排気はいきガス

排気はいきガス（はいきガス、英えい: exhaust gas）は、ガソリン・軽油けいゆなどの燃料ねんりょうがエンジンで燃焼ねんしょうしたり、さまざまな化学かがく反応はんのうを起おこしたりしたことで生しょうずる気体きたいで、大気たいき中ちゅうに放出ほうしゅつされるものを指さす。

自動車じどうしゃ用語ようごでは排気はいき (exhaust)、または排はいガス・排出はいしゅつガス（共ともにexhaust gas）とも言いう。日本にっぽん産業さんぎょう規格きかく (JIS D0108) では、ブローバイガスや燃料ねんりょう蒸発じょうはつガス（ガソリンベーパー）などエンジンの燃焼ねんしょうに伴ともなうもの以外いがいを併あわせて、排出はいしゅつガス (emission gas) と総称そうしょうして区別くべつしている。

成分せいぶん

有機ゆうき化合かごう物ぶつに由来ゆらいする排出はいしゅつガスは大だい部分ぶぶんが二酸化炭素にさんかたんそと水蒸気すいじょうきであるが、微量びりょう成分せいぶんとして他た物質ぶっしつを含ふくむ。一酸化いっさんか炭素たんそ (CO)、炭化たんか水素すいそ (HC)、窒素ちっそ酸化さんか物ぶつ (NO_x) あるいは粒子りゅうし状じょう物質ぶっしつ (PM) などである。

下記かきにその成分せいぶんを記しるす。

一酸化いっさんか炭素たんそ (CO): 有機ゆうき化合かごう物ぶつが酸化さんかされる際さい、酸素さんそ供給きょうきゅうが不十分ふじゅうぶんな不完全ふかんぜん燃焼ねんしょうであると発生はっせいする。人体じんたいに対たいする毒性どくせいがある。
炭化たんか水素すいそ (HC): ガソリン（C₈H₁₈ など）が揮発きはつしたり、燃焼ねんしょうが不完全ふかんぜんで燃焼ねんしょうできなかった混合こんごう気き（未み燃焼ねんしょう炭化たんか水素すいそ）がそのまま排出はいしゅつされると発生はっせいする。太陽光たいようあきらの紫外線しがいせん成分せいぶんによって、光化学こうかがくスモッグを引ひき起おこす光化学こうかがくオキシダントへと変化へんかする。呼吸こきゅう器きなどの粘膜ねんまくへの刺激しげき、農作物のうさくもつへの悪影響あくえいきょうが見みられる。
窒素ちっそ酸化さんか物ぶつ (NO_x): 高温こうおん・高こう圧あつ状態じょうたいになる燃焼ねんしょう室しつでは窒素ちっそが酸化さんかしやすく、発生はっせいする。排出はいしゅつガス全体ぜんたいのうち、自動車じどうしゃの排出はいしゅつガスによる発生はっせい量りょうが3割わりを占しめる。窒素ちっそ酸化さんか物ぶつには酸素さんその結合けつごう量りょうによっていくつか種類しゅるいがあるため通常つうじょうは酸素さんその数かずを _x と表記ひょうきし、各種かくしゅの窒素ちっそ酸化さんか物ぶつをまとめて示しめしている。
粒子りゅうし状じょう物質ぶっしつ (PM): マイクロメートル単位たんいの粒子りゅうし。大気たいき中ちゅうに浮遊ふゆうしているものは浮遊ふゆう粒子りゅうし状じょう物質ぶっしつ (SPM) と呼よばれており、粒つぶ径みち10 µm以下いかのものと定義ていぎされている。特とくに粒つぶ径みちの小ちいさい2.5 µm以下いかのものは微小びしょう粒子りゅうし状じょう物質ぶっしつ (PM2.5) と呼よばれている。
二酸化炭素にさんかたんそ (CO₂): 有機ゆうき化合かごう物ぶつの燃焼ねんしょうや生物せいぶつの代謝たいしゃによって発生はっせいする。現代げんだいは電気でんきモーターを併用へいようするハイブリッドカーや低てい燃費ねんぴのガソリン直ちょく噴エンジンが使用しようされている。
硫黄いおう酸化さんか物ぶつ (SO_x): 硫黄いおうの酸化さんか物ぶつの総称そうしょう。二酸化にさんか硫黄いおう (SO₂) と三さん酸化さんか硫黄いおう (SO₃) を主おもに指さす。十分じゅうぶん精製せいせいされていない石油せきゆや低てい品位ひんいの石炭せきたんなどは硫黄いおうを含ふくんでおり、これらの燃焼ねんしょうによって発生はっせいする。大気たいき汚染おせんや酸性さんせい雨うの原因げんいんの一ひとつ。

なお、CO, HC, NO_x の抑制よくせい方法ほうほうは二律背反にりつはいはんであるため、単一たんいつの方法ほうほうでは全すべてが低ひくいレベルに収おさまることは無ない。自動車じどうしゃ用ようガソリンエンジンの場合ばあい、全すべての排出はいしゅつ量りょうを抑おさえるには3つが比較的ひかくてき低ひくいレベルに収おさまる空そら燃もえ比ひ（およそ14.7 = ストイキオメトリ）で燃焼ねんしょうさせ、三さん元げん触媒しょくばいで処理しょりを行おこなうなどの方法ほうほうがある。これらを基準きじゅん値ち以下いかで成立せいりつさせるにはキャブレターでは難むずかしい面めんもあり、細こまかく燃料ねんりょう量りょうを制御せいぎょできる電子でんし制御せいぎょ式しき燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうち (FI) が適てきしているため、オートバイなどでもFI化かが進すすんでいる。一方いっぽう、排気はいきが常つねに酸素さんそ過剰かじょうとなるディーゼルエンジンは、還元かんげん剤ざいにアンモニア/アンモニア水すいや尿素にょうそ水すいを用もちいた選択せんたく触媒しょくばい還元かんげん脱硝だつしょう装置そうちや尿素にょうそSCRシステムで後処理あとしょりを行おこなう。

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