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キンカジュー

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キンカジュー
キンカジュー
キンカジュー Potos flavus
保全ほぜんじょうきょう評価ひょうか[1][2][3]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : 哺乳ほにゅうつな Mammalia
: 食肉しょくにく Carnivora
: アライグマ Procyonidae
ぞく : キンカジューぞく Potos
Geoffroy Saint-Hilaire & Cuvier, 1795[4]
たね : キンカジュー P. flavus
学名がくめい
Potos flavus (Schreber, 1774)[3][5]
シノニム

Lemur flavus Schreber, 1774[3][4]

和名わみょう
キンカジュー[5][6]
英名えいめい
Kinkajou[3][4][5]

分布域

キンカジュー (Potos flavus) は、哺乳ほにゅうつな食肉しょくにくアライグマキンカジューぞく分類ぶんるいされる食肉しょくにくるいほんしゅのみでキンカジューぞく構成こうせいする[4]

分布ぶんぷ

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エクアドルエルサルバドルガイアナグアテマラコスタリカコロンビアスリナムニカラグアパナマブラジルふつりょうギアナベネズエラベリーズペルーボリビアホンジュラスメキシコ[3]

しき標本ひょうほん産地さんち基準きじゅん産地さんち・タイプ産地さんちしき産地さんち)はジャマイカとされていたが、のちにスリナムとされた[4]

形態けいたい

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あたまどうちょう体長たいちょう)40.5 - 76センチメートル[5]尾長おなが39.2 - 57センチメートル[5]体重たいじゅう1.4 - 4.6キログラム[4][5]ものきつけることができる[5][6]背面はいめんはオリーブ褐色かっしょく褐色かっしょく赤褐色せきかっしょくなどで、正中せいちゅうせんくろ個体こたいもいる[5]はらめん褐色かっしょく[5]

みみかい小型こがたで、先端せんたんまるみをびる[4][5]鼻面はなづらみじか[5][6]れつ門歯もんし上下じょうげ6ほんずつ、犬歯けんし上下じょうげ2ほんずつ、しょう臼歯きゅうし上下じょうげ6ほんずつ、だい臼歯きゅうし上下じょうげ4ほんずつでけい36ほん[4][5]した細長ほそなが[5]四肢ししみじかく、前肢ぜんしより後肢あとあしほうなが[5]ゆび趾にはみじか先端せんたんとがつめがある[5]

出産しゅっさん直後ちょくごようじゅうもうころもはい褐色かっしょくだが、腹部ふくぶはほとんど体毛たいもうおおわれない[5]

染色せんしょくたいすうは、2n = 38[4]

分類ぶんるい

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以下いか亜種あしゅ分類ぶんるいは、Ford & Hoffmann(1998)にしたが[4]

Potos flavus flavus (Schreber, 1774)
Potos flavus chapadensis Allen, 1904
しき産地さんちはマトグロッソ(ブラジル)
Potos flavus chiriquensis Allen, 1904
しき産地さんちはパナマ
Potos flavus megalotus (Martin, 1836)
しき産地さんち不明ふめいだが、コロンビアとされる。
Potos flavus meridensis Thomas, 1902
しき産地さんちはベネズエラ。
Potos flavus modestus Thomas, 1902
しき産地さんちはエクアドル。
Potos flavus nocturnus (Wied-Neuwied, 1826)
しき産地さんちはアラゴアス(ブラジル)
Potos flavus prehensilis (Kerr, 1792)
しき産地さんちはベラクルス(メキシコ)


形態けいたいもとづく研究けんきゅうではオリンゴぞく Bassaricyonおな系統けいとうぐん(クレード)にぞくするとされていたが、分子ぶんし系統けいとう研究けんきゅうからはキンカジューぞくはアライグマなか最初さいしょ分岐ぶんきしたグループで、そののグループ全体ぜんたい姉妹しまいぐんにあるらしいとされる(ただしヤマハナグマぞく Nasuella不明ふめい[脚注きゃくちゅう 1]

生態せいたい

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熱帯ねったい雨林うりん熱帯ねったい常緑樹じょうりょくじゅりん乾燥かんそうりん・サバンナの林地りんちりんなどに生息せいそくする[4]じょう[5]夜行やこうせいで、昼間ひるまほらなどでやす[5]単独たんどく生活せいかつするが、しょくには複数ふくすう個体こたいあつまることもある[5]

おもアボカドグァバマンゴーなどの果実かじつべるが、はなみつ蜂蜜はちみつ昆虫こんちゅう鳥類ちょうるいやそのたまごなどもべる[5]はなみつ蜂蜜はちみつしたばしてべる[6]捕食ほしょくしゃとしてアカクロクマタカSpizaetus isidoriジャガーなどがげられ、オウギワシ捕獲ほかくされた観察かんさつれいもある[4]

繁殖はんしょく形態けいたい胎生たいせいしゅうねん繁殖はんしょくするせつ[6]、4 - 5月に繁殖はんしょくするせつがある[5]妊娠にんしん期間きかんは98 - 120にち[4]ほらで1かいに1とう(まれに2とう)のようじゅう[5]。オスは生後せいご1.5ねんはん、メスは生後せいご2.25ねんせい成熟せいじゅくする[4][5]飼育しいくではアムステルダム動物どうぶつえんで23ねん7かげつ飼育しいく記録きろくがある[5]

社会しゃかい集団しゅうだん

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えさ行動こうどうなどは単独たんどくおこなわれることがおおいため、かつてはつね単独たんどく生活せいかつする動物どうぶつだとかんがえられていた。しかし2000ねん以降いこう生態せいたいがくてき研究けんきゅうから、安定あんていしたしょう集団しゅうだん形成けいせいしていることや、そのなか複雑ふくざつ婚姻こんいん関係かんけい成立せいりつしているらしいことがわかってきた[脚注きゃくちゅう 2][脚注きゃくちゅう 3]。それによれば典型てんけいてき集団しゅうだんは1とうのメス成獣せいじゅう、2とうのオス成獣せいじゅう、1とう成獣せいじゅうおよび1とうようじゅうからなり、とくにちちゅうのウロでねむるときやえさおお樹木じゅもく集団しゅうだん食事しょくじをするとき、あるいはグルーミングやマーキングなどのさい社会しゃかい行動こうどうがよく観察かんさつされるという。ただし前述ぜんじゅつのとおりえさべる場合ばあい通常つうじょう単独たんどく行動こうどうし、メスには集団しゅうだんぞくさない個体こたいがいることも観察かんさつされている。

このような集団しゅうだんでは2とうのオスは対等たいとうではなく、メスと交尾こうびするのは1のオスで、ときに2のオスも交尾こうびすることがある。ある集団しゅうだんでは交尾こうびさいに1のオスがなんあいだもメスをいかけ、2のオスもそれにいてまわってあらそうようにごえげたりするのが観察かんさつされているが、ある集団しゅうだんでは2とうのオスがなんいさかいもなくメスと日和見ひよりみてき交尾こうびするれい観察かんさつされている。さらにオスは周辺しゅうへん単独たんどく生活せいかつをする集団しゅうだんがいのメスと交尾こうびをすることもあるため、いちつまおっとであると同時どうじ一夫多妻いっぷたさいてき(もしくは乱婚らんこんてき)でもある。このような観察かんさつから個体こたい分散ぶんさんおもにメスによってなされているのではないかとも推定すいていされている。

人間にんげんとの関係かんけい

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kinkajouは、ブラジルの原住民げんじゅうみん言葉ことば由来ゆらいする[4]英語えいごけんではHoney bear, Night apeなどと呼称こしょうされることもある[4]

分布ぶんぷ非常ひじょうひろいこと・開発かいはつなどにもある程度ていど適応てきおうできること・生息せいそくすう激減げきげんしているというデータが現在げんざいのところないことなどから、2016ねん時点じてんではたねとしては絶滅ぜつめつのおそれはひくいとかんがえられている[3]一方いっぽう森林しんりん伐採ばっさいなどによる生息せいそく破壊はかい食用しょくよう毛皮けがわ狩猟しゅりょう、ペットよう採集さいしゅうなどにより、生息せいそくすう減少げんしょうしている[3]。1987ねんにホンジュラスの個体こたいぐんが、ワシントン条約じょうやく附属ふぞくしょIIIに掲載けいさいされている[2]

ペットとして飼育しいくされることもある[5]

ペットとしては、2006ねん8がつにはパリス・ヒルトンがペットとしてっていたほんしゅ左腕さわんまれ、病院びょういん破傷風はしょうふう注射ちゅうしゃけたことも話題わだいになった[脚注きゃくちゅう 4]

名称めいしょう

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もとは "quincajou" で、本来ほんらいは17世紀せいきのフランスじん北米ほくべい入植にゅうしょくしゃらがクズリかたりとしてニコラ・デュニ英語えいごばん旅行りょこう(1672ねん[脚注きゃくちゅう 5]などに登場とうじょうするが、これをビュフォンあやまって中南米ちゅうなんべいさんほんたね混同こんどうしたのがはじまりとされる[脚注きゃくちゅう 6][脚注きゃくちゅう 7]。しかしビュフォンものちに1773ねんのサンジェルマンのフェアで "animal inconnu a tous les Naturalistes"(博物はくぶつ学者がくしゃらぬ動物どうぶつ)と銘打めいうったほんしゅ実物じつぶつるなどして自分じぶんあやまりに気付きづいた[脚注きゃくちゅう 8][脚注きゃくちゅう 6]

なお本来ほんらいの "quincajou" は、クズリの別名べつめい "carcajou" 同様どうよう北米ほくべい先住民せんじゅうみんのクズリをかたりたとえばオジブウェーの "Gwingwaage"[脚注きゃくちゅう 9] やアルゴンキンの "Kwingwaage"[脚注きゃくちゅう 10]どう類語るいご)に由来ゆらいすると推定すいていされているが[脚注きゃくちゅう 11][脚注きゃくちゅう 12]、"carcajou" のかたりとこれらの先住民せんじゅうみんとの融合ゆうごうしたものではないかとするせつ[脚注きゃくちゅう 7]もある。

出典しゅってん

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  1. ^ I, II and III (valid from 28 August 2020)<https://cites.org/eng> (downroad 12/10/2020)
  2. ^ a b UNEP (2020). Potos flavus. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (download 12/18/2020)
  3. ^ a b c d e f g Helgen, K., Kays, R. & Schipper, J. 2016. Potos flavus. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T41679A45215631. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-1.RLTS.T41679A45215631.en. Downloaded on 18 December 2020.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p Linda S. Ford, Robert S. Hoffmann, "Potos flavus," Mammalian Species, No. 321, American Society of Mammalogists, 1988, Pages 1 - 9.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 中里なかさと竜二りゅうじ 「アライグマ分類ぶんるい」『世界せかい動物どうぶつ 分類ぶんるい飼育しいく2 (食肉しょくにく)』今泉いまいずみよしのり監修かんしゅう東京とうきょう動物どうぶつえん協会きょうかい、1991ねん、58 - 66ぺーじ
  6. ^ a b c d e 今泉いまいずみよしのり監修かんしゅう D.W.マクドナルドへん動物どうぶつだい百科ひゃっか1 しょく肉類にくるい』、平凡社へいぼんしゃ1986ねん、120-121ぺーじ

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Koepfli, K.P.; et al., 2007. “Phylogeny of the Procyonidae (Mammalia: Carnivora): molecules, morphology and the Great American Interchange.”, Molecular phylogenetics and evolution 43 (2): 1076-1095, doi:10.1016/j.ympev.2006.10.003
  2. ^ Kays, Rawland W. & Gittleman, John L.,2001. “The social organization of the kinkajou Potos flavus (Procyonidae).” Journal of Zoology Vol. 253, No.4: pp. 491-504, doi:10.1017/S0952836901000450
  3. ^ Kays, R., 2003. “Social polyandry and promiscuous mating in a primate-like carnivore: the kinkajou (Potos flavus)” pp. 125-137 in U. Reichard & C. Boesch (Ed.), Monogamy: mating strategies and partnerships in birds, humans and other mammals. Cambridge, New York: Cambridge University Press. ISBN 9780521525770
  4. ^ シネマトゥディ (2006ねん8がつ15にち). “パリス・ヒルトン、ペットのキンカジューにまれて病院びょういん”. 2009ねん10がつ9にち閲覧えつらん
  5. ^ Nicolas Denys, 1672. Description geographique et historique des cotes de l'Amerique septentrionale, avec l'histoire naturelle de ce pays, Paris, ぜん2かん …Vol. 2, chap.xxi(英訳えいやくばん
  6. ^ a b 記名きめい, 1836. “THE KINKAJOU.” Penny Magazine No.258(1836ねん4がつ9にちごう)…pp.137-138
  7. ^ a b 同書どうしょ編集へんしゅう委員いいんかいへん), 1994. 『小学館しょうがくかんランダムハウス英和大えいわだい辞典じてんだい2はん 小学館しょうがくかん ISBN 4095101016 …p.1483(→cRandom House, Inc. 2009
  8. ^ Buffon, Georges Louis Leclerc, comte de, 1776. HISTOIRE NATURELLE, GENERALE ET PARTICULIERE : supplement. Tome Troisieme.p.244-245
  9. ^ Bishop Baraga, 1853. A dictionary of the Otchipwe language, explained in English : part I, Otchipwe-English. Jos. A. Hermann, Cincinnati. 662pp…p.143
  10. ^ Cuog, J. A., 1886. Lexique de la langue Algonquine. J. Chapleau, Montreal. 446pp.…p.190
  11. ^ Jas. Platt, Jun. “KINKAJOU." Notes and Queries 1901, 9th S VII, No. 177(1901ねん5がつ18にちごう): p. 386. [1]
  12. ^ J.A. Simpson and E.S.C. Weiner (prepared), 1989. The Oxford English dictionary 2nd ed. Clarendon Press, Oxford. ISBN 0198611862 …Vol. VIII, p.453