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デルリン

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デルリン(ポリオキシメチレン)

デルリン (Delrin) または、ポリオキシメチレン (Polyoxymethylene) はホルムアルデヒド原料げんりょうとしたポリアセタール樹脂じゅし (POM) である[1]軽量けいりょう・なめらかでたい水性すいせいつ、90 ℃以上いじょう温度おんどえるエンジニアリングプラスチックである。しばしば金属きんぞく代替だいたい材料ざいりょうとして市販しはんされる。なお「デルリン」の名称めいしょうは、デュポンしゃDu Pont)の登録とうろく商標しょうひょうとしてられる。

デュポンによって1952ねんごろにはじめて合成ごうせいされた[よう出典しゅってん]。1956ねん特許とっきょ取得しゅとくされ、1960ねんにはパーカーズバーグでその製造せいぞう工場こうじょう完成かんせいした。

用途ようと

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アメリカ食品しょくひん医薬品いやくひんきょく (FDA) は食品しょくひん工業こうぎょうでの使用しよう認可にんかしている。マテルしゃは1968ねんから1972ねんにかけて、摩擦まさつちいさい車輪しゃりんベアリングとしてミニカー製品せいひんホットウィール (Hot Wheels) にもちいていた。デルリンはアセタールの単独たんどく重合じゅうごうたい(ホモポリマー)からなる樹脂じゅしであり、てんいたぼう管状かんじょうなど基本きほん骨格こっかく構造こうぞうをなすような部品ぶひんとして成型せいけいする場合ばあいには空隙くうげきりつ問題もんだいとなる傾向けいこうがある。そのため、あるしゅ部品ぶひんなどでは信頼しんらいち、使つかいづらいとされることから、アセタールきょう重合じゅうごうたい(コポリマー)がしばしば代替だいたいひんとして利用りようされる。

ペイントボール競技きょうぎもちいる器具きぐじゅう)にネジやポンプのにぎりなどの部品ぶひんとしてひろ使つかわれる。安価あんか強度きょうど十分じゅうぶんにあり、かるなめらかであるため好適こうてきであるとされる。競合きょうごうする材料ざいりょうとしてナイラトロン (Nylatron) があり、こちらはよりかるいが膨潤せいたか傾向けいこうつ。膨潤した部品ぶひん器具きぐ故障こしょうまねき、ときには破損はそん原因げんいんともなる。ナイラトロンのようにナイロンもとにした材料ざいりょうはデルリンよりも摩損まそんたいしてつよいが、湿気しっけたいしてはよわく、湿度しつどたか環境かんきょう水中すいちゅうでの使用しようてきさないとされる。

デルリンは溶媒ようばいへのたいせいたか摩擦まさつ係数けいすうひくいため、あししゃ車輪しゃりんのベアリングとして有用ゆうようである。ニードルローラベアリングボールベアリング使つかえないような腐食ふしょくせいたか環境かんきょう選択せんたくされる。

近年きんねんでは、アイリッシュ・フルート伝統でんとうてきには木製もくせい)やティン・ホイッスル伝統でんとうてきには金属きんぞくせい)の製造せいぞうにも利用りようされている。デルリンせいのフルートは木製もくせいものおとているか、あるいはほとんどおなじであるが、ねつ冷気れいき乾燥かんそうなど、木製もくせいのものでは収縮しゅうしゅくやひびれがこるような環境かんきょうにもつよい。Des Seery、M&Eフルートの Michael Cronnolly、Tony Dixon などはデルリンせいのフルートを製作せいさくしている。

ギターピック素材そざいとしても使つかわれる。耐久たいきゅうせいく、つる接触せっしょくする箇所かしょでは、とくラウンド・ワウンドつる使つか場合ばあい、ナイロンよりもりにくい。セルロイドポリ塩化えんかビニル (PVC) せいつるきずつけず、にぎ心地ごこちたしかですべらず、ゆびかたちにひずんでなじんでゆくとされる。

チェンバロ製造せいぞうしゃ奏者そうしゃにも重宝ちょうほうされ、鍵盤けんばんしたときにつるプレクトラム素材そざいとしてもちいられる。チェンバロが全盛期ぜんせいきさい使つかわれていたとりはねじく非常ひじょうちか品質ひんしつち、耐久たいきゅうせいたかさや変質へんしつこさないてんではるかにすぐれるとされる。

安全あんぜんじょう機構きこう部品ぶひんにも利用りようされる。デルリンせい部品ぶひんは、密度みつどひくいためXせんによる透視とうし解析かいせきたいせいつが、中性子ちゅうせいしせん回折かいせつには無防備むぼうびである。たい磨耗まもうせいもとめられる場合ばあいにも使つかわれる。

オートバイのライダー、レーサーようのフレームスライダーやひざ保護ほごにも使つかわれる。

軽量けいりょうであり、圧力あつりょくがかかってもガスれをこしにくいことから、潜水せんすい用具ようぐ素材そざいとしても市民しみんけんている。

接着せっちゃく

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一般いっぱんてきにアセタール樹脂じゅし接着せっちゃくしにくく、これを改善かいぜんするための特殊とくしゅ製造せいぞうほう処理しょりほう開発かいはつされてきた。典型てんけいてきなものとして表面ひょうめんのエッチング、ほのお処理しょり機械きかいそぎすりげられる。エッチングは高温こうおんクロムさんなどによってほどこされる。アセタールホモポリマーを加工かこうして表面ひょうめんっかかりとなるてんつくり、材料ざいりょう接着せっちゃくできるようにする技術ぎじゅつられている。デュポンしゃがこの方法ほうほうかんする特許とっきょち、サテン仕上しあげ (satinizing) としょうしている。酸素さんそプラズマとコロナ放電ほうでん利用りようする処理しょり方法ほうほうられている[2]

一度いちど表面ひょうめん処理しょりほどこせば、エポキシけいポリウレタンけいシアノアクリレートけいなど、種々しゅじゅ接着せっちゃくざい利用りようできるようになる。エポキシけい接着せっちゃくざい場合ばあいでのせんだん強度きょうどは、機械きかいそぎすりした表面ひょうめんだと150–500psi、化学かがく処理しょりだと500–1000psi(500psiはやく3.4MPa)であることがしめされている。シアノアクリレートは金属きんぞく皮革ひかく、ゴムなどのプラスチックとの接着せっちゃく有効ゆうこうであるとされる。

アセタール樹脂じゅしたい溶媒ようばいせいたかいため、有機ゆうき溶剤ようざいによる溶接ようせつ通常つうじょうできない。ねつによる溶接ようせつはホモポリマー、コポリマーども適用てきよう可能かのうである。

出典しゅってん

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  1. ^ 神原かみはらあまね平田ひらた和民かずたみ宮本みやもとあきら「デルリン樹脂じゅしについて」『有機ゆうき合成ごうせい化学かがく協会きょうかいだい19かんだい1ごう有機ゆうき合成ごうせい化学かがく協会きょうかい、1961ねん、47-56ぺーじdoi:10.5059/yukigoseikyokaishi.19.47 
  2. ^ Snogren, R. C. (1974). Handbook of Surface Preparation. New York: Palmerton Publishing Co.