劣等れっとう感かん

劣等れっとう感かん（れっとうかん、英えい: Inferiority complex）は、自分じぶんが他人たにんに劣おとっていると感かんじること。劣後れつご感かん（れつごかん）ともいう。強烈きょうれつな不平等ふびょうどう感かんを持もつ人々ひとびとを記述きじゅつするために使用しようされる心理しんり学がく用語ようごであり、それによって多おおくの場合ばあい、極端きょくたんな内気うちき、自己じこ隔離かくり、社会しゃかい的てき従順じゅうじゅんなどが発生はっせいする。劣等れっとう感かんはしばしば、ある人ひとがすべての他人たにんよりも何なんらかの形かたちで不足ふそくしている、または劣おとっているという信念しんねんから生しょうじる^[1] 。

精神せいしん分析ぶんせき学がくの用語ようごとしては、ジークムント・フロイトが自著じちょで用もちいたのが初出しょしゅつで、後のちに同僚どうりょうのカール・ユングの著作ちょさくでも用もちいられた。古典こてんアドラー心理しんり学がくの創立そうりつ者しゃアルフレッド・アドラーは、多おおくの神経症しんけいしょうはこの劣等れっとう感かんを過剰かじょうに埋うめ合あわせようとすることにその原因げんいんがあると考かんがえた。

日本にっぽんでは、一般いっぱん的てきに誤あやまってコンプレックスを単たんに劣後れつご感かんを指さして用もちいられることがあるが、心理しんり学がく用語ようごとしてのコンプレックスは、無意識むいしき下したに抑圧よくあつされ、固着こちゃくされ、ときに強つよい感情かんじょうを誘発ゆうはつする観念かんねんの複ふく合体がったい（complex）を指さすのであり、劣等れっとう感かんは正ただしくは「Inferiority complex（インフェリオリティコンプレックス）」である^[2]^[3]。

概要がいよう

これは主おもに人間にんげんの心しん（精神せいしん）に発生はっせいする感覚かんかくである。人間にんげんは成長せいちょうの過程かていで自我じがを発達はったつさせるが、この段階だんかいで他人たにんとの競争きょうそう意識いしきが生うまれ、その競争きょうそう面めんでの挫折ざせつの結果けっかが劣後れつご感かんとみなされる。劣後れつご感かんはこれを抱いだく人ひとを憂鬱ゆううつ（暗くらく沈しずんだ気持きもち）にさせるが、同時どうじに克服こくふくすることで更さらなる展望てんぼうを生うむ。多おおくの場合ばあい、児童じどうや青少年せいしょうねんは様々さまざまな劣後れつご感かんを抱だいている。しかしそれらは成長せいちょう途上とじょうにおける苦くるしみであるといえる。

アルフレッド・アドラーによれば劣等れっとう感かんは、子供こどもの頃ころの成長せいちょう環境かんきょう（たとえば兄弟きょうだいと比較ひかくされる）、身体しんたい的てきおよび精神せいしん的てきな制限せいげん、社会しゃかい的てき差別さべつの経験けいけん（たとえば人種じんしゅ、経済けいざい状況じょうきょう、性別せいべつによる機会きかい不平等ふびょうどう）によって引ひき起おこされる可能かのう性せいがあるという^[4] 。