ドナルド・トランプ前ぜん大統領だいとうりょうは2024年ねん大統領だいとうりょう選挙せんきょのキャンペーンにおいて、60%の対たい中ちゅう追加ついか関税かんぜいと世界一せかいいち律りつ10%のユニバーサル・ベースライン関税かんぜいとともに、メキシコから輸入ゆにゅうされる中国ちゅうごく車しゃへの100%の関税かんぜいの適用てきようなどを提案ていあんした。こうした高こう関税かんぜいがそのまま適用てきようされるのかをトランプ前ぜん政権せいけん時じと比較ひかくしながら検証けんしょうし、企業きぎょうの経済けいざい活動かつどうへの影響えいきょうを探さぐることにしたい。

選挙せんきょキャンペーン中ちゅうの表明ひょうめいはそのまま実行じっこうされるか

2016年ねんの大統領だいとうりょう選挙せんきょキャンペーンにおいて、トランプ前ぜん大統領だいとうりょうは中国ちゅうごくの為替かわせ操作そうさや巨額きょがくな補助ほじょ金きん支出ししゅつなどによる不ふ公正こうせいな貿易ぼうえきを批判ひはんし、中国ちゅうごくからの輸入ゆにゅうに45%の関税かんぜいを課税かぜいすることを表明ひょうめいした。また、メキシコの生産せいさん拠点きょてんからの米国べいこくへの輸入ゆにゅうが拡大かくだいしていることや、メキシコとの国境こっきょうからの不法ふほうな移民いみんによっても米べい国民こくみんの職しょくが脅おびやかされ、社会しゃかい不安ふあんを招まねいているとして、メキシコからの輸入ゆにゅうに35%の関税かんぜいを賦課ふかすることを示唆しさした。さらに、米国べいこくとメキシコ国境こっきょう沿ぞいに壁かべを作つくることを明あきらかにした。

実際じっさいには、メキシコからの移民いみんの流入りゅうにゅうに関かんしては、強硬きょうこうな対策たいさくが施ほどこされたものの、メキシコからの輸入ゆにゅうに対たいする35%の関税かんぜい賦課ふかは実行じっこうされなかった。その代かわりに、表ひょうのように、トランプ前ぜん大統領だいとうりょうは新しんNAFTAである米国べいこく・メキシコ・カナダ協定きょうてい(以下いか、USMCA)の交渉こうしょうを進すすめ、北米ほくべい原産げんさんか否ひかを判断はんだんする基準きじゅんである原産地げんさんち規則きそくを改正かいせいし、米国べいこくがメキシコから輸入ゆにゅうする自動車じどうしゃに対たいしてより厳きびしい関税かんぜい削減さくげんルールの適用てきようを求もとめた。

トランプ前ぜん政権せいけんはUSMCAにおける自動車じどうしゃの原産地げんさんち規則きそくを大おおきく変更へんこうすることに成功せいこうしたため、メキシコやカナダに進出しんしゅつし対たい米べい輸出ゆしゅつを行おこなう自動車じどうしゃ関連かんれん企業きぎょうはNAFTAと比くらべてUSMCAの基準きじゅんを満みたして関税かんぜいを削減さくげんすることがかなり難むずかしくなった。

例たとえば、NAFTAでは62.5%以上いじょうであった北米ほくべい原産げんさん調達ちょうたつ率りつはUSMCAでは75%以上いじょうに引ひき上あげられ、さらに賃金ちんぎんが16ドル以上いじょうの北米ほくべいの工場こうじょうからの資材しざい調達ちょうたつ割合わりあいが40%以上いじょうであること、完成かんせい車しゃメーカーが購入こうにゅうする鉄鋼てっこう・アルミの現地げんち調達ちょうたつ率りつは70%を超こえることなどの条件じょうけんが付つけ加くわえられた。

また、トランプ前ぜん大統領だいとうりょうは当初とうしょにおいては、中国ちゅうごくへの45%の追加ついか関税かんぜいの賦課ふかを想定そうていしていたが、実際じっさいには、中国ちゅうごくの不ふ公正こうせい貿易ぼうえき慣行かんこうに対たいして1974年ねん通商つうしょう法ほう301条じょうを適用てきようし、中国ちゅうごくからの輸入ゆにゅう品ひんに7.5～25%の追加ついか関税かんぜいを4度どにわたって発動はつどうした。そして、第だい1段階だんかいの米べい中ちゅう貿易ぼうえき協定きょうていにおいて、中国ちゅうごくに2020年ねんからの2年間ねんかんで、2017年ねんの輸入ゆにゅう実績じっせきをベースラインとして、米国べいこくから工業こうぎょう製品せいひんや農産のうさん品ひん、エネルギー、サービス等とうの分野ぶんやにおいてそれより2,000億おくドル以上いじょうを追加ついか購入こうにゅうすることを約束やくそくさせた。

つまり、トランプ前ぜん大統領だいとうりょうの対たい中ちゅう追加ついか関税かんぜいに関かんする選挙せんきょ公約こうやくは45%の額面がくめん通どおりには実行じっこうされなかったものの、最大さいだいでその半分はんぶん近ちかくの追加ついか関税かんぜいが賦課ふかされており、選挙せんきょキャンペーン中ちゅうの表明ひょうめいはい放いはなしではなく、行動こうどうに移うつされる可能かのう性せいが高たかいことが窺うかがわれる。この他ほかに、トランプ前ぜん大統領だいとうりょうは、表ひょうのように、2018年ねんに米国べいこくの安全あんぜん保障ほしょうへの懸念けねんから1962年ねん通商つうしょう拡大かくだい法ほう232条じょうを活用かつようした鉄鋼てっこう(25%)・アルミ(10%)への追加ついか関税かんぜいを日本にっぽんやEUなどに賦課ふかした。

表ひょう.　トランプ前ぜん政権せいけん以降いこうの米国べいこくの通商つうしょう産業さんぎょう政策せいさく

トランプ前ぜん大統領だいとうりょうは2024年ねん大統領だいとうりょう選挙せんきょで再選さいせんされたならば、中国ちゅうごくなどに対たいして前ぜん政権せいけん時じよりもさらに高率こうりつの関税かんぜいを賦課ふかすることを表明ひょうめいしており、このような高こう関税かんぜい政策せいさくは額面がくめん通どおりには実行じっこうされなくても、着実ちゃくじつに実行じっこうに移うつされる可能かのう性せいがある。したがって、今後こんごともその動向どうこうには十分じゅうぶんな注意ちゅういが必要ひつようである。

次々つぎつぎと高こう関税かんぜい政策せいさくを打うち出だすトランプ前ぜん大統領だいとうりょう

2024年ねん米まい大統領だいとうりょう選挙せんきょにおいて、トランプ前ぜん大統領だいとうりょうが再選さいせんされたならば、表ひょうのように、インフレを速すみやかに収束しゅうそくさせ、金利きんり・エネルギーコストを引ひき下さげ、ドル安やすを目指めざすと共ともに、自動車じどうしゃ排はいガス規制きせい及および電気でんき自動車じどうしゃ(以下いか、EV)の義務ぎむ化かの撤廃てっぱいを進すすめることが見込みこまれる。トランプ前ぜん大統領だいとうりょうの為替かわせ問題もんだいへの姿勢しせいは、米国べいこくの製造せいぞう業ぎょうの国際こくさい競争きょうそう力りょくを奪うばっている原因げんいんの一ひとつはドル高だかだという考かんがえに基もとづいている。トランプ前ぜん政権せいけん時じにおける主おもなドル高だか是正ぜせいのターゲットは、中国ちゅうごくと日本にっぽんであった。

さらに、EVへの税額ぜいがく控除こうじょを含ふくむインフレ削減さくげん法ほう(IRA)の改廃かいはいやサプライチェーンの危機きき対応たいおうメカニズムなどを盛もり込こんだインド太平洋たいへいよう経済けいざい枠組わくぐみ(IPEF)やパリ条約じょうやくからの離脱りだつなどが実行じっこうされると思慮しりょされる。トランプ前ぜん大統領だいとうりょうは正式せいしきな税制ぜいせい案あんを発表はっぴょうしていないが、2017年ねん税制ぜいせい改革かいかく法ほうの延長えんちょうを含ふくむ中なか低てい所得しょとく層そうや高こう所得しょとく層そう及およびビジネスを対象たいしょうとする減税げんぜい策さくを実施じっしする考かんがえを示しめしている。同時どうじに、トランプ前ぜん大統領だいとうりょうは、中国ちゅうごくに対たいする最恵国さいけいこく待遇たいぐうを撤回てっかいすることや4年間ねんかんで中国ちゅうごくからの全すべての必需ひつじゅ品ひんの輸入ゆにゅうを段階だんかい的てきに削減さくげんし、対たい中ちゅう依存いぞん度どを引ひき下さげると発言はつげんしている。

一方いっぽう、トランプ前ぜん大統領だいとうりょうは、選挙せんきょキャンペーンの早はやい段階だんかいから、世界一せかいいち律りつ10%のユニバーサル・ベースライン関税かんぜいを賦課ふかすると表明ひょうめいしている。例たとえば、現行げんこうで2.5%の米国べいこくの乗用車じょうようしゃの関税かんぜいは12.5%に上昇じょうしょうすることになり、日本にっぽんなどの米国べいこくへの自動車じどうしゃ関連かんれん輸出ゆしゅつは大おおきな打撃だげきを受うけることになる。もしも、ユニバーサル・ベースライン関税かんぜいが施行しこうされたならば、USMCAなどの米国べいこくが締結ていけつしたFTAの他ほかの加盟かめい国こくは、米国べいこくの関税かんぜい賦課ふかに対たいして紛争ふんそう解決かいけつメカニズムを用もちいた訴うったえを起おこす可能かのう性せいがないとは言いえない。

そして、中国ちゅうごくからの輸入ゆにゅう品ひんに対たいして一律いちりつ60%の関税かんぜいを課かすこと、あるいはメキシコから輸入ゆにゅうされる中国ちゅうごく車しゃに対たいし100%の関税かんぜいを適用てきようすることを示唆しさしている。したがって、トランプ前ぜん大統領だいとうりょうはメキシコからの中国ちゅうごく車しゃの輸入ゆにゅうへの関税かんぜい賦課ふかを試こころみるとともに、同時どうじに、2026年ねんに控ひかえるUSMCAの見直みなおしの際さいに原産地げんさんち規則きそくの再さい検討けんとうを要求ようきゅうする可能かのう性せいがある。

トランプ前ぜん大統領だいとうりょうが提案ていあんした60%の対たい中ちゅう追加ついか関税かんぜいと10%のユニバーサル・ベースライン関税かんぜいの組くみ合あわせは、米国べいこくの加重かじゅう平均へいきん関税かんぜい率りつを17%近ちかくまで高たかめるとの試算しさんもあり、1930年ねんのスムート・ホーリー関税かんぜい法ほう以来いらいの高たかい関税かんぜい水準すいじゅんとなる可能かのう性せいがある。なお、トランプ前ぜん大統領だいとうりょうは外国がいこくが米国べいこく製品せいひんに関税かんぜいを課かす場合ばあい、米国べいこくもその国くにの製品せいひんに同等どうとうの関税かんぜいを課かすことができる互恵ごけい通商つうしょう法ほうの創設そうせつを検討けんとうしていると伝つたえられる。

また、トランプ前ぜん大統領だいとうりょうは2024年ねん6月がつの共和党きょうわとう議員ぎいんとの会談かいだんにおいて、連邦れんぽう個人こじん所得しょとく税ぜいを廃止はいしし、その代かわりの財源ざいげんを関税かんぜいに求もとめるという一層いっそうの関税かんぜい引ひき上あげに繋つながる発言はつげんを行おこなった。米国べいこくの2024年度ねんどの連邦れんぽう個人こじん所得しょとく税ぜいは1.7兆ちょうドルで総そう歳入さいにゅう額がく(3.3兆ちょうドル)の51.7%を占しめるが、関税かんぜい収入しゅうにゅうは490億おくドルで1.5%を占しめるにすぎない。したがって、連邦れんぽう個人こじん所得しょとく税ぜいの廃止はいし分ぶんを関税かんぜいで賄まかなうには、財ざいの輸入ゆにゅう額がく(2023年ねん3.1兆ちょうドル)に50%を超こえる関税かんぜいを賦課ふかしなければならず、現実げんじつ的てきにはかなり難むずかしいと見込みこまれる。

高こう関税かんぜい政策せいさくに対応たいおうする日本にっぽんの選択肢せんたくしとは何なにか

トランプ前ぜん大統領だいとうりょうの中国ちゅうごくからの輸入ゆにゅう品ひんに対たいする高こう関税かんぜい政策せいさくは、対たい中ちゅう輸入ゆにゅうを行おこなう米国べいこく企業きぎょうだけでなく、中国ちゅうごくに進出しんしゅつし対たい米べい輸出ゆしゅつを行おこなっている日本にっぽん、台湾たいわん、韓国かんこくやEUなどの企業きぎょうにも、大おおきなコストアップの要因よういんになることは確実かくじつだ。ただし、トランプ前ぜん大統領だいとうりょうは中ちゅう低てい所得しょとく層そうやビジネス界かいなどに減税げんぜいを実施じっしする方針ほうしんを表明ひょうめいしており、米国べいこくだけでなく日本にっぽんやEUなどの企業きぎょうもトランプ減税げんぜいの需要じゅよう拡大かくだい効果こうかの恩恵おんけいを受うける可能かのう性せいがある。

日本にっぽん企業きぎょうは、トランプ前ぜん大統領だいとうりょうが再選さいせんされたならば、60%の対たい中ちゅう追加ついか関税かんぜいの賦課ふかが提案ていあん通どおりにそのまま実行じっこうされるのか、あるいは関税かんぜい水準すいじゅんが引ひき下さげられるのか、さらには例外れいがい品目ひんもくや適用てきよう除外じょがい制度せいどの内容ないようがどのようなっているのかを確認かくにんする必要ひつようがある。同時どうじに、トランプ前ぜん大統領だいとうりょうが提案ていあんしているメキシコから輸入ゆにゅうされる中国ちゅうごく車しゃへの100%関税かんぜいの賦課ふかに加くわえ、中国ちゅうごくに対たいする最恵国さいけいこく待遇たいぐうを撤回てっかいすることや、4年間ねんかんで中国ちゅうごくからの全すべての必需ひつじゅ品ひんの輸入ゆにゅうを段階だんかい的てきに削減さくげんするという動うごきについても、注意深ちゅういぶかく見守みまもる必要ひつようがある。

そして、10%のユニバーサル・ベースライン関税かんぜいの賦課ふかが行おこなわれた場合ばあい、日本にっぽんの対たい米べい輸出ゆしゅつに占しめる親子おやこ間あいだ貿易ぼうえき(日本にっぽんの親会社おやがいしゃから在米ざいべい子会社こがいしゃへの輸出ゆしゅつ)の割合わりあいが高たかい日本にっぽん企業きぎょうにとってコストアップ要因よういんとなるため、これにどのように対応たいおうするかは極きわめて大おおきな問題もんだいになると思おもわれる。

日本にっぽん企業きぎょうにとって円えん安やすが10%進すすめばユニバーサル・ベースライン関税かんぜいによる関税かんぜい引ひき上あげ効果こうかを相殺そうさいしてくれるが、2025年ねん以降いこうはむしろ円えん高だかの可能かのう性せいもある。日本にっぽん企業きぎょうには、これまでと同様どうように、米国べいこくを中心ちゅうしんとする世界せかい大だいでの現地げんち化かの推進すいしん、サプライチェーンの危機きき対応たいおうネットワークの強靭きょうじん化かによる国際こくさい競争きょうそう力りょくの拡大かくだい、インド、ASEAN、アフリカなどをターゲットにした財ざいやデジタルサービス及およびインフラ関連かんれん設備せつび等とうの輸出ゆしゅつ促進そくしん、TPP加盟かめい国こくやEUとの経済けいざい連携れんけいの強化きょうか、ユニバーサル・ベースライン関税かんぜいの適用てきよう除外じょがいルールの活用かつよう、などで対応たいおうするという選択肢せんたくしが考かんがえられる。

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