在香港日本国総領事館、日本貿易振興機構(ジェトロ)香港事務所と香港日本人商工会議所は9月3日、「第 14回 香港を取り巻くビジネス環境にかかるアンケート調査」についての結果を発表した。
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事業費の高騰、企業が抱える人材不足問題、景気減退に伴う貿易・物流の低下や香港を迂回(うかい)した貿易の定着など、在香港日系企業を取り巻くビジネス環境を把握し、取り得るべき対策を検討することを目的に実施した。7月15日~8月4日、ネットで実査を行い、194 社から回答を得た。
アンケート全体を通して、香港の日系企業の業績は良いとは言えない状態が続いており、最大の要因は対中国貿易の悪化。香港政府の貿易統計では2023年10月以降は対前年同月比でプラスに転じているものの、香港域内の消費構造が変化したことにより、過去の調査にも増して「香港市場での売り上げ減少」を業績悪化の理由として挙げた企業も多かった。
「改善」と回答した企業の割合が「悪化」、「大幅悪化」と回答した企業の割合を差し引いたDI値については、2024年上半期(1~6月)が2023年下半期(7~12月)よりも2.8ポイント悪化のマイナス12.5で、2022年上半期以来5期連続でマイナスとなった。2024年下半期については、「中国以外(第三国)への輸出拡大による売り上げ増加」を期待する見方が増え、マイナス0.5の回復を予想する。
中国市場の停滞と香港迂回の貿易が定着による輸出入量の減少については、コロナウイルス感染拡大前と比較した物流環境評価では、人件費(64.7%)と倉庫料(44.1%)が増加しているとの見方が多く、輸送コスト(58.8%)も引き続き高い。一方、2024年下半期については、中国以外の海外、香港からタイやベトナムなどのASEAN地域への輸出拡大による売り上げ増を期待する企業が多いという結果もあり、香港市場での売り上げ増が期待される。
事業コストと人材コストの悪化に懸念を抱く企業は多く、1年前と比較した香港のビジネス環境では、事業コストと人材確保について、「悪化」「大幅に悪化」しているとの見方が多く、引き続き懸念する向きが強い。過去半年間に従業員の離職もしくは人材流出があったと回答した企業は30.4%(59社)、うち57.6%(34社)が「代替人材を確保できていない」と回答した。
人材が流失した企業のうち9割以上の企業が「現時点では課題でない」「課題がありながらも売り上げへの大きな影響がない」と答えたが、人材の確保に課題があり、業務遂行や売り上げなどに影響が出ていると回答した企業も7.7%(15社)あり、これについては「人材確保のための費用増加」「事業展開の抑制」などを挙げ、その取り組みとして、初めて「中国本土からの応援勤務や他地域での採用強化をしている」と香港域外からの人材で現場を賄うケースも出始めているという。
香港から日本への訪問については今年は過去最高数字の更新も視野に入ってきたが、日本から香港への人的往来の回復は平常時の半数程度にとどまり、「社内出張者」「顧客・取引先」の往来が「回復していない・不十分」との見方が3割以上を占めた。往来が回復していない理由は「オンラインでの代替」「経費の高騰や円安」「香港ビジネスの低迷」「地政学的リスク」などがあるものの、「中国本土を含めた往来が困難(中国ビザ取得要)が最大の理由になっていると推察される。
在香港日本国総領事館、ジェトロ香港事務所、香港日本人商工会議所に対しては、「中国本土のビザ免除の復活」「日本語での情報発信」「日本に向けた情報発信」を求める声も多く、3団体は「今後も香港政府への提言なども含め、このアンケートも活用するなどして対応していく」とする。