フラメンコ
フラメンコ(Flamenco)は、スペイン
フラメンコ | |
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フラメンコのバイラオーラ | |
アンダルシア, スペイン | |
サブジャンル | |
ニュー・フラメンコ (flamenco nuevo) | |
フラメンコ・チル (ダウンビート) |
フラメンコの
語源
"flamenco"という
ただしこの
なぜこの
- ヒターノがフランドル
地方 からやってきたと考 えたため、まずヒターノのことをフラメンコと呼 ぶようになり、やがて彼 らの芸能 をもフラメンコと呼 ぶようになったという説 - フランドル
地方 出身 のスペイン王 カルロス1世 (一般 的 には神聖 ローマ皇帝 カール5世 )がフランドル出身 の派手 好 きでならず者 の兵士 を連 れてきたため。以降 フランドル人 にかぎらずそのような連中 を"flamenco"と呼 ぶようになったという説 - 「
炎 」を意味 する"flama"または"flamente"(派手 な)、"flamancia"(香 り)のような単語 を語源 とする説 - アラビア
語 の"fellah min ghyr ard"「土地 を持 たない(逃 げ出 した)農民 」を語源 とする説 - アラビア
語 の"fellah mangu"「農民 の歌 」を語源 とする説 歌 い手 または踊 り手 の姿 がフラミンゴのようであったからとする説
歴史
前史
フラメンコの
スペイン
またその
この
成立 後
19
フラメンコが
こうした
さらにフラメンコの
カフェ・カンタンテは20
アーティスト
18
い
20
この
20
カンテの
こうしたフラメンコはさらにジャズやブルース、ロック、サルサ
その
アーティストの呼称
母 や父 の名前 を付加 したもの- Paco de Lucía ("Paco"は
本名 "Francisco"に対 する愛称 。"Lucía"は母 の名 ) 。Niño Ricardo ("Ricardo"は父 の名 。「リカルドの息子 」) 出身 地 の地名 を付加 したもの- Fernanda de Utrera、Diego de Morón ("Utrera"や"Morón"は
町 の名 )。Lebrijano ("Lebrija"は街 の名 、「レブリーハ男 」) 一族 に共通 の通 り名 をもつもの- Pepe Habichuela ("Pepe"は
本名 "José"に対 する愛称 、"Habichuela"はインゲン豆 の意味 で一族 共通 の呼 び名 )。Manuel Morao ("Morao"は"morado"で紫 の意味 )、その弟 はMoraíto(小 モラオ)、甥 はMoraíto chico (小 ・小 モラオ) 身体 的 な特徴 など- Enrique el Cojo ("Cojo"は「びっこ」)。Gordo Agujeta ("Gordo"は「
太 っちょ」、"Agujeta"は一族 の呼 び名 )。Chato de la Isla ("Chato"は「鼻 ぺちゃ」、"Isla"は出身 地 のIsla de San Fernando)。日本 では差別 的 と見 做されそうなものもある。 職業 - El Zapatero ("Zapata"「
靴 」職人 )。El Gasolina (ガソリンスタンド勤務 )。他 に本職 をもちながら、フラメンコのアーティストである場合 も多 い。
フラメンコの形態
フラメンコ
カンテ
フラメンコは
カンテのほとんどは
種類 (パロ)
フラメンコのカンテは、リズム(コンパス)や
ソレア系
12
- ソレア (Soleá/
複数 形 Soleares) - soledad (
孤独 )が由来 とされる。「カンテの母 」と呼 ばれ、フラメンコにとって最 もエッセンシャルな形式 といえる。名人 たちによって創造 され細分 化 された多数 のスタイルがあり、単 に伝統 的 なのではなく個性 が許容 される寛容 さも持 つ。 - ブレリア (Bulería)
- burla(あざけり)が
語源 とも、Boleroが語源 ともいわれる。ソレアから派生 した。最 もテンポが速 い曲 種 であり、激 しい曲調 を持 つものもある。宴 の締 めによく使 われる。現代 のフラメンコにおいてもっとも花形 的 なポジションを得 ている - カーニャ (Caña)
- フラメンコの
曲 種 の中 でも最 も古 いものの一 つとされるが、様式 が半 ば固定 化 されソレアほどに盛 んには歌 われない。
カンティーニャス系
- アレグリアス (Alegrías)
- カディス
発祥 であるがルーツはスペイン北部 のホタにあるとされる。alegría(喜 び)という語源 通 りの明 るく陽気 な曲 種 。ダイナミックで爽快 なバイレが特徴 。 - カラコレス (Caracoles)
食用 のカタツムリを売 る際 の掛 け声 がモチーフであるとされる。
シギリージャ・トナー系
- シギリージャ (Siguiriya)
変 拍子 風 の複雑 なリズムを持 つ。簡素 で厳格 な曲調 であり、カンテは嘆 きを表現 する奥深 いものである。- マルティネーテ (Martinete)
- ギターの
伴奏 を伴 わないカンテの一 つ。ヒターノの生業 である鍛冶屋 が発祥 といわれ、ハンマーで金 床 をたたく音 のみで伴奏 されることがある。
タンゴ系
- タンゴ (Tango)
- カディス
発祥 のほか、トリアーナ(セビージャ市 の一 地区 )、グラナダ、マラガ、エストレマドゥーラ等 にみられる。2拍子 でノリのよい明 るい曲 種 。アルゼンチン・タンゴとは別種 。宴 の締 めによく演奏 される。 - ティエントス (Tientos)
- 「
手探 り」の意 。タンゴの持 つうねりをより強調 した、ゆったりした曲調 のものがタンゴから分化 したもの。特 にカディスに聞 かれる。 - タンギージョ (Tanguillos)
小 さなタンゴの意 。タンゴよりも速 く、特 に近年 のものはシンコペーションが多用 される。カディスのカルナバル(謝肉祭 )の際 に歌 われる風刺 のきいた歌詞 のものが有名 。それを受 けたユーモラスで愛嬌 あふれるバイレも特徴 的 。
アンダルシア民謡 起源
- セビジャーナス (Sevillanas)
- セビージャ
発祥 の舞踊 曲 が起源 。4曲 で1セットで、明快 な曲調 。フラメンコの曲 としては珍 しく歌 や振 り付 けの長 さが一定 であり、CDなどで踊 ることも可能 。バイレの入門 曲 に使 われる。
ファンダンゴ系
スペイン
- ファンダンゴ・デ・ウエルバ (Fandangos de Huelva)
- アンダルシア
西部 のウエルバ県 のもの。県内 の街 々によって非常 に多様 なスタイルがある。比較的 リズムが鮮明 に保 たれているものが多 い - ファンダンゴ・ナトゥラル (Fandango natural)
- ファンダンゴの
中 でも、歌 い上 げるために舞曲 的 なリズムから解放 されたもの。 - マラゲーニャ (Malagueña)
- マラガ
由来 のカンテ。当地 の舞曲 的 なファンダンゴが自由 リズム化 したもの。 - グラナイーナ (Granaína)
- グラナダ
由来 。Granadinaの"d"が発音 されずにこのように呼 ばれる。 - タランタ (Tarantas)
- アルメリア
由来 。この地 に多 い鉱山 の労働 者 が、その生活 の嘆 きを歌 ったものが多 かった。開放 弦 や不協和音 を多用 したギターの伴奏 ・演奏 も独特 。 - カルタヘネーラ (Cartagenera)
- ムルシア
州 カルタヘナ由来
宗教 的 ・儀式 的 なもの
- サエタ (Saeta)
聖 週間 (Semana Santa)にキリストの受難 などについて歌 われるもの。街路 を通 るキリストの山車 に向 かってバルコニーから歌 われる。ギターなどによる伴奏 はない。山車 の隊列 のブラスバンドを伴 って歌 われることがある。- アルボレア (Alboreá)
- ヒターノの
結婚式 の際 に歌 われるもの。
労働 や生活 と結 びついたもの
スペイン北部 由来
アンダルシアの
中南米 起源
スペインから
フラメンコの地理
フラメンコはアンダルシア
アンダルシア
とくにフラメンコが
セビージャ県
セビージャ、アルカラ・デ・グアダイーラ、ウトレーラ、レブリーハ、モロン・デ・ラ・フロンテーラ
カディス県
フラメンコの鑑賞
スペインでフラメンコを
また、より
フラメンコの
鑑賞 時 の注意
用語
カンテ (Cante)
歌 。本来 はフラメンコと言 えば、まずはカンテのことである。魂 の奥底 から響 く深 い声 (カンテ・ホンド)こそ、フラメンコの真髄 といえる。- カンタオール/カンタオーラ (cantaor/cantaora)
男性 の歌 い手 /女性 の歌 い手 - カンテ・グランデ/カンテ・チーコ/カンテ・インテルメディオ (Cante grande/Cante chico/Cante intermedio)
- カンテの
諸 形式 はその格式 によって分類 される。グランデは大 きい・偉大 な、チーコは小 さい、インテルメディオは中間 。これらは部分 的 に踊 りやギターにも適用 されることもある(Baile grande、Toque grande) - レトラ (Letra)
歌詞 のこと
バイレ (Baile)
踊 りのこと。日本 でのフラメンコは踊 りというイメージが強 い。つま先 やかかとで床 を踏 み鳴 らしてリズムをとる(サパテアード)、また手 の動 き(ブラッソ)はフラメンコの命 である。- バイラオール/バイラオーラ (bailaor/bailaora)
男性 の踊 り手 /女性 の踊 り手 - サパテアード
靴 のつま先 やかかと、または足 全体 での打撃 。フラメンコ専用 の靴 のつま先 とかかとには多数 の釘 が打 ち込 んであり、打楽器 同様 である。- パリージョ (palillos)
踊 り子 が両手 に持 つカスタネット。き手 には高音 が出 るもの、逆手 には低音 がでるものをつける。- ピト (pitos)
指 鳴 らしのこと。- ブラソ (brazo)
- 「
腕 」のこと。 - マノ (mano)
- 「
手 」のこと。
トケ (Toque)
- ギター
演奏 。楽器 を「弾 く」ことはTocar(Tocar la guitarra)、手拍子 をすることも"Tocar las palmas"と言 う。 - フラメンコギター (Guitarra flamenca)
主 に、アコースティック・ギターの一種 であるフラメンコギターを用 いる。ギター表面 を保護 するため、セルロイドなどの「ゴルペ板 」が貼 られている。一見 クラシック・ギターとほぼ同 じであるが、ボディは若干 薄 め、弦 高 も低 めであり、側板 も糸杉 (シープレス)で軽量 であるなど、音 の歯切 れ・立 ち上 がりの良 さを指向 したセッティングとなっている。- ゴルペ
特 に指先 でギターを叩 いてリズムを取 る、またはパーカッション的 な効果 を出 すゴルペ奏法 。ゴルペ(名詞 golpe,動詞 golpear)とはスペイン語 で「打撃 、殴打 」などの意味 であり、踊 りの用語 としても使 われる。- ラスゲアード (Rasgueado)
- すべての
指 を用 いたギターの「掻 き鳴 らし」のこと。ラスゲオ (rasgueo)、または方言 でラヘアオ (rasgeao)などども。 - ピカード (picado)
- いわゆる「
速 弾 き」のことである。名詞 picado、動詞 picarは「刺 す・つつく・細 かく刻 む・みじん切 り」などの意味 である。 - アルサプーア (Alzapúa)
親指 をピック的 に用 いて上下 させる連続 的 でリズミカルな奏法 。- アリーバ/メディオ (Arriba/Medio)
直訳 すると「上 」「中 」のことであるが、フラメンコギターにおいては、指 板 上 の位置 のことを見 て、特 に多用 される音程 「E」のキーと「A」のキーのことを指 す。- ハレオ (Jaleo)
掛 け声 。代表 的 な『オレ』(¡ole!/¡olé!、アラー由来 ともいわれる掛 け声 。「オーレ」よりは「オレー」に近 い。)、『ビエン!』(good、いいぞ、の意 )などの掛 け声 が場 を盛 り上 げる。コンパスに乗 せたリズミカルで連続 的 なものも聞 かれる。- パルマス (Palmas)
手拍子 。甲高 い音 の『セコ (seco)』と低 くこもった音 の『バホ (bajo)』など2種類 以上 の音 を使 い分 けながら、踊 り手 やギタリスト、歌 い手 の呼吸 に合 わせながらたたいて行 く。フラメンコの音楽 を形成 する上 で重要 な役割 を持 つ。ギターの伴奏 がなく、パルマスのみの伴奏 によって歌 われ、踊 られるシーンも少 なくない。- カホン (Cajón)
箱 形 の打楽器 。叩 いてハンド・パーカッションとして使用 する。1970年代 以降 フラメンコに登場 し、急速 に普及 した[24]。
出典
- ^ a b https://ich.unesco.org/en/RL/flamenco-00363 「Flamenco」UNESCO 2020
年 7月 25日 閲覧 - ^ 「フラメンコのすべて」p48-49
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行 - ^ 「フラメンコのすべて」p89
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行 - ^ 「フラメンコのすべて」p94-95
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行 - ^
志 風 p.289 - ^
濱田 p.56 - ^
濱田 p.55 - ^
川成 洋 『スペイン文化 読本 』丸善 出版 、2016年 、168頁 。ISBN 978-4-621-08995-8。 - ^ 「フラメンコのすべて」p100-105
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行 - ^ 「フラメンコのすべて」p137
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行 - ^
濱田 p.57-59 - ^ 「フラメンコのすべて」p119-122
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行 - ^ 「フラメンコのすべて」p204-205
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行 - ^ 「フラメンコのすべて」p112-115
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行 - ^ a b 「フラメンコのすべて」p116
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行 - ^ 「フラメンコのすべて」p71
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行 - ^ 「フラメンコのすべて」p208-209
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行 - ^ 「フラメンコのすべて」p209-210
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行 - ^ 「フラメンコのすべて」p67
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行 - ^ 「
世界 の音楽 大 図鑑 」ロバート・ジーグラー、スミソニアン協会 監修 金澤 正 剛 日本語 版 監修 p178河出書房新社 2014年 10月 30日 初版 発行 - ^ 「フラメンコ
読本 」p184-185 イスパニカ編 晶文社 2007年 8月 10日 初版 - ^ 「フラメンコ
読本 」p195-197 イスパニカ編 晶文社 2007年 8月 10日 初版 - ^ 「フラメンコのすべて」p239
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行 - ^ 「フラメンコのすべて」p212-213
有本 紀明 講談社 2009年 8月 3日 第 1刷 発行
参考 文献
川成 洋 、下山 静香 、志 風 恭子 『マドリードとカスティーリャを知 るための60章 (「フラメンコの都 」志 風 恭子 )』(初版 )明石書店 (エリア・スタディーズ131)、2014年 6月 30日 。ISBN 9784750340241。濱田 滋 郎 『スペイン音楽 のたのしみ気質 、風土 、歴史 が織 り成 す多彩 な世界 への誘 い』(第 1刷 )音楽之友社 (オルフェ・ライブラリー)、2013年 1月 10日 。ISBN 978-4276371088。濱田 滋 郎 『フラメンコの歴史 』(第 1刷 )晶文社 、1983年 6月 25日 。ISBN 978-4794951342。立石 博 高 、塩見 千加子 、佐藤 健太郎 『アンダルシアを知 るための53章 』(初版 )明石書店 (エリア・スタディーズ110)、2012年 11月20日 。ISBN 978-4750337036。- アンダルシア
州 政府 、Alberto García Reyes『アンダルシア フラメンコ・ガイド』(初版 ) 、2005年 3月 。ISBN 8481765910。 濱田 滋 郎 『フラメンコ・アーティスト列伝 』(初版 )パセオ(パセオ選書 2)、1993年 6月 30日 。ISBN 4938673061。- ホセ・ルイス・オルティス・ヌエボ『
集 いと娯楽 の近代 スペイン:セビーリャのソシアビリテ空間 』(初版 )彩 流 社 、2011年 10月 5日 。ISBN 9784779116582。