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トウヒ属 - Wikipedia

トウヒぞくからひのきぞく学名がくめい:Picea)はマツ針葉樹しんようじゅのグループのひとつ。

トウヒぞく
エゾマツ Picea jezoensis(2006ねん7がつ撮影さつえい
分類ぶんるい
さかい : 植物しょくぶつかい Plantae
もん : 裸子植物らししょくぶつもん Pinophyta
もん : マツもん Pinophytina
つな : マツつな Pinopsida
: マツ Pinales
: マツ Pinaceae
ぞく : トウヒぞく Picea
学名がくめい
Picea Link
英名えいめい
spruce
たね

本文ほんぶん参照さんしょう

北半球きたはんきゅうアジアヨーロッパ北米ほくべい温帯おんたいから亜寒帯あかんたいにかけて、ひろ範囲はんいやく40しゅ分布ぶんぷする[1]分布ぶんぷ北限ほくげんシベリアアラスカカナダ北極圏ほっきょくけん南限なんげんユーラシアではビルマヒマラヤ北米ほくべいではメキシコ北部ほくぶ高山たかやま地帯ちたいたっする。タイガちゅう緯度いど山岳さんがく地帯ちたい高山こうざんたいにおける重要じゅうようじゅしゅのひとつである。日本にっぽんでは、北海道ほっかいどう本州ほんしゅう中部ちゅうぶ山岳さんがく地帯ちたい山地さんちたい上部じょうぶから高山こうざんたい中心ちゅうしん分布ぶんぷし、一部いちぶたね九州きゅうしゅう山地さんちまで分布ぶんぷする。

アジアさんたねもっとおおく、分布ぶんぷ中心ちゅうしんはヒマラヤ、中国ちゅうごく日本にっぽん、シベリアにかけての地域ちいきである[1]変種へんしゅではヨーロッパトウヒがもっとおおく100種類しゅるい以上いじょうあり、北半球きたはんきゅうひろ分布ぶんぷする[1]

形態けいたい

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がた環境かんきょうによりことなるが、いわゆる「クリスマスツリーがた典型てんけいてき針葉樹しんようじゅであり、円錐えんすいかたち成長せいちょうするものがおおい。えだおなたかさから四方八方しほうはっぽうばす(せいという)。

樹高きだか生育せいいく環境かんきょうによって大幅おおはばことなるが、条件じょうけん場所ばしょではかなりの巨木きょぼくになる場合ばあいがある。北米ほくべい太平洋たいへいようがんにはだか95メートルのシトカトウヒがあり、世界せかい最高さいこう巨木きょぼくの1つである。

和名わみょうに「〜バラモミ」、「〜ハリモミ」とくものが散見さんけんされることからもうかがえるように、がたかたモミぞくとよくる。しかし樹皮じゅひ茶色ちゃいろ鱗状りんじょうけ、先端せんたんとがる、えだに「沈」とばれる突起とっきがあってそこからがのびているてんモミぞくことなっている。断面だんめんよこ扁平へんぺい(トウヒぶし)の種類しゅるい菱形ひしがた(バラモミぶしとオモリカトウヒぶし)な種類しゅるいがある。

また、モミるいではたまはてまつぼっくり)がえだうえ直立ちょくりつしてしょうじるのにたいしてえだからしたがること、まるっこい種子しゅし鱗片りんぺんしたからはりじょうにとがったつつみ鱗片りんぺんかおせるが、トウヒぞくではつつみ鱗片りんぺんはごくちいさくてそとからえないこと、種子しゅし散布さんぷにモミぞくでは鱗片りんぺん脱落だつらくするがトウヒぞくではのこることなどがおおきくことなる。

ツガぞくはモミぞくちかいがかさはて性質せいしつはトウヒぞくちかい。ただしかさはてはるかにちいさいてん区別くべつできる。トガサワラぞくアブラスギぞくはそのてんではトウヒぞくちかいがつつみ鱗片りんぺんがよく発達はったつする。

生態せいたい

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のマツ樹木じゅもくおなじくトウヒぞく樹木じゅもく菌類きんるい共生きょうせいきん形成けいせいする。樹木じゅもくにとってはきん形成けいせいすることで、土壌どじょうちゅう栄養分えいようぶん吸収きゅうしゅう促進そくしん菌類きんるいつく抗生こうせい物質ぶっしつひとしによる病原びょうげん微生物びせいぶつ駆除くじょとう利点りてんがあり、菌類きんるいにとっては樹木じゅもくから光合成こうごうせい産物さんぶつ一部いちぶけてもらうことができる。土壌どじょうちゅうにはきんから菌糸きんしかい同種どうしゅ個体こたいたね植物しょくぶつつながる広大こうだいなネットワークが存在そんざいするとかんがえられている[2][3][4][5][6][7]共生きょうせいする菌類きんるい実体じったい人間にんげんキノコとして認識にんしきできるおおきさにそだつものがおおく、なかには食用しょくようにできるものもある。

更新こうしんについては種子しゅしによるものが一般いっぱんてき。ただしトウヒぞく種子しゅしはただ地表ちひょうちたときよりも倒木とうぼくかぶなどのうえちたときほう生存せいぞんしやすいという倒木とうぼく更新こうしんえい:nurse log)という事例じれいがしばしば報告ほうこくされる。また、地表ちひょうちかえだ接地せっちしそこからしてえるてき栄養えいよう繁殖はんしょくであるであるふくじょう更新こうしんたねられている[8]スウェーデン中部ちゅうぶ山岳さんがく地帯ちたいにはこのような栄養えいよう繁殖はんしょくかえした結果けっか個体こたいとして9500ねんあまりもきているオウシュウトウヒが確認かくにんされている。

人間にんげんとの関係かんけい

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木材もくざい

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トウヒぞく木材もくざいマツぞくPinus)やカラマツぞくLarix)のようにあたりざい心材しんざい区別くべつ明瞭めいりょうではなく、とくに乾燥かんそうした状態じょうたいでは区別くべつができない。このような木材もくざい淡色たんしょく心材しんざい、もしくはじゅくざいなどとよびトウヒぞくほかにモミぞくAbies樹木じゅもくなどにもられる。モミぞくともやわらかいために加工かこうせいく、またかるいという利点りてんはある一方いっぽうで、耐久たいきゅうせいはかなりひくいと評価ひょうかされることがおおいグループであり、構造こうぞうざいではなく楽器がっき家具かぐ中心ちゅうしん利用りようされてきた。日本にっぽんにおいても耐久たいきゅうせいすぐれるヒノキ針葉樹しんようじゅされ構造こうぞうざいとしてはまれであった。ただし、人工じんこう乾燥かんそう防腐ぼうふ加工かこう接着せっちゃくざい改良かいりょう集成しゅうせいざい(laminated wood)などの各種かくしゅ技術ぎじゅつ発展はってんにより欠点けってん克服こくふく建築けんちくよう構造こうぞうざいとしてもちいられることもえてきた。とく北欧ほくおうなどではもっと人件じんけんのかかる下刈したがり作業さぎょうをほとんどおこなわずに、うえ栽後はほぼ放置ほうち状態じょうたいでトウヒぞく人工じんこうりん成立せいりつさせ収穫しゅうかくすることが可能かのう地域ちいきもあり、ていコストで生産せいさんできる木材もくざい資源しげんとして注目ちゅうもくされている。

スプルース、北洋ほくようエゾマツ、ホワイトウッドなどの名称めいしょうで、シベリアや北米ほくべい北欧ほくおうなどから大量たいりょう輸入ゆにゅうされ、建築けんちく用材ようざい土木どぼく用材ようざいとして使用しようされ、程度ていどいものは弦楽器げんがっき表面ひょうめんいた家具かぐなどにも使つかわれる。なお、弦楽器げんがっき表面ひょうめんばん材料ざいりょうとしてしばしば表記ひょうきされる「ドイツまつ」は、ドイツトウヒまたはそののトウヒぞくざいのことである。

利用りようされるたね

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エンゲルマントウヒ Picea engelmanniiシトカトウヒ Picea sitchensisカナダトウヒ Picea glauca など、おも北米ほくべいやカナダで産出さんしゅつされるトウヒるいがよく利用りようされる。日本にっぽんではこれらを総称そうしょうして、ベイトウヒ(べいからひのき)、ホクヨウエゾマツ(北洋ほくよう蝦夷松えぞまつ)、アラスカヒノキ(アラスカひのき)とぶ。トウヒぞくマツであってヒノキではないが、1964ねん東京とうきょうオリンピック直前ちょくぜん建築けんちく需要じゅよう急増きゅうぞうさいに、ヒノキ代替だいたい木材もくざいとして輸入ゆにゅうされ、がヒノキにていたため、材木ざいもく業界ぎょうかいでこの普及ふきゅうした。

建築けんちくざいとして使用しようされるのが一般いっぱんてきであるが、良質りょうしつなものはピアノギターヴァイオリンなどの楽器がっき家具かぐ木製もくせい競漕きょうそうようボートのふねからまないたなどにもちいられる。カヤているので、将棋しょうぎばん碁盤ごばんに「しんカヤ」という名称めいしょう使用しようされるが、カヤにくらべるとかなりやわらかく、耐用たいよう年数ねんすうひくいとされる。

木造もくぞう枠組わくぐみかべ構法構造こうぞうざいディメンションランバー)には、いずれも針葉樹しんようじゅであるスプルース (S) とパイン (P) 、ファー (F) からなるSPFざい利用りようされる。

材木ざいもくはクリームしょくからうす黄色きいろである。

フィエンメ渓谷けいこくさん

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きたイタリアのフィエンメ渓谷けいこくさんスプルース (ABETE ROSSO) はヴァイオリン、チェロといった弦楽器げんがっきおもていたやピアノのひびきいたとして利用りようされる。

フィエンメ渓谷けいこくさんはコミュニティーメンバーのみに伐採ばっさいゆるされており、楽器がっきようとしてはCiresaしゃあつかっている[9]

分類ぶんるい

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系統けいとう分類ぶんるい

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トウヒぞくは5つの系統けいとうかれる[10][11]基底きていてき系統けいとうはいずれも北米ほくべいさんで、トウヒぞく北米ほくべい起源きげんであることを示唆しさしている。きゅう大陸たいりくさんするのは派生はせいてきな Clade IV と Clade V にかぎられる。

  • Picea sitchensis シトカトウヒ - 北米ほくべい太平洋たいへいようがん重要じゅうようじゅしゅたかさ95メートルにたっするものもあるトウヒぞく最大さいだいしゅ
 
ドイツトウヒ Picea abiesたまはて

きゅう分類ぶんるい

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たまはてもとづく分類ぶんるいである。

オモリカトウヒぶし

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たまはておおきく、表面ひょうめん鱗状りんじょう断面だんめんはややたい

トウヒぶし

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たまはてちいさく表面ひょうめん鱗状りんじょう断面だんめん扁平へんぺい。エゾマツ以外いがいはすべて北米ほくべいさん

バラモミぶし

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たまはておおきく表面ひょうめんはなめらか。はとがり、断面だんめん四角よつかど

日本にっぽんさんしゅ

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日本にっぽんには以下いかの7しゅと1変種へんしゅまたは6しゅと2変種へんしゅ(ヤツガタケトウヒとヒメマツハダはどう一種いっしゅない変種へんしゅあつかわれる場合ばあいがある)が分布ぶんぷする。エゾマツとアカエゾマツ以外いがい日本にっぽん特産とくさんしゅである。


脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c 辻井つじい達一たついち日本にっぽん樹木じゅもく中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ中公新書ちゅうこうしんしょ〉、1995ねん4がつ25にち、30 - 31ぺーじISBN 4-12-101238-0 
  2. ^ 谷口たにぐち武士たけし (2011) きんきんとの相互そうご作用さようつく森林しんりんたね多様たようせい(<特集とくしゅう>菌類きんるいうえしょくしゃとの相互そうご作用さようつく森林しんりんたね多様たようせい). 日本にっぽん生態せいたい学会がっかい61(3), p311-318. doi:10.18960/seitai.61.3_311
  3. ^ 深澤ふかさわゆう九石さざらしたいじゅ清和せいわ研二けんじ (2013) 境界きょうかい地下ちかはどうなっているのか : きんきん群集ぐんしゅう実生みしょう更新こうしんとの関係かんけい(<特集とくしゅう>森林しんりんの"境目さかいめ"の生態せいたいてきプロセスをさぐる). 日本にっぽん生態せいたい学会がっかい63(2), p239-249. doi:10.18960/seitai.63.2_239
  4. ^ 岡部おかべひろしあき,(1994) そとせいきんきん生活せいかつ様式ようしき(共生きょうせい土壌どじょう菌類きんるい植物しょくぶつ生育せいいく). 微生物びせいぶつ24, p15-24.doi:10.18946/jssm.44.0_15
  5. ^ 菊地きくち淳一じゅんいち (1999) 森林しんりん生態せいたいけいにおけるそとせいきん生態せいたい応用おうよう (<特集とくしゅう>生態せいたいけいにおけるきん共生きょうせい). 日本にっぽん生態せいたい学会がっかい49(2), p133-138. doi:10.18960/seitai.49.2_133
  6. ^ たからがつ岱造 (2010)そとせいきんきんネットワークの構造こうぞう機能きのう(特別とくべつ講演こうえん). 微生物びせいぶつ64(2), p57-63. doi:10.18946/jssm.64.2_57
  7. ^ ひがしじゅ宏和こうわ. (2015) 土壌どじょうきん群集ぐんしゅう植物しょくぶつのネットワーク解析かいせき : 土壌どじょう管理かんりへの展望てんぼう. 微生物びせいぶつ69(1), p7-9. doi:10.18946/jssm.69.1_7
  8. ^ 斎藤さいとう新一郎しんいちろう (1993) 高木たかぎるいおよび低木ていぼくるいにみられるふくじょう更新こうしんしょ事例じれい(会員かいいん研究けんきゅう発表はっぴょう論文ろんぶん). 日本にっぽんりん学会がっかい北海道ほっかいどう支部しぶろん文集ぶんしゅう41, p.199-201. doi:10.24494/jfshb.41.0_199
  9. ^ Opere Sonore(オペレ・ソノーレ)のブログ
  10. ^ Ran, J.-H.; Wei, X.-X.; Wang, X.-Q. (2006), “Molecular phylogeny and biogeography of Picea (Pinaceae): Implications for phylogeographical studies using cytoplasmic haplotypes”, Mol Phylogenet Evol. 41 (2): 405–419 
  11. ^ Sigurgeirsson, A.; Szmidt, A. E. (1993), “Phylogenetic and biogeographic implications of chloroplast DNA variation in Picea”, Nordic Journal of Botany 13 (3): 233–246 

関連かんれん項目こうもく

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