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アンナ・ボレーナ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

アンナ・ボレーナ』(Anna Bolena)は、ガエターノ・ドニゼッティ作曲さっきょくし、1830ねんミラノカルカノ劇場げきじょう初演しょえんされた2まくトラジェディア・リリカである。16世紀せいきイングランド国王こくおうヘンリー8せいとその2番目ばんめアン・ブーリンならびに3番目ばんめジェーン・シーモア史実しじつもとづく作品さくひんである。

「ドニゼッティ女王じょおうさんさく」(英語えいご:the Three Donizetti Queens)とばれる、テューダーあさとその女性じょせいたちを主役しゅやくとしたオペラ(1830ねんほん作品さくひん、1835ねんの『マリーア・ストゥアルダ』、1837ねんの『ロベルト・デヴリュー』)の1つである。

役柄やくがらおよ上演じょうえん

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役柄やくがらおよ初演しょえんのキャストは、以下いかひょうとおりである。

アンナをえんじるジュディッタ・パスタ
役柄やくがら[1] こえしゅ 初演しょえんのキャスト
イングランド王妃おうひアンナ・ボレーナ (アン・ブーリン) ソプラノ ジュディッタ・パスタ
イングランド国王こくおうエンリーコ8せい (ヘンリー8せい) バス フィリッポ・ガッリ
ジョヴァンナ・セイモー (ジェーン・シーモア), アンナの女官にょかん メゾソプラノ エリザ・オルランディ
ロシュフォールきょう (ジョージ・ブーリン), アンナのおとうと[2] バス ロレンツォ・ビオンディ
リッカルド・ペルシーきょう (ヘンリー・パーシー) テノール ジョヴァンニ・バティスタ=ルビーニ
スメトン (マーク・スミートン), 王妃おうひ楽士がくし コントラルト ヘンリエッテ・ラロシュ
エルヴェイ, 国王こくおう武官ぶかん テノール アントニオ・クリッパ
宮廷きゅうていじんたち, 兵士へいしたち, 猟師りょうしたち

1830ねん12月26にち初演しょえんは、「圧倒的あっとうてき成功せいこう」であった。ドニゼッティのであるヨハン・ジモン・マイールは、かつての弟子でしを「マエストロ」とぶようになった[3]。また、イタリア・オペラかいにおいてもドニゼッティは一躍いちやくロッシーニベッリーニならぶ「イタリアオペラかいにおけるもっとかがやける名前なまえ」となった[3]

初演しょえんから19世紀せいき後半こうはんにかけての状況じょうきょう

1830ねんのイタリア初演しょえんのちほんさく1831ねん7がつ8にちロンドン王立おうりつ劇場げきじょうでイギリス初演しょえんされ、1839ねん11月12にちにはニューオーリンズテアトル・ドルレアンにおいてアメリカ初演しょえんおこなわれている。アメリカ初演しょえんさいしては、フランス語ふらんすご上演じょうえんされている。1850ねんからヴェリズモ台頭たいとうする1881ねんまで、25都市とし上演じょうえんがされ、人気にんきはくした[4]。しかし1881ねん以降いこう上演じょうえんまれになっていった。

1950年代ねんだいまで

20世紀せいき前半ぜんはんにはほとんど上演じょうえんされなかったほんさく頻繁ひんぱん上演じょうえんされるようになったのは、だい世界せかい大戦たいせんのことである。1947ねん12月30にちバルセロナリセウだい劇場げきじょう開場かいじょう100周年しゅうねん記念きねんして上演じょうえんされた(どう劇場げきじょうは、1847ねんほん作品さくひん開場かいじょうしている)。アンナはサラ・スクデッリ、セイモーをジュリエッタ・シミオナート、エンリーコ8せいチェーザレ・シエピというキャストであった。1957ねん4がつにはスカラ座すからざ初演しょえんおこなわれ、アンナをマリア・カラスえんじている。この上演じょうえんは、ルキノ・ヴィスコンティ演出えんしゅつもとおこなわれた。この上演じょうえんかんして、カラスの伝記でんきしるしたユルゲン・ケスティングは、「この公演こうえんは、マリア・カラスのキャリアにおいてもひとつの頂点ちょうてんとなっている。」[5]べている。なお、この上演じょうえん録音ろくおんのこされている(後述こうじゅつ)。1959ねん6月26にちには米国べいこくサンタフェ・オペラにおいて、「ほぼ1世紀せいき以上いじょうぶりとなる全曲ぜんきょくノーカット上演じょうえん[6]おこなわれた。

1960年代ねんだい以降いこう

1960年代ねんだい以降いこう上演じょうえんかんしては、「ドニゼッティ・ルネサンス」としょうされるドニゼッティさい評価ひょうか運動うんどうにおいて上演じょうえん増加ぞうかしたことが特筆とくひつされる。レイラ・ジェンチェルモンセラート・カバリェマリサ・ガラヴァニーレナータ・スコットエディタ・グルベローヴァマリエラ・デヴィーアなどが、ほん作品さくひん上演じょうえんないし録音ろくおん貢献こうけんしている。また、アメリカのソプラノであるビヴァリー・シルズは、1970年代ねんだいニューヨーク・シティ・オペラにおいてほんさくふくむドニゼッティのテューダーあささんさくげ、だい成功せいこうおさめた。彼女かのじょはまた、このさんさくのスタジオ録音ろくおんのこしている。

21世紀せいき以降いこう

ほん作品さくひんは、いわゆる歌劇かげきじょうの「スタンダードなレパートリー」とはえない[7]。しかし、21世紀せいき今日きょうにおいて、とく英語えいごけんにおいて上演じょうえん増加ぞうかし、録音ろくおんもなされるようになってきている。2010ねん11月に、ダラス・オペラほん作品さくひんと『マリーア・ストゥアルダ』を同時どうじ上演じょうえんした。また、ミネソタ・オペラも「Three Queens」3さくの1つとしてほんさく上演じょうえんした。ヨーロッパにおいては、2011ねんはるウィーン国立こくりつ歌劇かげきじょう上演じょうえんされた。このときは、アンナ・ネトレプコエリーナ・ガランチャがそれぞれアンナとセイモーをえんじた。また、同年どうねん9がつにはメトロポリタン歌劇かげきじょうが2011-2012ねんのシーズンの開幕かいまく作品さくひんとして、はじめてほんさくげた。アンナをネトレプコ、演出えんしゅつデヴィッド・マクヴィカーであった。また、イギリスマンチェスターOpera Seria UKは、2012ねんから2014ねんにかけて「テューダー・クィーンズ」(Tudor Queens)3さくとしてほんさくげる予定よていである。ウェールズ・ナショナル・オペラ2013ねん9月から11がつにかけてほんさく上演じょうえんしており、英語えいごけん各地かくちほん作品さくひん上演じょうえんされつづけている。

楽曲がっきょく構成こうせい[8]

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だい1まく
  • 1 導入どうにゅう:「おうきたられたのか?Né venne il Re? (合唱がっしょう)
  • 2 ジョヴァンナの登場とうじょう:「王妃おうひわたしをおびになったElla di me sollecita (ジョヴァンナ)
  • 3 シェーナとロマンツァ - アンナのカヴァティーナ:「ああ、取繕とりつくろわないでDeh non voler costringere (スメトン) - 「ああ、この純真じゅんしん若者わかものCome, innocente giovane (アンナ、合唱がっしょう)
  • 4 シェーナと二重唱にじゅうしょう:「つすべてのこうTutta in voi la luce mia (エンリーコ、ジョヴァンナ)
  • 5 シェーナとカヴァティーナ:「彼女かのじょうしなったあのからDa quel dì che, lei perduta (ペルシー、ロシュフォール、合唱がっしょう)
  • 6 シェーナと重唱じゅうしょう:「わたしかんじた、このうえIo sentii sulla mia mano (アンナ、エンリーコ、エンリーコ、ペルシー、ロシュフォール、合唱がっしょう)
  • 7 シェーナとカヴァティーナ:「ああ、恍惚こうこつあまAh, parea che per incanto (スメトン)
  • 8 シェーナと二重唱にじゅうしょう:「国王こくおうきみにくんでも、わたしきみいまでもあいしているS'ei t'abborre, io t'amo ancora (ペルシー、アンナ)
  • 9 だい1まくフィナーレ:「みなだまっておるのか、ふるえているのかTace ognuno, è ognun tremante (エンリーコ、スメトン、 ペルシー、アンナ、ロシュフォール、ジョヴァンナ、合唱がっしょう)
だい2まく
  • 10 導入どうにゅう:「ああ、どこにってしまったのかOh, dove mai ne andarono (合唱がっしょう)
  • 11 シェーナと二重唱にじゅうしょう:「かみがそのもの頭上ずじょうSul suo capo aggravi un Dio (アンナ、ジョヴァンナ)
  • 12 合唱がっしょう、シェーナと三重唱さんじゅうしょう:「どうなった?裁判官さいばんかんまえEbben? Dinanzi ai giudici -「2人ふたりともぬがよい、不実ふじつものどもめAmbo morrete, o perfidi (エンリーコ、アンナ、ペルシー)
  • 13 シェーナとアリア:「このようなえぬほのおPer questa fiamma indomita (ジョヴァンナと合唱がっしょう)
  • 14 レチタティーヴォ、シェーナとアリア :「きみきるのだ、わたしはそれをのぞVivi tu, te ne scongiuro (ペルシー)
  • 15 合唱がっしょう:「一体いったいだれ直視ちょくしできようChi può vederla a ciglio asciutto
  • 16 狂乱きょうらんおよだい2まくフィナーレ: 「あなたたちは、いているの?Piangete voi? -「あの場所ばしょれてってAl dolce guidami (アンナ) -「邪悪じゃあく夫婦ふうふCoppia iniqua

あらすじ

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  • とき1536ねん
  • 場所ばしょ[9]:ロンドンおよウィンザーじょう、そしてロンドンとう
  • だい1まくだい1じょうよる、ウィンザーじょう王妃おうひ居室きょしつ
    宮廷きゅうてい人々ひとびとが、国王こくおうエンリーコがすでに王妃おうひアンナを見捨みすてて、あらたな女性じょせい夢中むちゅうになっていることをうわさをしている(おうきたられたのか?」 Né venne il Re?)。そこへ、王妃おうひ信頼しんらいする侍女じじょであるジョヴァンナがやってくる。しかし、彼女かのじょこそ国王こくおうあたらしい愛人あいじんである。自分じぶん信頼しんらいする王妃おうひ裏切うらぎっていくことにつみ意識いしきをいだくジョヴァンナ(王妃おうひわたしをおびになった」Ella di me sollecita)。そこへアンナがあらわれる。しず気持きもちをなぐさめるために、小姓こしょうであるスメトンにうた所望しょもうする。ひそかに王妃おうひあいするスメトンは、その気持きもちをたくしてうたう(「ああ、取繕とりつくろわないで」 Deh non voler costringere)。しかし、王妃おうひえきれなくなりそれをめる。おう心変こころがわりと王妃おうひとしての栄華えいがのはかなさをかなしむアンナ(「ああ、この純真じゅんしん若者わかものは」Come, innocente giovane )。夜明よあちかくなり、もはや国王こくおうないとさとった彼女かのじょは、ねむりにくために退場たいじょうする。ジョヴァンナ以外いがい人々ひとびと王妃おうひう。1人ひとりのこるジョヴァンナのもと国王こくおうエンリーコがやってくる。おうは、アンナと離婚りこんしジョヴァンナを王妃おうひむかえようとしている。王妃おうひになれば、この栄華えいがともかちえるとささや国王こくおう(つすべてのこうは」Tutta in voi la luce mia)。それにたいして、ジョヴァンナは、このようなかみ祝福しゅくふくされない関係かんけいりたいと懇願こんがんする。王妃おうひもともどるようねがうジョヴァンナにたいしエンリーコは「アンナは裏切うらぎっていた」として、あん婚姻こんいん解消かいしょうをほのめかす。おうのたくらみをおそれるジョヴァンナだが、おうめることはできない。
  • だい1まくだい2じょうひる。ウィンザー城内じょうのうち庭園ていえん
    別々べつべつ方向ほうこうから、ペルシーとアンナのおとうとロシュフォールが登場とうじょうする。ペルシーは、アンナのかつての恋人こいびとであったために、国王こくおうより追放ついほうされ、亡命ぼうめい生活せいかつおくっていた。しかし、今度こんど赦免しゃめんされることになり、ウィンザーじょうへやってきたのだ。おうがアンナから心変こころがわりをしたことをうわさいたペルシーは、かつての恋人こいびとあんじる。かれは、まだアンナをあいつづけていることをロシュフォールに告白こくはくする(彼女かのじょうしなったあのから」Da quel dì che, lei perduta)。ロシュフォールは、そんな親友しんゆうあんじる。りがはじまるおとこえ、国王こくおう、そして王妃おうひがやってくる。国王こくおうは、ペルシーに今度こんど赦免しゃめん王妃おうひのとりなしであるとささやく。よろこぶペルシーだが、国王こくおう表情ひょうじょうたアンナや宮廷きゅうてい人々ひとびと国王こくおう一体いったいなにたくらんでいるのかと、不安ふあんがる(わたしかんじた、このうえを」Io sentii sulla mia mano)。国王こくおうは、武官ぶかんのエルヴェイに王妃おうひやペルシーたち監視かんしするよう、めいじてりへ出発しゅっぱつする。
  • だい1まくだい3じょう:ウィンザー城内じょうのうちのアンナの私室ししつつうじるひかえのあいだ
    アンナの小姓こしょうスメトンは、ひそかにぬすしたアンナの肖像しょうぞうつめ、アンナへのおもいをうたう(「ああ、恍惚こうこつあまり Ah, parea che per incanto」 )。スメトンは、ぬすんだ肖像しょうぞうかえすつもりで、ここへていた。しかし、ひと気配けはいがするので、カーテンのうしろにかくれる。そこへ、アンナとロシュフォールがやってくる。ロシュフォールは、アンナにペルシーにうようたのむ。最初さいしょ拒否きょひしたアンナだが、おとうとたのみをことわれずうことにする。ペルシーは、アンナへのあい告白こくはくする(国王こくおうきみにくんでも、わたしきみいまでもあいしている」S'ei t'abborre, io t'amo ancora)。二度にどわないとこばむアンナに、ペルシーはけんいて自殺じさつしようとする。おどろいたスメトンがカーテンからあらわれる。あまりのことに気絶きぜつするアンナ。そこへ、国王こくおう登場とうじょうげられ一同いちどう恐怖きょうふする。エンリーコがエルヴェイと廷臣ていしんたちをれてあらわれる(みなだまっておるのか、ふるえているのかTace ognuno, è ognun tremante」) 。無実むじつうったえるアンナだったが、国王こくおうは「いたいことは判事はんじまえでするがよい」と冷酷れいこくかたり、衝撃しょうげきけるアンナやほかの人々ひとびと逮捕たいほめいじる。
  • だい2まくだい1じょう:ロンドン。アンナが軟禁なんきんされている部屋へやへとつづひかえのあいだ
    アンナの女官にょかんたちが、なげいている(「ああ、どこにってしまったのか」Oh! dove mai ne andarono le tsurbe adulatrici)。裁判さいばんひかえ、かみいのるアンナのところへジョヴァンナがあらわれる。ジョヴァンナは、アンナにつみ自白じはくすれば、おうはアンナと離婚りこんいのちたすかります、とう。しかし、アンナは名誉めいようしなってまでたすかりたくはないという。ジョヴァンナは、「エンリーコのあい玉座ぎょくざ約束やくそくされているあわれなおんなのためにも、それをすすめる」とかたる。おこるアンナは、そのおんな天罰てんばつをとのろいの言葉ことばびせる(かみがそのもの頭上ずじょうに」 Sul suo capo aggravi un Dio )。アンナのはげしいいかりに、ついにジョヴァンナは自分じぶんこそ、そのおんなであると告白こくはくする。信頼しんらいしていたジョヴァンナに裏切うらぎられたとったアンナは、いかりをぶつける。しかし、ジョヴァンナの「国王こくおうあいしたことをいまじている。わたしあい拷問ごうもんです」と告白こくはくするのをき、「おまえつみい。わるいのはおまえにそのようなあいほのおやしたひとにある」とかたり、慈悲じひあたえ、退出たいしゅつする。
  • だい2まくだい2じょう:アンナへの裁判さいばんおこなわれている法廷ほうていへとつづひかえのあいだ
    裁判さいばんきを宮廷きゅうてい人々ひとびと見守みまもっている(「「どうなった?裁判官さいばんかんまえに」Ebben? Dinanzi ai giudici)。人々ひとびとは、スメトンが王妃おうひとの姦通かんつう告白こくはくさせられたとかたり、この事件じけん国王こくおうたくらみであり、結論けつろんはすでに用意よういされているのだとうたう。国王こくおうとエルヴェイがあらわれ、スメトンが上手うま自白じはくしたとかたる。そこへアンナとペルシーが衛兵えいへいかこまれ、やってくる。アンナは、国王こくおうへ「王族おうぞくとしての名誉めいよのために、法廷ほうていでさらしものにしないでくれ」と懇願こんがんする。しかし、エンリーコはききいれない。それどころか、スメトンと姦通かんつうおこなったではないかと侮辱ぶじょくする。あまりのことにおこ彼女かのじょは、「陛下へいかこそ、スメトンを甘言かんげんせて偽証ぎしょうをさせたのではないか」と反論はんろんする。ペルシーは、アンナをすくうためにアンナと自分じぶんはすでに結婚けっこんしており、おうとの結婚けっこん無効むこうであるとうったえる。むろん、国王こくおうみみたず2人ふたりてるよう衛兵えいへいめいじる。ジョヴァンナがあらわれ、国王こくおうにアンナの赦免しゃめんねがう(「このようなえぬほのおPer questa fiamma indomita」)。おうは、ジョヴァンナに「王妃おうひはおまえのもの」と求婚きゅうこんするが、ジョヴァンナはこばむ。そこへエルヴェイが判決はんけつってやってくる。アンナは死罪しざい、そして関係かんけいした人間にんげんもすべて連座れんざすることになる。アンナの赦免しゃめんもとめるジョヴァンナだが、国王こくおうはききいれず退場たいじょうする。
  • だい2まくだい3じょう:ロンドンとう
    衛兵えいへいわれ、ペルシーとロシュフォールがやってくる。そこへエルヴェイがあらわれ、国王こくおう2人ふたり赦免しゃめんするとつたえる。しかし、アンナが処刑しょけいされるとったペルシーは、「つみのない彼女かのじょに、つみあるわたしきることをのぞむほど卑劣ひれつおとこだとおもうのか!」とさけび、赦免しゃめん拒否きょひする。ペルシーは、きみだけでもたすかるべきだとロシュフォールにすすめる(「きみきるのだ、わたしはそれをのぞむ Vivi tu, te ne scongiuro」)。しかし、ロシュフォールもえらび、2人ふたり衛兵えいへい連行れんこうされる。一方いっぽう、アンナの牢獄ろうごくでは侍女じじょたちがアンナがショックのあまり錯乱さくらんしてしまったことをなげいている(一体いったいだれ直視ちょくしできよう」Chi può vederla a ciglio asciutto」)。そこへ錯乱さくらんしたアンナがあらわれる。錯乱さくらんした状態じょうたい過去かこかえり、うたう(狂乱きょうらん「あなたたちは、いているの?」Piangete voi? -「あの場所ばしょれてって」Al dolce guidami)。人々ひとびとなげかなしんでいると、エルヴェイと衛兵えいへいたちがやってくる。アンナは正気しょうきもどし、「なにというとき正気しょうきもどったのだ!」となげく。エルヴェイたちによって、ロシュフォールとペルシー、そしてスメトンが連行れんこうされてくる。スメトンは、自分じぶん国王こくおう甘言かんげんり、王妃おうひ姦通かんつうしたことを告白こくはくする。ペルシーとロシュフォールはおこる。しかし、アンナは「スメトン、ハープをかないの?」と支離滅裂しりめつれつなことをかたり、ふたた狂気きょうきおちいる。そこへ、祝砲しゅくほうかねらすおとこえる。それをいて、正気しょうきもどったアンナは「あのおとなにのためか」とく。それは、ジョヴァンナの戴冠たいかん祝福しゅくふくするためのものである。それをいたアンナは、エンリーコとジョヴァンナをまじない(邪悪じゃあく夫婦ふうふよ」 Coppia iniqua)、卒倒そっとうする。スメトン、ペルシー、ロシュフォールらを獄吏ごくりたちが刑場けいじょうそうとするなかまくりる。

録音ろくおんおよ映像えいぞう

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とし キャスト 指揮しきしゃおよ上演じょうえん劇場げきじょう レーベル[10]
1957 マリア・カラス,
ニコラ・ロッシ=レメーニ,
ジュリエッタ・シミオナート,
ジャンニ・ライモンディ
ジャナンドレア・ガヴァッゼーニ,
スカラ座すからざ管弦楽かんげんがくだんおよ合唱がっしょうだん
(1957ねん4がつ17にち、ミラノ、スカラ座すからざでのライブ録音ろくおん演出えんしゅつルキノ・ヴィスコンティ譜面ふめんのカット多数たすう)
CD: EMI
Cat: CDMB 5 66474-2
1958 レイラ・ジェンチェル,
プリニオ・クラバッシ,
ジュリエッタ・シミオナート,
アルド・ベルトッチ
ジャナンドレア・ガヴァッゼーニ,
ミラノ・イタリア放送ほうそう協会きょうかい交響こうきょう楽団がくだんおよ合唱がっしょうだん
CD: Andromeda
Cat: ANDRCD 5114
1965 レイラ・ジェンチェル,
カルロ・カーヴァ,
パトリシア・ジョンソン,
ファン・オンチナ
ジャナンドレア・ガヴァッゼーニ, グラインドボーン音楽おんがくさい,
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽かんげんがくだん,
Glyndebourne グラインドボーン祝祭しゅくさい合唱がっしょうだん
(1965ねん6月13にち上演じょうえんのライブ録音ろくおん)
CD: Hunt
Cat: CD 554
1967 テレサ・ツィリス=ガラ,
カール・リッダーブッシュ,
ヴェラ・リトル
ジーン・ファーガスン
アルベルト・エレーデ,
ケルン・西部にしべドイツ放送ほうそう交響こうきょう楽団がくだんおよ合唱がっしょうだん
CD: Opera Depot
Cat: OD 10388-2
1968/69 エレナ・スリオティス,
ニコライ・ギャウロフ,
マリリン・ホーン,
ジョン・アレクサンダー
シルヴィオ・ヴァルヴィーゾ,
ウィーン国立こくりつ歌劇かげきじょう管弦楽かんげんがくだんおよ合唱がっしょうだん
CD: DECCA
Cat: 455 069-2
1972 ビヴァリー・シルズ,
パウル・プリシュカ,
シャーリー・ヴァレット,
ステュアート・バロウズ
ジュリアス・ルーデル,
ロンドン交響こうきょう楽団がくだん
ジョン・オールディス合唱がっしょうだん (はつのノーカット完全かんぜんばん)
CD: DG Westminster Legacy
Cat: 471 217-2
1984 ジョーン・サザーランド,
ジェームズ・モリス,
ジュディス・フォースト,
マイケル・マイヤーズ
リチャード・ボニング,
カナディアン・オペラ・カンパニー管弦楽かんげんがくだんおよ合唱がっしょうだん
DVD: VAI
Cat: 4203
1994 エディタ・グルベローヴァ,
ステファノ・パラッチ,
ドロレス・ジーグラー,
ホセ・ブロス
エリオ・ボンコンパーニ,
ハンガリー放送ほうそう交響こうきょう楽団がくだんおよ合唱がっしょうだん
CD: Nightingale Classics
Cat: NCO 070565-2
2006 ディミトラ・テオドシウ,
リッカルド・ザネラート,
ソフィア・ソロヴィ,
ジャンルカ・パゾリーニ
ファブリツィオ・マリア・カルミナーティ,
ベルガモドニゼッティ音楽おんがくさい管弦楽かんげんがくだんおよ合唱がっしょうだん
(ドニゼッティ劇場げきじょうでの録画ろくが)
DVD: Dynamic
Cat: 33534
2011 アンナ・ネトレプコ,
イルデブランド・ダルカンジェロ
エリーナ・ガランチャ
フランチェスコ・メーリ
エヴェリーノ・ピド
ウィーン国立こくりつ歌劇かげきじょう管弦楽かんげんがくだんおよ合唱がっしょうだん
DVD: Deutsche Gramophon
DDD 0440 073 4725 6 GH2

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Weinstock, Herbert (1963), Donizetti and the World of Opera in Italy, Paris, and Vienna in the First Half of the Nineteenth Century, New York: Pantheon Books. LCCN 63-13703
  • Scott, Eleanor (1976), The First Twenty Years of the Santa Fe Opera, Santa Fe, New Mexico: Sunstone Press
  • Osborne, Charles, (1994), The Bel Canto Operas of Rossini, Donizetti, and Bellini, Portland, Oregon: Amadeus Press. ISBN 0-931340-71-3
  • 河原かわはら廣之ひろゆき『アンナ・ボレーナ オペラ読本とくほん対訳たいやくシリーズ40』オペラ読本とくほん出版しゅっぱん(2006ねん
  • ユルゲン・ケスティング、鳴海なるみ史生ふみおやく『マリア・カラス 没後ぼつご30ねん新装しんそうばん』アルファベータ(2003ねん

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 河原かわはら(2006)、目次もくじ
  2. ^ 河原かわはら(2006ねん)では「あに」と表記ひょうき。ただし、実際じっさいのジョージ・ブーリンはアンよりおそまれている可能かのうせい濃厚のうこうであるため、あにではなくおとうと表記ひょうきした。
  3. ^ a b Weinstock 1963, pp. 73 - 75
  4. ^ Osborne 1994, pp. 194 - 197
  5. ^ ケスティング【2003】p362 L.9~12
  6. ^ Scott 1976, p. 21
  7. ^ http://operabase.com/oplist.cgi?id=none&lang=en&is=Anna+Bolena&by=&loc=&stype=abs&sd=1&sm=1&sy=2009&etype=abs&ed=&em=&ey= Performances on operabase.com
  8. ^ 楽曲がっきょく日本語にほんごやくは、河原かわはら廣之ひろゆき(2006)p1~34を参照さんしょう
  9. ^ Osborne 1994, pp. 194 - 197
  10. ^ Source for recording information: Recording(s) of Anna Bolena on operadis-opera-discography.org.uk

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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