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クィリニウス

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
クレニオから転送てんそう
マリヤとヨセフの住民じゅうみん調査ちょうさまえにした総督そうとくクレニオ、コンスタンティノープルのコーラ教会きょうかいのビザンチンモザイク

プブリウス・スルピキウス・クィリニウス古典こてんラテン語らてんごPublius Sulpicius Quirinius (c. 51 BC – AD 21) (プブリウス・スルピキウス・クィリニウス) は、マ帝国まていこく元老げんろういん議員ぎいんユダヤぞくしゅう総督そうとく在任ざいにん6ねん - 9ねん)。ルカの福音ふくいんしょ2しょう2せつで「ぜん世界せかいクィリニウスの人口じんこう調査ちょうさ」をおこなったとされる総督そうとくとしてられる。[1]

日本語にほんごやく聖書せいしょでは、「クレニオ」、「キリニウス」などとしてられる。 フラウィウス・ヨセフス著作ちょさくによると、「キュリニオス」、「クイヌリス」、「キュレーニオス」、 ラテン語らてんごばんでは「キリニウス」、「キリヌス」などとしてられる。

生涯しょうがい

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自治じちラーヌウィウムの出身しゅっしんで、ローマぐん兵士へいしとしてたたかい、ぜん12ねん皇帝こうていアウグストゥスもと、ローマコンスル(執政しっせいかん)にえらばれた。あいだもなくして、ガラテヤ南境みなみざかい山地さんち部族ぶぞくホモナデンセスとのたたかいを指揮しきして、勝利しょうりおさめ、凱旋がいせん将軍しょうぐんあらわしょうさずかり、ぜん3ねんアジアしゅう総督そうとくになった。

紀元きげん3ねんから4ねんまで、ガイウス・カイザリヤアルメニヤ遠征えんせい後見人こうけんにんとして同行どうこうする。 紀元きげん6ねんから9ねん皇帝こうていアウグストゥスにより、民族みんぞく統治とうちしゃ財産ざいさん査定さていかんとして、シリヤ・キリキヤ地方ちほう派遣はけんされた。同時どうじに、騎士きし階級かいきゅうであったコーポーニオスも総督そうとくとしてユダヤじん統治とうちするために派遣はけんされた。キュリニウスは、ユダヤじん財産ざいさん査定さていして、アルケオラスの資産しさん処分しょぶんした。このことで、ユダヤじん衝撃しょうげきけたが、だい祭司さいしヨーアザロスの説得せっとくにより、財産ざいさん登録とうろくおうじた。しかし、ユーダスという人物じんぶつが、パリサイじんのサドーコスをきずりんで反抗はんこう運動うんどうこした。(熱心ねっしんとう[注釈ちゅうしゃく 1]

シリヤでの任務にんむえると、公職こうしょく退しりぞき、ローマにもどり21ねん死去しきょした。[注釈ちゅうしゃく 2]

キリスト教きりすときょう聖書せいしょにおけるクレニオ

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クィリニウスは、ルカの福音ふくいんしょのイエス・キリスト誕生たんじょう物語ものがたり最初さいしょに「クレニオ(クィリニウス)がシリアの総督そうとくであったとき最初さいしょ住民じゅうみん登録とうろくであった。」(しん改訳かいやく聖書せいしょ言及げんきゅうされている。

ヨセフォスは住民じゅうみん登録とうろくしるしているが、それは使徒しとぎょうでん5しょう37せつしるされている、クィリニウスによる人口じんこう調査ちょうさ紀元きげん6ねんのことである。ユダヤがヘロデ・アルケラオス(英語えいごばん)の廃位はいいによってローマのぞくしゅうとなったことをきっかけにクィリニウスが実施じっししたことである。[2]

しかし、イエスの誕生たんじょう紀元きげん4ねんよりまえであるといわれるので、ルカ2しょう2せつの「ぜん世界せかい住民じゅうみん登録とうろく」は、クィリニウスが実施じっしした紀元きげん6ねん人口じんこう調査ちょうさとはことなる。つまり、ルカにしるされている住民じゅうみん登録とうろくはヨセフォスがしるしていないべつ登録とうろくということになる。[注釈ちゅうしゃく 3]

もしくは、ルカの「勘違かんちがい」ではなく、『キリストが誕生たんじょうするとき(=歴史れきしわりとはじまりのさかい)には、(実際じっさい事実じじつがどうであれ、)人口じんこう調査ちょうさ(=みんかぞしるす=みんすう歴代れきだい)がかならおこなわれ(てい)なければ「ならない」』とする、なんらかの物語ものがたり創作そうさくじょう思想しそう・ルールにもとづく、「意図いとてきな」記述きじゅつである可能かのうせいもある。そのために、実際じっさいには紀元きげん6ねんおこなわれたクレニオによる人口じんこう調査ちょうさ記録きろく拝借はいしゃくして、そのときより10ねんほどまえのキリストの誕生たんじょうってきたものともかんがえられる。つまり、事実じじつ正確せいかくしるしたのではなく、イデオロギーにうように事実じじつゆがめたのである。

また、アウグストゥスの『業績ぎょうせきろく』によれば、さん国勢調査こくせいちょうさぜん28ねんぜん8ねん紀元きげん14ねん)をおこなったとわれ、キリストの誕生たんじょう前後ぜんこうにはローマによる国勢調査こくせいちょうさおこなわれていない。

テルトリアヌスが、シリヤ総督そうとくであったサトゥルニウス在位ざいいぜん9ねん-6ねん人口じんこう調査ちょうさおこなったと記録きろくしている。また、住民じゅうみん登録とうろくは14ねんごとにおこなわれていたことがかっている。また、ギリシア最初さいしょの」とは「以前いぜんの」とのやくせるので、「総督そうとくクレニオが実施じっしした以前いぜん総督そうとくサトゥルニヌスによる」住民じゅうみん登録とうろくであると解釈かいしゃくすることができる。[3]

また、ラピス・ティブルティヌスという碑文ひぶんに、シリヤの総督そうとくに2度目どめについたローマじん業績ぎょうせき報告ほうこくされている。それが、クィリニウスであった可能かのうせいもある。

M・W・ラムゼーは、ぜん10ねんクィリニウスがシリヤの軍事ぐんじ担当たんとう総督そうとくになり、同時どうじにサトゥルニウスが行政ぎょうせい担当たんとうしたという仮説かせつてた。そのときに、クィリニウスが軍事ぐんじ担当たんとう総督そうとくとして住民じゅうみん登録とうろく実施じっししたという仮説かせつである。

日本語にほんごやく聖書せいしょにおける名前なまえ表記ひょうき

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クレニオは新約しんやく聖書せいしょ記載きさいのある人物じんぶつだが、日本語にほんごやく聖書せいしょなかでは様々さまざま表記ひょうきがなされる。具体ぐたいれいげるとクレニオ(文語ぶんごやく口語こうごやくしん改訳かいやくだい3はん以前いぜん)、キリノイ(正教会せいきょうかいやく)、キリニウス(共同きょうどうやく)、キリニウス(しん共同きょうどうやくしん改訳かいやく2017)などがある。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ かれらは、キュリニウスのアルケラオスの財産ざいさん査定さていは、ユダヤじん奴隷どれい状態じょうたいむためのものであり、ローマからの独立どくりつうったえた。(はた 1980, pp. 5)
  2. ^ キュリニオスは晩年ばんねん醜態しゅうたいきわめ、権力けんりょくをほしいままにした。自分じぶん毒殺どくさつしようしたかどで、つまレピダとは離縁りえんしたといわれる。(はた 1980, pp. 5)
  3. ^ このけんたいして、はたは「ルカの記事きじにはアナクロニズム」がみとめられる。」としるし、ルカが時代じだいあやまっていると結論けつろんけている。(はた 1980, pp. 5)

出典しゅってん

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  1. ^ しん聖書せいしょ辞典じてん』、いのちのことばしゃ、1985ねんISBN 4-264-00706-2、P418-419。
  2. ^ フラウィウス・ヨセフス ちょはたつよしたいら やく『ユダヤ古代こだい6 新約しんやく時代じだいへん[XVIII][XIX]』山本やまもと書店しょてん、1980ねんISBN 4-480-08536-X、P1-11。
  3. ^ 熊谷くまがいとおる「ルカの福音ふくいんしょ」『実用じつよう聖書せいしょ注解ちゅうかい』p.285-286

参考さんこう文献ぶんけん

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  • しん聖書せいしょ辞典じてん』いのちのことばしゃ、1985ねんISBN 4-264-00706-2 
    • 「クレニオ」『しん聖書せいしょ辞典じてん』1988ねん、418-419ぺーじ 
    • 千代崎ちよざき秀雄ひでお「ヘロデ」、1136-1140ぺーじ 
  • ヨセフスフラウィウス しるはたつよしたいら わけ『ユダヤ古代こだい6、新約しんやく時代じだいへん「XVIII][XIX]』山本やまもと書店しょてん、1980ねん 
  • 熊谷くまがいとおる「ルカの福音ふくいんしょ」『しん聖書せいしょ注解ちゅうかいいのちのことばしゃ、1995ねんISBN 4-264-01500-6 
  • “パクス・ロマーナ”, ローマじん物語ものがたりVI, 新潮社しんちょうしゃ, (1997), ISBN 4-10-309615-2 

関連かんれん項目こうもく

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