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立体りったいはい

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コンフォメーションから転送てんそう

立体りったいはい(りったいはいざ、Conformation)とは、たん結合けつごうについての回転かいてん孤立こりつ電子でんしたい原子げんしについての立体りったい反転はんてんによって相互そうご変換へんかん可能かのう空間くうかんてき原子げんし配置はいちのことである。

じゅう結合けつごうについての回転かいてんひとし炭素たんそについての立体りったい反転はんてんのように通常つうじょう条件じょうけんでは相互そうご変換へんかん不可能ふかのう理論りろんてき原子げんし配置はいち立体りったい配置はいちという。

概要がいよう

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立体りったいはい結合けつごう回転かいてん起因きいんする自由じゆうにより、そのりうる状態じょうたいかず規定きていされる。したがって、りうる立体りったいはいかずてい分子ぶんしから高分子こうぶんしへと分子ぶんし構成こうせいするたん結合けつごうえるにつれて爆発ばくはつてき増大ぞうだいする。

生体せいたい分子ぶんしタンパク質たんぱくしつ核酸かくさん脂質ししつとうetc.)はかく結合けつごう立体りったいはい変化へんかすることで立体りったい構造こうぞうおおきく変化へんかさせる。いいかえると、高分子こうぶんしかく結合けつごう立体りったいはい総体そうたい高分子こうぶんし立体りったい構造こうぞう規定きていする。それゆえコンフォメーション変化へんかにより高分子こうぶんしりうる立体りったい構造こうぞう特定とくていひとつもコンフォメーションといいあらわされる。とくタンパク質たんぱくしつ場合ばあいにこの用語ようご使用しようされることがおおい。しかしながら、立体りったい構造こうぞう重要じゅうようであるような生体せいたい分子ぶんし場合ばあいにはひろ適用てきようされている。また、特殊とくしゅ状態じょうたいえきしょう温度おんどpHなどの変化へんか)をのぞけば自発じはつてき構造こうぞう決定けっていされる。また、特定とくていのコンフォメーションをることが、タンパク質たんぱくしつ核酸かくさん生物せいぶつがくてき作用さよう発現はつげん必須ひっすでもある。

立体りったいはいことなるだけの2つの分子ぶんし関係かんけいはい異性いせいたい(はいざいせいたい)あるいはコンフォーマー (conformer) という。

非常ひじょう低温ていおんにしたり、立体りったいてきおおきな置換ちかんもと導入どうにゅうすることで、回転かいてん立体りったい反転はんてんようする活性かっせいエネルギーが分子ぶんしねつ運動うんどうのエネルギーを上回うわまわるようにすると、はい異性いせいたいあいだ相互そうご変換へんかん不可能ふかのうになりそれぞれのはい異性いせいたいたんはなれできるようになる。

たん結合けつごうについての立体りったいはい

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ブタン立体りったいはいニューマン投影とうえいあらわしたうえから順番じゅんばんにゴーシュはい、アンチはい、エクリプスはい

X-A-B-Yというように原子げんし結合けつごうしているたん結合けつごうA-Bのまわりの立体りったいはいについてかんがえる。 たん結合けつごうA-Bについての立体りったいはいは、結合けつごうX-Aと結合けつごうB-Yのめんかく区別くべつされ、以下いかのように命名めいめいされている。

  • めんかく0〜30:シンペリプラナー(synperiplanar:記号きごうsp)
  • めんかく30〜90:シンクリナル(synclinal:記号きごうsc)
  • めんかく90〜150:アンチクリナル(anticlinal:記号きごうac)
  • めんかく150〜180:アンチペリプラナー(antiperiplanar:記号きごうap)

たん結合けつごうについての立体りったいはいニューマン投影とうえいあらわすことがおおい。二面ふたおもてかくが0、120場合ばあい、ニューマン投影とうえいるとAうえ置換ちかんもととBうえ置換ちかんもとかさなるのでかさなりがたはいあるいはエクリプスはいという。二面ふたおもてかくが60、180場合ばあい、Aうえ置換ちかんもととBうえ置換ちかんもとたがちがいになるのでねじれがたはいあるいはスタッガードはいという。さらにめんかくが0のものはシンはい (syn) またはシスはい (cis)、180のものはアンチはい (anti) またはトランスはい (trans)、60のものはゴーシュはい (gauche) という。

かさなりはいはAうえ置換ちかんもととBうえ置換ちかんもと接近せっきんしているため立体りったい反発はんぱつがあり、ねじれがたはいよりも不安定ふあんていである。

シクロヘキサンたまき立体りったいはい

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シクロヘキサンたまきにはいすがたねじれ舟形ふながたの2つの立体りったいはい極小きょくしょうてんとして存在そんざいする。いすがたはいにおいてはすべてのC-C結合けつごうがねじれがたはいつのにたいし、ねじれ舟形ふながたはいにおいては2ほんのC-C結合けつごうかさなりはいつ。そのためいすがたはいほう安定あんていである。

置換ちかんもとシクロヘキサンにおいてはいすかたちはい立体りったいはいなかでも立体りったいてきおおきな置換ちかんもとエカトリアルめる立体りったいはいとく安定あんていとなる。これはアキシアルくらいおおきな置換ちかんもとがあるとのアキシアル置換ちかんもと立体りったいてき反発はんぱつしょうじるためである。

孤立こりつ電子でんしたい原子げんし立体りったい反転はんてん

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3つのことなる置換ちかんもとアミン窒素ちっそ原子げんしはsp3混成こんせいをしているため、孤立こりつ電子でんしたいふくめればピラミッドがた構造こうぞうをとっておりひとし中心ちゅうしんとなる。しかし、これによってしょうじる1つい光学こうがく異性いせいたいジアステレオマーたんはなれすることは通常つうじょうはできない。これは窒素ちっそ原子げんしすみやかに立体りったい反転はんてんをしており、これらの光学こうがく異性いせいたいやジアステレオマーが相互そうご変換へんかんしているためである。このことを逆手さかてれば、平面へいめん構造こうぞう遷移せんい状態じょうたいることが不可能ふかのう置換ちかんもとつアミンでは、光学こうがく異性いせいたいジアステレオマーたんはなれすることが可能かのうである。

非対称ひたいしょうなスルホキシドの硫黄いおう原子げんしおなじような構造こうぞうをしているが、室温しつおん付近ふきんでは立体りったい反転はんてん速度そくど非常ひじょうおそいため、光学こうがく異性いせいたいジアステレオマーたんはなれすることが可能かのうである。しかし高温こうおんにするとやはりアミンとおなじように相互そうご変換へんかんこるようになる。

高分子こうぶんし立体りったいはい

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タンパク質たんぱくしつ

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タンパク質たんぱくしつ構造こうぞう以下いかよん段階だんかいけてかんがえることおおい。

例外れいがいてき単位たんいとしては以下いかのものがある。

  • ちょう構造こうぞう:ロスマン構造こうぞうαあるふぁαあるふぁ'ターンなど
  • モジュールちょう構造こうぞうとほぼ同義どうぎ、20〜30アミノざんもとひとつの単位たんいとした構造こうぞう
  • ドメイン:100〜150アミノざんもと単位たんいとした構造こうぞうかく生物せいぶつエキソンがドメインに該当がいとうするとせつがある(ドメインシャフリングせつ)。

また、とくさん構造こうぞう以上いじょう構造こうぞうを『タンパク質たんぱくしつ高次こうじ構造こうぞう』とぶ。よん構造こうぞういたるまでのコンフォメーションはすべアミノ酸あみのさん配列はいれつによって厳密げんみつ決定けっていされている[よう検証けんしょう]

このなかでも、コンフォメーションの意味合いみあいに使用しようされるのがタンパク質たんぱくしつさん構造こうぞうであり、これらは以下いかちからによって保持ほじされているとわれている。

これらの作用さようもっともエネルギーてき安定あんていする状態じょうたいタンパク質たんぱくしつ立体りったい構造こうぞうであり、タンパク質たんぱくしつによっては(こうねつきんタンパクや細胞さいぼうがいタンパク質たんぱくしつなど)これらの結合けつごうきわめて強固きょうこである。これらの相互そうご作用さようよん構造こうぞうにも寄与きよする。

タンパク質たんぱくしつ溶解ようかい立体りったい構造こうぞう

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一般いっぱん可溶性かようせいタンパク質たんぱくしつみずたいして親和しんわせいたかタンパク質たんぱくしつ)は球状きゅうじょう構造こうぞうっており、外部がいぶには親水しんすいせいざんもと内部ないぶには疎水そすいせいざんもと強固きょうこ凝集ぎょうしゅうしている。また、サブユニットあいだ相互そうご作用さようにおいても結合けつごう部位ぶい疎水そすいせいざんもとあつまっている。可溶性かようせいタンパクはコンフォメーションの決定けってい比較的ひかくてき容易よういであり、すうおおくの結晶けっしょう構造こうぞうあきらかになっている。

また、不溶性ふようせいタンパクまくタンパク質たんぱくしつおおい)は、生体せいたいまく配置はいち貫通かんつうがた埋没まいぼつがた付着ふちゃくがたなど)しているためまく内部ないぶ存在そんざいしている部分ぶぶん疎水そすいせいざんもと外側そとがわいている。まく貫通かんつうがた構造こうぞうαあるふぁヘリックスやβべーたシートで構成こうせいされる。ポーリンタンパク質たんぱくしつのようなしょうあないているようなタンパク質たんぱくしつでは、あなおおきい場合ばあいβべーたシート、あるいはよん構造こうぞうによりあなひらいており、プロトンのようなしょう分子ぶんしとお場合ばあいαあるふぁヘリックスで構成こうせいされたしょうあなもちいている。まくタンパク質たんぱくしつはコンフォメーションの理解りかいがいまだすくなく、構造こうぞう決定けっていされたものは10にたない。

コンフォメーション変化へんかとフォールディング

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タンパク質たんぱくしつのコンフォメーションは構造こうぞう生物せいぶつがくてき分野ぶんや発展はってんとともに理解りかいふかまってきたが、これはコンピュータ発展はってんによるところがおおきいといえる。また、タンパク質たんぱくしつ結晶けっしょう構造こうぞうのような静的せいてきなものではなく、ダイナミックに立体りったい構造こうぞう変化へんかさせているとうモデルがあきらかになってきており、従来じゅうらいタンパク質たんぱくしつぞうあたらしい知見ちけんあたえている。とく機能きのう分子ぶんしである酵素こうそなどはその反応はんのうにコンフォメーションの変化へんかふかかかわっているわれている。

また、タンパク質たんぱくしつリボソーム生産せいさんされると同時どうじ立体りったい構造こうぞうはじめるが、そのりたたみ過程かてい(フォールディング)は非常ひじょう素早すばやく(エネルギーてきひくじゅんうつるだけなので)いまだよく理解りかいされていない。コンピューターじょう仮想かそうのペプチドをフォールディングさせるシミュレーションおこなわれているが、現実げんじつにそうしたペプチド作成さくせいすると再現さいげんできない場合ばあいおおい。また、カメレオンペプチドというαあるふぁヘリックス、βべーたシートどちらでも構成こうせいすることのできるアミノ酸あみのさん配列はいれつつかっているが、なぜそのような現象げんしょうきるかということについても理解りかいふかまっているとはいえない。

こういったフォールディングは、タンパク質たんぱくしつ配列はいれつによって自発じはつてきかつ一義的いちぎてきりたたまれるとかんがえられてきた。しかし、生体せいたいないではシャペロンばれる一群いちぐんタンパク質たんぱくしつただしいコンフォメーションをとるようにフォールディングをたすけていることがわかってきた。このシャペロンは細菌さいきんから哺乳類ほにゅうるいまできわめて保存ほぞんされており、生体せいたいにとって必須ひっす作用さようつとかんがえられるようになった。


核酸かくさん

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DNAについてはじゅうらせん構造こうぞうクロマチン構造こうぞう染色せんしょくたい参照さんしょう。なお、DNAの高次こうじ構造こうぞう複製ふくせい転写てんしゃトポロジーなどにきわめて重要じゅうようであるとわれている。

リボ核酸かくさん(ribonucleic acid, RNA)

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RNA特定とくていウイルスのものをのぞけばすべ一本いっぽんくさりであり、タンパク質たんぱくしつのように一本いっぽんくさりじょうのA-U、G-C結合けつごう特定とくていのコンフォメーションをつくることがよくられている。

なかでももっとも有名ゆうめいなのが、tRNA構造こうぞうおよびさん構造こうぞうである。RNAの配列はいれつすこしずつことなっているがtRNAのとる構造こうぞうは『クローバー構造こうぞう』とばれており、みっつのループとステムからなる構造こうぞうる。

  • DHUステム、ループ
  • TΨぷさいCステム、ループ
  • アンチコドンステム、ループ
  • オプショナルアーム(存在そんざいしないtRNAもある)
  • アクセプターアーム

さらに、ステム部分ぶぶんじゅうらせん構造こうぞうにより、RNAはさらりたたまれてさん構造こうぞうる。tRNAのさん構造こうぞうは『L構造こうぞう』とばれており、翻訳ほんやくさいにはこの形状けいじょう不可欠ふかけつだとかんがえられている。

また、リボソームにふくまれるしょうサブユニットおよびだいサブユニットrRNAも、タンパク質たんぱくしつ相互そうご作用さようもあいまって特定とくていのコンフォメーションをっているとわれている。きわめて複雑ふくざつ構造こうぞうっていることがわかっているが、リボソームの翻訳ほんやく過程かていにrRNAの活性かっせい必要ひつようであり、不可欠ふかけつ構造こうぞうである。

リボザイム

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RNAに触媒しょくばい作用さようがあること発見はっけんしたトーマス・チェックは、テトラヒメナ自己じこスプライシングこすrRNAの構造こうぞうおよびさん構造こうぞう解析かいせきしたことで有名ゆうめいである。リボザイム触媒しょくばい作用さようにもRNAコンフォメーションがふか関係かんけいしているとかんがえられている。

脂質ししつ

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脂質ししつについてはてい分子ぶんしのものがおおくコンフォメーションは容易ようい決定けっていできる。しかしながら、まく脂質ししつ全体ぜんたい構造こうぞうとなると流動りゅうどうせい親水しんすいもと多様たようさもあいまって、分子ぶんしけい実験じっけんにならざるをない。また、まく流動りゅうどうせい発揮はっきするためには疎水そすいもとのコンフォメーションが重要じゅうようであるとかんがえられている(脂質ししつ重層じゅうそう参照さんしょう)。

とう

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とうはその種類しゅるいおおく、タンパク質たんぱくしつ核酸かくさんのように一本いっぽんくさり構造こうぞうたず、ぶんえだしているケースがおおい。また、がいしてまく脂質ししつタンパク質たんぱくしつ結合けつごうしており、そのため構造こうぞう解析かいせきもっとむずかしい生体せいたい分子ぶんしひとつとわれている。いまだいち構造こうぞう理解りかいするための基本きほんてき配列はいれつ決定けっていほうすら確立かくりつされていない状況じょうきょうである。

しかしながら、細胞さいぼう接着せっちゃく物質ぶっしつ輸送ゆそう必要ひつよう細胞さいぼう標識ひょうしきとうとうくさり)がとく重要じゅうようであるとわれており、特異とくいせいたか薬剤やくざい開発かいはつには、こうした細胞さいぼう標識ひょうしきのコンフォメーションを理解りかいすることがきわめて重要じゅうようであるとかんがえられている。

関連かんれん項目こうもく

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