玄関げんかん

玄関げんかん（げんかん）とは、建物たてものの主要しゅような出入口でいりぐち、また出入口でいりぐちの部分ぶぶんに設もうけられた空間くうかんである。

ただし本来ほんらい、中国ちゅうごくの道教どうきょう（煉丹れんたん術じゅつの内うち丹にの法ほうでは体内たいないにある気きを巡めぐらすための最初さいしょに気きを通とおす場所ばしょのことである）、禅ぜん（達磨だるまによる禅ぜんの伝来でんらいの際さい、達磨だるまの指示しじでディヤーナを玄げん（後のちに禪ぜん（禅ぜん）と訳やくす）と訳やくしたともされる）などの用語ようごで「玄関げんかん」とは「玄げん妙みょうの道みちに入はいる關せき門もん」（「玄げん牝めすの関せき」）ことである。

日本にっぽんでは禅ぜん寺てらの方丈ほうじょうに設もうけられる入口いりくち^[1] や書院造しょいんづくりで邸宅ていたくへの正式せいしきの出入口でいりぐちに設もうけられる部屋へやや建物たてもの^[1] を指さし、また、江戸えど時代じだいには式台しきだいを構かまえている出入口でいりぐちを「玄関げんかん」と称しょうした^[2]。明治めいじ時代じだい以降いこうは形式けいしきを問とわず住居じゅうきょ・公共こうきょう建築けんちくの出入口でいりぐちを指さす概念がいねんとなっている^[2]。

現代げんだいの一般いっぱん的てきな日本にっぽんの家屋かおくの玄関げんかん

日本にっぽんの玄関げんかんは通常つうじょう、靴くつを履はいて歩あるく部分ぶぶん(土間どま)と、靴くつを脱ぬいで上あがる部分ぶぶんに分わかれ、段差だんさが設もうけられている。この段差だんさは土埃つちぼこりが部屋へやに入はいらないためにあるが、段差だんさがあった方ほうが座すわって靴くつを履はきやすい。

まれに日本にっぽんでも段差だんさが無ない玄関げんかんもあるが、この場合ばあい、土足どそくの部分ぶぶんはタイル貼はり、コンクリートや大理石だいりせきなど、脱ぬいで上あがる部分ぶぶんはフローリングやカーペットになっているなど材質ざいしつが異ことなり、境界きょうかい線せんがある。玄関げんかんの土間どまは、三和さんわ土ど(たたき)と呼よばれる事こともあるが、本来ほんらい三和さんわ土どは、土間どまに使つかわれている材質ざいしつのことを指さす言葉ことば。

玄関げんかんが独立どくりつした部屋へやになっていない場合ばあいも多おおい。廊下ろうかと繋つながっていたり、ワンルームなどの狭せまい間取まどりでは、土間どまから上あがるとすぐ台所だいどころや、リビングなど居住きょじゅうスペースになっている事こともあり、このような家いえで玄関げんかんと言いうと土間どまの部分ぶぶんのみを指さす。

玄関げんかんには通常つうじょう、靴くつを収納しゅうのうするために靴箱くつばこが設置せっちされる。靴箱くつばこは下駄箱げたばこ、シューズボックスなどの呼称こしょうもある。

平成へいせい以降いこうに建たてられた家いえの玄関げんかんには、備そなえ付つけの靴箱くつばこがある場合ばあいが多おおいが、備そなえ付つけの靴箱くつばこが無ない家いえや、靴くつが多おおくて備そなえ付つけの靴箱くつばこだけでは足たりない場合ばあいのために、据すえ置おき型がたの靴箱くつばこも販売はんばいされている。

玄関げんかんには、靴箱くつばこと同おなじく傘かさ立だても設置せっちされる事ことが多おおい。アパートやマンションでは廊下ろうかなど共用きょうよう部ぶに私物しぶつを置おけないので、傘かさ立だては必然ひつぜん的てきに玄関げんかんの中なかに設置せっちされるが、一軒家いっけんやではドアを開あけた玄関げんかんの外そとすぐに設置せっちされる事こともある。

その他た、玄関げんかんに設置せっちされる物ものとして、靴くつについた泥どろを落おとすための玄関げんかんマット、スリッパを室内しつないで履はく家庭かていではスリッパ立だても設置せっちされる。

玄関げんかんの役割やくわり

玄関げんかんで最もっとも行おこなわれる事ことは住人じゅうにんが靴くつを脱ぬいだり履はいたりする事ことであるが、もうひとつ玄関げんかんで行おこなわれる事ことは、短時間たんじかんの用事ようじの来客らいきゃくの応対おうたいである。宅配たくはいの受取うけとりなどがその代表だいひょうである。

短時間たんじかんの用件ようけんの来客らいきゃくは、室内しつないに招まねかず、玄関げんかんで用件ようけんを済すませる事ことが多おおい。

短時間たんじかんの来客らいきゃくの応対おうたいをする部屋へやというのも玄関げんかんの重要じゅうような役割やくわりである。

たとえ短時間たんじかんとはいえ、玄関げんかんは来客らいきゃくを迎むかえる家いえの顔かおとも言いえる存在そんざいなので、インテリアにこだわったり、花はなや置おき物もの、鏡かがみなどを飾かざる家庭かていもある。風水ふうすいにおいても、玄関げんかんは重視じゅうしされる。

玄関げんかんから繋つながる廊下ろうかやリビングとの間あいだにドアが無ない家いえでは、来客らいきゃくから部屋へやの中なかが見みえないように暖簾のれんが掲かかげられる事こともある。

ただし、ビーズ素材そざいなど、目隠めかくしとしての機能きのうが無ない暖簾のれんが、インテリア要素ようそとして掲かかげられる事こともある。

玄関げんかんと靴くつについて

現代げんだいの家いえの玄関げんかん。靴くつを脱ぬいだり履はいたりする土間どまがある

日本にっぽんでは、家屋かおくの玄関げんかんでは必かならず靴くつを脱ぬぐ。現代げんだい中国ちゅうごくや欧米おうべいでは脱ぬがない習慣しゅうかんがある。しかし、中国ちゅうごくや欧米おうべいでも、それぞれの家庭かていによっては脱ぬぐ場合ばあいもある。

カナダでは、多おおくの家庭かていで靴くつを脱ぬぐ習慣しゅうかんがある。ただし、靴くつを脱ぬぐ場所ばしょは家庭かていごとによって異ことなり、日本にっぽんの玄関げんかんのような特定とくていの空間くうかんはない。カナダでは主おもに玄関げんかんドア付近ふきんや廊下ろうかなどで靴くつを脱ぬぐ。

また、古代こだい中国ちゅうごく、東ひがしアジア、東南とうなんアジア、中東ちゅうとうなど広ひろい地域ちいきでは玄関げんかんで靴くつを脱ぬぐ習慣しゅうかんがあり、日本にっぽんだけの文化ぶんかだと思おもわれることも多おおいが、玄関げんかんで靴くつを脱ぬぐことを習慣しゅうかんとする文化ぶんかは少すくなくない。一部いちぶのアメリカの郊外こうがい家屋かおくでは、Mud Roomと呼よばれるジャケットや靴くつを脱ぬぐ空間くうかんがある。

玄関げんかんとバリアフリー

通常つうじょう、日本にっぽん家屋かおくの玄関げんかんには段差だんさが作つくられている。この段差だんさが、身体しんたい障害しょうがい者しゃや身体しんたい能力のうりょくの衰おとろえた高齢こうれい者しゃにとっての障壁しょうへきとなる場合ばあいもある。車椅子くるまいすを使用しようしている者ものが入居にゅうきょする家庭かていでは、玄関げんかん土間どまに車椅子くるまいすが完全かんぜんに入はいるのに充分じゅうぶんな空間くうかんを確保かくほすることが望のぞましい。スロープを設置せっちすると尚なお良よい。近年きんねんでは、高齢こうれい者しゃや車椅子くるまいす使用しようの身体しんたい障害しょうがい者しゃが入居にゅうきょする事ことが前提ぜんていの建物たてものでは、玄関げんかんに段差だんさを設もうけず、材質ざいしつが異ことなり境界きょうかい線せんがあるだけのバリアフリーな玄関げんかんも普及ふきゅうしている。

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

出典しゅってん

^ ^a ^b 日本にっぽん建築けんちく学会がっかい編へん『建築けんちく学がく用語ようご辞典じてん第だい2版はん普及ふきゅう版ばん』岩波書店いわなみしょてん p.202 1999年ねん
^ ^a ^b 『建築けんちく大だい辞典じてん第だい2版はん普及ふきゅう版ばん』彰あきら国こく社しゃ p.483 1993年ねん