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飛翔 - Wikipedia

飛翔ひしょう

空中くうちゅうすすむこと
飛行ひこうから転送てんそう

飛翔ひしょう(ひしょう、えい: flight フライト)あるいは飛行ひこう(ひこう)とは、空中くうちゅうすすむこと、空中くうちゅう移動いどうすることである。

概説がいせつ

編集へんしゅう

辞典じてんなどで「飛行ひこう」や「飛翔ひしょう」をどのように解説かいせつしているかというと、「飛行ひこう」は空中くうちゅうを"く"ことを意味いみ[1]飛翔ひしょうは「空中くうちゅうび"かける"こと」を意味いみする[2]、などと解説かいせつされている。英語えいごでは「飛翔ひしょう」や「飛行ひこう」にあたる概念がいねんは、動物どうぶつでもものでもどちらも基本きほんてきに「flight」(フライト)という言葉ことば表現ひょうげんしており、とくことなった用語ようご使つかうことはしていない。フランス語ふらんすごでも、工学こうがく関連かんれん文章ぶんしょうでも詩的してき文章ぶんしょうでも、「vol(ヴォル)」というひとつの用語ようごもちいて表現ひょうげんしている。「飛行ひこう」であれ「飛翔ひしょう」であれ、もちいられかたにいくらか傾向けいこうちがいはあるが、している内容ないようはおおむねかさなっているので、この記事きじにおいてどちらも解説かいせつする。

 
やく2おく9,000まんねんまえ地球ちきゅうじょうまわっていたとされるメガネウラ化石かせき
 
現代げんだいトンボによる飛行ひこう空中くうちゅう静止せいしホバリング)することができる。
 
ウミネコ飛行ひこう
 
天使てんし。12世紀せいきイコン
 
レオナルド・ダ・ビンチえがいた飛行ひこう機械きかいとりつばさ構造こうぞうえがいてみたれい。レオナルドは動力どうりょく実際じっさいばすことはできなかったが、滑空かっくう装置そうち(グライダー)の制作せいさく滑空かっくう実験じっけんには成功せいこうし、1000mほども滑空かっくうさせた。
 
ボーイング747での飛行ひこう離陸りりくなか

この記事きじでは、まず非常ひじょうなが歴史れきし動物どうぶつ飛翔ひしょう飛行ひこうから解説かいせつし、そのつぎに、歴史れきしみじか人工じんこうぶつ飛行ひこうについて解説かいせつする。

太古たいこから地球ちきゅうじょうには飛行ひこう飛翔ひしょう)するたねがいた。たとえばすでに3おくねんまえにはすうじゅうcmもあるおおきなトンボ地球ちきゅうじょうまわっていたという[3]。3おくねんまえから現代げんだいまで、トンボというものは、代々だいだい飛行ひこう飛翔ひしょうつづけてきたということになる。

化石かせきなどの研究けんきゅうによって、ジュラ紀じゅらきやく1おく9960まんねんやく1おく4550まんねんまえ)には始祖しそとり誕生たんじょうしたことがわかっている。おおくの学者がくしゃによって、おそらく初期しょき始祖しそとりはまずは樹木じゅもくうえからの滑空かっくうのように、比較的ひかくてき簡単かんたん飛行ひこうからはじめ、いく世代せだいものなが年月としつきをかけて、より能動のうどうてき飛翔ひしょう方法ほうほうにつけたものになっていったのだろう、と推測すいそくされている。

このようにして地球ちきゅうじょうでは現代げんだいでも、トンボなどの昆虫こんちゅう鳥類ちょうるいなどが、みずからつような飛行ひこう飛翔ひしょうおこなっている。また昆虫こんちゅう鳥類ちょうるいでない動物どうぶつでも、ムササビモモンガのように滑空かっくうするような飛行ひこうおこなたねもいる(→#動物どうぶつ)。なお、植物しょくぶつでもアルソミトラなどは滑空かっくうする種子しゅしつ。その種子しゅしつばさつばさはしからつばさはしまでが10cm~13cmほどで、しかもきわめてうすくて軽量けいりょうであり、だかたかいアルソミトラの樹木じゅもくうえのほうにできる球形きゅうけい内部ないぶ空洞くうどうしたじゅくすと、内側うちがわにある種子しゅしが、「はがれるちる」ようにして滑空かっくうはいり、ふうってすうじゅうメートル以上いじょうも(ふうつよであればすうひゃくmほども)移動いどうしてから着地ちゃくちして発芽はつがすることで、だいかさねるにつれ分布ぶんぷいき次第しだいひろげてゆく。

ところで飛行ひこうかんして人類じんるいはどうなのかとうと、せいぜいあしちからにより短時間たんじかんのジャンプができるだけで、その身体しんたいにはそらぶのに必要ひつよう羽根はねつばさそなわっておらず、べなかった。かれらの「おもい」のほうはどうであったか。(人類じんるい歴史れきしは、最近さいきんでは一般いっぱんに、すうひゃくまんねんほどとされているが)人類じんるい文字もじ発明はつめいする以前いぜん太古たいこむかし段階だんかいですでに昆虫こんちゅうとり姿すがたにしていたはずであるが、文字もじ発明はつめいして歴史れきしのこされるようになる以前いぜん人類じんるいなにかんがえていたのかについてはわずかながかりしかない。だが、文字もじのこされるようになって以降いこうについてえば、ひと古代こだいから、とくとりぶところなどをて、とりのように自由じゆうそら移動いどうしたい、とかんじることがあったようだ、とはえる。というのは、すうせんねんむかしかれ現代げんだいのこされている石碑せきひ碑文ひぶんパピルスなどの文書ぶんしょのなかには、「とりのようにべたらいいのに」といったるい気持きもちを表現ひょうげんした文章ぶんしょうや「わたしとりだったら、んであなたにいにゆくのだが」といった文章ぶんしょうつづられた男女だんじょあいだ手紙てがみ発見はっけんされているからである。ぶことにあこがれるひとかずおおかったのかもれない。たとえば有名ゆうめいなところではギリシア神話しんわにも、イカロスダイダロス主人公しゅじんこうとした ひとそら物語ものがたりがあり、これらの物語ものがたり非常ひじょうおおくの人々ひとびとかたがれ、かれらの想像そうぞうりょくをかきたててきた。また、ギリシャじん直接ちょくせつのつながりのない世界せかい各地かくち民族みんぞくにも、ぶおはなしとり自分じぶんかさねるおはなしかた民族みんぞく多々たたある。こうしたことにかんする記録きろくは、人類じんるい学者がくしゃ研究けんきゅう成果せいかなどにふくまれている。たとえばイヌイットネイティブ・アメリカンインディアン)のなかには、自分じぶんたちをカラスの子孫しそんだとなす一族いちぞく自分じぶんたちはカラスの末裔まつえいだとする神話しんわen:Raven Tales)を代々だいだいつたえている一族いちぞくもいる。さらには、キリスト教きりすときょうなどでつたえられる天使てんしという存在そんざいにも、飛行ひこうたいして人類じんるい共同きょうどういているあこがれや空想くうそうなげうつされている、と指摘してきする研究けんきゅうしゃもいる[4]

ぶことにあこがれるひと古代こだいからいたものの、その願望がんぼうはとてもなが時代じだいわたって実現じつげん不可能ふかのうだった。というのは、べない身体しんたいおぎなってぶことを実現じつげんするのに必要ひつよう手段しゅだん技術ぎじゅつかったのである。ぶことへの情熱じょうねつやしそのための装置そうちつくろうとしたひと中世ちゅうせいには出現しゅつげんしていたようで、875ねんイスラム世界せかい学者がくしゃアッバース・イブン・フィルナス素朴そぼくハンググライダーじょう器具きぐぼうとして失敗しっぱいして怪我けがをした、というはなしつたわっている。11世紀せいきにイギリスの修道しゅうどうマルムズベリーのエイルマー滑空かっくうするのに成功せいこうはしたと推定すいていされることがある。滑空かっくう実験じっけんはわずかながらにあったわけである。だが動力どうりょくつきで能動のうどうてきぶことにかんしては、15世紀せいきレオナルド・ダビンチ (1452ねん- 1519ねん)は、とりせてつばさ上下じょうげうごかし飛行ひこうする機械きかいのコンセプトや、回転かいてんするらせんじょう(ねじじょう)の羽根はね機械きかいのコンセプトえがくことまではできたものの、それらはあくまでコンセプトわり、(実際じっさいには当時とうじ技術ぎじゅつでは)動力どうりょくつきではばすことができなかった。レオナルドも研究けんきゅう途中とちゅう当時とうじ技術ぎじゅつでは動力どうりょくつきの飛行ひこう機械きかい実現じつげん不可能ふかのうだとづいたようで、固定こていつばさ滑空かっくう装置そうち制作せいさく力点りきてんうつし、見事みごとにそれをつくげ、それの操縦そうじゅうにはレオナルドの友人ゆうじん協力きょうりょくしゃTommaso Masiniになってもらい、フィレンツェちかくの小山こやまおか)のうえからまちかって、距離きょりにして1000mほども見事みごと滑空かっくうしてみせた、ということが当時とうじ地元じもと記録きろくのこっている[5]。なお、滑空かっくう見事みごとにできたが、着陸ちゃくりくのほうはいささかむずかしかったようで、操縦そうじゅうのTommaso Masiniは最後さいご着陸ちゃくりく瞬間しゅんかん両脚りょうきゃく骨折こっせつしてしまった、という記録きろくのこされている。

自身じしん肉体にくたいそらぶことができないことをなげいたり飛行ひこうへのあこがれをつのらせていた人々ひとびとが(一部いちぶ発明はつめいいのちがけで博打ばくちのような滑空かっくうおこなって、そのほとんどが失敗しっぱいしたことをのぞけば)大勢おおぜいひとぶことができるようになったのは、ひろみとめられている歴史れきしもとづくならば、18世紀せいき後半こうはんねつ気球ききゅうによってである。1783ねんフランスモンゴルフィエ兄弟きょうだいが6がつ5にちねつ気球ききゅう実験じっけんおこない、11月には有人ゆうじん飛行ひこうおこなった。それによってフランスを中心ちゅうしんとしてヨーロッパで一大いちだい気球ききゅうブームがきた。ねつ気球ききゅう飛行ひこうというのは基本きほんてきに「ふうまかせ」、つまりすす方角ほうがく基本きほんてきめられず風向ふうこうにまかせる飛行ひこうであるが、遊覧ゆうらん飛行ひこう冒険ぼうけん飛行ひこう頻繁ひんぱんおこなわれた。1852ねん9がつ23にちにはフランスのアンリ・ジファールが比重ひじゅうちいさなガスによって空中くうちゅうかび、動力どうりょくすす飛行船ひこうせんはつ飛行ひこうおこなった。これによって、方角ほうがくかんしてえば、おおむねのぞ方角ほうがくかって飛行ひこうできるようになった。

固定こていつばさ動力どうりょくもちいてぶことができるようになったの20世紀せいき初頭しょとうである。米国べいこくライト兄弟きょうだいが、かれらは先行せんこうする人々ひとびとこころみの失敗しっぱいなどからまなびつつ、動力どうりょくつきの「ライトフライヤーごう」を制作せいさくし、1903ねん12月17にちにそれにって飛行ひこうすることに成功せいこうしたのである。その飛行ひこう方法ほうほうというのはつばさ固定こていした機体きたいに、動力どうりょくによって回転かいてんするプロペラをつけて推進すいしんりょくつくし、飛行ひこうするという方法ほうほうであった。

気球ききゅう場合ばあいでも動力どうりょくづけ固定こていつばさ場合ばあいでも、ひとたびぶためのあたらしい方法ほうほう具体ぐたいてきしめひとあらわれると、それを熱心ねっしん模倣もほうして、さらに改良かいりょうするひと続出ぞくしゅつした。このひゃくすうじゅうねんあいだ人類じんるい様々さまざま飛行ひこう道具どうぐそして飛行ひこう方法ほうほう開発かいはつしてきた。

現在げんざいでは航空機こうくうきもちいてそらぶことは、きわめてありふれたことになっており、世界中せかいじゅうで、民間みんかん軍用ぐんよう飛行ひこうをあわせれば、1にちあたりすうじゅうまんかい以上いじょう飛行ひこうおこなわれているだろう、と推計すいけいされている[6]。( →#人工じんこうぶつ飛行ひこう

以下いか動物どうぶつ飛行ひこう飛翔ひしょう)からはじめ、後半こうはんでは人類じんるい道具どうぐもの使つかっておこな飛行ひこうまで、飛行ひこう飛翔ひしょう)の具体ぐたいてきについて説明せつめいしてゆく。

動物どうぶつ

編集へんしゅう

しばしば、動物どうぶつ飛行ひこう飛翔ひしょう)はつばさばたかせるそれと、ばたかせないものに大別たいべつされている。

ばたかせることで推進すいしんりょくすのは「ばたき飛行ひこう」と分類ぶんるいされ、ばたきをおこなわないほうはさらに細分さいぶんされ、滑空かっくう(グライディング)と「しょう」(ソアリング、上昇じょうしょう気流きりゅう利用りようした飛行ひこう)にけられている。

なお、前後ぜんご移動いどうすることなく、空中くうちゅういちてん静止せいしする行動こうどうは「ホバリング」(停止ていし飛翔ひしょう)とばれる。ホバリングは一般いっぱんてきに、ばたいたり、かいかぜけることによっておこなわれている。

飛行ひこう飛翔ひしょう方法ほうほう分類ぶんるい

編集へんしゅう

動物どうぶつ飛行ひこう飛翔ひしょう)の仕方しかたひょうにまとめると、たとえばつぎのようになる[よう出典しゅってん]

ばたき飛行ひこう 鳥類ちょうるいおおく、昆虫こんちゅうるいコウモリ
ばたきによるホバリング ごく小型こがた鳥類ちょうるいや、昆虫こんちゅう一部いちぶ
しょう 大型おおがた鳥類ちょうるいおお
滑空かっくう モモンガムササビフクロモモンガヒヨケザルトビトカゲトビウオトビイカなど

大型おおがたわたどりがVがたなな一直線いっちょくせん編隊へんたいんで飛翔ひしょうしているのがられるが、まえとりつばさはしうずによるげによって後続こうぞくするとりのエネルギーの節約せつやくになっている、などとわれる。

昆虫こんちゅう飛行ひこう飛翔ひしょう

編集へんしゅう
 
ハナムグリ一種いっしゅen:Cetonia aurata瞬間しゅんかん連続れんぞく写真しゃしん
 
ハナアブ飛行ひこう

概説がいせつ説明せつめいしたように、3おくねんまえにはすですうじゅうcmもあるおおきなトンボが地球ちきゅうじょうまわっていたことが化石かせきから判明はんめいしている。

昆虫こんちゅうおおくが現代げんだいでもんでいる。昆虫こんちゅうの翅基本きほんてきに2たい4まい構成こうせいされており、かた多様たようである。

トンボは前後ぜんごの翅を別々べつべつうごかして方式ほうしきをとっており、原始げんしてき特徴とくちょうおおのこしながらもすべての昆虫こんちゅうなかでも高度こうど飛翔ひしょうおこなう。チョウでは、前後ぜんご2ついの翅を同時どうじ上下じょうげさせ、上昇じょうしょう滑空かっくうかえして移動いどうする。これによってはげしく上下じょうげするのでチョウの飛翔ひしょうはしばしば「ひらひら」という擬態語ぎたいごあらわされる。つばさめん荷重かじゅうがとてもちいさくちる速度そくどおそいので、直接ちょくせつ下向したむきの気流きりゅう発生はっせいさせている。おおくの昆虫こんちゅうも、前後ぜんごの翅を同時どうじうごかすことによって実質じっしつてきに1ついの翅として使つかう。

ネジレバネハエ仲間なかまでは、前翅ぜんしまたは後翅こうし平均へいきん変化へんかしている。ハエ昆虫こんちゅうきわめて高度こうど飛翔ひしょう実現じつげんしているのはこの平均へいきん棍をつことによるとかんがえられている。

また、コウチュウ昆虫こんちゅう飛行ひこうさやばれる固化こかした前翅ぜんしひろげる。さや翅はおも揚力ようりょくやす役割やくわりになっているが、左右さゆうむかかくえることにより体勢たいせいととのえたり、かぜけてエアブレーキの役割やくわりたしたりするので、飛翔ひしょう能力のうりょくけていない甲虫かぶとむしにとって不可欠ふかけつなものとなっている。これにたいし、ハナムグリぞくするおおくの甲虫かぶとむしは、さや翅をわずかにげて腹部ふくぶとのあいだ隙間すきまつくり、そのしたから後翅こうしひろげて後翅こうしのみで飛翔ひしょうする方式ほうしきをとる。これによっておおくの甲虫かぶとむしくらべて格段かくだん機敏きびん飛翔ひしょう可能かのうになっている。

鳥類ちょうるいといった動物どうぶつからだ水平すいへいにして飛翔ひしょうするのにたいし、カブトムシからだ垂直すいちょくにして飛翔ひしょうする特徴とくちょうがある。

体重たいじゅうかる脊椎動物せきついどうぶつ飛行ひこう飛翔ひしょう

編集へんしゅう
 
ユリカモメ

体重たいじゅうが1kgよりかる脊椎動物せきついどうぶつでは、飛翔ひしょうばたきによっておこなわれる。ずっとばたいて直線ちょくせんてきぶものと、ばたきとつばさじての滑空かっくうとをかえして波状はじょうぶ(波状はじょう飛行ひこう、バウンディングフライト)をするものとがある。直接ちょくせつ空気くうきうしろへいて推進すいしんりょくているとおもわれがちだが、小型こがたとりにおいては空気くうきちゅうつばさかたむけながらうえまたはしたろし、つばさ前方ぜんぽうすべらすことによって推力すいりょくている。

もっとかるアナホリフクロウハチドリでは、ホバリングがおこなわれる。スズメヒタキなどでも瞬間しゅんかんてきにホバリングがおこなわれることもある。すべての飛翔ひしょうをホバリングでこなすためには、体重たいじゅうが10g以下いかでありつね栄養えいようっていなければならない。ハチドリがはなおお熱帯ねったいから生息せいそくひろげられないのはこのためである。

体重たいじゅうおも脊椎動物せきついどうぶつ飛行ひこう飛翔ひしょう

編集へんしゅう
 
トビのしょう

体重たいじゅうおも脊椎動物せきついどうぶつでは、離陸りりくするときに飛行機ひこうきのように滑走かっそうしてからったり、たかいところからりたりするものがおおい。平常へいじょうばたくことはほとんどなく、滑空かっくう滑翔かっしょう)したり、グライダーハンググライダーのように上昇じょうしょう気流きりゅう利用りようしたりするものがある。これは、体重たいじゅうおもいほどばたきづらくなるためである。

ワシタカ大型おおがたとりでは太陽たいようねつあたたまった地面じめんから発生はっせいする上昇じょうしょう気流きりゅうつばさけて飛翔ひしょうする。そのため、つばさ単位たんい面積めんせきあたりで発生はっせいする空気くうきりょくつばさめん荷重かじゅう)がちいさい。ばたきによる飛翔ひしょうすうびょうからすうじゅうびょうしか持続じぞくできない。

カモメなどの海鳥うみどり長時間ちょうじかん滑空かっくうおこなうが、こうしたとりアスペクト縦横じゅうおう)のおおきなつばさをもつとともに、つばさ胴体どうたいなどがなめらかであり、あげこうおおきく滑空かっくうたかい(1 m 下降かこうするあいだなんメートルすすめるか、が滑空かっくう)。また、うみからのかぜふなべりや防波堤ぼうはていがけなどにあたってできる上昇じょうしょう気流きりゅう空中くうちゅうにとどまる(斜面しゃめん滑翔かっしょう)こともある。えさをあげなくても観光かんこうフェリーなどにカモメがあつまるのは、海上かいじょう障害しょうがいぶつとぼしく、地熱じねつによる上昇じょうしょう気流きりゅうもないためである。このほか、ミズナギドリとりおこなう、動的どうてき滑翔かっしょう(ダイナミックソアリング)とばれるウィンドシア利用りようした滑空かっくうがある。

 
ノスリ

タカとりはアスペクトがそれほどおおきくないが、はつれつ風切かざきりひろげることによってつばさはしうず効果こうかてき整形せいけいないし抑制よくせいし、あげこうたかめているともわれている。単純たんじゅんつばさはばおおきくならなかった理由りゆうとしては、けた場所ばしょでの飛行ひこうおお海鳥うみどりちがい、林間りんかんなど障害しょうがいぶつおおところでの飛行ひこう適応てきおうしたためなどと推測すいそくされている。

プテラノドンなどの大型おおがたつばさりゅう体重たいじゅうつばさおおきさから、滑空かっくうしかできなかったとかんがえられていた時代じだいがある。しかし、研究けんきゅうすすむと、すうふんいちかい程度ていど割合わりあいで、ばたきをしているとの研究けんきゅうてきている[7]

ばたきの回数かいすう

編集へんしゅう

建築けんちくピーター・S・スティーヴンスの著書ちょしょ自然しぜんのパターン』[8]によれば以下いか昆虫こんちゅうるいおよび鳥類ちょうるいの、ばたきの回数かいすう下記かきのごとくである。単位たんいはいずれも「かい / びょう」。

人工じんこうぶつ飛行ひこう

編集へんしゅう

つぎ人類じんるい実現じつげんした飛行ひこうについて説明せつめいする。人類じんるいが、人間にんげんらない物体ぶったいばすことは古来こらいおこなわれてきた。いしやり投擲とうてき弓矢ゆみや発射はっしゃのぞき、ある程度ていどなが時間じかん滞空たいくうできるものとしては、たこ小型こがたねつ気球ききゅうてんとう)がある(後者こうしゃは「風船ふうせん歴史れきし」も参照さんしょう)。

概説がいせつべたように、人間にんげん身体しんたいにはそらぶための羽根はねつばさそなわっておらず、生身なまみでは飛行ひこうできない。ながらくとりのようにぶことを夢見ゆめみてきた人類じんるいは(オスマン帝国ていこくでの一部いちぶ発明はつめいや、レオナルド・ダヴィンチによる滑空かっくう装置そうち実験じっけんなどが単発たんぱつおこなわれたものの、あまりに危険きけん実験じっけんで、装置そうち制作せいさく人々ひとびとひろまらず、後継こうけいしゃつづかず歴史れきしうずもれてしまい)、ようやく自分じぶんんで空中くうちゅう移動いどうできるような装置そうち多数たすうつくられるようになりひろまったのは18世紀せいきのことであり、それは大型おおがたねつ気球ききゅうであった。

動力どうりょくによって推進すいしんされる固定こていつばさによる飛行ひこう実現じつげんしたのは20世紀せいきはいってからである。米国べいこくライト兄弟きょうだい固定こていつばさ方式ほうしき機体きたいエンジンをつけたライトフライヤーごう制作せいさくして、1903ねん12月17にちはつ飛行ひこうおこなったのであった。

とくにこのライト兄弟きょうだい飛行ひこう以来いらい1世紀せいきほどのあいだに、人類じんるい飛行ひこうかんして様々さまざま知識ちしきやノウハウを蓄積ちくせきしてきた。飛行ひこう研究けんきゅうする工学こうがくいち分野ぶんや航空こうくう工学こうがくう。

飛行ひこう歴史れきし航空こうくう

編集へんしゅう

英語えいごでは飛行ひこうのための装置そうち設計せっけい開発かいはつ製造せいぞう利用りようすること等々とうとうひろしてaviationと[9]日本語にほんごでは航空こうくうという用語ようごをあてるが、aviationの歴史れきしをaviation historyとい、それを日本語にほんごでは「航空こうくう」とう。

すうおおくの要素ようそがある人類じんるい飛行ひこう歴史れきしなかから、もしもハイライトにしぼってげるとするならば、(いくつかかたはあろうが)たとえばつぎのようになるかもれない。

1900ねんはつ硬式こうしき飛行船ひこうせんツェッペリンLZ-1でのはつ飛行ひこう、1903ねんのライト兄弟きょうだいによる動力どうりょくでのはつ飛行ひこう、1927ねんリンドバーグによる単独たんどく着陸ちゃくりくでの大西洋たいせいよう横断おうだん飛行ひこう、1939ねんターボジェット機じぇっとき He178でのはつ飛行ひこう、1947ねんのチャック・イェーガーによるロケット動力どうりょく飛行機ひこうきX-1での音速おんそく突破とっぱ飛行ひこう、1976ねんちょう音速おんそく旅客機りょかくきコンコルドはつ飛行ひこう(と2003ねん飛行ひこう終了しゅうりょう)、1961ねんソ連それんボストーク1ごうでのガガーリンの世界せかいはつ有人ゆうじん宇宙うちゅう飛行ひこう米国べいこくアポロ11ごうでの月面げつめん着陸ちゃくりくスペースシャトルコロンビアごう事故じこチャレンジャーごう事故じこ[10]。また日本人にっぽんじんならば航空こうくうかたときに、1785ねんころに浮田うきた幸吉こうきち滑空かっくう飛行ひこう成功せいこうさせたこと、もあわせてげるかもれない。

ねつ気球ききゅうでの飛行ひこう

編集へんしゅう

飛行船ひこうせんでの飛行ひこう

編集へんしゅう
 
Giffardの飛行船ひこうせん(1852ねん

グライダーでの飛行ひこう

編集へんしゅう
 
オットー・リリエンタールによる滑空かっくう実験じっけん(1895ねん

グライダーでは滑空かっくうおこなう。つまり基本きほんてきには固定こていつばさ機体きたいでの飛行ひこうであるが、動力どうりょくしでぶ。グライダーというのはglide グライド(滑空かっくう)するもの、といった呼称こしょうである。

基本きほんてきには、空気くうきちゅうをほぼ水平すいへいだがわずかになな方向ほうこうに、すべるようにすすむように設計せっけいされている。

中世ちゅうせいにヨーロッパで制作せいさくされたことがあるとされる滑空かっくう装置そうちなどはあまり滑空かっくう性能せいのうくなかっただろうと推察すいさつされている。ただし17世紀せいきのオスマン帝国ていこく学者がくしゃヘザルフェン・アフメト・チェレビは、すうせんメートルほども滑空かっくうするのに成功せいこうしたとのはなしつたわっている。

1mがるあいだなにmほどまえすすめるか、というを「滑空かっくう」とうが、近年きんねんのグライダーはそらりょく性能せいのう向上こうじょうしており、一般いっぱんてき機体きたいでは、すうじゅうたい1程度ていど滑空かっくうでとぶことができ、 競技きょうぎようのグライダー(つまり比較的ひかくてき高性能こうせいのう機体きたい)ではたとえば40たい1程度ていど滑空かっくう飛行ひこうできるように設計せっけいされている。実際じっさい降下こうかするりつは、機体きたい設計せっけいやその時々ときどき気象きしょう条件じょうけん操縦そうじゅう方法ほうほうによってことなっている。

 
グライダーでの滑空かっくういちれい、MONERAI-Sをもちいた滑空かっくう

ただし、グライダーは上昇じょうしょうしてゆくこともできる。上昇じょうしょう気流きりゅうのある空間くうかん飛行ひこうすると、グライダーが空気くうきたいして下降かこうしていても、空気くうきうえ方向ほうこう移動いどうしたぶんつばさ下方かほうからちから機体きたいうえげられる。よって十分じゅうぶんおおきな上昇じょうしょう気流きりゅうきている空間くうかんべば、下降かこうするぶんよりも上昇じょうしょうするぶん上回うわまわるので、動力どうりょくいにもかかわらず、上昇じょうしょうしてゆくことができる。

一般いっぱんに、グライダーの飛行ひこうでは、地表ちひょう太陽たいようねつあたためられてしょうじる、にはえない柱状ちゅうじょう上昇じょうしょう気流きりゅうつけては、その柱状ちゅうじょう空間くうかんない旋回せんかいし、グルグルとらせんじょう上昇じょうしょうして高度こうどをかせぎ、やがて上空じょうくうでそのはしらえたあたりでその空間くうかんから離脱りだつし、直線ちょくせんてき飛行ひこううつり、高度こうどがってゆき、また高度こうどがあまりひくくなるまえ再度さいど上昇じょうしょう気流きりゅう柱状ちゅうじょう空間くうかんつける、ということをかえす。

トンビなどのとりつばさうごかさずに、大空おおぞら上昇じょうしょう気流きりゅうつけ、くるくると回転かいてんしながら上昇じょうしょうしてゆくことがあるが、グライダーのパイロットはそれを模倣もほうし、それとおな原理げんり高度こうどをかせぐ飛行ひこうおこなうのである。トンビの飛行ひこうおなじで、エンジンおんもせず、とてもしずかに飛行ひこうする。しずかなこともグライダーの飛行ひこう魅力みりょくのひとつだとグライダー愛好あいこうう。

グライダーの連続れんぞく航行こうこう距離きょり世界せかい記録きろくは、アンデス山脈あんですさんみゃくつくられたもので3,000kmをえている。

 
飛行ひこう機体きたいはたらちから基本きほんてき分析ぶんせき。Weight 重力じゅうりょく、Lift 揚力ようりょく、Thrust 推進すいしんりょく、 Drag 抗力こうりょく
 
つばさのまわりの空気くうきなが様子ようすαあるふぁむかいかくむかかく)。灰色はいいろせんながれせん一般いっぱんてきつばさでは、おおむむかえかくおおきさに比例ひれいして、揚力ようりょく係数けいすう抗力こうりょく係数けいすう増加ぞうかしていく。ただしむかいかくおおきくしすぎると、揚力ようりょく係数けいすう急激きゅうげきちいさくなる角度かくどたっしてしまう。
 
揚力ようりょくがかりすうきょくせんれい

動力どうりょくづけ固定こていつばさでの飛行ひこう

編集へんしゅう

基本きほん原理げんり

編集へんしゅう

基本きほんてき固定こていつばさは、前方ぜんぽうされること(推進すいしんすること)によって、空気くうき前方ぜんぽうからつばさたりちからしょうじる。つばさむかかくがある場合ばあいしたがわめん空気くうきたり、それによってのちななじょう方向ほうこうへのちから発生はっせいする。そのちから一般いっぱんに、地面じめんたいして垂直すいちょく方向ほうこうちから(=揚力ようりょく、つまり重力じゅうりょくとは反対はんたい方向ほうこうちから)、および進行しんこう方向ほうこう反対はんたい方向ほうこうちから(=抗力こうりょく)に分解ぶんかいして理解りかいされている。機体きたいは、重力じゅうりょくしも方向ほうこうちからを、つばさ垂直すいちょく方向ほうこうちから揚力ようりょく)によってすことで、自由じゆう落下らっかおちいることをまぬかれる、という原理げんりになっている。

つばさというのは、たいらないたじょうのものでも揚力ようりょくむことが可能かのうで、むかいかくがあれば揚力ようりょく発生はっせいする。ただし、上面うわつら曲面きょくめん(かまぼこじょう形状けいじょう)にしたほうが、揚力ようりょくはいくらかおおきくなる。というのは、つばさ上面うわつら曲面きょくめんにしたほうが、そこでつばさから空気くうきながれがはなれてしまってらんりゅう発生はっせいしまうことをふせぐことができ、上面うわつららんりゅうい(あるいはちいさい)ほうが、つばさ発生はっせいする揚力ようりょくおおきくなるからである。むかえかく補助ほじょつばさによってちから機体きたい前後ぜんごかたむきを変化へんかさせ調整ちょうせいする。

初期しょきの、推進すいしんようのプロペラをそなえた固定こていつばさから説明せつめいする。プロペラ回転かいてんすることで機体きたい前方ぜんぽうちから推進すいしんりょく)をむ。

ライトフライヤーごう

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動力どうりょくづけ固定こていつばさライトフライヤーごうでのはつ飛行ひこう。59秒間びょうかんで260mんだ。飛行ひこう高度こうどはわずかなものであった。

ライト兄弟きょうだいは、ライトフライヤーごうに12馬力ばりき推定すいていされるエンジンを搭載とうさいし、2つのプロペラを駆動くどう推進すいしんりょくつくし、固定こていされた2まいののたわみつばさ揚力ようりょくつくりだし飛行ひこうした。補助ほじょつばさ主翼しゅよくまえにあり、現在げんざい一般いっぱんてき飛行機ひこうき補助ほじょつばさ主翼しゅよくうしろにあるのとくら前後ぜんこう反対はんたいである。操縦そうじゅうしゃはふせる姿勢しせいでレバーをにぎ飛行ひこう姿勢しせい制御せいぎょした。地表ちひょうからすうじゅうcmのたかさを水平すいへい飛行ひこうさせ、4かい飛行ひこうかえし、記録きろくばし、4かいに59秒間びょうかんで260mの飛行ひこうおこなった。

ライトフライヤーごうでは、ほぼ直線ちょくせんてき飛行ひこうしかできなかったが、やがて旋回せんかいができる機体きたい開発かいはつされることになった。

だいいち世界せかい大戦たいせん初期しょき飛行機ひこうきによるてき偵察ていさつ開始かいしされた。最初さいしょ武器ぶき搭載とうさいせずパイロット同士どうしはのどかにうなどしていたが、やがて飛行ひこうちゅう空中くうちゅうものげつけたり、たがいに拳銃けんじゅうったりするようになった[11]だいいち世界せかい大戦たいせんちゅうには機関きかんじゅう搭載とうさいした戦闘せんとうによる空中くうちゅうせん戦術せんじゅつとして定着ていちゃくした。

 
アクロバット飛行ひこう

飛行ひこう技術ぎじゅつ高度こうど様々さまざま方向ほうこうおこなわれ、ひとつには空中くうちゅう自在じざいうごくことを目指めざした。機体きたい改良かいりょう操縦そうじゅうテクニックの発達はったつにより宙返ちゅうがえ、ローリング、背面はいめん飛行ひこうなどが可能かのうとなった。空中くうちゅうせんで、てきたいして有利ゆうり位置いちをとるためにもちいられた。

べつ目標もくひょうとしては高速こうそくがあった。1947ねんには米国べいこくのベルしゃX-1水平すいへい飛行ひこうでの音速おんそくえる水平すいへい飛行ひこうちょう音速おんそく飛行ひこう)を実現じつげんした。

なお現在げんざいのジェット旅客機りょかくきは、巡航じゅんこうに10,000m(30,000フィート)ほどの高度こうど飛行ひこうするが、その巡航じゅんこう速度そくどは、一般いっぱんろんとしてえば、対空たいくう速度そくどえば860km/m前後ぜんごで、音速おんそくのおよそ0.83ばい相当そうとうする。なおこう高度こうどでは空気くうき極端きょくたんうすくなるため、揚力ようりょく極端きょくたんがり、てい高度こうどせるようななか低速ていそくではぶことができない。また旅客機りょかくき一般いっぱん音速おんそくべるようには設計せっけいされておらず速度そくど上限じょうげんもある。つまりじつは、ジェット旅客機りょかくきこう高度こうど安全あんぜんべる速度そくどはばはかなりせまい。(ただし、近年きんねん飛行機ひこうきでは、こう高度こうど飛行ひこうするときにはオートパイロットで適切てきせつ速度そくどたもち、操縦そうじゅうしゃ適切てきせつ速度そくど設定せっていするように訓練くんれん習慣しゅうかんづけられているため基本きほんてきには問題もんだいきない。ただし緊急きんきゅうこう高度こうどなんらかの事情じじょう速度そくどとすような操作そうさあやまっておこなうと、突然とつぜん深刻しんこく問題もんだい直面ちょくめんすることになる。)

回転かいてんつばさでの飛行ひこう

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ひだり)シングルローターのヘリによる飛行ひこうロビンソン R22)(みぎ)ツイン・ローターによる飛行ひこうボーイング・バートル CH-47

回転かいてんつばさは、いくつか変遷へんせんたが、ここでは現在げんざい回転かいてんつばさ代表だいひょうともえるヘリコプター飛行ひこうについて説明せつめいする。

ヘリコプターでは機体きたい上方かみがたつばさ回転かいてんさせることで揚力ようりょく発生はっせいさせて飛行ひこうする。ヘリコプターの飛行ひこうおおきな特徴とくちょうのひとつは、空中くうちゅういちてん静止せいししつづけること(ホバリング)ができる、ということである。

飛行ひこう原理げんりをもうすこしだけ解説かいせつすると、メインの回転かいてんつばさ(ローター)がひとつのタイプ(「シングル・ローター」という)のヘリコプターでは、メインローターによって機体きたい反作用はんさようしょうじて回転かいてんすることをテールローターによるぎゃくきのちからふせぐ。

ヘリコプターでは前進ぜんしん後進こうしんよこ方向ほうこうなどへ移動いどうすることは、メインローターの回転かいてんめん進行しんこう方向ほうこうかたむけさせることでおこなう。それをどのようにおこなうかとうと、メインローターは毎回まいかい回転かいてんするなかで、回転かいてん角度かくどおうじて、素早すばやむかえかく変化へんか(フェザリング)をかえすように出来できており、たとえば機体きたい後方こうほうあたりでむかかくおおきくなるようにし揚力ようりょくおおきくなるようにすると、回転かいてんめんまえかたむくので、機体きたい前方ぜんぽうすすみはじめる。

しゅたる回転かいてんつばさが2つのものはツインローターばれており、2つのローターがぎゃく方向ほうこう回転かいてんすることで、反作用はんさようたがいにす。前後ぜんご左右さゆう移動いどうする原理げんりは、シングルローターのタイプとおなじである。

電動でんどうマルチコプターの飛行ひこう

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無人むじん

3つ以上いじょうのローターをそなえた回転かいてんつばさのことをマルチコプターう。小型こがた電動でんどうのマルチコプターが2000年代ねんだいとくに2010年代ねんだい以降いこう急激きゅうげき普及ふきゅうし、空中くうちゅう撮影さつえいなどにさかんに活用かつようされている(マルチコプターが普及ふきゅうしていなかった時代じだい(つまり2010ねんころまでは)、空中くうちゅう撮影さつえいにはけい飛行機ひこうきやヘリコプターやモーターパラグライダー使つかわれたが、最近さいきんではそれらをえて、まるで「主力しゅりょく」のように使つかわれている)。

有人ゆうじん電動でんどうマルチコプター
 
電動でんどうマルチコプターボロコプター2X(2017ねん

ひとせて飛行ひこうさせるマルチコプターも、2011ねんころから実験じっけんはたプロトタイプなどとして開発かいはつおこなわれ、パイロットしで、さきげたり設定せっていするだけで自立じりつてき目的もくてきまで飛行ひこうする、いわば「自動じどう操縦そうじゅう空中くうちゅうタクシー」のようなマルチコプターを2017ねん導入どうにゅうする計画けいかくをUAEのドバイ発表はっぴょうしたり[12]、また2018ねんには大手おおて航空機こうくうきメーカーのボーイングしゃ最大さいだい積載せきさいりょう200kgちょうのマルチコプター開発かいはつしたり[13]中国ちゅうごく有人ゆうじんマルチコプターの製作せいさく試験しけん飛行ひこう成功せいこうするなど[14]、いくつものくに開発かいはつ精力せいりょくてきおこなわれている。エアバスしゃ参入さんにゅうし、電動でんどうモーターで飛行ひこうするが、航空こうくう会社かいしゃつよみをかすために主翼しゅよくをそなえたデザインを採用さいようしている。

 
オープナー・ブラックフライ

アメリカのオープナー・ブラックフライ(Opener BlackFly)はすでに実用じつようてきものとして販売はんばいおこなわれている。機体きたいおもさがわずか142 kgなので、アメリカでは免許めんきょ不要ふようべ、価格かかく日本円にほんえんでわずかすうひゃくまんえん相当そうとうなので、おも富裕ふゆうそうをターゲットにあたらしくて便利べんりものとして販売はんばいおこなわれ、2022ねん時点じてん大量たいりょう生産せいさんおよび納品のうひんおこなわれている。

スウェーデンの会社かいしゃJetson開発かいはつした一人ひとりりの電動でんどうマルチコプターも2021ねん時点じてんですでに、普通ふつうに、販売はんばいおこなわれている[15]日本にっぽん有人ゆうじん電動でんどうマルチコプターの開発かいはつかんしてはすこ後手ごてにまわったが、愛知あいちけん豊田とよだ設立せつりつされたSkyDriveが2020ねん8がつ電動でんどうマルチコプターの実験じっけんSD-03の有人ゆうじん実験じっけん飛行ひこう成功せいこうした[16]

中国ちゅうごくでははや段階だんかいから自動じどう操縦そうじゅう機能きのう搭載とうさいしたものが開発かいはつされ、2022ねん時点じてんですでに実用じつようしており一般いっぱん人々ひとびと乗客じょうきゃくにした遊覧ゆうらん飛行ひこう実験じっけんではなく、本当ほんとう運行うんこう)がおこなわれている。

これらの機体きたい実際じっさい飛行ひこうする様子ようすYouTubeに、かくメーカーが公式こうしき動画どうがをいくつもアップロードしている[17](YouTubeだと、複数ふくすうのメーカーの機体きたい飛行ひこうが1ほん動画どうがにまとめてあるものもある)。各社かくしゃ公式こうしきページに自社じしゃ機体きたい飛行ひこう動画どうが掲載けいさいされていることもおおい(こちらは自社じしゃ機体きたい飛行ひこうのみ)。

有人ゆうじん電動でんどうマルチコプターは2022ねん時点じてんではまだ一種いっしゅの「もの革命かくめい」がはじまったばかりの段階だんかいであり、機体きたい全体ぜんたいのデザイン、プロペラのかずじゅんドローン方式ほうしきにするか?飛行機ひこうきりのゆうつばさにするか?かんして「典型てんけいてきなパターン」や「正解せいかいのパターン」のようなものが全然ぜんぜんさだまっておらず、各社かくしゃがそれぞれ独自どくじのものを市場いちば供給きょうきゅうしはじめた段階だんかいであり、(ちょうど自動車じどうしゃでも、登場とうじょうしてからなんじゅうねんもの試行錯誤しこうさくご市場いちば反応はんのう企業きぎょうあいだ競争きょうそう淘汰とうたなどをて、設計せっけい・デザインのパターンがしゅうれんしていったように)有人ゆうじん電動でんどうマルチコプターもこれから年月としつきをかけてパターンがしゅうれんしてゆくとられている。

ハンググライダー

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パラグライダー、パラモーター

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鳥人ちょうじんあいだてき飛行ひこう

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最近さいきんでは 飛行機ひこうきなどに飛行ひこうほう、つまりおおきなはこなかはいってぶことにらず、できるだけとりのような感覚かんかくびたいとのぞひともいる。

 
ジェットエンジンつきのつばさ(jet-powered wing)を背中せなか装着そうちゃくしたイブ・ロッシー写真しゃしん左側ひだりがわ人物じんぶつ)。ロッシーのつばさはジェット推力すいりょくつきなので、ただのグライダーとはことなる。能動のうどうてき上昇じょうしょうしてゆくこともできる。小型こがたつばさ身体しんたいとの一体いったいかんがあり、通常つうじょうけい飛行機ひこうきのように操縦そうじゅう桿を操作そうさするのではなく、自分じぶん自身じしんのひらやあしさきをわずかにうごかすだけで上昇じょうしょう下降かこう旋回せんかいなどが自在じざいにできるので、自分じぶんがほぼ「とりになった」ような感覚かんかくぶことができる。

いくつか方法ほうほうがあり、ひとつはジェットエンジンのついたちいさな固定こていつばさだけを背中せなか背負せおい、いわばちいさな「人間にんげんジェット機じぇっとき」になって方法ほうほうである。もとスイス空軍くうぐん戦闘せんとうパイロットで現在げんざい旅客機りょかくきのパイロットをしているイブ・ロッシーが、趣味しゅみとしてジェットウィングの開発かいはつ改良かいりょう長年ながねんわたかさね、2008ねん9がつ26にちにはドーバー海峡かいきょうをフランスから英国えいこくがわまでおよそ35kmほど飛行ひこうすることに成功せいこうした。具体ぐたいてきうと、まず小型こがた飛行機ひこうきり、機内きないでジェットウィングを装着そうちゃく、フランスがわ高度こうど2500mで、スカイダイビング要領ようりょう空中くうちゅうし、空中くうちゅう落下らっかしながらジェットエンジンを始動しどう空中くうちゅう水平すいへい飛行ひこううつり、のち時速じそく200km/hをえる速度そくど英国えいこくへと飛行ひこうし、目的もくてき上空じょうくうちかづいた段階だんかいでジェットエンジンを停止ていしし、パラシュートひらいて着陸ちゃくりくした。およそ10ふんほどの飛行ひこうであった。つばさかたち変化へんかする箇所かしょ(フラップやエルロンなど)は一切いっさいなく、飛行ひこう姿勢しせい制御せいぎょは、ロッシー自身じしん自分じぶんあし角度かくどをかすかに変化へんかさせることでおこなう。飛行ひこう速度そくどが200km/hと十分じゅうぶん高速こうそくであるため、のひらをわずかにうごかすだけでもはげしくロールしあしのつまさきをわずかにうごかすことが飛行機ひこうき尾翼びよく操作そうさ相当そうとうする。

 
ウイングスーツでおこなう飛行ひこう様子ようす

また、グライダーを極端きょくたんちいさくしたような状態じょうたいで、いわば「人間にんげんグライダー」のようになって滑空かっくうたのしむ人々ひとびと最近さいきんあらわれた。1999ねんにはフィンランドのBIRDMANしゃからウイングスーツはじめて市販しはんされ、それ以降いこうどうスーツで飛行ひこうすることを愛好あいこうする人々ひとびとがいるのである。がけうえから空中くうちゅうして滑空かっくうしたり、上空じょうくう飛行機ひこうきから空中くうちゅうして滑空かっくうはいる。2011ねん5がつ28にちには、米国べいこくカルフォルニアしゅうにて伊藤いとう慎一しんいちが、上空じょうくう9,754mから降下こうか水平すいへい距離きょりとしては23.1km(=23,100m)、これを5ふん滑空かっくうしたという。

その手段しゅだんによる飛行ひこう

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マリンスポーツの一種いっしゅ「フライボード」では、ホースから噴出ふんしゅつさせたみず圧力あつりょくで、最高さいこう10mちかくまで空中くうちゅうかびがることができる[18]

出典しゅってんるい

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  • ユッタ・シュトレーター-ベンダー『天使てんし浮揚ふよう飛行ひこう共同きょうどう幻想げんそう青土おうづちしゃ、1996ねん

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 広辞苑こうじえん だいはん飛行ひこう
  2. ^ 広辞苑こうじえん だいはん飛翔ひしょう
  3. ^ ナショナルジオグラフィック ニュース
  4. ^ ユッタ・シュトレーター-ベンダー『天使てんし浮揚ふよう飛行ひこう共同きょうどう幻想げんそう青土おうづちしゃ、1996
  5. ^ da Vinci, Leonardo (1505). Codex on the Flight of Birds. Turin: Biblioteca Reale.
  6. ^ [1]
  7. ^ 大陸たいりくあいだやすまず飛行ひこうできたきょ大翼たいよくりゅう. ナショナルジオグラフィック. (2010-19018). https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/3273/ 2020ねん7がつ12にち閲覧えつらん 
  8. ^ ピーター・スティーヴンス『自然しぜんのパターン・かたち生成せいせい原理げんり金子かねこ つとむ わけはくようしゃ、1987ねん、34ぺーじ
  9. ^ dictionary.com
  10. ^ たとえばReg Grantのしょ Flight, Dorling Kindersley, 2010 が、コンコルドの最終さいしゅう飛行ひこうやコロンビアごうやチャレンジャーごう事故じことくげている。
  11. ^ 徹底てってい図解ずかい 戦闘せんとうのしくみ』 新星しんせい出版しゅっぱんしゃ 2008ねん10がつ5にち p.42
  12. ^ CNET「UAEのドバイ、自律じりつ飛行ひこう空中くうちゅうタクシー”の試験しけん運行うんこうを2017ねんだい4四半期しはんき開始かいし
  13. ^ CNET「ボーイング、最大さいだい積載せきさいりょう200kgちょうのドローンを試作しさく--4ついじゅう反転はんてんローターで飛行ひこう
  14. ^ TECHCRUNCH「よ、Ehangの有人ゆうじんドローンが実際じっさいぶところを
  15. ^ [2]
  16. ^ [3]
  17. ^ YouTubeの検索けんさく画面がめんでOpener BlackFly, Jetson, SkyDriveなどのキーワードを入力にゅうりょくすれば多数たすう表示ひょうじされる。
  18. ^ マリンスポーツ「フライボード」ちゅう男性だんせい溺死できし 香川かがわ産経さんけいWEST(2018ねん8がつ26にち)2018ねん9がつ6にち閲覧えつらん

関連かんれん書籍しょせき 

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飛行ひこう関連かんれん情報じょうほうあつかった書籍しょせき[1]

  • エアロ・アクアバイオメカニズム研究けんきゅうかい『エアロアクアバイオメカニクス―きものにまなおよぎと飛行ひこうのしくみ』森北もりきた出版しゅっぱん、2010ねん ISBN 4627947313
  • 小林こばやし 昭夫あきおかみヒコーキで飛行ひこう原理げんり身近みぢかまな航空こうくう力学りきがく講談社こうだんしゃ、1988ねん ISBN 406132733X
  • 秋本あきもと俊二しゅんじ『ボーイング777機長きちょうまるごと体験たいけん 成田なりた/パリせん完全かんぜん密着みっちゃくドキュメント』サイエンス・アイ新書しんしょ、2010ねん
  • 加藤かとう ひろし一郎いちろうちょう音速おんそく飛行ひこう―「おとかべ」を突破とっぱせよ』2005ねん
  • 土屋つちやただしきょう計器けいき飛行ひこう方式ほうしきおおとり文書ぶんしょりん、1998ねん
  • 墜落ついらく!の瞬間しゅんかん―ボイス・レコーダーがかた真実しんじつ』ヴィレッジブックス、2002ねん ISBN 4863326521
  • 『スペースシャトルぜん飛行ひこう記録きろくよういずみしゃ、2011ねん
  • Reg Grant, Flight, Dorling Kindersley, 2010ねん ISBN 1405353422

関連かんれん項目こうもく

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  1. ^ ほん記事きじちゅう出典しゅってんとして使つかっているとは表示ひょうじされていないもの