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スイセン属 - Wikipedia

スイセンぞく

ヒガンバナぞくひと
スイセンから転送てんそう

スイセンぞく(スイセンぞく、学名がくめい: Narcissus)は、ヒガンバナぞくひとつ。このぞくにはニホンズイセンラッパスイセンなどいろかたちことなるたね品種ひんしゅおおくあるが、このぞくふくまれる植物しょくぶつ総称そうしょうしてスイセンんでいる。

スイセンぞく
Narcissus
Narcissus
(2005ねん5がつ
分類ぶんるいAPG III
さかい : 植物しょくぶつかい Plantae
階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ Angiosperms
階級かいきゅうなし : たん子葉しようるい Monocots
: キジカクシ Asparagales
: ヒガンバナ Amaryllidaceae
: ヒガンバナ Amaryllidoideae
れん : スイセンれん Narcisseae
ぞく : スイセンぞく Narcissus
学名がくめい
Narcissus
L. (1753)
タイプしゅ
N. poeticus L.

狭義きょうぎには、学名がくめい Narcissus tazetta や、その変種へんしゅであるニホンズイセンNarcissus tazetta var. chinensis)をスイセンということもおおい。しかし、ほん記事きじではとく明記めいきしないかぎり「スイセン」をスイセンぞく総称そうしょう意味いみもちいる。日本語にほんご漢字かんじ表記ひょうきは「水仙すいせん[1]

名称めいしょう

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和名わみょうスイセンというは、中国ちゅうごくでの水仙すいせん」を音読おんよしたもの[2]中国ちゅうごく名付なづけられたかんめいの「水仙すいせん」は、「仙人せんにんは、てんにあるを天仙てんせんにあるをせんみずにあるを水仙すいせん」という中国ちゅうごく古典こてん由来ゆらいする。水辺みずべそだち、仙人せんにんのように寿命じゅみょうながく、きよらかなという意味いみから名付なづけられたとされる[2]別名べつめいゆき中花なかはなまさきゃく方言ほうげんではチチロ、キンデバナ、キンデ、シイセン、ハルダマなどのがある。

ぞくめいである Narcissus という学名がくめいは、ギリシャ神話しんわ登場とうじょうする美少年びしょうねんナルキッソス由来ゆらいする[3]。ギリシャ神話しんわによれば、ニンフエコーあいする美少年びしょうねんナルキッソスNarcissos)にいてもらうことができなかったのでほそり、こえだけの存在そんざいになってしまう。エコーをあわれんだ女神めがみネメシスは、いけうつったみずからの姿すがた心酔しんすいしているナルキッソスをスイセンはなにしたという[3]

形態けいたい生態せいたい

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多年草たねんそうで、ふゆからはるにかけてしろはなかせるものがおおい。草丈くさたけは、品種ひんしゅ環境かんきょうによるが、15 - 50センチメートル (cm) 程度ていどである。全体ぜんたい有毒ゆうどく[2]

地下ちか鱗茎りんけいがあり、くきは、くろ外皮がいひつつまれた鱗茎りんけい内部ないぶにある。そのため切断せつだんしないかぎひとれることはない。は、若干じゃっかんあつみがあり扁平へんぺいで、やや幅広はばひろ細長ほそなが線形せんけい[3]、つやしのような表面ひょうめんをしている。

開花かいかは12月から翌年よくねん5がつごろのあいだ[2][3]あいだからつぼみをつけた花茎かけいび、びきるとつぼみが横向よこむきになり、成熟せいじゅくするとつぼみをおおっていたつとやぶってはなひらく。典型てんけいてきなスイセンのはな場合ばあい雌蕊めしべ(しずい)は1ほん雄蕊おしべ(ゆうずい)は6ほん。6まいかれたはなびらと、中心ちゅうしんつつじょうはなびらをつが、6まいかれているはなびらのうち、外側そとがわ3まいがく(がく)であり、内側うちがわ3まいのみが花弁はなびらである。ふたつをあわせてはなへん(かひへん)といい、それ以外いがいに、中心ちゅうしんにあるつつじょう部分ぶぶんふく花冠かかん(ふくかかん)という[3]はなへんふく花冠かかん形状けいじょうはなかたにより、品種ひんしゅ区分くぶんする。はなは、花茎かけい先端せんたんすうじょうにつき、芳香ほうこうがある[3]

 
Narcissus bulbocodium bulbocodium 原種げんしゅひと

原産地げんさんちおもスペインポルトガル中心ちゅうしんきたアフリカまでの地中海ちちゅうかい沿岸えんがん地域ちいき[2]アジア中部ちゅうぶまでひろがり[3]原種げんしゅは30種類しゅるいほどられている。また、園芸えんげいよう品種ひんしゅ改良かいりょうされたものがひろ栽培さいばいされている。

日本にっぽんにおいては、ニホンズイセンがふるくに中国ちゅうごく経由けいゆして渡来とらいしたとわれている。分布ぶんぷは、本州ほんしゅう関東かんとう以西いせい比較的ひかくてきあたたかい海岸かいがんちかくの湿しめのある場所ばしょ野生やせいし、群生ぐんせいられる[3]越前えちぜん海岸かいがん福井ふくいけん越前えちぜんまち)の群落ぐんらく有名ゆうめいであり、福井ふくいけん県花けんかともなっている。

群生ぐんせい

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日本にっぽんにおいては下記かきのものが有名ゆうめいである。

人間にんげんとのかかわり

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毒性どくせい

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有毒ゆうどく植物しょくぶつで、どく成分せいぶんリコリンlycorine)やタゼチン(tazettine)、ガランタミン(galanthamine)のアルカロイドるい [2][1]シュウさんカルシウム (calcium oxalate) [9]ぜんくさ有毒ゆうどくで、鱗茎りんけいとくどく成分せいぶんおおい。スイセンの致死ちしりょうマウスで10.7g/kgである。食中毒しょくちゅうどく症状しょうじょう接触せっしょくせい皮膚ひふえん症状しょうじょうこす。中毒ちゅうどく初期しょきつよ嘔吐おうとがあり摂取せっしゅぶつ大半たいはんされるため症状しょうじょうじゅうあつしいたることはまれであるが、鱗茎りんけいアサツキ間違まちがえて死亡しぼうしたれいがある。

ニラととてもよくており、家庭かてい菜園さいえんでニラを栽培さいばいすると同時どうじに、観賞かんしょうようとしてほんたね栽培さいばいした場合ばあいなどに、間違まちがえて中毒ちゅうどく症状しょうじょうこすという事件じけん時々ときどき報告ほうこく報道ほうどうされる[10] [11]厚生こうせい労働省ろうどうしょうによると、2008ねん~2017ねんきた有毒ゆうどく植物しょくぶつによる食中毒しょくちゅうどく188けんのうち、最多さいたはスイセン(47けん)だった[12]

ニラとのおおきなちがいはつぎとおりである。

  • からのにおいがない。
  • 鱗茎りんけいがある(ニラはひげ(ひげ)鱗茎りんけいはない)。

薬用やくよう

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スイセンは有毒ゆうどく植物しょくぶつであるが、ふくまれている成分せいぶんリコリンは、食中毒しょくちゅうどくなどのときにかせる吐剤とざいでもあり、あやまって飲食いんしょくすればおろしがこってくるしむ[2]。これを人工じんこうてき水素すいそしてヒドロリコリンにすると、アメーバ赤痢せきりくすりとして役立やくだつとされる[2]民間みんかん療法りょうほうで、乳腺にゅうせんえん乳房ちぶさえんせきるときのれに、鱗茎りんけいげて黒褐色こっかっしょく外皮がいひのぞき、しろ部分ぶぶんをすりおろしてガーゼにつつんで外用がいようやくとして患部かんぶてておくと、消炎しょうえんや鎮咳に役立やくだつとわれている[2]身体しんたいむくみがあるときも同様どうように、あしうら土踏つちふまずにひや湿布しっぷすると方法ほうほうられている[2]

品種ひんしゅ改良かいりょう

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原種げんしゅ花弁はなびらほそくねじれており、それをひらたい花弁はなびらにするのに50ねんほどかかった。その八重咲やえざなどのはなよう品種ひんしゅ改良かいりょう、および、しろ黄色おうしょく以外いがいいろすための品種ひんしゅ改良かいりょうがなされ、ふく花冠かかんあか、ピンクのものがくわわった。品種ひんしゅ改良かいりょう中心ちゅうしん栽培さいばい気候きこうてきしているイギリス草分くさわけである。現在げんざいではオランダ日本にっぽんがそれにつづいている。

かたそだかた

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チューリップヒヤシンスなどと同様どうよう典型てんけいてき球根きゅうこん植物しょくぶつ晩秋ばんしゅう球根きゅうこん花壇かだんはちえてそだてる。一定いっていさむさにたらないと開花かいかしない性質せいしつゆうする。ニホンズイセンは初春しょしゅん開花かいかするが、西洋せいようスイセンは4がつころ開花かいかする。春先はるさきには開花かいかかぶ出回でまわり、それを観賞かんしょうすることもできる。

開花かいかくきれるまでらずにいておくと、球根きゅうこんふとる。チューリップことなり、子株こかぶそだっても親株おやかぶのこる(チューリップは子株こかぶそだつと、親株おやかぶおとろえる)。被子植物ひししょくぶつである以上いじょう結果けっかし、たねでもえるが、開花かいかまでにはすうねんかかるため、育種いくしゅ(品種ひんしゅ改良かいりょう)を目的もくてきとする場合ばあいのぞけば一般いっぱんにはおこなわれない。球根きゅうこんぶんたまさせてやす。

スイセンは日本にっぽん気候きこう相性あいしょういので、ほうしでも勝手かってえる。球根きゅうこん細分さいぶんするばかりで、開花かいかしない場合ばあいは、土壌どじょう窒素ちっそ過多かたか、けがあさすぎることが原因げんいんである。夏場なつば地表ちひょうめんべつ植物しょくぶつおおうと、温度おんどがりぎず、地中ちちゅう球根きゅうこんてきした環境かんきょう維持いじできる。

 
水仙すいせんもん

ラッパスイセン (Daffodil) はウェールズくにあきらであり、ウェールズでは3がつ1にちせいデイヴィッド (Saint David's Day) に、ラッパスイセンかリーキにつける習慣しゅうかんがある。

ウィリアム・ワーズワースは "I Wondered Lonely as a Cloud" というを、またE・E・カミングスは "in a time of daffodils" というをそれぞれのこしている。

またクチベニズイセン(Narcissus poeticus)アンドラ公国こうこく国花こっかとしてあつかわれている。

欧米おうべいでは水仙すいせんは「希望きぼう」の象徴しょうちょうであり、ガン患者かんじゃをサポートする団体だんたいおおくで、はるおとずれとともくこの水仙すいせんが「希望きぼう」のシンボルとして募金ぼきん活動かつどうのキャンペーンにもちいられている。

地方ちほう公共こうきょう団体だんたいなどのはな

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下位かい分類ぶんるい

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スイセン Narcissus tazetta
ニホンズイセン Narcissus tazetta var. chinensis
和名わみょうはニホンズイセン(日本にっぽん水仙すいせん)であるが、原産地げんさんち地中海ちちゅうかい沿岸えんがん室町むろまち時代ときよ以前いぜんに、中国ちゅうごく経由けいゆして日本にっぽんはいったとかんがえられている。園芸えんげい作家さっかやなぎはじめみんは、ニホンズイセンは中国ちゅうごくから球根きゅうこん海流かいりゅうにのって漂着ひょうちゃくしたものが、野生やせいしていったのではないかとのせつをとっている。
ラッパスイセン Narcissus pseudonarcissus
クチベニズイセン Narcissus poeticus
ギリシア神話しんわでは、学名がくめい由来ゆらいともなっているナルキッソスまれわりとわれている。
キズイセン Narcissus jonquilla
カンランズイセン Narcissus x odorus
キズイセンとラッパスイセンとの雑種ざっしゅ

はなかたちによる分類ぶんるい

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ここでは西洋せいようスイセンのはなよう説明せつめいをする。

  • ラッパ - ふくかんむりながさが花弁はなびらながさとおなじかそれ以上いじょうのもの。
  • カップ - ふくかんむりながさが花弁はなびらながさより1/3よりなが花弁はなびら全体ぜんたいよりみじかいもの。
  • しょうカップ - ふくかんむりながさが花弁はなびらながさより1/3よりみじか花弁はなびら全体ぜんたいよりみじかいもの。
  • 八重咲やえざ - 花弁はなびらふくかんむり八重咲やえざきになるもの。
  • トリアンドロス - 下向したむきにくもの。
  • シクラメネウス - 花弁はなびらシクラメンはなのように反転はんてんするもの。
  • スプリットコロナ - ふくかんむりが1/3以上いじょうけているもの。

画像がぞうしゅう

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b 自然しぜんどくのリスクプロファイル:高等こうとう植物しょくぶつ:スイセンるい”. 厚生こうせい労働省ろうどうしょう. 2023ねん2がつ23にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c d e f g h i j 田中たなか孝治こうじ 1995, p. 88.
  3. ^ a b c d e f g h 大嶋おおしま敏昭としあき監修かんしゅう 2002, p. 222.
  4. ^ をくづれ水仙すいせんきょう & 佐久間さくまダムみずうみみなみ房総ぼうそう鋸南きょなんまち 水仙すいせんさくら名所めいしょ
  5. ^ 越前えちぜん海岸かいがん水仙すいせんはたけ|えちぜん観光かんこうナビ
  6. ^ 水仙すいせんまつり|伊豆下田いずしもだ観光かんこうガイド
  7. ^ みなみあわじなだくろ岩水いわみず仙郷せんきょう
  8. ^ 立川たちかわ水仙すいせんきょう
  9. ^ スイセンによる食中毒しょくちゅうどくについて”. 岡山おかやまけん環境かんきょう保健ほけんセンター (2016ねん3がつ23にち). 2023ねん2がつ23にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2023ねん2がつ23にち閲覧えつらん
  10. ^ ニラと誤認ごにん、スイセン食中毒しょくちゅうどく相次あいつ”. ヨミドクター. 読売新聞よみうりしんぶん (2016ねん4がつ21にち). 2023ねん2がつ23にち閲覧えつらん
  11. ^ スイセンの球根きゅうこんをタマネギと間違まちがえてカレーを調理ちょうり 家族かぞく3にん食中毒しょくちゅうどく”. 朝日新聞あさひしんぶん (2023ねん3がつ20日はつか). 2023ねん3がつ20日はつか閲覧えつらん
  12. ^ 滝沢たきざわたく (2018ねん4がつ12にち). “スイセンは有毒ゆうどく ニラと混同こんどう注意ちゅうい消費しょうひしゃちょうべないで」” (朝刊ちょうかん ed.). 朝日新聞あさひしんぶん. https://www.asahi.com/articles/ASL4C7QRFL4CUBQU01G.html 2023ねん2がつ23にち閲覧えつらん 

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 大嶋おおしま敏昭としあき監修かんしゅう花色はないろでひける山野さんやそう高山たかやま植物しょくぶつ成美せいびどう出版しゅっぱん〈ポケット図鑑ずかん〉、2002ねん5がつ20日はつか、222ぺーじISBN 4-415-01906-4 
  • 田中たなか孝治こうじきめと使つかかたがひとでわかる 薬草やくそう健康けんこうほう講談社こうだんしゃ〈ベストライフ〉、1995ねん2がつ15にち、88ぺーじISBN 4-06-195372-9 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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