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破産 - Wikipedia
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破産はさん

所有しょゆうする財産ざいさんを全すべて失うしなうこと

曖昧さ回避 この項目こうもくでは、一般いっぱん用語ようごとしての破産はさんについて説明せつめいしています。遠藤えんどうミチロウのアルバムについては「破産はさん (アルバム)」をご覧らんください。

破産はさん（はさん）は、一般いっぱん的てきには財産ざいさんをすべて失うしなうことを言いう[1]が、法律ほうりつ上じょうの意味いみでの破産はさんとは、債務さいむ者しゃが経済けいざい的てきに破綻はたんすることで、既すでに弁済べんさい期きにある全すべての債務さいむが債権さいけん者しゃに対たいして一般いっぱん的てき・継続けいぞく的てきに弁済べんさいすることができない状態じょうたいにあるとき[2]に、本人ほんにんなどの申立もうしたて権けん者しゃが裁判所さいばんしょに申立もうしたてて[3]、裁判所さいばんしょが選任せんにんする破産はさん管財かんざい人じんに債務さいむ者しゃの財産ざいさんを包括ほうかつ的てきに管理かんり[4]・換価かんか[5]、また総そう債権さいけん者しゃに公平こうへいに分配ぶんぱいしてもらうこと[注ちゅう 1]で、経済けいざい的てき破綻はたん状じょう況きょうから離脱りだつすることをいう[6]。日本にっぽんでは、破産はさん法ほうにより、破産はさんについて非ひ懲戒ちょうかい主義しゅぎ（公法こうほう上じょうでの資格しかく制限せいげんを科かすなどの建前たてまえ上じょうの不利益ふりえきを否定ひていすること）[注ちゅう 2]や免責めんせき主義しゅぎ（破産はさん者しゃの責任せきにん、特とくに債務さいむについて、原則げんそくとしてその責任せきにんを免除めんじょすること）[7]を採とっている[8]。

日本にっぽんでは、2004年ねん（平成へいせい16年ねん）6月2日にちに全面ぜんめん改正かいせいされた破産はさん法ほう（平成へいせい16年ねん法律ほうりつ第だい75号ごう）が公布こうふされ、翌よく2005年ねん（平成へいせい17年ねん）1月がつ1日にちに施行しこうされた。

概要がいよう

破産はさんは、債務さいむ者しゃが経済けいざい的てきに破綻はたんして、債権さいけん者しゃに対たいし債務さいむを弁済べんさいすることができない状態じょうたい、または、そのような場合ばあいに裁判所さいばんしょが選任せんにんする破産はさん管財かんざい人じんによって行おこなわれる法的ほうてき手続てつづきを指さす（広義こうぎの破産はさん）。

債務さいむ者しゃ本人ほんにんや債権さいけん者しゃなどの申立もうしたて権けん者しゃが、裁判所さいばんしょに破産はさん手続てつづき開始かいしの申立もうしたてを行おこない、裁判所さいばんしょが当該とうがい債務さいむ者しゃに破産はさん手続てつづき開始かいしの原因げんいんがあると認みとめる場合ばあいには、「破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けってい」を行おこなう（狭義きょうぎの破産はさん）。従来じゅうらい、「破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けってい」は破産はさん宣告せんこくと呼よばれていた。

なお、狭義きょうぎの破産はさんのうち、債務さいむ者しゃ自身じしんの申立もうしたてにより破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けっていを受うける場合ばあいを自己じこ破産はさん、会社かいしゃ役員やくいんが自分じぶんの会社かいしゃの破産はさん手続てつづき開始かいしの申もうし立たてを行おこなって破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けっていを受うける場合ばあいを準じゅん自己じこ破産はさんといい、債権さいけん者しゃの申立もうしたてにより破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けっていを受うける場合ばあいを債権さいけん者しゃ破産はさんという。

破産はさんは、「破産はさん手続てつづき開始かいしの申立もうしたて」に始はじまり、破産はさん債権さいけん確定かくてい手続てつづき、破産はさん財団ざいだん管理かんり手続てつづきを経へて、「破産はさん手続てつづき終結しゅうけつの決定けってい」、「免責めんせき」及および「復権ふっけん」で終おわる一連いちれんの法的ほうてき手続てつづきである。 すなわち、債務さいむ者しゃの財産ざいさんを管理かんり・換価かんかして、債権さいけん者しゃに公平こうへいに配分はいぶんすることを主しゅたる目的もくてきとした手続てつづきである。しかし、現在げんざい、破産はさん事件じけんのほとんどを占しめる自然人しぜんじんの自己じこ破産はさんにおいては、同時どうじ廃止はいしが行おこなわれている[注ちゅう 3]。これは、破産はさん手続てつづきが、債務さいむ者しゃの財産ざいさんを換価かんかすることも、債権さいけん者しゃに財産ざいさんを配分はいぶんすることもなく、ただ債務さいむ者しゃが免責めんせき（判例はんれい・通説つうせつ的てきに自然しぜん債務さいむが残のこるが、破産はさん債務さいむ者しゃが残ざん債務さいむについて弁済べんさいの責任せきにんを免まぬかれること。）を得えるための手段しゅだんとして利用りようされていることを意味いみする。この実態じったいを反映はんえいして、各地かくちの裁判所さいばんしょが作成さくせいしている定型ていけい申立もうしたて書しょも、1通つうで破産はさん及および免責めんせきの両者りょうしゃの申立もうしたてをなすものになっていることが多おおく、法律ほうりつ上じょうも、破産はさんの申立もうしたてをした場合ばあいには、反対はんたいの意思いしを表示ひょうじしない限かぎり、同時どうじに免責めんせきの申立もうしたてをしたものとみなされる。ただ、現行げんこう破産はさん法ほう上じょう、両者りょうしゃはあくまで別個べっこの手続てつづきであり、区別くべつする必要ひつようがある[注ちゅう 4]。

破産はさん法ほうにおける破産はさん者しゃの免責めんせきは、誠実せいじつなる破産はさん者しゃに対たいする特典とくてんとして、破産はさん手続てつづきにおいて、破産はさん財団ざいだんから弁済べんさい出来できなかった債務さいむにつき特定とくていのものを除のぞいて、破産はさん者しゃの責任せきにんを免除めんじょするものである。その目的もくてきは、誠実せいじつな破産はさん者しゃを更生こうせいさせることにある。破産はさん終結しゅうけつ後ごにおいても、破産はさん債権さいけんによって無限むげんに債務さいむ者しゃの責任せきにんの追及ついきゅうを認みとめた場合ばあい、破産はさん者しゃの経済けいざい的てき再起さいきが著いちじるしく困難こんなんとなり、生活せいかつの破綻はたんを招まねくおそれさえあるので、経済けいざい的てき再起さいきの阻害そがい要因よういんとなる債権さいけん者しゃの追及ついきゅうを遮断しゃだんする必要ひつようがある。破産はさん者しゃを更生こうせいさせ、人間にんげんに値あたいする生活せいかつを営いとなむ権利けんりを保障ほしょうすることも必要ひつようであり、さらに、もし免責めんせきを認みとめないとすれば、債務さいむ者しゃは概がいして資産しさん状態じょうたいの悪化あっかを隠かくし、最悪さいあくの事態じたいにまで持もちこむ結果けっかとなって、却かえって債権さいけん者しゃを害がいする場合ばあいが少すくなくないので、破産はさん者しゃを免責めんせきすることは、債権さいけん者しゃにとっても、最悪さいあくの事態じたいを避さけることになる。これらの点てんから見みて、免責めんせきの規定きていは、公共こうきょうの福祉ふくしのため憲法けんぽう上じょう許ゆるされた必要ひつようかつ合理ごうり的てきな財産ざいさん権けんの制限せいげんである[9]。

申立もうしたてて

破産はさん手続てつづき開始かいしの原因げんいん（破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けっていの実質じっしつ的てき要件ようけん）

破産はさん手続てつづき開始かいし決定けっていは、債務さいむ者しゃが一定いっていの経済けいざい的てき破綻はたんに陥おちいったときになされる。これを破産はさん手続てつづき開始かいしの原因げんいん（破産はさん原因げんいん）といい、その主おもなものが支払しはらい不能ふのうである（破産はさん法ほう15条じょう、16条じょう、222条じょう）。

詳細しょうさいは「破産はさん手続てつづき開始かいしの原因げんいん」を参照さんしょう

申立もうしたてて

破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けっていは、原則げんそくとして、破産はさん手続てつづき開始かいしの申立もうしたてがあってはじめてなされる（破産はさん法ほう30条じょう1項こう）。

自己じこ破産はさんを申もうし立たてる際さいには、申立もうしたてと同時どうじに、財産ざいさんの概況がいきょうを示しめすべき書面しょめん並ならびに債権さいけん者しゃ及および債務さいむ者しゃの一覧いちらん表ひょうを提出ていしゅつすることを要ようする（同どう法ほう20条じょう）。多おおくの裁判所さいばんしょで配布はいふされている定型ていけい申立もうしたて書しょでは、申立もうしたて書しょのほかに陳述ちんじゅつ書しょも作成さくせいすることになっているが、この陳述ちんじゅつ書しょが上記じょうきの「財産ざいさんの概況がいきょうを示しめすべき書面しょめん並ならびに債権さいけん者しゃ及および債務さいむ者しゃの一覧いちらん表ひょう」である。この陳述ちんじゅつ書しょは、免責めんせき不ふ許可きょか事由じゆうの存否そんぴに関かんする証拠しょうことしても用もちいられる。

多おおくの裁判所さいばんしょにおいては、自己じこ破産はさん・同時どうじ廃止はいし・免責めんせきを申もうし立たてる際さいに、破産はさん手続てつづきの費用ひようを予納よのうするよう要求ようきゅうされる。この予よ納金のうきんは主しゅとして官報かんぽう公告こうこくの費用ひように充あてられ、具体ぐたい的てきな金額きんがくは裁判所さいばんしょによって異ことなる。また、これとは別べつに、破産はさん及および免責めんせきの各かく申立もうしたての手数料てすうりょうとして合計ごうけい1,500円えん（破産はさん手続てつづき開始かいし申立もうしたてにつき1,000円えん（債権さいけん者しゃ申立もうしたての場合ばあいは20,000円えん）、免責めんせきにつき500円えん）の収入しゅうにゅう印紙いんしを申立もうしたて書しょに貼はり、郵便ゆうびん物ぶつの料金りょうきんに充あてるための費用ひようとして、裁判所さいばんしょが定さだめる金額きんがくの郵便ゆうびん切手きってを予納よのうしなければならない（民事みんじ訴訟そしょう費用ひよう等とうに関かんする法律ほうりつ）。

詳細しょうさいは「破産はさん手続てつづき開始かいしの申立もうしたて」を参照さんしょう

破産はさん手続てつづき開始かいし決定けってい前まえの中止ちゅうし命令めいれいと保全ほぜん処分しょぶん

裁判所さいばんしょは、破産はさん手続てつづき開始かいしの申立もうしたてがあった場合ばあいにおいて、必要ひつようがあると認みとめるときは、利害りがい関係かんけい人じんの申立もうしたてにより又または職権しょっけんで、破産はさん手続てつづき開始かいしの申立もうしたてにつき決定けっていがあるまでの間あいだ、強制きょうせい執行しっこうや仮かり差押さしおさえ、担保たんぽ権けんの実行じっこう等とう、一定いっていの手続てつづきの中止ちゅうしを命めいじることができる（破産はさん法ほう24条じょう1項こう）。

この中止ちゅうし命令めいれいによっては破産はさん手続てつづきの目的もくてきを十分じゅうぶんに達成たっせいすることができないおそれがあると認みとめるべき特別とくべつの事情じじょうがあるときは、裁判所さいばんしょは、利害りがい関係かんけい人じんの申立もうしたてにより又または職権しょっけんで、破産はさん手続てつづき開始かいしの申立もうしたてにつき決定けっていがあるまでの間あいだ、すべての債権さいけん者しゃに対たいし、債務さいむ者しゃの財産ざいさんに対たいする強制きょうせい執行しっこう等とうや国税こくぜい滞納たいのう処分しょぶんの禁止きんしを命めいじることができる（破産はさん法ほう25条じょう1項こう）。これを包括ほうかつ的てき禁止きんし命令めいれいという。

包括ほうかつ的てき禁止きんし命令めいれいが発令はつれいされるのは、事前じぜんに又または同時どうじに、債務さいむ者しゃの主要しゅような財産ざいさんに対たいする保全ほぜん処分しょぶん（破産はさん法ほう28条じょう1項こう）や保全ほぜん管理かんり命令めいれい（破産はさん法ほう91条じょう2項こう）が発令はつれいされた場合ばあいに限かぎられる（破産はさん法ほう25条じょう1項こう但書ただしがき）。

包括ほうかつ的てき禁止きんし命令めいれいが発はっせられた場合ばあいには、債務さいむ者しゃの財産ざいさんに対たいして既すんでにされている強制きょうせい執行しっこう等とうの手続てつづき（当該とうがい包括ほうかつ的てき禁止きんし命令めいれいにより禁止きんしされることとなるものに限かぎる。）は、破産はさん手続てつづき開始かいしの申立もうしたてにつき決定けっていがあるまでの間あいだ、中止ちゅうしする（破産はさん法ほう25条じょう3項こう）。

裁判所さいばんしょは、包括ほうかつ的てき禁止きんし命令めいれいを発はっした場合ばあいにおいて、強制きょうせい執行しっこう等とうの申立もうしたて人じんである債権さいけん者しゃに不当ふとうな損害そんがいを及およぼすおそれがあると認みとめるときは、当該とうがい債権さいけん者しゃの申立もうしたてにより、当該とうがい債権さいけん者しゃに限かぎり当該とうがい包括ほうかつ的てき禁止きんし命令めいれいを解除かいじょする旨むねの決定けっていをすることができる（破産はさん法ほう27条じょう）。

破産はさん手続てつづき開始かいし決定けっていがなされれば、その後ごは破産はさん管財かんざい人じんによって財産ざいさんの管理かんり・処分しょぶんがなされるが、開始かいし決定けっていまでの間あいだは従前じゅうぜん通どおり債務さいむ者しゃが自由じゆうに財産ざいさんを処分しょぶんできてしまう。このことから、破産はさん手続てつづき開始かいしの申立もうしたてから破産はさん手続てつづき開始かいし決定けっていまでの間あいだに、債権さいけん者しゃに対たいする配当はいとう原資げんしとなる債務さいむ者しゃの財産ざいさんが散逸さんいつして破産はさん手続てつづきが無駄むだになる危険きけんがある。この危険きけんを防止ぼうしするため、破産はさん手続てつづき開始かいし決定けってい前まえの保全ほぜん措置そちとして、債務さいむ者しゃの財産ざいさんに関かんし、その財産ざいさんの処分しょぶん禁止きんしの仮処分かりしょぶんその他たの必要ひつような保全ほぜん処分しょぶんを命めいずることができることが定さだめられている（破産はさん法ほう28条じょう1項こう）。

申立もうしたての取下とりさげ

破産はさん手続てつづき開始かいしの申立もうしたてをした者ものは、破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けってい前まえに限かぎり、当該とうがい申立もうしたてを取とり下さげることができる。ただし、中止ちゅうし命令めいれい（破産はさん法ほう24条じょう）、包括ほうかつ的てき禁止きんし命令めいれい（破産はさん法ほう25条じょう）、債務さいむ者しゃの財産ざいさんに関かんする保全ほぜん処分しょぶん（破産はさん法ほう28条じょう）、保全ほぜん管理かんり命令めいれい（破産はさん法ほう91条じょう）又または否認ひにん権けんのための保全ほぜん処分しょぶん（破産はさん法ほう171条じょう1項こう）がされた後のちは、裁判所さいばんしょの許可きょかを得えなければ取とり下さげることができない（破産はさん法ほう29条じょう）。

破産はさん手続てつづき開始かいし決定けってい

詳細しょうさいは「破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けってい」を参照さんしょう

破産はさん法ほうの改正かいせいにより、破産はさん宣告せんこくから破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けっていに変更へんこうされた。

個人こじん少額しょうがく管財かんざい手続てつづきの進行しんこう要領ようりょう （宣告せんこく手続てつづきに関かんする注意ちゅうい事項じこう）

破産はさん原因げんいんの審理しんり

破産はさん手続てつづき開始かいしの申立もうしたてがあると、裁判所さいばんしょは、申立もうしたて書しょその他たの提出ていしゅつ書類しょるいの記載きさいから破産はさん手続てつづき開始かいしの原因げんいんの存在そんざいを認定にんていすることができるか、これらの書類しょるいの記載きさいに十分じゅうぶんな裏付うらづけ資料しりょうが存在そんざいするかという観点かんてんから審理しんりをし、訂正ていせい補充ほじゅうを債務さいむ者しゃに指示しじする。

書類しょるいや資料しりょうが調ととのうと、債務さいむ者しゃ審しん尋ひろあるいは債務さいむ者しゃ審問しんもんと称しょうして、債務さいむ者しゃを個別こべつに裁判所さいばんしょに呼よび出だし、裁判官さいばんかんが、申立もうしたて書しょその他たの提出ていしゅつ書類しょるいの記載きさい内容ないように誤あやまりがないかを確認かくにんし、破産はさん原因げんいん及および同時どうじ廃止はいしの要件ようけんの存否そんぴを認定にんていするために必要ひつような事項じこうを聴取ちょうしゅする。なお、こうした期日きじつを開ひらかないで審理しんりを進すすめる事案じあんもある。また、免責めんせきの申立もうしたてもなされている事案じあんであって、免責めんせき不ふ許可きょか事由じゆうの存在そんざいが疑うたがわれるものについては、その際さいに、裁判官さいばんかんが必要ひつようと認みとめる訓戒くんかいを加くわえたり反省はんせい文ぶんの提出ていしゅつを指示しじしたりすることもある。

審理しんりの結果けっか、破産はさん原因げんいんの存在そんざいが証明しょうめいされれば、裁判所さいばんしょは破産はさん手続てつづき開始かいし決定けっていをなす。

同時どうじ廃止はいし

本来ほんらいの破産はさん手続てつづきでは、裁判所さいばんしょが破産はさん管財かんざい人じんを選任せんにんし（同どう法ほう74条じょう1項こう）、破産はさん管財かんざい人じんが破産はさん財団ざいだん（破産はさん手続てつづき開始かいし決定けってい時じに破産はさん者しゃが有ゆうする一切いっさいの財産ざいさん）を管理かんり処分しょぶんして、これを換価かんかし（同どう法ほう184条じょう）、債権さいけん者しゃに分配ぶんぱいする（同どう法ほう193条じょう~215条じょう）。しかし、裁判所さいばんしょが、破産はさん財団ざいだんが破産はさん手続てつづきの費用ひよう（少すくなくとも、破産はさん管財かんざい人じんの報酬ほうしゅう相当そうとう額がくが必要ひつようである。）にも足たりないと認みとめるときは、破産はさん手続てつづき開始かいし決定けっていと同時どうじに破産はさん手続てつづきを終了しゅうりょうさせる決定けっていをする（同どう法ほう216条じょう1項こう）。これを同時どうじ廃止はいしといい、この場合ばあい、破産はさん管財かんざい人じんは選任せんにんされない。現在げんざい裁判所さいばんしょに申もうし立たてられる破産はさん手続てつづきのほとんどは、同時どうじ廃止はいしで終了しゅうりょうしている。（東京とうきょう地裁ちさい本庁ほんちょうを除のぞく）

同時どうじ廃止はいしをするのにわざわざ破産はさん手続てつづき開始かいし決定けっていをするのは、免責めんせきを申もうし立たてることができるのは個人こじんである破産はさん者しゃだけだからである（同どう法ほう248条じょう）。

法文ほうぶん上じょうは同時どうじ廃止はいしにあたって他ほかの要件ようけんは要求ようきゅうされていないが、実務じつむ上じょうは免責めんせき不ふ許可きょか事由じゆう（同どう法ほう252条じょう1項こう各号かくごう）の有無うむや裁量さいりょう免責めんせきの判断はんだん材料ざいりょうに関かんする調査ちょうさが必要ひつような場合ばあいは破産はさん管財かんざい人じんに行おこなわせるため（同どう法ほう251条じょう1項こう）、免責めんせき不ふ許可きょか事由じゆうの不ふ存在そんざいが明あきらかな場合ばあいにのみ同時どうじ廃止はいしが行おこなわれる[10]。

破産はさん財団ざいだんが破産はさん手続てつづきの費用ひように足たりないものの数すう十じゅう万まん円えん程度ていどに上のぼると見込みこまれる場合ばあいには、裁判所さいばんしょは、債務さいむ者しゃに破産はさん財団ざいだん相当そうとう額がくを積つみ立たてさせ、債権さいけん者しゃに分配ぶんぱいさせたうえで、破産はさん手続てつづき開始かいし決定けってい・同時どうじ廃止はいしをなすことがあり、これを同時どうじ廃止はいしのための任意にんい配当はいとうという。

破産はさん債権さいけん

詳細しょうさいは「破産はさん債権さいけん」を参照さんしょう

破産はさん者しゃに対たいし破産はさん手続てつづき開始かいし決定けってい前まえの原因げんいんに基もとづいて生しょうじた財産ざいさん上じょうの請求せいきゅう権けんを、破産はさん債権さいけんという（同どう法ほう2条じょう5項こう）。

破産はさん財団ざいだんの管理かんり及および換価かんか

詳細しょうさいは「破産はさん財団ざいだん」を参照さんしょう

配当はいとう

詳細しょうさいは「配当はいとう (破産はさん)」を参照さんしょう

破産はさん手続てつづき廃止はいし

詳細しょうさいは「破産はさん廃止はいし」を参照さんしょう

破産はさん手続てつづき終結しゅうけつの決定けってい

  1. 裁判所さいばんしょは、最後さいご配当はいとう、簡易かんい配当はいとう又または同意どうい配当はいとうが終了しゅうりょうした後のち、第だい88条じょう第だい4項こうの債権さいけん者しゃ集会しゅうかいが終結しゅうけつしたとき、又または第だい89条じょう第だい2項こうに規定きていする期間きかんが経過けいかしたときは、破産はさん手続てつづき終結しゅうけつの決定けっていをしなければならない（破産はさん法ほう第だい220条じょう第だい1項こう）。
  2. 裁判所さいばんしょは、前項ぜんこうの規定きていにより破産はさん手続てつづき終結しゅうけつの決定けっていをしたときは、直ただちに、その主文しゅぶん及および理由りゆうの要旨ようしを公告こうこくし、かつ、これを破産はさん者しゃに通知つうちしなければならない（破産はさん法ほう第だい220条じょう第だい2項こう）。

破産はさん手続てつづき廃止はいし後ご又または破産はさん手続てつづき終結しゅうけつ後ごの破産はさん債権さいけん者しゃ表ひょうの記載きさいの効力こうりょく

破産はさん手続てつづき廃止はいしの決定けっていが確定かくていしたとき、又または破産はさん手続てつづき終結しゅうけつの決定けっていがあったときは、確定かくていした破産はさん債権さいけんについては、破産はさん債権さいけん者しゃ表ひょうの記載きさいは、破産はさん者しゃに対たいし、確定かくてい判決はんけつと同一どういつの効力こうりょくを有ゆうする。この場合ばあいにおいて、破産はさん債権さいけん者しゃは、確定かくていした破産はさん債権さいけんについて、当該とうがい破産はさん者しゃに対たいし、破産はさん債権さいけん者しゃ表ひょうの記載きさいにより強制きょうせい執行しっこうをすることができる（破産はさん法ほう第だい221条じょう第だい1項こう）。

この規定きていは、破産はさん者しゃ（代理人だいりにんを含ふくむ。）が異議いぎを述のべた場合ばあいには、適用てきようしない。

相続そうぞく財産ざいさんの破産はさん等とう

相続そうぞく人じんの破産はさん

破産はさん法ほう第だい238条じょうから第だい244条じょう

外国がいこく倒産とうさん処理しょり手続てつづきがある場合ばあいの特とく則そく

詳細しょうさいは「外国がいこく倒産とうさん処理しょり手続てつづき」を参照さんしょう

破産はさん法ほう第だい245条じょうから第だい247条じょう

免責めんせき及および復権ふっけん

免責めんせき許可きょかの申立もうしたて

個人こじんである債務さいむ者しゃ（破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けってい後ごは、破産はさん者しゃ）は、破産はさん手続てつづき開始かいしの申立もうしたてがあった日ひから破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けっていが確定かくていした日ひ以後いご1月がつを経過けいかする日ひまでの間あいだに、破産はさん裁判所さいばんしょに対たいし、免責めんせき許可きょかの申立もうしたてをすることができる（破産はさん法ほう248条じょう1項こう）。例外れいがい的てきに、債務さいむ者しゃの責ぜめに帰きすることができない事由じゆうによって申立もうしたて期間きかん内ないに申立もうしたてをすることができなかった場合ばあいは、その事由じゆうの消滅しょうめつ後ご1月がつ以内いないに限かぎり、申立もうしたてが認みとめられる（同どう条じょう2項こう）。

破産はさん手続てつづき開始かいしの申立もうしたてをすれば、債務さいむ者しゃが特とくに反対はんたいの意思いしを表示ひょうじしている場合ばあいを除のぞき、同時どうじに免責めんせき許可きょかの申立もうしたてをしたものとみなされる（同どう条じょう4項こう）。

債務さいむ者しゃが免責めんせき許可きょかの申立もうしたてをしたときは、破産はさん債権さいけん者しゃの同意どういによる破産はさん手続てつづき廃止はいしの申立もうしたてや、再生さいせい手続てつづき開始かいしの申立もうしたてをすることができない（同どう条じょう6項こう）。逆ぎゃくに、これらの申立もうしたてをしたときは、その決定けっていが確定かくていした後のちでなければ免責めんせき許可きょかの申立もうしたてをすることができない（同どう条じょう７項こう）。免責めんせき手続てつづきは清算せいさんを前提ぜんていとするものであり、他方たほう、これらの手続てつづきは清算せいさんを回避かいひするための制度せいどであることから、同時どうじに進すすめるべきではないという趣旨しゅしの制限せいげんである[11]。

なお、一部いちぶ免責めんせき許可きょかの申立もうしたてが可能かのうかという点てんについては、これを肯定こうていする見解けんかいと否定ひていする見解けんかいがあり、学説がくせつ、裁判さいばん例れいとも分わかれている[12]。

免責めんせきの審理しんり

免責めんせき許可きょかの申立もうしたてがなされると、裁判所さいばんしょは、破産はさん管財かんざい人じんに、免責めんせき不ふ許可きょか事由じゆうの有無うむや裁量さいりょう許可きょかの決定けっていをするかどうかの判断はんだんに当あたって考慮こうりょすべき事情じじょうについての調査ちょうさをさせ、その結果けっかを書面しょめんで報告ほうこくさせることができ（破産はさん法ほう250条じょう1項こう）、破産はさん者しゃは、裁判所さいばんしょや破産はさん管財かんざい人じんが行おこなう調査ちょうさに協力きょうりょくしなければならない（同どう条じょう2項こう）。裁判所さいばんしょが行おこなう調査ちょうさには、審しん尋ひろも含ふくまれる。

また、裁判所さいばんしょは、破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けっていがあった時とき以後いご、免責めんせき許可きょかの決定けっていをすることの当否とうひについて、破産はさん管財かんざい人じん及および破産はさん債権さいけん者しゃ（非ひ免責めんせき債権さいけん者しゃを除のぞく）が裁判所さいばんしょに対たいし意見いけんを述のべることができる期間きかんを定さだめなければならない（同どう法ほう251条じょう1項こう）。この意見いけん申述もうしのべは、期日きじつにおいてする場合ばあいを除のぞき、書面しょめんでしなければならない（破産はさん法ほう施行しこう規則きそく76条じょう1項こう）。また、申述もうしのべは、免責めんせき不ふ許可きょか事由じゆうに該当がいとうする具体ぐたい的てきな事実じじつを明あきらかにしてしなければならない（同どう条じょう2項こう）。

破産はさん手続てつづきと免責めんせき手続てつづきは制度せいど上じょう分離ぶんりされているため、免責めんせき審理しんり期間きかん中ちゅうに破産はさん手続てつづきが終了しゅうりょうすることもある。この場合ばあいも、免責めんせき許可きょかの申立もうしたてについての裁判さいばんが確定かくていするまでは、破産はさん者しゃの財産ざいさんに対たいする破産はさん債権さいけんに基もとづく強制きょうせい執行しっこう等とうは禁きんじられる（破産はさん法ほう249条じょう）。

免責めんせき不ふ許可きょか事由じゆうと裁量さいりょう免責めんせき

免責めんせき許可きょかの申立もうしたてが不ふ適法てきほうで却下きゃっかされる場合ばあいを除のぞき、裁判所さいばんしょは、破産はさん者しゃについて、破産はさん法ほう252条じょう1項こう各号かくごうに掲かかげられた事由じゆうのいずれにも該当がいとうしない場合ばあいには、免責めんせき許可きょかの決定けっていをする（同どう項こう柱ばしら書しょ）。これらの事由じゆうを「免責めんせき不ふ許可きょか事由じゆう」という。

1.不当ふとうな破産はさん財団ざいだん価値かち減少げんしょう行為こうい（1号ごう）
「債権さいけん者しゃを害がいする目的もくてきで、破産はさん財団ざいだんに属ぞくし、又または属ぞくすべき財産ざいさんの隠匿いんとく、損壊そんかい、債権さいけん者しゃに不利益ふりえきな処分しょぶんその他たの破産はさん財団ざいだんの価値かちを不当ふとうに減少げんしょうさせる行為こういをしたこと。」をいう。
2.不当ふとうな債務さいむ負担ふたん行為こうい（2号ごう）
「破産はさん手続てつづきの開始かいしを遅延ちえんさせる目的もくてきで、著いちじるしく不利益ふりえきな条件じょうけんで債務さいむを負担ふたんし、又または信用しんよう取引とりひきにより商品しょうひんを買かい入いれてこれを著いちじるしく不利益ふりえきな条件じょうけんで処分しょぶんしたこと。」をいう。
経済けいざい的てきに苦くるしくなった債務さいむ者しゃが、クレジットカードで買かい物ものをし、購入こうにゅうした商品しょうひんを換金かんきんして当面とうめんの資金しきんを得えるような行為こういがこれに該当がいとうする[13]。
3.不当ふとうな偏頗へんぱ行為こうい（3号ごう）
「特定とくていの債権さいけん者しゃに対たいする債務さいむについて、当該とうがい債権さいけん者しゃに特別とくべつの利益りえきを与あたえる目的もくてき又または他たの債権さいけん者しゃを害がいする目的もくてきで、担保たんぽの供与きょうよ又または債務さいむの消滅しょうめつに関かんする行為こういであって、債務さいむ者しゃの義務ぎむに属ぞくせず、又またはその方法ほうほう若もしくは時期じきが債務さいむ者しゃの義務ぎむに属ぞくしないものをしたこと。」をいう。
4.浪費ろうひまたは賭博とばくその他たの射幸しゃこう行為こうい（4号ごう）
「浪費ろうひ又または賭博とばくその他たの射幸しゃこう行為こういをしたことによって著いちじるしく財産ざいさんを減少げんしょうさせ、又または過大かだいな債務さいむを負担ふたんしたこと。」をいう。
5.詐術さじゅつによる信用しんよう取引とりひき（5号ごう）
「破産はさん手続てつづき開始かいしの申立もうしたてがあった日ひの1年ねん前まえの日ひから破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けっていがあった日ひまでの間あいだに、破産はさん手続てつづき開始かいしの原因げんいんとなる事実じじつがあることを知しりながら、当該とうがい事実じじつがないと信しんじさせるため、詐術さじゅつを用もちいて信用しんよう取引とりひきにより財産ざいさんを取得しゅとくしたこと。」をいう。
ここにいう信用しんよう取引とりひきによる財産ざいさん取得しゅとくには、金銭きんせん消費しょうひ貸借たいしゃく契約けいやくの締結ていけつ（借金しゃっきん）も含ふくまれる。支払しはらい不能ふのうについて黙秘もくひして借入かりいれをすることがここにいう詐術さじゅつにあたるかについては、決定けってい例れいが分わかれている（大阪おおさか高だか決けつ昭和しょうわ59年ねん9月がつ20日はつか判例はんれいタイムズ541号ごう156頁ぺーじは否定ひてい、仙台せんだい高だか決けつ平成へいせい4年ねん10月がつ21日にち同誌どうし806号ごう218頁ぺーじは肯定こうてい）。
6.帳簿ちょうぼ隠匿いんとく等とうの行為こうい
「業務ぎょうむ及および財産ざいさんの状況じょうきょうに関かんする帳簿ちょうぼ、書類しょるいその他たの物件ぶっけんを隠滅いんめつし、偽造ぎぞうし、又または変造へんぞうしたこと。」をいう。
無知むち無能むのうによる商業しょうぎょう帳簿ちょうぼ不備ふびは、これに該当がいとうしないとされる（大阪おおさか高だか決けつ昭和しょうわ55年ねん11月19日にち判ばん時じ1010号ごう119頁ぺーじ）。
7.虚偽きょぎの債権さいけん者しゃ名簿めいぼ提出ていしゅつ行為こうい
8.調査ちょうさ協力きょうりょく義務ぎむ違反いはん行為こうい
9.管財かんざい業務ぎょうむ妨害ぼうがい行為こうい
10.7年ねん以内いないの免責めんせき取得しゅとくなど
以前いぜんに免責めんせき許可きょかの決定けっていが確定かくていしている場合ばあいに、その確定かくてい日びから7年ねん以内いないに再ふたたび免責めんせき許可きょかの申立もうしたてがあった場合ばあいなどがこれにあたる。
11.破産はさん法ほう上じょうの義務ぎむ違反いはん行為こうい

裁判所さいばんしょは、これらの免責めんせき不ふ許可きょか事由じゆうがある場合ばあいでも、「一切いっさいの事情じじょうを考慮こうりょして」免責めんせきの決定けっていをなすことができ、これを裁量さいりょう免責めんせきという。例たとえば、破産はさん者しゃに浪費ろうひ（破産はさん法ほう252条じょう1項こう4号ごう。懈怠けたい破産はさん行為こういにあたる。）や詐術さじゅつ（同どう項こう5号ごう）がある場合ばあいでも、比較的ひかくてき軽微けいびなものにとどまるときは、訓戒くんかいを受うけたことや反省はんせい文ぶんを提出ていしゅつしたことなどを考慮こうりょして、免責めんせきの決定けっていがなされることもある。

免責めんせきの効果こうか

免責めんせき許可きょかの決定けっていが確定かくていしたときは、破産はさん者しゃは、破産はさん手続てつづきによる配当はいとうを除のぞき、破産はさん債権さいけん（非ひ免責めんせき債権さいけんを除のぞく）について、その責任せきにんを免まぬかれる（破産はさん法ほう253条じょう）。非ひ免責めんせき債権さいけんとされるのは、次つぎのような債権さいけんである。

  1. 租税そぜい等とうの請求せいきゅう権けん
  2. 破産はさん者しゃが悪意あくいで加くわえた不法ふほう行為こういに基もとづく損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう権けん
  3. 破産はさん者しゃが故意こい又または重大じゅうだいな過失かしつにより加くわえた人ひとの生命せいめい又または身体しんたいを害がいする不法ふほう行為こういに基もとづく損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう権けん
  4. 夫婦ふうふ間あいだの協力きょうりょく及および扶助ふじょの義務ぎむ、婚姻こんいんから生しょうずる費用ひようの分担ぶんたんの義務ぎむ、子この監護かんごに関かんする義務ぎむ、扶養ふようの義務ぎむなどにかかる請求せいきゅう権けん
  5. 雇用こよう関係かんけいに基もとづいて生しょうじた使用人しようにんの請求せいきゅう権けん及および使用人しようにんの預あずかり金きんの返還へんかん請求せいきゅう権けん
  6. 破産はさん者しゃが知しりながら債権さいけん者しゃ名簿めいぼに記載きさいしなかった請求せいきゅう権けん
  7. 罰金ばっきん等とうの請求せいきゅう権けん

「責任せきにんを免まぬかれる」の意味いみについては、見解けんかいが分わかれる。ひとつは、債務さいむそのものは消滅しょうめつせず、ただ責任せきにんのみが消滅しょうめつする（したがって、債務さいむは自然しぜん債務さいむとなる）とする説せつ（自然しぜん債務さいむ説せつ）であり、もうひとつは、債務さいむそのものが消滅しょうめつするとする説せつ（債務さいむ消滅しょうめつ説せつ）である。

判例はんれいは、自然人しぜんじんたる債務さいむ者しゃについては自然しぜん債務さいむ説せつ、法人ほうじんたる債務さいむ者しゃについては債務さいむ消滅しょうめつ説せつを取とっている。破産はさん決定けっていのあった主しゅ債務さいむに係かかる保証人ほしょうにん債務さいむや担保たんぽ権けんの消滅しょうめつ時効じこう援用えんようについては議論ぎろんがある。[14]

免責めんせきの効力こうりょくは、破産はさん債権さいけん者しゃが破産はさん者しゃの保証人ほしょうにんその他た破産はさん者しゃと共ともに債務さいむを負担ふたんする者ものに対たいして有ゆうする権利けんり及および破産はさん者しゃ以外いがいの者ものが破産はさん債権さいけん者しゃのために供きょうした担保たんぽには及およばない（破産はさん法ほう253条じょう2項こう）。

免責めんせき取消とりけし

免責めんせき許可きょか決定けっていが確定かくていした場合ばあいも、詐欺さぎ破産はさん罪ざいについて破産はさん者しゃに対たいする有罪ゆうざい判決はんけつが確定かくていしたときや、破産はさん者しゃの不正ふせいの方法ほうほうによって免責めんせき許可きょか決定けっていがされた場合ばあい、裁判所さいばんしょは、破産はさん債権さいけん者しゃの申立もうしたて（後者こうしゃの理由りゆうの場合ばあい、免責めんせき許可きょか決定けっていから1年ねん以内いない）又または職権しょっけんにより免責めんせき取消とりけしの決定けっていをすることができる（破産はさん法ほう254条じょう1項こう）。免責めんせき取消とりけしの決定けっていが確定かくていしたときは、免責めんせき許可きょか決定けっていは、その効力こうりょくを失うしなう（同どう条じょう5項こう）。

復権ふっけん

破産はさん法ほうは非ひ懲戒ちょうかい主義しゅぎをとっているため、破産はさん法ほう自体じたいには、破産はさん者しゃの資格しかくや権利けんりに対たいする制限せいげん規定きていは置おかれていない。しかし、以下いかの資格しかくなどについては、特別とくべつ法ほうにより、「破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けっていを受うけて復権ふっけんを得えない者もの」について以下いかの通とおり制限せいげんがなされる。

  • 「○○となる資格しかくを有ゆうしない」とされるもの
弁護士べんごし[注ちゅう 5]、司法しほう書士しょし[注ちゅう 6]、行政ぎょうせい書士しょし[注ちゅう 7]、弁理べんり士し[注ちゅう 8]、社会しゃかい保険ほけん労務ろうむ士し[注ちゅう 9]、税理士ぜいりし[注ちゅう 10]、土地とち家屋かおく調査ちょうさ士し[注ちゅう 11]
  • 営業えいぎょうに関かんする登録とうろく・許可きょか等とうが拒否きょひされるもの
貸金かしきん業ぎょう[注ちゅう 12]、建設けんせつ業ぎょう[注ちゅう 13]、特定とくてい保険ほけん募集ぼしゅう人じん(生命せいめい保険ほけん募集ぼしゅう人じん等とう)[注ちゅう 14]、風俗ふうぞく営業えいぎょう[注ちゅう 15]、古物商こぶつしょう[注ちゅう 16]、質屋しちや[注ちゅう 17]、第だい一いち種しゅ動物どうぶつ取扱とりあつかい業ぎょう[注ちゅう 18]、測量そくりょう業ぎょう[注ちゅう 19]、不動産ふどうさん鑑定かんてい士し[注ちゅう 20]、不動産ふどうさん鑑定かんてい業者ぎょうしゃ[注ちゅう 21]、宅地たくち建物たてもの取引とりひき業ぎょう[注ちゅう 22]、宅地たくち建物たてもの取引とりひき士し[注ちゅう 23]、廃棄はいき物ぶつ処理しょり業ぎょう[注ちゅう 24]、鉄道てつどう事業じぎょう[注ちゅう 25]、旅行りょこう業ぎょう[注ちゅう 26]
  • 「営いとなんではならない」とされるもの
警備けいび業ぎょう[注ちゅう 27]、民泊みんぱく(住宅じゅうたく宿泊しゅくはく事業じぎょう)[注ちゅう 28]、探偵たんてい業ぎょう[注ちゅう 29]

復権ふっけんとは、破産はさん手続てつづき開始かいし決定けっていに伴ともなう破産はさん者しゃの権利けんりや資格しかくに対たいする法律ほうりつ上じょうの制限せいげんが包括ほうかつ的てきに解除かいじょされることをいう。復権ふっけんには、一定いっていの要件ようけんを満みたせば申立もうしたて等とうを要ようしない「当然とうぜん復権ふっけん」と、「申立もうしたてによる復権ふっけん」の2種類しゅるいがある。当然とうぜん復権ふっけんの要件ようけんは、次つぎのとおりである（破産はさん法ほう255条じょう1項こう）。

  1. 免責めんせき許可きょかの決定けっていが確定かくていしたとき
  2. 破産はさん債権さいけん者しゃの同意どういによる破産はさん手続てつづき廃止はいしの決定けっていが確定かくていしたとき
  3. 再生さいせい計画けいかく認可にんかの決定けっていが確定かくていしたとき
  4. 破産はさん手続てつづき開始かいし決定けってい後ご、詐欺さぎ破産はさん罪ざいについて有罪ゆうざいの確定かくてい判決はんけつを受うけることなく10年ねんを経過けいかしたとき

当然とうぜん復権ふっけんの要件ようけんに該当がいとうしない場合ばあいであっても、弁済べんさい等とうにより、破産はさん債権さいけん者しゃに対たいする債務さいむの全部ぜんぶについて責任せきにんを免まぬかれた場合ばあい、申立もうしたてにより復権ふっけんが認みとめられる（破産はさん法ほう256条じょう1項こう）。

罰則ばっそく

詳細しょうさいは「破産はさん犯罪はんざい」を参照さんしょう

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

  1. ^ 債権さいけん者しゃ平等びょうどうの原則げんそく。判例はんれい・通説つうせつ。
  2. ^ 罪刑法定ざいけいほうてい主義しゅぎと破産はさん法ほう全文ぜんぶんからの解釈かいしゃく。通説つうせつ的てき見解けんかい。
  3. ^ 2006年度ねんど（平成へいせい18年度ねんど）の破産はさん既済きさい事件じけんは、総数そうすう175,735件けんのうち、自然人しぜんじんの自己じこ破産はさんが166,527件けん（94.8%）を占しめ、そのうち143,375件けん（総数そうすうの81.6%、自然人しぜんじん自己じこ破産はさんの86.1%）が同時どうじ廃止はいしだった。平成へいせい18年度ねんど、司法しほう統計とうけい年報ねんぽう、民事みんじ・行政ぎょうせい、破産はさん既済きさい事件じけん数すう　破産はさん者しゃ及および終局しゅうきょく区分くぶん別べつ　全ぜん地方裁判所ちほうさいばんしょ、最高さいこう裁判所さいばんしょ。
  4. ^ Web上じょうの法律ほうりつ相談そうだん掲示板けいじばん等とうでは、両者りょうしゃを混同こんどうした投稿とうこうが頻繁ひんぱんに見みられる。
  5. ^ 弁護士べんごし法ほう7条じょう4号ごう
  6. ^ 司法しほう書士しょし法ほう5条じょう3号ごう
  7. ^ 行政ぎょうせい書士しょし法ほう第だい2条じょうの2第だい2号ごう
  8. ^ 弁理べんり士し法ほう8条じょう10号ごう
  9. ^ 社会しゃかい保険ほけん労務ろうむ士し法ほう5条じょう2号ごう
  10. ^ 税理士ぜいりし法ほう4条じょう2号ごう
  11. ^ 土地とち家屋かおく調査ちょうさ士し法ほう5条じょう3号ごう
  12. ^ 貸金かしきん業法ぎょうほう6条じょう1項こう2号ごう
  13. ^ 建設けんせつ業法ぎょうほう8条じょう1号ごう、17条じょう
  14. ^ 保険ほけん業法ぎょうほう279条じょう1項こう1号ごう
  15. ^ 風俗ふうぞく営業えいぎょう等とうの規制きせい及および業務ぎょうむの適正てきせい化か等とうに関かんする法律ほうりつ4条じょう1項こう1号ごう
  16. ^ 古物ふるもの営業えいぎょう法ほう4条じょう1号ごう
  17. ^ 質屋しちや営業えいぎょう法ほう3条じょう1項こう6号ごう
  18. ^ 動物どうぶつの愛護あいご及および管理かんりに関かんする法律ほうりつ12条じょう1項こう2号ごう
  19. ^ 測量そくりょう法ほう第だい55条じょうの6第だい1項こう第だい1号ごう
  20. ^ 不動産ふどうさんの鑑定かんてい評価ひょうかに関かんする法律ほうりつ16条じょう2号ごう
  21. ^ 不動産ふどうさんの鑑定かんてい評価ひょうかに関かんする法律ほうりつ25条じょう1号ごう
  22. ^ 宅地たくち建物たてもの取引とりひき業法ぎょうほう5条じょう1項こう1号ごう
  23. ^ 宅地たくち建物たてもの取引とりひき業法ぎょうほう18条じょう1項こう2号ごう
  24. ^ 廃棄はいき物ぶつの処理しょり及および清掃せいそうに関かんする法律ほうりつ7条じょう5項こう4号ごうロ、14条じょう5項こう2号ごうイ
  25. ^ 鉄道てつどう事業じぎょう法ほう6条じょう3号ごう
  26. ^ 旅行りょこう業法ぎょうほう6条じょう1項こう6号ごう
  27. ^ 警備けいび業法ぎょうほう3条じょう1号ごう
  28. ^ 住宅じゅうたく宿泊しゅくはく事業じぎょう法ほう4条じょう2号ごう
  29. ^ 探偵たんてい業ぎょうの業務ぎょうむの適正てきせい化かに関かんする法律ほうりつ3条じょう1号ごう
  30. ^ 公認こうにん会計士かいけいし法ほう4条じょう4号ごう
  31. ^ 銀行ぎんこう法ほう第だい7条じょうの2第だい2項こう第だい2号ごう
  32. ^ 保険ほけん業法ぎょうほう第だい8条じょうの2第だい2項こう
  33. ^ 特定とくてい非ひ営利えいり活動かつどう促進そくしん法ほう20条じょう1号ごう
  34. ^ 風俗ふうぞく営業えいぎょう等とうの規制きせい及および業務ぎょうむの適正てきせい化か等とうに関かんする法律ほうりつ24条じょう2項こう2号ごう
  35. ^ 警備けいび業法ぎょうほう14条じょう1項こう、3条じょう1号ごう
  36. ^ 銃砲じゅうほう刀剣とうけん類るい所持しょじ等とう取締とりしまり法ほう5条じょう1項こう2号ごう

出典しゅってん

  1. ^ デジタル大辞泉だいじせん、当該とうがい項目こうもく参照さんしょう。
  2. ^ 破産はさん法ほう 2条じょう11項こう <e-Gov> 2019年ねん3月がつ20日にち現在げんざいの法律ほうりつ。
  3. ^ 破産はさん法ほう 第だい二に章しょう第だい一いち節せつ <e-Gov> 2019年ねん3月がつ20日にち現在げんざいの法律ほうりつ。
  4. ^ 破産はさん法ほう 79条じょう <e-Gov> 2019年ねん3月がつ20日にち現在げんざいの法律ほうりつ
  5. ^ 破産はさん法ほう 184条じょう2項こう <e-Gov> 2019年ねん3月がつ20日にち現在げんざいの法律ほうりつ
  6. ^ 破産はさん法ほう 1条じょう <e-Gov> 2019年ねん3月がつ20日にち現在げんざいの法律ほうりつ。
  7. ^ 民事みんじ執行しっこう法ほう 152条じょう1項こうの例外れいがい規定きていとしての破産はさん法ほう 第だい十じゅう二に章しょう第だい一いち節せつ <e-Gov> 2019年ねん3月がつ20日にち現在げんざいの法律ほうりつ。
  8. ^ 判例はんれい 最さい決けつ昭和しょうわ36年ねん12月13日にち民みん集しゅう15巻かん11号ごう2803頁ぺーじ
  9. ^ 最高裁さいこうさい昭和しょうわ36年ねん(ク)第だい101号ごう 同どう36年ねん12月13日大にちだい法廷ほうてい決定けってい 民みん集しゅう第だい15巻かん11号ごう2803頁ぺーじ
  10. ^ 免責めんせき不ふ許可きょか事由じゆうがあると同時どうじ廃止はいしにならないのか？ LSC綜合そうごう法律ほうりつ事務所じむしょ（志賀しが貴たか）、2021年ねん3月がつ14日にち閲覧えつらん。
  11. ^ 伊藤いとう眞しん（2009）『破産はさん法ほう・民事みんじ再生さいせい法ほう』有斐閣ゆうひかく、537頁ぺーじ
  12. ^ 前掲ぜんけい伊藤いとう（2009）539頁ぺーじ参照さんしょう
  13. ^ 前掲ぜんけい伊藤いとう（2009）544頁ぺーじ
  14. ^ 最さい判はん平成へいせい11年ねん11月9日にち民みん集しゅう53巻かん8号ごう1403頁ぺーじ、最さい判はん平成へいせい15年ねん3月がつ14日にち民みん集しゅう57巻かん3号ごう286頁ぺーじ
  15. ^ 津つ市営しえい住宅じゅうたく連帯れんたい保証人ほしょうにん取扱とりあつかい要綱ようこう 津つ市し　2022年ねん11月がつ20日はつか閲覧えつらん
  16. ^ 入居にゅうきょ手続てつづきの際さいの「連帯れんたい保証人ほしょうにんの資格しかく」の変更へんこう 北見きたみ市し 2022年ねん11月がつ20日はつか閲覧えつらん
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  18. ^ 日本中央競馬会にっぽんちゅうおうけいばかい電話でんわ投票とうひょうに関かんする約定やくじょう（担保たんぽＡＲＳ会員かいいん） 日本中央競馬会にっぽんちゅうおうけいばかい　2022年ねん3月がつ26日にち閲覧えつらん
  19. ^ 日本中央競馬会にっぽんちゅうおうけいばかい電話でんわ・インターネット投票とうひょうに関かんする約定やくじょう（Ａ－ＰＡＴ会員かいいん）　日本中央競馬会にっぽんちゅうおうけいばかい　2022年ねん3月がつ26日にち閲覧えつらん
  20. ^ 競輪けいりん電話でんわ投票とうひょうに関かんする約定やくじょう書しょ　公益社こうえきしゃ団だん法人ほうじん 全国ぜんこく競輪けいりん施行しこう者しゃ協議きょうぎ会かい　2022年ねん3月がつ26日にち閲覧えつらん
  21. ^ 司法しほう修習しゅうしゅう生せい採用さいよう選考せんこう審査しんさ基準きじゅん 最高裁判所さいこうさいばんしょ　2022年ねん11月がつ20日はつか閲覧えつらん
  22. ^ 競馬けいば学校がっこう騎手きしゅ課程かてい 募集ぼしゅう要項ようこう日本にっぽん中央ちゅうおう競馬けいば会かい 2023年ねん4月がつ8日にち閲覧えつらん
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  24. ^ 日本にっぽん競輪けいりん選手せんしゅ養成ようせい所しょ第だい125回かい（男子だんし）選手せんしゅ候補こうほ生せい入所にゅうしょ試験しけん募集ぼしゅう要項ようこう（一般いっぱん試験しけん）日本にっぽん競輪けいりん選手せんしゅ養成ようせい所しょ 2023年ねん4月がつ8日にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

関連かんれん項目こうもく

外部がいぶリンク

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