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狩猟採集社会 - Wikipedia

狩猟しゅりょう採集さいしゅう社会しゃかい

狩猟しゅりょう採集さいしゅう社会しゃかい(しゅりょうさいしゅうしゃかい)とは、おも人類じんるいがくうえ言葉ことばで、野生やせい動植物どうしょくぶつ狩猟しゅりょう採集さいしゅう生活せいかつ基盤きばんとする社会しゃかいのことである。農耕のうこう開始かいしされたしん石器せっき時代じだいまですべての人類じんるい狩猟しゅりょう採集さいしゅう社会しゃかいだったとかんがえられている。

概要がいよう

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狩猟しゅりょう採集さいしゅう社会しゃかいは、北極ほっきょくけんから熱帯ねったい雨林うりん砂漠さばくにいたるまで地球ちきゅうじょうすべての地域ちいき存在そんざいしている。19世紀せいきから20世紀せいきにかけては、社会しゃかい進化しんかろんもとづいて狩猟しゅりょう採集さいしゅう社会しゃかいから農耕のうこう社会しゃかいという「進化しんか」を世界せかいてき適用てきようし、狩猟しゅりょう採集さいしゅう社会しゃかい農耕のうこう社会しゃかいおとっているとする論者ろんしゃもいたが、これは本来ほんらい文化ぶんか中心ちゅうしん主義しゅぎてき理論りろんでしかない。これまでの研究けんきゅう蓄積ちくせきによって、アジアの狩猟しゅりょう採集さいしゅう社会しゃかいのように、民族みんぞくあいだ政治せいじ生態せいたいがくてき権力けんりょく関係かんけいなか狩猟しゅりょう採集さいしゅう分業ぶんぎょうした場合ばあいや、そもそも歴史れきしてき栽培さいばい植物しょくぶつ家畜かちくえんがなくて、農耕のうこう牧畜ぼくちくという生業せいぎょう形態けいたい移行いこうしなかった場合ばあいがあることがわかっている。そして歴史れきしてきにもほぼすべての狩猟しゅりょう採集さいしゅう社会しゃかい周辺しゅうへん農耕のうこう社会しゃかい交易こうえきなどによってむすばれた社会しゃかいなのである[1]

狩猟しゅりょう採集さいしゅう社会しゃかい社会しゃかい構造こうぞう多様たようである。ある社会しゃかいには首長しゅちょう存在そんざいし、そのような存在そんざい確認かくにんされない社会しゃかいもある。一般いっぱんてき首長しゅちょう権力けんりょく存在そんざいしない。首長しゅちょう権力けんりょくとうとするのをさまたげる集団しゅうだん世論せろんはたらいているのである(ピエール・クラストル国家こっかこうする社会しゃかい参照さんしょう)。ただし戦時せんじにおいては一人ひとり人間にんげん指導しどうしゃ)に権力けんりょく集中しゅうちゅうする場合ばあいがある。

以前いぜんは「きびしい食料しょくりょう事情じじょうによって余剰よじょう食物しょくもつることはまれ」とされていたが(生存せいぞん経済けいざい)、民族みんぞく蓄積ちくせきにより、かれらは生存せいぞん必要ひつようりょうばい食料しょくりょう生産せいさんできるにもかかわらず、また原始げんし農耕のうこうよりも労働ろうどう時間じかんすくない過小かしょう生産せいさん傾向けいこうによって、余暇よかみだし生活せいかつしていることが判明はんめいしている。専門せんもんてき指導しどうしゃ役人やくにん職人しょくにんといったひとたちは滅多めったにいないが、ジェンダーによる作業さぎょう分離ぶんりなどはおこなわれている。

現在げんざい農耕のうこう社会しゃかい狩猟しゅりょう採集さいしゅう社会しゃかい境界きょうかいせん明確めいかくではない。おおくの狩猟しゅりょう採集さいしゅうみんは、食料しょくりょうとなる植物しょくぶつやすために、森林しんりん植物しょくぶつ伐採ばっさいしたり、いたりといった伝統でんとうてき方法ほうほうっている(はん栽培さいばい)。また、現代げんだいにおいては定住ていじゅう政策せいさくによって自給じきゅうできなくなったぶん配給はいきゅうによって獲得かくとくしていたり、農耕のうこうみん手伝てつだいをすることをとおして食料しょくりょう獲得かくとくしている。

平等びょうどう主義しゅぎ社会しゃかい幻想げんそう

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アフリカの狩猟しゅりょう採集さいしゅうみんブッシュマンピグミーには広汎こうはん分配ぶんぱい習慣しゅうかんみとめられてきた。かれらは食料しょくりょう獲得かくとくしてから消費しょうひするまでなんなん分配ぶんぱいりかえされる。この様式ようしきささえているのはマーシャル・サーリンズ指摘してきした一般いっぱんてき互酬せい原則げんそくである[2]が、かれらのなかしょうじる分配ぶんぱい権威けんい発生はっせいさせるものではない[注釈ちゅうしゃく 1]。ブッシュマンのサン場合ばあい優秀ゆうしゅうなハンターは大量たいりょう捕獲ほかくしたのちりにでないようにし供給きょうきゅうそのものをらし、分配ぶんぱいされるがわにまわる。さらにハンターや獲物えもの所有しょゆうしゃたいして節制せっせいもとめられ、分配ぶんぱいによる威信いしん獲得かくとく機会きかい縮小しゅくしょうされる。またたがいに[注釈ちゅうしゃく 2]交換こうかんすることで、獲得かくとくした獲物えもの所有しょゆうしゃ分散ぶんさんさせている。つまり、サーリンズが指摘してきしたような、所有しょゆうたいする欲望よくぼうがないから平等びょうどう分配ぶんぱいきている[2]のではなく、日常にちじょうなかからつね威信いしん平準へいじゅんするプロセスがはたらくことで平等びょうどう関係かんけい達成たっせいされている[3]

ワイルドヤム問題もんだい

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中央ちゅうおうアフリカ狩猟しゅりょう採集さいしゅうみんピグミー熱帯ねったい雨林うりん地帯ちたい自然しぜん環境かんきょうつよ依存いぞんしているのと同時どうじに、バントゥーけい隣接りんせつ農耕のうこうみん歴史れきしてき密接みっせつ協力きょうりょく関係かんけいにある。以前いぜんはピグミーたちは、この地域ちいき多数たすうめる農耕のうこうみん西にしアフリカのサバンナ地帯ちたいから森林しんりん移入いにゅうする以前いぜん先住民せんじゅうみんだとかんがえられていたが、1980年代ねんだい後半こうはんから、こうした「狩猟しゅりょう採集さいしゅうみん先住民せんじゅうみんせつ」に疑問ぎもんていされるようになった。その根拠こんきょとして以下いかのことがげられている。

  1. 現在げんざい熱帯ねったい雨林うりん狩猟しゅりょう採集さいしゅうみんはすべて周辺しゅうへん農耕のうこうみんとのあいだ交換こうかん自身じしん農耕のうこう活動かつどうによって入手にゅうしゅした農作物のうさくもつ食生活しょくせいかつのかなりの部分ぶぶん依存いぞんしていること
  2. 過去かこにも純粋じゅんすい狩猟しゅりょう採集さいしゅうみん熱帯ねったい雨林うりんなか生活せいかつしていたことをしめ考古学こうこがくてき証拠しょうこ発見はっけんされていないこと
  3. 熱帯ねったい雨林うりんのなかには人間にんげん生存せいぞんささえるに十分じゅうぶん食物しょくもつ基盤きばんがなく、とくに果実かじつ入手にゅうしゅできない乾季かんきにはエネルギーげん極端きょくたん不足ふそくすること

熱帯ねったい雨林うりん狩猟しゅりょう採集さいしゅう生活せいかつというのは、焼畑やきばた農耕のうこうみんによるはん定住ていじゅうてき生活せいかつ基盤きばんにしなければりたず、ピグミーは先住民せんじゅうみんではないのではないのか?」というのがワイルドヤム問題もんだいである。

ただしこれらの疑問ぎもん野生やせいヤムの分布ぶんぷなどの間接かんせつ証拠しょうこ依存いぞんしていたとし、食料しょくりょう不足ふそくするとされた乾期かんきにおける実証じっしょう研究けんきゅうおこなわれたところ、熱帯ねったい雨林うりんにおいて農耕のうこう依存いぞんしない狩猟しゅりょう採集さいしゅう生活せいかつ可能かのうであるということが示唆しさされた[4]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ すべての狩猟しゅりょう採集さいしゅうみんたいして指摘してきできることではない。北米ほくべいインディアンのポトラッチニューギニアビッグマン社会しゃかい南米なんべいのナンビクワラにおける分配ぶんぱい権威けんい発生はっせいさせる[よう出典しゅってん]
  2. ^ 獲物えものだいいち所有しょゆうしゃはハンターではなくやり所有しょゆうしゃである[よう出典しゅってん]

出典しゅってん

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  1. ^ 山田やまだ仁史ひとし ちょ「アジアをみる」、片岡かたおかいつき, シンジルト, 山田やまだ仁史ひとし へん『アジアの人類じんるいがく春風しゅんぷうしゃ、2013ねん  [ようページ番号ばんごう]
  2. ^ a b マーシャル・サーリンズ ちょ山内やまうちあきら わけ石器せっき時代じだい経済けいざいがく法政大学ほうせいだいがく出版しゅっぱんきょく叢書そうしょ・ウニベルシタス ; 133〉、1984ねん2がつ  [ようページ番号ばんごう]
  3. ^ 市川いちかわ光雄みつお ちょ共存きょうぞん原理げんり」、田中たなか二郎じろう, かけたにまこと へん『ヒトの自然しぜん平凡社へいぼんしゃ、1991ねん  [ようページ番号ばんごう]
  4. ^ 安岡やすおか宏和ひろかず (2007). “アフリカ熱帯ねったい雨林うりんにおける狩猟しゅりょう採集さいしゅう生活せいかつ生態せいたい基盤きばんさい検討けんとう--野生やせいヤムの利用りよう可能かのうせい分布ぶんぷ様式ようしきから (特集とくしゅう 地域ちいき研究けんきゅう前線ぜんせん)”. アジア・アフリカ地域ちいき研究けんきゅう (京都きょうと大学だいがく大学院だいがくいんアジア・アフリカ地域ちいき研究けんきゅう研究けんきゅう) 6 (2): 297-314. ISSN 1346-2466. https://hdl.handle.net/2433/80084. 

関連かんれん項目こうもく

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