凝固ぎょうこ点てん降下こうか(ぎょうこてんこうか、(英えい: freezing-point depression)とは、液えき相しょうにのみ溶とけ固かた相しょうには溶解ようかいしない溶質ようしつを溶媒ようばいに溶とかすと、溶媒ようばいの凝固ぎょうこ点てんが低ひくくなる現象げんしょうのことである。たとえば純粋じゅんすいな水みずは0℃で凍こおるが、食塩しょくえん水すいや砂糖さとう水すいはさらに低ひくい温度おんどまで液体えきたいとして存在そんざいする。飽和ほうわ食しょく塩水えんすい(食塩しょくえん濃度のうど25%の食しょく塩水えんすい)であればその食塩しょくえん水すいは−22℃になってはじめて凍こおる。希薄きはく溶液ようえきにおける凝固ぎょうこ点てん降下こうかは熱ねつ力学りきがく的てきにはつぎの式しきに従したがう[1]。
温度おんど変化へんかの幅はばは、溶質ようしつの種類しゅるいによらず、その体積たいせきモル濃度のうどと溶媒ようばいの熱ねつ力学りきがく的てき性質せいしつのみで決きまることから、沸点ふってん上昇じょうしょうと並ならんで束たば一いち的てき性質せいしつと呼よばれる。特定とくていの溶媒ようばいでは K f {\displaystyle K_{\mathrm {f} }} は定数ていすうとなりモル凝固ぎょうこ点てん降下こうかと呼よばれ、溶媒ようばいの固かた相しょうに取とり込こまれない不揮発ふきはつ性せい溶質ようしつを溶解ようかいさせた十分じゅうぶんに希薄きはくな溶液ようえきでは、凝固ぎょうこ点てん降下こうか度どは、溶質ようしつの種類しゅるいにかかわらず、溶質ようしつの質量しつりょうモル濃度のうど m {\displaystyle m} に比例ひれいする。溶液ようえきの凝固ぎょうこ点てん T {\displaystyle T} は純じゅん溶媒ようばいの凝固ぎょうこ点てんを T f {\displaystyle T_{\mathrm {f} }} として以下いかの式しきで表あらわされる。ただし溶質ようしつが解離かいりおよび会合かいごうしていないという仮定かていの下したで成立せいりつする式しきであり、イオンに解離かいりする場合ばあいは解離かいりにより生しょうじる全ぜん粒子りゅうし数すうを考慮こうりょした濃度のうどを用もちいなければならない。ファントホッフの因子いんし(英語えいご版ばん)を導入どうにゅうして補正ほせいする。
しかし、溶質ようしつが溶媒ようばいの固かた相しょうに取とり込こまれる場合ばあいは、凝固ぎょうこ点てんは降下こうかする場合ばあいも上昇じょうしょうする場合ばあいもある。
古典こてん的てきにはこの性質せいしつを使つかい導出みちびきだされるモル質量しつりょうより分子ぶんし量りょうを決定けっていした時代じだいがあったが、今日きょうにおいては一般いっぱん的てきではない。
路上ろじょうに積つもった雪ゆきに塩しおをまくと、氷点下ひょうてんかでも凝固ぎょうこ点てん降下こうかにより氷こおりが溶とけて流ながれるために、融雪ゆうせつ剤ざいとして利用りようすることができる。