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インストラクショナルデザイン

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

インストラクショナルデザインえい: instructional design、あるいはインストラクショナルシステムデザイン)は、教育きょういくなどにおいて、学習がくしゅうしゃ自由じゆうたもったままでたか学習がくしゅう効果こうかしょうじることを意図いとして、具体ぐたいてき計画けいかくてることである。

概要がいよう

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インストラクショナルデザインの意味いみは、こまかく区切くぎられた学習がくしゅう教育きょういく単位たんいである「インストラクション」をかたちづくる(デザインする)ということである。インストラクショナルデザインは、eラーニング教材きょうざい学習がくしゅうざい製作せいさくにももちいられることもある概念がいねんである。

インストラクショナルデザインは、学習がくしゅうニーズの分析ぶんせきとシステマティックな授業じゅぎょう設計せっけいおこなう。インストラクショナルデザイナーはしばしば授業じゅぎょう設計せっけい方法ほうほうとしてインストラクショナルテクノロジーという。インストラクショナルデザインモデル典型てんけいてきには手段しゅだん特定とくていする。もしそれにしたがえば知識ちしき、スキル、態度たいど学習がくしゅうしゃ習得しゅうとくさせる。

インストラクショナルデザインの基盤きばんは、「学習がくしゅう理論りろん英語えいごばん心理しんりがく)」「コミュニケーションがく」「情報じょうほうがく」「メディア技術ぎじゅつ」であり、それらを統合とうごうした「インストラクショナルデザインの理論りろん・モデル」である。 ADDIEモデル英語えいごばん分析ぶんせき設計せっけい開発かいはつ実施じっし評価ひょうか)に代表だいひょうされるインストラクショナルデザインのプロセスは、これらの基盤きばんうえ成立せいりつするものであり、ADDIEのみを意識いしきしたシステマティックな設計せっけいかならずしも魅力みりょくてき効果こうかてき学習がくしゅう環境かんきょう構築こうちくするとはかぎらない。 インストラクショナルデザインは、「ひとはいかにまなぶか」「学習がくしゅうとはなにか」といういに対峙たいじし、より学習がくしゅう環境かんきょう総合そうごうてきにデザインすることを目指めざしている。

歴史れきし

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インストラクショナルデザイン分野ぶんや基盤きばん大半たいはんは、だい世界せかい大戦たいせんによってきずかれた。当時とうじべいぐんは、じゅうあつかいや、海洋かいようわたるためのふね操縦そうじゅうばくだん製造せいぞうといった複雑ふくざつ専門せんもんてき作業さぎょうができるように、大量たいりょう人々ひとびと早急そうきゅう訓練くんれんする必要ひつようにせまられていた。

訓練くんれんでは、B. F. スキナーによるオペラント条件じょうけんづけ理論りろん根拠こんきょとして、観測かんそく可能かのう行動こうどう変容へんよう焦点しょうてんがあてられた。課題かだいちいさな下位かい課題かだい分解ぶんかいされ、それぞれの下位かい課題かだい別々べつべつ学習がくしゅう目標もくひょうとしてあつかわれた。ただしい行為こうい報奨ほうしょうされ、あやまった行為こういには修正しゅうせいほどこされた。

戦時せんじにおける訓練くんれんモデルの成功せいこうは、戦後せんご企業きぎょう工場こうじょうれられた。また、初等しょとう中等ちゅうとう教育きょういくにおいても限定げんていてきれられた。1955ねんベンジャミン・ブルームは、そのおおきな影響えいきょうあたえるタキソノミー教育きょういく目標もくひょう分類ぶんるい)を発表はっぴょうした。かれは3つの学習がくしゅう領域りょういき設定せっていした。すなわち、認知にんちてき領域りょういき知識ちしき思考しこう)、精神せいしん運動うんどうてき領域りょういき物理ぶつりてき動作どうさ)、情意じょういてき領域りょういき感情かんじょう態度たいど)である。これらの分類ぶんるい現在げんざいでも教授きょうじゅ設計せっけい影響えいきょうりょくっている。

1960年代ねんだいには、心理しんり学者がくしゃジャン・ピアジェによる認知にんち発達はったつ研究けんきゅう英語えいごけんひろられるようになった。ピアジェによれば、子供こども思考しこう発達はったつする過程かていには、通過つうかしなければならない不連続ふれんぞく段階だんかいがいくつかあるとされる。おさな子供こどもは、具体ぐたいてき操作そうさ可能かのう情報じょうほうしか処理しょりすることができず、抽象ちゅうしょうてき思考しこうをしたり、過去かこかえったり、未来みらい予測よそくしたりすることはできないとされた。年齢ねんれいたか子供こどもは、これらの能力のうりょくすこしずつ発達はったつさせるのである。

1970年代ねんだいシーモア・パパートはピアジェの発想はっそうもとに、LOGO開発かいはつした。LOGOは、「まえに10」や「みぎに90」といった簡単かんたんなコマンドで画面がめんじょうかめうごきを子供こどもたちにコントロールさせるシンプルなプログラム言語げんごである。

学習がくしゅう理論りろんは、1960年代ねんだい、1970年代ねんだいのコンピュータの発展はってん影響えいきょうけた。おおくの学習がくしゅうモデルが、「情報処理じょうほうしょり」アプローチを採用さいようした。

1980年代ねんだい、90年代ねんだいになり、構成こうせい主義しゅぎ理論りろん登場とうじょうというかたちで、学問がくもん世界せかいにもポストモダン影響えいきょうられるようになった。進歩しんぽてき理論りろんなかには、これまでの知識ちしきかんする見解けんかいである、「知識ちしき個人こじん経験けいけんとははなされたかたち存在そんざいするものである」という見解けんかいや、「知識ちしき教師きょうしから生徒せいと一方いっぽうてき伝達でんたつされるものである」という見解けんかい否定ひていするものあらわれた。また、すべての知識ちしき社会しゃかいてき構成こうせいされており、客観きゃっかんてき真実しんじつというようなものは存在そんざいしないとかんがえるものもでてきた。さらには、学習がくしゅうしゃタブララサではなく、各自かくじ固有こゆう経験けいけん知識ちしき、スキル、態度たいどまな存在そんざいであるとかんがえるものもいる。

20世紀せいき後半こうはんになると、構成こうせい主義しゅぎ対応たいおうするように、認知にんち主義しゅぎ英語えいごばん理論りろん登場とうじょうした。これは、ひとのうがどのように情報じょうほう処理しょりし、蓄積ちくせきするのかをあらわすモデルを提示ていじする理論りろんである。21世紀せいき認知にんち主義しゅぎ理論りろんにおいていきおいのある理論りろんは、Cognitive Load Theoryである。

専門せんもん養成ようせい

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アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく

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インストラクショナルデザインの理論りろん・モデルを駆使くしして、学習がくしゅう環境かんきょう分析ぶんせき評価ひょうか設計せっけい開発かいはつなどをおこな専門せんもんしょくインストラクショナル・デザイナー(IDer)とぶ。ぐんにおいて新兵しんぺい練度れんど短期間たんきかんたかめるための効率こうりつてき教育きょういく技法ぎほうとして、インストラクショナルデザインが発達はったつしてきた経緯けいいから、アメリカでは専門せんもんしょくとしての地位ちい確立かくりつされており、大学だいがく教育きょういくけい学部がくぶ大学院だいがくいん教育きょういく工学こうがくけい専攻せんこうでインストラクショナルデザインをまなぶことができ、IDerの資格しかく認定にんてい制度せいど存在そんざいする。

日本にっぽん

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熊本大学くまもとだいがく

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日本にっぽんにおいてはながらく養成ようせい機関きかんがなかったが、2006ねんに、熊本大学くまもとだいがく大学院だいがくいん社会しゃかい文化ぶんか科学かがく研究けんきゅうなか教授きょうじゅシステムがく専攻せんこう設置せっちした。 フロリダ州立しゅうりつ大学だいがくでインストラクショナルデザインを研究けんきゅうした鈴木すずき克明かつあき中心ちゅうしんに、インストラクショナルデザインの理論りろん・モデルを適用てきようしたeラーニング設計せっけい開発かいはつ専門せんもん養成ようせい目的もくてきとしており、この学問がくもん領域りょういきにおいて唯一ゆいいつ学位がくい認定にんていしている大学だいがくとなる(博士はかせ前期ぜんき課程かてい修了しゅうりょうで「修士しゅうし教授きょうじゅシステムがく)」を授与じゅよ)。

青山学院大学あおやまがくいんだいがく

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青山学院大学あおやまがくいんだいがくにおいてもeラーニング人材じんざい育成いくせい研究けんきゅうセンター(eLPCO)を設置せっちし、同様どうよう専門せんもんしょく養成ようせい課程かてい設置せっちしている。

関連かんれんする研究けんきゅうしゃ理論りろん

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インストラクショナルデザインのモデル

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インストラクションのための素材そざいつくすのにもっともよくもちいられるモデルは、ADDIEモデルであろう。これは、つぎげるいつつのフェーズの略語りゃくごとなっている。

  • Analyze分析ぶんせき」 - 学習がくしゅうしゃ性質せいしつや、学習がくしゅう課題かだい分析ぶんせきなど
  • Design設計せっけい」 - 学習がくしゅう目標もくひょう設定せってい教授きょうじゅアプローチの選択せんたく
  • Develop開発かいはつ」 - インストラクションやトレーニングのための素材そざい作成さくせい
  • Implement実装じっそう」 - インストラクションの素材そざい利用りようした教授きょうじゅ実施じっし素材そざい配布はいふ
  • Evaluate評価ひょうか」 - 教材きょうざい当初とうしょ目的もくてき達成たっせいしたかどうかの確認かくにん

Dick & CareyやKempのISDモデルのような、現在げんざいみられるおおくのインストラクショナルデザインのモデルは、ADDIEモデルから派生はせいしたものである。ISDモデルの改良かいりょうてんは、ラピッドプロトタイピングである。これは、インストラクションに使用しようされる素材そざい開発かいはつちゅうに、継続けいぞくてきなフィードバックあるいは形成けいせいてきなフィードバックをもとめるものであり、開発かいはつちゅう比較的ひかくてき修正しゅうせい容易よういなうちに問題もんだいつけだすことで、時間じかん費用ひよう節約せつやくはかるというものである。

行動こうどう主義しゅぎ構成こうせい主義しゅぎ社会しゃかいてき学習がくしゅう認知にんち主義しゅぎなどといった、さまざまな教授きょうじゅ理論りろんもまた、インストラクションに使用しようされる素材そざい設計せっけいにとって重要じゅうよう役割やくわりたす。これらの理論りろんによって、インストラクションに使用しようされる素材そざい出来でき具合ぐあい左右さゆうされる。

現在げんざい、インストラクショナルデザインの目的もくてき利用りようしゃ手助てだすけと定義ていぎするうごきがあり、ブリガムヤング大学だいがくのディロン・イノウエ博士はかせらがこの運動うんどう主導しゅどうしている。

関連かんれん項目こうもく

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インストラクショナルデザインは有用ゆうよう指導しどう方法ほうほうおよび教材きょうざい作成さくせいあつかうため、おおくの関連かんれん分野ぶんやがある。

外部がいぶリンク

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