あなた (パーソン・オブ・ザ・イヤー)

『タイム』誌しは2006年ねんのパーソン・オブ・ザ・イヤーに「あなた」（You）を選出せんしゅつした。「あなた」とは「ウィキペディアなどのウィキ、YouTube、MySpace、FacebookといったWeb 2.0のWebサイトにコンテンツを投稿とうこうしている多数たすうの人々ひとびと」を指さしており、これはその代表だいひょうとして（今いまこの雑誌ざっしを読よんでいる）「あなた」を表彰ひょうしょうするという意味いみである。

これ以前いぜんにも、1982年ねんの「マシン・オブ・ザ・イヤー」に選えらばれたパーソナルコンピュータや、人々ひとびとの集団しゅうだん、運動うんどうなど、無生物むせいぶつや特定とくていの人物じんぶつ以外いがいが選出せんしゅつされたことはあったが、「あなた」という選択せんたくは、ポップカルチャーのギミックになりすぎているとして、『アトランティック』などのコメンテーターから批判ひはんを集あつめた。2014年ねんの『デイリーニューズ』紙しの記事きじでは、『タイム』誌しの歴史れきしの中なかで最もっとも物議ぶつぎを醸かもした10のパーソン・オブ・ザ・イヤーの1つとして、この「あなた」を挙あげている。

背景はいけい

これまでのパーソン・オブ・ザ・イヤーは、歴史れきし的てきに重要じゅうような人物じんぶつが選えらばれてきたが、名声めいせいではなく悪評あくひょうのある人物じんぶつも選出せんしゅつされている（1938年ねんのアドルフ・ヒトラー、1979年ねんのホメイニなど）。1982年ねんには「マシン・オブ・ザ・イヤー」としてパーソナルコンピュータが、1988年ねんには「プラネット・オブ・ザ・イヤー」として「危機ききにある地球ちきゅう」が選出せんしゅつされた。人ひとの集合しゅうごうや複数ふくすうの個人こじんを象徴しょうちょうするものが選出せんしゅつされたこともある（1960年ねんの「アメリカの科学かがく者しゃ」など）。

他たのメディアによる同様どうようの賞しょうでは、オンラインコミュニティとユーザー生成せいせいコンテンツの重要じゅうよう性せいが高たかまっていることが、既すでに認識にんしきされていた。『ビジネス2.0』誌しが2006年ねん7月がつに発表はっぴょうした「今こん重要じゅうような50人にん」の第だい1位いは「あなた!」(You!)だった。ABCニュースは2006年ねんの「ピープル・オブ・ザ・イヤー」をブロガーとした。

決定けってい

『タイム』誌しにおける例年れいねんと同様どうようのプロセスに従したがって、各かくニュース発信はっしん者しゃが様々さまざまな候補こうほを提案ていあんした。11月には、「あなた」(You)もしくは「YouTubeガイ」(YouTube guys)が最さい有力ゆうりょく候補こうほとして浮上ふじょうした。読者どくしゃの意見いけんはオンラインで募集ぼしゅうされた。最終さいしゅう決定けっていは、編集へんしゅう長ちょうのリチャード・ステンゲルが行おこなった。

2006年ねんのパーソン・オブ・ザ・イヤーは、同誌どうしの2006年ねん12月25日にち号ごうで発表はっぴょうされた。表紙ひょうしには、ディスプレイにYouTubeのようなビデオプレーヤーが表示ひょうじされたiMacが掲かかげられている。動画どうがを表示ひょうじする部分ぶぶんには鏡かがみのように反射はんしゃする素材そざい（BoPET）が貼はられており、雑誌ざっしを手てに取とった人ひとの顔かおがオンラインコンテンツとしてそこに映うつり込こむことを意図いとしていた。動画どうがの残のこり時間じかんは、2006年ねんに引ひっ掛かけて"20:06"となっている。本文ほんぶんでは、NBCのニュースアンカーのブライアン・ウィリアムズと、『タイム』誌し編集へんしゅう者しゃのレフ・グロスマン、リチャード・ステンゲルが、新あたらしいユーザー主導しゅどうメディアについて解説かいせつしている。

批評ひひょう

この選択せんたくは、2006年ねんの出来事できごとを形作かたちづくった多おおくの著名ちょめい人じんの存在そんざいを無視むしした近視眼きんしがん的てきな仕掛しかけであると批判ひはんされた。評論ひょうろん家かのポール・ケドロスキー(Paul Kedrosky)は、この賞しょうを「信しんじられないほどのやり口くち」と呼よんで非難ひなんしたが、一方いっぽうで、この賞しょうが「ユーザー生成せいせいコンテンツが、ある種しゅの短期たんき的てきな市場いちばのトップになる」ことを示しめしたのではないかと推測すいそくしている。コメンテーターのケビン・フリードル(Kevin Friedl)は、賞しょうと表紙ひょうしのデザインが、映画えいが『ビッグ・リボウスキ』の主人公しゅじんこうの男おとこが見みる鏡かがみを思おもい起おこさせると指摘してきし、その鏡かがみに映うつった視聴しちょう者しゃの姿すがたが「パーソン・オブ・ザ・イヤー」の枠わくにはめられていると指摘してきした。

2012年ねん12月、ジャーナリストのデビッド・A・グラハム(David A. Graham)は『アトランティック』誌しに、タイム社しゃが「精彩せいさいを欠かいた選択せんたくのパターン」を示しめし、そのプロセスの全体ぜんたい的てきなプロモーションの性質せいしつはニュースとして扱あつかわれるべきではなく、単たんなるマーケティングとして見みるべきだと書かいた。彼かれは、「Twitterのプロフィールに、皮肉ひにくを込こめて『2006年ねんのパーソン・オブ・ザ・イヤー』と記載きさいしている人ひとに嫌気いやけが差さしていない人ひとはいるだろうか」と書かいている。

さらに、この決定けっていは、イデオロギー的てき、偽善ぎぜん的てき、政治せいじ的てきなものであるとしても批判ひはんを集あつめた。発表はっぴょうの数すう週間しゅうかん前まえ、『タイム』誌しは「パーソン・オブ・ザ・イヤーは誰だれにすべきか」というオンライン投票とうひょうを実施じっしした。その結果けっか、ベネズエラのウゴ・チャベス大統領だいとうりょうが35%の票ひょうを獲得かくとくし、2位い以下いかに大差たいさをつけて1位いとなった。2位いはイランのマフムード・アフマディーネジャード大統領だいとうりょうだった。『タイム』誌しはパーソン・オブ・ザ・イヤーの発表はっぴょうでこれらの結果けっかに言及げんきゅうしておらず、批評ひひょう家かたちは、タイム社しゃが読者どくしゃの間あいだの世論せろんの意見いけんを割わり引びいていると主張しゅちょうしている。タイム社しゃの支持しじ者しゃは、オンライン投票とうひょうは科学かがく的てき価値かちがないので、代表だいひょう的てきなものではないと主張しゅちょうしている。オンライン投票とうひょうの結果けっかへのハイパーリンクは削除さくじょされている。2014年ねんの『デイリーニューズ』紙しの記事きじでは、『タイム』誌しの歴史れきしの中なかで最もっとも物議ぶつぎを醸かもした10のパーソン・オブ・ザ・イヤーの1つとして2006年ねんの「あなた」を挙あげ、読者どくしゃ投票とうひょうの首位しゅいはベネズエラのウゴ・チャベス大統領だいとうりょうとイランのマフムード・アフマディーネジャード大統領だいとうりょうだったことを示しめした上うえで、2006年ねんのニュースメーカーはこれらの二に者しゃの方ほうがふさわしいとしている。

関連かんれん項目こうもく

• 自己じこの哲学てつがく

外部がいぶリンク

• Grossman, Lev (2006年ねん12月13日にち). “Time's Person of the Year: You”. Time. オリジナルの2006年ねん12月18日にち時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20061218204932/https://time.com/time/magazine/article/0,9171,1569514,00.html 2020年ねん7月がつ3日にち閲覧えつらん。