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Random Access Memory - Wikipedia

Random Access Memory

データを記憶きおくするコンピュータの部品ぶひん

Random-access memory(ランダムアクセスメモリ、RAM、ラム)とは、コンピュータ使用しようするメモリいち分類ぶんるいである。本来ほんらいは、格納かくのうされたデータ任意にんい順序じゅんじょでアクセスできる(ランダムアクセス)メモリといった意味いみで、かなりのつぶで「はしから順番じゅんばんに」からしかデータをきできない「シーケンシャルアクセスメモリ」(SAM)と対比たいひした意味いみかたりであった。しかし本来ほんらい意味いみからズレて、電源でんげんとしても記録きろくえないROM(これも本来ほんらい専用せんようメモリからは意味いみがズレてきている。)にたいして、電源でんげんちれば記憶きおく内容ないようえてしまう短期たんきメモリの使つかわれていることがせんらである。

RAMのICやモジュール。一番いちばんじょうのみが単体たんたいのICでありデュアルインラインパッケージ(DIP)、のこりはじゅんに SIPP、SIMM 30ピン、SIMM 72ピン、DIMM (SDRAM)、DIMM(DDR-SDRAM) のモジュール

概説がいせつ

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本来ほんらいの「ランダムアクセス・メモリ」とは、任意にんいのアドレスの記憶きおく素子そしたいして随時ずいじ、アクセスパターンに依存いぞんした時間じかんなどをようすることなく、しやみといった操作そうさができるメモリをかたりである。磁気じきテープのように記憶きおく情報じょうほう順番じゅんばん格納かくのうされていて所要しょよう番地ばんちへの操作そうさおこなうには順番じゅんばんちをしなければならないメモリをす「シーケンシャルアクセス・メモリ」に対比たいひしたかたりであって、RAMという言葉ことばにはき (Read/Write) 可能かのうという意味いみは(本来ほんらいは)ない。

き (Read/Write) 可能かのうという意味いみではRWM (Read write memory) という表現ひょうげんがある[1]。しかし実際じっさいじょうはほとんどまった使つかわれていない。

DRAMとSRAM(と、その

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厳密げんみつにはこれらも、半導体はんどうたいチップによるものだけをかたりではないが、ここではもっぱ半導体はんどうたいチップによるものについてべる。

半導体はんどうたいDRAMは、記憶きおくデータをコンデンサ(キャパシタ)の電荷でんかとしてたくわえているため、一定いってい時間じかんつと自然しぜん放電ほうでんによりデータがえてしまう。そのため、定期ていきてき情報じょうほうし、再度さいどみをする必要ひつようがある。この動作どうさを「リフレッシュ」といい、記憶きおく保持ほじするためには1秒間びょうかんすうじゅうかい頻度ひんどかえしリフレッシュをおこな必要ひつようがある。一般いっぱんにそのようなメモリをダイナミックメモリといい[ちゅう 1]、ダイナミックなRAMということでDRAMとばれている。DRAMは、アドレスを指定していしてからデータをすまでの時間じかんがSRAMよりも若干じゃっかんおそいものの、記憶きおく構造こうぞう単純たんじゅんであるため、容量ようりょうあたりのコストがひくいという特徴とくちょうがある。また、つねにリフレッシュをおこなっているため、消費しょうひ電力でんりょくおおきい。DRAMのアクセス方式ほうしきによってさまざまな種類しゅるいのものが市販しはんされている。

半導体はんどうたいSRAMは、記憶きおくフリップフロップもちいており、リフレッシュ動作どうさ必要ひつようとしない。また、DRAMより高速こうそく動作どうささせることができるが、記憶きおく回路かいろ複雑ふくざつになるため、容量ようりょうあたりのコストがたかい。リフレッシュ動作どうさ必要ひつようとしないため、リフレッシュ動作どうさによる電力でんりょく消費しょうひい。

半導体はんどうたいDRAMも半導体はんどうたいSRAMも揮発きはつせいメモリである。揮発きはつせいでないメモリとして、不揮発ふきはつせいメモリがある。

最初さいしょ(1940年代ねんだい)の電子でんし計算けいさん時点じてんで、当時とうじ主力しゅりょく素子そしである真空しんくうかんで1ビット1ビットメモリをつくっていたのでは高価こうかにつきすぎることから、いくつかの記憶きおく装置そうちとくした素子そし機器きき考案こうあんされた。アタナソフ&ベリー・コンピュータではリフレッシュ操作そうさ機械きかいてきおこなう、キャパシタによる一種いっしゅのDRAMのような装置そうち考案こうあんされた。1949ねん稼働かどうしたEDSAC使つかわれた水銀すいぎん遅延ちえん記憶きおく装置そうちなどの信号しんごう遅延ちえん利用りようするものは、原理げんりじょうシーケンシャルアクセスである。EDSACははつの「実用じつようてきな」プログラム内蔵ないぞう方式ほうしきのコンピュータだとされているが、プログラム内蔵ないぞう方式ほうしき実用じつようせいのためにはある程度ていどおおくのメモリが必要ひつようであり(EDSACでは1024たん)、水銀すいぎん遅延ちえん記憶きおく装置そうち同機どうき成功せいこう重要じゅうよう要素ようそであった。当時とうじほか素子そしでは、ブラウン管ぶらうんかんめん帯電たいでん利用りようするウィリアムスかんは、ランダムアクセスでリフレッシュを必要ひつようとするなどDRAMにちか性格せいかくつ。

以降いこうには「ランダムアクセス」メモリにかんする話題わだいとくい。

その、1949ねんから1952ねん磁気じきコアをもちいた磁気じきコアメモリ開発かいはつされた。コアメモリでは、格子こうしじょう配置はいちした磁気じきコアとばれるリングじょう磁性じせいたいに、たてよこ方向ほうこうから電線でんせんつらぬいた構造こうぞうをしていた。磁気じきコアメモリは、集積しゅうせき回路かいろによる半導体はんどうたいメモリ登場とうじょうする1960年代ねんだいまつから1970年代ねんだい初頭しょとうまで、ひろ使つかわれていた。とくには、放射線ほうしゃせんなどの影響えいきょうけにくいという特性とくせいから、宇宙うちゅうようなどでは1980年代ねんだいでももちいられていたれいがある[ちゅう 2]。また、破壊はかいしなのでしたらもど必要ひつようがある一方いっぽう、ドーナツじょうのフェライトコアの磁性じせい利用りようしているため不揮発ふきはつという特性とくせいがある。

21世紀せいき現在げんざいでは、コンピュータのしゅ記憶きおく装置そうちは、すべてDRAMになっている。原理げんりてきSRAM容量ようりょうあたりの単価たんかたかくならざるをえないため、(なんらかのブレークスルーがないかぎり)しゅ記憶きおく装置そうちをSRAMで構成こうせいするようになるとはかんがえられていない。いっぽうで、なんらかの不揮発ふきはつせいメモリがDRAMをえる可能かのうせいはあるものとかんがえられており、研究けんきゅう開発かいはつがおこなわれている。たとえば、カーボンナノチューブ使つかったもの[2]や、トンネル磁気じき抵抗ていこう効果こうか使つかったMRAMがある。また、2004ねんには、インフィニオン・テクノロジーズが16MiBのMRAM試作しさくひん公開こうかいした。現在げんざい開発かいはつすすんでいるだい世代せだい技術ぎじゅつは、Thermal Assisted Switching (TAS) 方式ほうしき[3]Spin Torque Transfer (STT) 方式ほうしきがある。前者ぜんしゃはベンチャー企業きぎょう単独たんどく開発かいはつしているが、後者こうしゃIBMなどをふく複数ふくすう企業きぎょう開発かいはつしている[4]。ただし、これらが今後こんご主流しゅりゅうとなるかどうかは、まだ不透明ふとうめいである。

しゅ記憶きおく装置そうちにおいて、アクセススピードや容量ようりょうあたりコストとならんで重要じゅうようなのは、消費しょうひ電力でんりょくである。過去かこみシステムにおいては、消費しょうひ電力でんりょくおさえるためにSRAMもちいられていたが、近年きんねんではてい消費しょうひ電力でんりょくとくしたDRAMが使つかわれている。たとえば、サーバファームなどでは、高速こうそくせいよりも消費しょうひ電力でんりょくおさえることに重点じゅうてんいた、"EcoRAM" とばれるRAMも登場とうじょうしている[5][6]

RAMの種類しゅるい

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メモリの階層かいそう

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理論りろんてきにはRandom Access Machine(理論りろん文脈ぶんみゃくでは、RAMという略語りゃくごはこちらのこともある)といって、すべてのメモリに一定いってい時間じかんでランダムアクセスできるような機械きかいのモデルなどもあるが、現実げんじつのコンピュータでは一般いっぱんに「はやくてちいさい」メモリと「おそくておおきい」メモリをわせて使つかう。

おおくのコンピュータシステムは、レジスタ頂点ちょうてんとして、マイクロプロセッサチップじょうSRAMキャッシュ、外部がいぶキャッシュメモリしゅ記憶きおく装置そうち補助ほじょ記憶きおく装置そうち等々とうとうといったようなメモリ階層かいそうっている。DRAMという階層かいそうだけをてもアクセス時間じかんにはバラつきがあるが、その範囲はんい回転かいてんしき電子でんし媒体ばいたい磁気じきテープほどおおきくはない。メモリ階層かいそう使つか目的もくてきは、メモリシステム全体ぜんたいのコストを最小さいしょうしつつ、平均へいきんてきなアクセス性能せいのう向上こうじょうさせることにある。一般いっぱんに、レイテンシ・スループット・アクセス単位たんいといったてんで、レジスタがもっと高速こうそくほそつぶであり、階層かいそうしたくほど低速ていそくつぶとなる。

プロセッサとメモリの速度そくど

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マイクロプロセッサ速度そくど(ここでは、周辺しゅうへん速度そくどによってたされることがかった場合ばあい単位たんい時間じかんあたりのデータ処理しょりりょう)とその向上こうじょうたいして、メモリの速度そくど(レイテンシとスループット)とその向上こうじょう比較ひかくすると、メモリのほうおそいという傾向けいこうは、マイクロプロセッサの誕生たんじょう以来いらい一貫いっかんしてつづいている。最大さいだい問題もんだいは、チップとチップのあいだのデータ転送てんそう帯域たいいきはば限界げんかいがあることである。1986ねんから2000ねんまで、CPUの性能せいのう向上こうじょう年率ねんりつ平均へいきんで55%であったのにたいして、メモリの性能せいのう向上こうじょう年率ねんりつ平均へいきんで10%ほどであった。この傾向けいこうから、メモリレイテンシがコンピュータ全体ぜんたい性能せいのうにおいてボトルネックになるだろうと予想よそうされていた[7]

その、CPUの性能せいのう向上こうじょう鈍化どんかした。これには、微細びさいにより性能せいのう向上こうじょう物理ぶつりてき限界げんかいちかづいていることや発熱はつねつ問題もんだいもあるが、同時どうじにメモリとの速度そくど考慮こうりょした結果けっかでもある。インテルは、その原因げんいんについてつぎのように分析ぶんせきしている[8]

だいいちに、チップが微細びさいしクロック周波数しゅうはすうがると、個々ここのトランジスタのリーク電流でんりゅう増大ぞうだいし、消費しょうひ電力でんりょく増大ぞうだい発熱はつねつりょう増大ぞうだいまねく(中略ちゅうりゃく)、だいにクロック高速こうそくによる利点りてんはメモリレイテンシによって一部いちぶ相殺そうさいされる。つまり、メモリアクセス時間じかんは、クロック周波数しゅうはすう向上こうじょうわせて短縮たんしゅくすることができなかった。だいさんに、これまでの逐次ちくじてきアーキテクチャでは、あるしゅのアプリケーションは、プロセッサが高速こうそくしたほど性能せいのう向上こうじょうしなくなっている(フォン・ノイマン・ボトルネック)。さらに、集積しゅうせき回路かいろ微細びさい進行しんこうしたことにより、インダクタンス付与ふよむずかしく、信号しんごう伝送でんそうにおけるRC遅延ちえんおおきくなる。これも周波数しゅうはすう向上こうじょう阻害そがいするボトルネックのひとつである。

信号しんごう伝送でんそうにおけるRC遅延ちえんについては Clock Rate versus IPC: The End of the Road for Conventional Microarchitectures にもあり、2000ねんから2014ねんのCPUの性能せいのう向上こうじょうは、最大さいだいでも年率ねんりつ平均へいきんで12.5%という見積みつもりがしめされていた。インテルのデータをても[9]、2000ねんから2004ねんあいだ、CPUの速度そくど向上こうじょう鈍化どんかしている。

しかし、この見積みつもりはCPUの性能せいのう向上こうじょうがあくまで「クロック周波数しゅうはすう向上こうじょうによって」高性能こうせいのうするという前提ぜんていっていた。だが、2004ねんAMDK8アーキテクチャを発表はっぴょうすると、パイプラインバーストによる処理しょり遅延ちえんおさ単位たんいクロックすうあたりの命令めいれい実行じっこうすう向上こうじょうすることがトレンドとなり、クロック周波数しゅうはすうのむやみな向上こうじょうまったが、処理しょり能力のうりょく向上こうじょうはむしろ激化げきかした。さらに、このころから1つのプロセッサダイに複数ふくすうしゅ演算えんざんコアを搭載とうさいし、さらにそれを仮想かそうてき複数ふくすうのコアとするスレッディング技術ぎじゅつ搭載とうさいすることが主流しゅりゅうとなった。AMDの製品せいひんでは、2005ねんのAthlon64 X2 3800+ ではやく7.31GFLOPS相当そうとうだったが、2017ねんのRyzen 7 1800Xではやく42.53GFLOPSにもたっしており、これは年率ねんりつ平均へいきんにするとやく50%程度ていど性能せいのう向上こうじょうと、2000ねん以前いぜんとさしてわっていない。

一般いっぱんにRAMというかたりは、しゅ記憶きおく装置そうちりのそれをし、補助ほじょ記憶きおく装置そうちりのそれはさないことがおおい。しかし、DVD-RAMのような例外れいがいもある。

DVD-RAMは文字通もじどおりランダムアクセスを重視じゅうしして設計せっけいされており、DVD-RWやのDVDとくらべてランダムアクセス性能せいのうたかい。

RAMディスクというかたりは2とおりに使つかわれている。どちらも「論理ろんりてきにはちょう高速こうそくのハードディスクのようにえる」というてん共通きょうつうである。

1種類しゅるいは、SCSIなどのインタフェースでアクセスできる、そとからはハードディスクのようにえる装置そうちだが、内部ないぶは(D)RAMで構成こうせいされているというもので、バッテリーバックアップとうにより記憶きおく保持ほじできるようにしたものもおおいが、そうでないものもある。

2種類しゅるいは、オペレーティングシステムのデバイスドライバとして、ユーザーのプログラムからはストレージ(ブロックデバイス)のようにえるが、実際じっさいにはメインメモリ確保かくほした領域りょういき記録きろくしている、というもので、当然とうぜんながらシャットダウンにより情報じょうほううしなわれる。テンポラリファイルとうとうとして使つかわれることが意図いとされている。

ROMの内容ないようをRAMにコピーしてアクセス時間じかん短縮たんしゅくすることがある(ROMは一般いっぱん低速ていそくである)。コンピュータの電源でんげん投入とうにゅう、メモリを初期しょきしたのち、ROMの配置はいちされていたアドレス範囲はんいをコピーしたRAMにえる。これをシャドウRAMとぶ。これはみシステムでもよくおこなわれる技法ぎほうである。

典型てんけいれいとして、パーソナルコンピュータのBIOSがあり、ファームウェアのなんらかのオプション設定せっていでBIOSをシャドウRAMにコピーして使つかうことができる(システムないほかのROMをRAMにコピーして使つかうオプションもある)。それによって性能せいのう向上こうじょうする場合ばあいもあるし、互換ごかん問題もんだい発生はっせいする場合ばあいもある。たとえば、あるしゅのハードウェアはシャドウRAMが使つかわれているとオペレーティングシステムにアクセスできない。また、ブートこうまったくBIOSを使つかわないシステムなら、性能せいのう向上こうじょうしない。当然とうぜんながらシャドウRAMを使つかうと、しゅ記憶きおく容量ようりょうすくなくなる[10]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ ウィリアムスかんなどが、半導体はんどうたいDRAMよりもふるくからあるダイナミックメモリである。
  2. ^ こまります、ファインマンさん』でスペースシャトルのコンピュータに使つかわれていることがかたられているのがよくられている。

出典しゅってん

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  1. ^ CompArchOrg & 1978,1979, p. 325.
  2. ^ データを「10おくねん保持ほじ可能かのう:カーボン・ナノチューブ利用りよう WIRED.jp、2009ねん6がつ3にち
  3. ^ The Emergence of Practical MRAM CROCUS Technology
  4. ^ Tower invests in Crocus, tips MRAM foundry deal EETimes、2009ねん6がつ18にち
  5. ^ "EcoRAM held up as less power-hungry option than DRAM for server farms" by Heather Clancy 2008
  6. ^ Spansionしゃが「EcoRAM」の詳細しょうさいあきらかに、サーバーのメインメモリー用途ようとねら EDN Japan、2008ねん11月
  7. ^ Wm. A. Wulf, Sally A. McKee, Hitting the Memory Wall: Implications of the Obvious (PDF). 1994
  8. ^ Platform 2015 documentation (PDF) Intel
  9. ^ Microprocessor Quick Reference Guide Intel
  10. ^ Shadow Ram”. 2007ねん7がつ24にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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  • P.HAYES, JOHN (1978,1979). Computer Architecture and Organization. ISBN 0-07-027363-4 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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