅっぱんされており、原作げんさくよりも短みじかくまとめられているので、小説しょうせつの前まえにこちらを読よんでみてもいいですね。

『罪つみと罰ばち』の名言めいげんを紹介しょうかい！

ドストエフスキー作品さくひんには名言めいげんが多おおくあります。本ほん作さくの名言めいげんもご紹介しょうかいします。

《非凡ひぼん》な人間にんげんはある障害しょうがいを……
それも自分じぶんの思想しそうの実行じっこうが（中略ちゅうりゃく）それを要求ようきゅうする場合ばあいだけ、ふみこえる権利けんりがある
（『罪つみと罰ばち』より引用いんよう）

ラスコーリニコフが思想しそうを語かたる場面ばめんでのセリフです。彼かれの犯行はんこうの動機どうきにもなった考かんがえであり、物語ものがたりのテーマにもなっています。

ちなみに「罪つみ」というロシア語ごには「ふみこえる」という意味いみがあり、一線いっせんを超こえてしまうといったニュアンスも含ふくまれています。「ふみこえる」というモチーフは、作中さくちゅうでもしばしば使つかわれるので、注意ちゅういして読よんでみましょう。

お立たちなさい！
今いますぐ、これからすぐに行いって四辻よつつじに立たって、身みをかがめて、
まずあなたが汚けがれ（けが）した大地だいちにキスしなさい。
だってあなたは大地だいちに対たいしても罪つみを犯おかしたんですから！
（『罪つみと罰ばち』より引用いんよう）

罪つみを犯おかしたラスコーリニコフに対たいして、ソーニャが言いった言葉ことばです。彼女かのじょの厳きびしさを象徴しょうちょうするセリフです。彼女かのじょは彼かれの罪つみを知しってから、彼かれに寄より添そうようになります。2人ふたりの運命うんめいは物語ものがたりの重要じゅうようなテーマになっているので注目ちゅうもくです。

苦くるしむこともまた才能さいのうの一ひとつである

上記じょうきは、ドストエフスキー自身じしんの言葉ことばです。苦くるしむということは、他たの人ひとたちが気きづかないことに敏感びんかんになっているということ。偉大いだいな人物じんぶつに近ちかづいているという救すくいになる言葉ことばですね。

『罪つみと罰ばち』の結末けつまつをネタバレ解説かいせつ！ラスコーリニコフはどうなる？

自みずからの哲学てつがくに従したがい老婆ろうばを殺害さつがいしたラスコーリニコフは、最後さいごにはどうなるのでしょうか。

罪つみと罰ばっ〈上うえ〉 (岩波いわなみ文庫ぶんこ)

著者ちょしゃ

ドストエフスキー

出版しゅっぱん日び

1999-11-16

ラスコーリニコフが老婆ろうばを殺害さつがいしたのは、「1つの罪悪ざいあくは100の善行ぜんこうによって償つぐなわれる」という考かんがえのもとでした。しかし、彼かれは罪つみの意識いしきに耐たえられなくなっていきます。

物語ものがたりの最後さいごには、彼かれは自首じしゅをし、罪つみを償つぐなうことになります。その結末けつまつは彼かれだけでなく、周囲しゅういの人物じんぶつにも重要じゅうような意味いみを持もつものでした。妹いもうとのドゥーニャや親友しんゆうのラズミーヒンにも、ラスコーリニコフの罪つみは影響えいきょうをおよぼしました。

エピローグでは、彼かれのその後ごが語かたられますが、暗くらい内容ないようだった本編ほんぺんに比くらべると明あかるく、希望きぼうの持もてる終おわり方かたになっています。ドストエフスキーは重おもいテーマを扱あつかった作品さくひんを書かいていますが、最後さいごには希望きぼうを残のこしてくれます。ぜひ結末けつまつに期待きたいして読よんでみてくださいね。